07P043_小林 直人

平成 24 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究Ⅱ
論文題目
細胞内ウイルスセンサーRIG-I の各種 RNA 結合領域の
哺乳動物、大腸菌発現ベクターの構築に関する研究
Studies on Construction of expression vectors for RNA binding
domains of cytoplasmic RNA sensor, RIG-I
生化学研究室 6 年
07P043
小林 直人
(指導教員:小室 晃彦)
要 旨
ウイルス由来 RNA を異物として認識し、一型インターフェロン産生を促す細胞内セン
サーRIG-I 様受容体(RLR)ファミリーの RIG-I の各種 RNA ドメインの機能を解析するた
め、哺乳動物細胞、大腸菌発現ベクターを作製した。
PCR 反応により目的領域をコードする DNA を増幅し、電気泳動で確認したところ、各
目的領域の分子量相当のバンドが現れた。これらを哺乳動物発現ベクターにサブクロー
ニングした。得られたコロニーが目的領域を含んでいるかをコロニーPCR 法により確認し
た。目的領域と各ベクターを合わせた分子量に相当するバンドが得られたものについて
はクローンの配列が目的領域と一致しているか確認するため、シークエンス解析を行なっ
た。2700 塩基の付近において、データベース上の塩基配列と一塩基異なる部位が見ら
れたが、構成するアミノ酸には変化がなく、他配列は一致が確認されたため、タンパク発
現の確認に用いることができると判断した。さらに哺乳動物発現ベクターを鋳型とし、大腸
菌発現ベクターの構築、ライゲーション、シークエンスを哺乳動物発現用と同様の操作で
行ない、目的領域のプラスミドを作製した。さらに哺乳動物、大腸菌発現ベクター両者を
用いてタンパク発現を確認したところ、哺乳動物、大腸菌発現ベクターによって得られた
発現タンパク質が、各領域タンパクの予測される分子量を示すバンドとして確認されたた
め、各目的領域断片は正常にクローニングされたと考えられた。この作製プラスミドを用い、
今後続く研究に利用できるものと判断された。
キーワード
1.RLR
2.インターフェロン
3.自然免疫
4.RIG-I
5.LGP2
6.MDA5
7. RNA
8.哺乳動物細胞
発現ベクター
9.大腸菌発現ベクター
10.ライゲーション
11.コロニーPCR
12.シークエンス解析
13. SDS-PAGE
14 . Simply Blue Safe
15. Western blotting
Stain 染色
目 次
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2.実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
3.結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
4.考察
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
15
5.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
謝 辞
17
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
18
論 文
1.はじめに
自然免疫とは我々が病原体に暴露された際の一段階目の防御機構であり、その
中でも非自己(異物)の認識が最初に起きる。近年、細胞内病原体認識受容体に
関する研究が盛んとなっており、RIG-I 様受容体(RLR)ファミリーの生理的機
能、その活性化メカニズムが抗ウイルス薬、ワクチン開発、自己免疫疾患の解明
の観点からも非常に注目されている(1)。RLR ファミリータンパク質は RIG-I、
MDA5、LGP2 の 3 つの DExH box RNA ヘリカーゼが知られており、それぞれ
検知するウイルス由来の RNA の種類によってその機能の役割分担があることが
示されている。その検知により一型インターフェロンの産生につながり、ウイル
スの増殖を食い止める。RIG-I は RLR の中で最初に同定された受容体でありイ
ンフルエンザ、はしか、センダイウイルスなどの検知、MDA5 は手足口病、口
蹄疫に関連するピコナウイルス類の検知などにかかわっている(2)。第 3 の RLR
である LGP2 は最もその機能が分かっておらず、当初は RIG-I、MDA5 に対す
る負の制御因子として同定されていたものの、遺伝子欠損マウスの解析により、
負の制御因子というより RIG-I と MDA5 の機能と同様の正の制御因子であるこ
とが明らかになってきた(3,4)。
RLR はマクロファージや樹状細胞のような免疫担当細胞のみならず、その他
の種々の細胞でも発現しており局所的な免疫反応にも関連している。RIG-I の
RNA 非存在下、RNA と結合した活性化状態の構造が X 線結晶解析より明らか
となっている(5-8)。考えられるモデルの例として、C-terminal domain(CTD)にイ
ンフルエンザウイルス RNA の 5’末端トリリン酸部分が結合し、これを起点に
Helicase1(HEL1)が dsRNA の minor groove に結合しながら、RNA 両鎖のバッ
クボーンに相互作用を示す。その後 Helicase2(HEL2)が RNA 結合時に HEL1
と縦列につながるような構造変化が起き、caspase activation and recruitment
domains(CARD)が構造中から押し出され、CARD のポリユビキチン化が誘導さ
れ、MAVS などと反応することでインターフェロン産生を促すシグナルを発生
させる。Helicase2i(HEL2i)は HEL1 と HEL2 の間にあるが、ウイルス RNA が
結合していない時点では CARD 部分が活性を示してシグナルを産生しないよう
構造中に囲い込むような形で抑える役割を果たしている。また、Pincer(P)は縦
列化した HEL1 と HEL2 を挟み込むような形で固定する役割を担っている(図
1)(9)。ファミリータンパク質の MDA5、LGP2 の構造も同様な構造をとるという
ことが予想されているが、なぜ由来ウイルス依存的な RNA 認識の選択性などが
生じるか、特に LGP2 がなぜ MDA5 が認識する多くのウイルス由来 RNA によ
1
る免疫反応にかかわることが多いのかは全く分かっていない。
本卒業研究では、RLR による各種 RNA 結合ドメインの RNA 結合能、ドメイン内相
互作用をリアルタイム表面プラズモン共鳴装置で分析するため、リコンビナントタンパク
発現ベクターを構築し、シークエンスを確認、そのタンパク発現を確認した。本研究が
抗ウイルス薬やワクチン開発の基礎となることが期待される。
図 1 ウイルス RNA による RIG-I 活性化モデル
The Powerstroke and Camshaft of the RIG-I Antiviral RNA Detection Machine
Luke A. J. O’ Neill, and Andrew G. Bowie. Cell 147. 2011 259-260 より抜粋。
2
2.実験方法
FLAG full-length RIG-I(20ng/µl)プラスミド(pFLAG -RIG-I)を鋳型とし、目的
とする領域の断片(図 2)を PCR 法により増幅した。哺乳動物細胞発現ベクターは、
p3×FLAG CMV10(Sigma-Aldrich)、pcDNA Myc(Invitorogen 改変)、pcDNA
HA(Invitrogen 改変)にサブクローニングした。大腸菌発現ベクターは、pTrcHisA
(Invitrogen)にサブクローニングした。
図2
RIG-I 目的領域マップ
作製する目的領域の種類と長さを表す。これらを鋳型から各手順を経てそれぞれの断片へと分けていく。
2-1 哺乳動物細胞発現ベクターの構築
2-1-1 PCR 反応
目的とする領域(図 2)の DNA を増幅させるため、PCR を行なった。
PCR の条件は以下のように行なった。
H2O 35.6µl + 10×KOD plus neo バッファー
5µl
+ 2.5mM dNTP mix
4µl
+ 25mM MgSO4
3µl
+ 100µM フォワードプライマー(f)
100µM リバースプライマー(r) 各 0.2µl
+ 鋳型 DNA(FLAG Full length RIG-I 20ng/µl)
1µl
1µl
+ KOD plus neo
サンプル 50µl を、以下の条件で KOD PCR を行なった。
3
94℃
2min
98℃
10sec
56℃
10sec
×26 cycle
68℃
20sec
68℃
3min
用いたプライマーの組み合わせは、
・HEL1:RIG-I 239 HindⅢ-f(cataagcttagcccatttaaaccaagaaattac) ,
RIG-I 454 KpnI-r(catggtaccataaacaacttgctccagttcctc)
・HEL2i:RIG-I 468 HindⅢ-f(cataagcttagcgacaaatttaaatacatcatagc)
RIG-I 606 KpnI-r(catggtacctcaattgctgggatccctggaaac)
・HEL2:RIG-I 607 EcoRI-f(catgaattcgagaatcctaaacttgaagacctc)
RIG-I 743 NotI-r(catgcggccgctcaactagtcagaaggaagcacttg)
・P+CTD:RIG-I 743 BamHI-f(catggatccagtaatgctggtgtaattgaaaaag)
RIG-I 925 EcoRI-r(catgaattctcatttggacatttctgctgg)
・CTD:RIG-I 804 BamHI-f(catggatccgaaaataaaaaactgctctgcagaaag)
RIG-I 925 EcoRI-r(catgaattctcatttggacatttctgctgg)
・HEL:FLAG XhoI-f ,(catctcgagaatggactacaaagaccatgacgg)
RIG-I 734 KpnI-r(catggtacctcatcttgctcttcctctgcc)
で行ない、電気泳動により目的領域の増幅を確認した。
2-1-2 ライゲーション前の制限酵素処理
哺乳動物細胞発現ベクターに目的領域をライゲーションさせるため、制限酵素処
理を行なった。KOD PCR 産物を QIA quick PCR Purification Kit(50)を用いて
精製し、精製後サンプルの全量 に、10×バッファー 5µl(使用する制限酵素によっ
て異なり、全量の 1/10)、制限酵素 1.5~3µl、H2O (全量が 50µl となるよう調節)
を加え、37℃でインキュベーションした(3~4 時間又は、overnight)。 各種ベクタ
ーも、インサートと同様の制限酵素処理を行い、Alkaline phosphatase(Takara)
により脱リン酸化して、さらに QIAGEN PCR purification kit により精製し、ラ
イゲーションに用いた。
制限酵素は、HEL1 は KpnI と HindⅢ、HEL2i は KpnI と HindⅢ、HEL2 は
KpnI と XhoI、P+CTD は BamHI と EcoRI、CTD は BamHI と EcoRI、HEL は
KpnI と XhoI を使用した。
4
2-1-3 ライゲーション
哺乳動物細胞発現ベクターに目的領域の DNA を挿入するためライゲーションを
行ない、インサートが入っていないものをコントロールとして比較した。吸光度測
定結果のサンプル濃度を下表の条件に合わせてベクターインサート比がモル比で
1:3~1:5 になるように調整し、 ligation high ver.2 を 5µl 加え 16℃で 1 時間 PCR
にかけ、ライゲーションさせた。
Control
RIG-I
ベクター
0.5µl
0.5µl
サンプル
-
25ng
H2O
4.5µl
5µl に調節
PCR 産物の半量(5µl)をコンピテントセルに加え、氷上で 25min 静置後、温浴
42℃で 45sec 温め、すぐ取り出して氷上で 1min 静置、SOC 培地 250µl を各セル
に加え、37℃で 30min 振り混ぜた後、アンピシリン LB プレートにプレーティン
グした。
サブローニングした領域とベクターの組み合わせは、
HEL1、HEL2i、HEL:p3×FLAG CMV10、HEL2:pcDNA HA、
P+CTD、CTD:pcDNA Myc である。
2-1-4 コロニーPCR
プレートのコロニーが目的領域を含んでいるか確認するため、マルチプルクロー
ニングサイトをはさんだプライマーを用い、コロニーPCR を行なった。
プライマー f、r(100µM)を 100 倍希釈(各プライマー1µl ずつに、H2O 98µl
を加えた)し、Emerald Amp PCR master mix と 1:1 で混合、200µl PCR チュー
ブに 10µl ずつ入れ、プレートのコロニーを PCR チューブ内の混液とよく混ぜ、
以下の条件で PCR を行なった。
94℃
1min
94℃
56℃
72℃
72℃
10sec
20sec
1min
2min
×35 cycle
PCR 産物を電気泳動し、コロニーが目的のプラスミドを含んでいるか確認した。
コロニーPCR と同時に、コロニーを混ぜた混液をマスタープレートで一晩培養
し、電気泳動の結果から、目的領域を含んでいるコロニーをチップでつつき、ア
ンピシリン LB プレートにストリークし、37℃で一晩培養した。
5
2-1-5 完成プラスミドの精製
マスタープレートからストリークされて出来た、コロニーPCR でポジティブだ
ったシングルコロニーをチップでつつき、アンピシリン 50µg/ml を含む LB 液体培
地 1ml の入ったチューブにコロニーをつついたチップごと入れ、37℃で振とうし
ながら数時間培養し、培地が白く濁ったら、50ml の LB 液体培地の入ったフラス
コに移し、一晩培養後、JET star 2.0 Plasmid Purification MIDI Kit /50 を用いて
カラムによる精製を行い、吸光度測定により濃度を測定した。
2-1-6 DNA シークエンス
精製したプラスミドの塩基配列が目的領域と完全に一致しているか確認するた
め、シークエンスを行なった。
濃度を測定したサンプルを、0.4µg、0.6µg に調製し、H2O を加え全量を 2µl に
し、PCR で 96℃、1min 加熱し変性させ、すぐに氷浴にいれて急冷後、チューブ
が十分冷めてから、プライマー(それぞれ作る長さに対応したものを使用)をそれぞ
れ 1µl、Quick start mix を 2µl 加え、Sequence PCR を以下の条件で行なった。
94℃ 1min
96℃
55℃
60℃
20sec
20sec
4min
×30 cycle
PCR 後、エタノール沈殿で不純物を除き、沈殿を SLS に溶かし DNA Analysis
System を用いてシークエンスを行なった。
シークエンスに使用したプライマーは以下のとおりである。
・HEL1:FLAG seq-f (cgcaaatgggcggtaggcgtg)
FLAG seq-r (agaaggacacctagtcagac)
・HEL2i:FLAG seq-f (cgcaaatgggcggtaggcgtg)
・HEL2: T7-f (taatacgactcactataggg)
・P+CTD:SP6-r (atttaggtgacactatag)
・CTD:SP6-r (atttaggtgacactatag)
・HEL:RIG-I 1599-f (cagacaaagatgaagagagcagg)
RIG-I 1273-f (caaaaacacagatgaagccttgg)
FLAG seq-f (cgcaaatgggcggtaggcgtg)
FLAG seq-r (agaaggacacctagtcagac)
6
2-2 大腸菌発現ベクターの作製
2-2-1 PCR 反応
大腸菌発現ベクターに挿入する目的領域を増幅するため、また哺乳動物細胞発現
ベクターに 付随したタグをそのまま導入するため、各種タグ領域をコードするフ
ォワードプライマーと各種リバースプライマーを用いた PCR を行なった。
サンプルの調製は以下の条件で行なった。
H2O 36.6µl + 10×KOD plus neo バッファー
5µl
+ 2.5mM dNTP mix
4µl
+ 25mM MgSO4
3µl
+ プライマー フォワード(f),リバース(r) 各 0.2µl
+ 鋳型
20ng
+ KOD plus neo
1µl
サンプル 50µl を、以下の条件で KOD PCR を行なった。
94℃
2min
98℃
10sec
56℃
10sec
×35 cycle
68℃
20sec
68℃
3min
鋳型として使用したプラスミドと、用いたプライマーの組み合わせは、
・HEL1: p3×FLAG CMV10 RIG-I HEL1
FLAG XhoI-f (catctcgagaatggactacaaagaccatgacgg)
RIG-I 454 KpnI-r (catggtaccataaacaacttgctccagttcctc)
・HEL2i:p3×FLAG CMV10 RIG-I HEL2i
FLAG XhoI-f (catctcgagaatggactacaaagaccatgacgg)
RIG-I 606 KpnI-r (catggtacctcaattgctgggatccctggaaac)
・HEL2:pcDNA HA RIG-I HEL2
HA XhoI-f (catctcgagatggtgtatccttatgacgtgcc)
RIG-I 743 KpnI-r (catggtacctcaactagtcagaaggaagcacttg)
・P+CTD:pcDNA HA RIG-I P+CTD
pcDNA Myc XhoI-f (catctcgaggagcagaaactgatctctgaag)
RIG-I 925 EcoRI-r (catgaattctcatttggacatttctgctgg)
・CTD: pcDNA Myc RIG-I CTD
pcDNA Myc XhoI-f (catctcgaggagcagaaactgatctctgaag)
RIG-I 925 EcoRI-r (catgaattctcatttggacatttctgctgg)
7
・HEL: p3×FLAG CMV10 RIG-I HEL
FLAG RIG-I XhoI-f (catctcgagaatggactacaaagaccatgacgg)
RIG-I 734 KpnI-r (catggtacctcatcttgctcttcctctgcc)
・ΔCARD: FLAG full-length RIG-I
RIG-I 239 XhoI-f (catctcgagagcccatttaaaccaagaaattac)
RIG-I 925 EcoRI-r (catgaattctcatttggacatttctgctgg)
で行ない、電気泳動により目的領域の増幅を確認した。
2-2-2 ライゲーション前の制限酵素処理
大腸菌発現ベクター(pTrc HisA)に目的領域をライゲーションさせるため、制限
酵素処理を行なった。KOD PCR 産物を QIA quick PCR Purification Kit(50)を
用いて精製し、精製後サンプルの全量 に、10×バッファー 5µl(使用する制限酵素
によって異なり、全量の 1/10)、制限酵素 1.5~3µl、H2O (全量が 50µl となるよう
調節)を加え、37℃でインキュベーションした。(3~4 時間又は、overnight)
制限酵素として、HEL1 は XhoI と KpnI、HEL2i は XhoI と KpnI、HEL2 は
XhoI と KpnI、P+CTD は XhoI と EcoRI、CTD は XhoI と EcoRI、HEL は Xho-I
と Kpn-I、ΔCARD は Xho-I と EcoRI を使用した。
2-2-3 ライゲーション
哺乳動物細胞発現ベクターと同様の操作・条件で、大腸菌発現ベクターに目的領
域の DNA を挿入するためライゲーションを行なった。
2-2-4 コロニーPCR
哺乳動物細胞発現ベクターと同様の操作・条件で、プレートのコロニーが目的領
域を含んでいるか確認するため、コロニーPCR を行なった。
2-2-5 完成プラスミドの精製
哺乳動物細胞発現ベクターと同様の操作で、完成したプラスミドをカラムによっ
て精製したが、精製前の培養時、50ml ではなく 100ml の LB 液体培地を用いた。
2-2-6 シークエンス
哺乳動物細胞発現ベクターと同様の操作・方法で、精製したプラスミドの塩基配
列が目的領域と完全に一致しているか確認するため、シークエンスを行なった。
シークエンスに使用したプライマーは以下のとおりである。
・HEL1:pTrcHisA-f (gaggtatatattaatgtatcg)
pTrcHisA-r (tcaggctgaaaatcttctctc)
・HEL2i: pTrcHisA-f (gaggtatatattaatgtatcg)
8
・HEL2:pTrcHisA-r (tcaggctgaaaatcttctctc)
・P+CTD:pTrcHisA-f (gaggtatatattaatgtatcg)
pTrcHisA-r (tcaggctgaaaatcttctctc)
・CTD:pTrcHisA-r (tcaggctgaaaatcttctctc)
・HEL:pTrcHisA-f (gaggtatatattaatgtatcg)
RIG-I 454 KpnI-r (catggtaccataaacaacttgctccagttcctc)
RIG-I 1273 seq-f (caaaaacacagatgaagccttgg)
pTrcHisA-r (tcaggctgaaaatcttctctc)
・ΔCARD:pTrcHisA-f(gaggtatatattaatgtatcg)
RIG-I 239 HindⅢ-f (cataagcttagcccatttaaaccaagaaattac)
RIG-I 454 KpnI-r (catggtaccataaacaacttgctccagttcctc)
RIG-I 1273 seq-f (caaaaacacagatgaagccttgg)
RIG-I 743 NotI-r (catgcggccgctcaactagtcagaaggaagcacttg)
pTrcHisA-r (tcaggctgaaaatcttctctc)
2-3 タンパク質発現の確認
哺乳動物細胞発現ベクターに挿入したプラスミド、および大腸菌発現ベクターに
挿入したプラスミドが、目的とするタンパク質を発現できるかを確認した。
2-3-1 哺乳動物細胞によるタンパク質発現の確認
2-3-1-1 哺乳動物細胞の培養
293T 細胞は、DMEM(Sigma)により、10% 牛胎児血清(FBS)、ペニシリン/ス
トレプトマイシン存在下で 37℃、二酸化炭素 5%の条件で培養した。
2-3-1-2 293T 細胞へのプラスミドの導入
6-well プレート上で 70-80% 密度の 293T 細胞に最終濃度 0.25M の CaCl2 とプ
ラスミド 5 µg を 100 µl になるように調整したものを用いた。等量の 2 x HBS を
ボルテックスしながら混和し、すぐに一滴ずつ添加、36 時間後に、溶解バッファ
ーに溶かしウエスタンブロットを行なった。試薬として、2 x HBS は HEPES (50
mM) Na2HPO4 (1.5 mM) NaCl (280 mM) pH を NaOH で 7.05 に正確に調整し、
溶解バッファーは 50 mM Tris-HCl [pH 8.0]-280 mM NaCl-0.5% NP-40-0.2 mM
EGTA-2 mM EDTA-10% glycerol を用いた。
2-3-2 大腸菌によるタンパク質発現の確認
2-3-2-1 サンプル調製
各 pTrc-His RIG-I を ト ラ ン ス フ ォ ー メ ー シ ョ ン ( コ ン ピ テ ン ト セ ル は 、
BL21(DE3)pLysS を使用)し、30℃で一晩振り混ぜ、そのオーバーナイトカルチャ
9
ーと LB 液体培地を 1:50(サンプル 40µl、LB 培地 2ml)で混合し、37℃で 1 時間半
培養する。培養後、500µl を 1.5ml エッフェンドルフチューブに移し、氷上に置く。
15000rpm、2min 遠心を行い、上清を取り除き、1×SDS を 100µl 加えてボルテ
ックスにかけて沈殿を溶かす。このサンプルをタンパク質非誘導サンプル(-)とす
る。残りのサンプルに 1M IPTG (isoplopyl thiogalactoside)1.5µl を加え、3 時間
培養した。培養後、250µl をエッフェンドルフチューブにとり、氷上に置いて冷や
し、15000rpm、2min 遠心し、上清を取り除き、1×SDS を 100µl 加えてボルテ
ックスにかけて沈殿を溶かした。このサンプルを、IPTG が加えられているので、
タンパク質誘導サンプル(+)とした。
2-3-2-2 SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
12% アクリルアミドゲル(ゲル 10ml あたり、4.0 ml 30% acryl-bisacrylamide
mix、2.5 ml 1.5M Tris(pH 8.8)、100µl 10% SDS、100µl 10% ammonium
persulfate、4µl TEMED)を用いて SDS-PAGE 用のゲルを作成し、サンプルをゲル
に入れ Mini PROTEAN Tetra System 電気泳動槽を用いて SDS-PAGE を行なっ
た。泳動後、Simply Blue SafeStain で着色し、全タンパクのバンドを確認した。
2-3-2-3 Western blotting
サンプルを SDS-PAGE(後に使用する一次抗体の種類一つに対し 1 プレートで泳動
する)し、泳動後、ニトロセルロースメンブレンを用いてセミドライ式で Western
blotting を行った。Western blotting 後、5%スキムミルクを用いてブロッキングし、
一次抗体を 1×TBST で 1000 倍希釈した物を用い、振盪した。
1×TBST で 5min、
3 回洗い、1×TBST で 5000 倍希釈した二次抗体(anti-Mouse
IgG-HRP)を用いて、室温 45min 振盪した。
振盪後、1×TBST で 5min、4 回洗い、ECL Prime(A 液:B 液=1:1)に 5min 浸し
た後、ゲルドック ChemiDoC XRS、ソフトウェア Quantity one(Bio-Rad)で化学
発光を確認、現像した。
一次抗体は、
P+CTD, CTD : Anti c-Myc Monoclonal Antibody(Myc)
HEL1, HEL2i, HEL : Anti DYKDDDDK tag Monoclonal Antibody(FLAG)
HEL2, ΔCARD : Anti HA Monoclonal Antibody(HA)
を使用した。ΔCARD のみ、一度 HA 抗体をはがしてからもう一度 His HRP 抗体
で抗体反応を行い、ECL Prime と反応させて化学発光をゲルドック ChemiDoC
XRS、ソフトウェア Quantity one(Bio-Rad)で確認、現像した。
10
3.結果
3-1 PCR 反応
3-1-1 哺乳動物細胞発現ベクター構築のための PCR
(c)
HEL2
(d)
(e)
P+CTD
CTD
(b)
HEL2i
(a)
HEL1
HEL
各目的領域の DNA を増幅するため、PCR 反応を行ない、電気泳動で確認した。
HEL1(645bp)、HEL2i(414bp)、HEL2(408bp)、P+CTD(546bp)、CTD(363bp)、
HEL(1548bp)全てにおいて目的領域の分子量に相当する位置にバンドが現れた
(図 3a~e)。これらを哺乳動物細胞発現ベクターに挿入するため制限酵素処理し、
ライゲーションを行なった。
図 3 哺乳動物細胞ベクター挿入前各領域 DNA 増幅の確認
ベクター挿入前に各領域の DNA を増幅するため、PCR 反応を行ない、
電気泳動でその増幅を確認した。
赤枠、青枠のバンドは各領域の分子量相当の位置に存在している。
(a)RIG-I HEL(b)RIG-I HEL1(c)
RIG-I HEL2i(d)RIG-I HEL2(e)RIG-I P+CTD(赤枠) RIG-I CTD(青枠)
3-1-2 大腸菌発現ベクター構築のための PCR
哺乳動物細胞発現ベクターに付随したタグを大腸菌発現ベクターに挿入するた
め、完成した哺乳動物発現を鋳型として目的領域を PCR 反応で増幅し、電気泳動
で確認した。HEL1(645bp)、HEL2i(414bp)、HEL2(408bp)、P+CTD(546bp)、
CTD(363bp)、HEL(1548bp)全てにおいて目的領域の分子量に相当する位置にバン
ドが現れた(図 4a~d)。また、ΔCARD のみ電気泳動は行わず、吸光度のみで確
認した結果、130ng/µl であり、増幅が確認できたためこれらを大腸菌発現ベクタ
ーに挿入するため制限酵素処理し、ライゲーションを行なった。
11
(b)
(c)
CTD
P+CTD
HEL2
HEL1
HEL2i
HEL
(a)
(d)
図 4 大腸菌発現ベクター挿入前各領域の増幅の確認
ベクター挿入前に各領域を増幅するため、PCR 反応を行ない、電気泳動でその増幅を確認した。赤枠、
青枠、緑枠のバンドは各領域の分子量相当の位置に存在している。(a)RIG-I HEL1(赤枠)RIG-I HEL2i(青
枠)RIG-I HEL(緑枠)(b)RIG-I HEL2(c) RIG-I P+CTD(d)RIG-I CTD
3-2 ポジティブクローンのスクリーニングのためのコロニーPCR
3-2-1 哺乳動物細胞発現ベクター
目的領域の DNA が各ベクターに挿入されているか確認するため、コロニーPCR
を行い、電気泳動した。HEL1、HEL2i、HEL2、P+CTD、 HEL では確認したク
ローン 5 つすべてが目的領域とベクターを合わせた分子量相当の位置にバンドが
現れたが(図 5a~d)、CTD では 5 つのうち 2 つのみ(クローン 4、5)が正常な位置に
現れた(図 5e 右)。結果、HEL、HEL1、HEL2i、HEL2、P+CTD はいずれも予
想されるサイズを示していたのでクローン 1 を使用し、CTD はクローン 4、5 で予
想されるサイズを示していたのでクローン 4 を使用してプラスミドを精製し、シー
クエンスを行なった。
(a)
(b)
(d)
(c)
(e)
図 5 哺乳動物細胞ベクターへのライゲーションの確認
ベクターに各領域が挿入されているか確認するため、コロニーPCR 後に電気泳動を行なった。赤枠、
青枠のバンドは目的領域とベクターの分子量を合わせた値を示す。
(a)RIG-I HEL(b)RIG-I HEL1(c)
RIG-I HEL2i(d)RIG-I HEL2(e)RIG-I P+CTD(赤枠) RIG-I CTD(青枠)
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3-2-2 大腸菌発現ベクター
タグ付き PCR 産物が大腸菌発現ベクターに挿入されているか確認するため、ラ
イゲーション後に得られたコロニーを用い HEL1、HEL2i、HEL2、HEL、ΔCARD、
CTD、P+CTD のコロニーPCR を行い電気泳動した。HEL1 はサンプル 3 以外が
(図 6a 左)、HEL2i はサンプル全てが(図 6a 右)、HEL2 はサンプル 2 以外が(図
6b)、HEL はサンプル 2、3 が(図 6c 左)、ΔCARD はサンプル 5 が(図 6c 右)、
CTD はサンプル全てが(図 6d)、P+CTD はサンプル全てが(図 6e)目的領域とベク
ターを合わせた分子量相当の位置にバンドが現れた。正常にライゲーションが行
われていたと予想されるサンプルで実験を進めるため、HEL1、HEL2i、HEL2、
CTD、P+CTD ではサンプル 1 を、HEL ではサンプル 2 を、ΔCARD ではサン
プル 5 を使用してプラスミドを精製し、シークエンスを行なった。
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
図 6 大腸菌発現ベクターへのライゲーションの確認
ベクターに各領域が挿入されているか確認するため、コロニーPCR 後に電気泳動を行なった。赤枠、青
枠のバンドは目的領域とベクターの分子量を合わせた値を示す。(a)RIG-I HEL1(赤枠)RIG-I HEL2i(青枠)
(b)RIG-I HEL2 (c)RIG-I HEL(赤枠)RIG-I ΔCARD(青枠) (d)RIG-I CTD (e) RIG-I P+CTD
3-3 シークエンス
ソフトウェア Ape を用いてシークエンスデータをデータベース上の RIG-I の配
列と比較し、作製した目的領域の範囲と一致しているか確認したが、P+CTD、CTD、
HEL、ΔCARD において、2709 番目の塩基が A ではなく G に変異していた(図 7)。
しかし、構成するアミノ酸に変化がなく、その他の領域では、用いたプライマーで
問題なく読み取ることができ、データベース上の RIG-I の配列とすべて一致して
いた。
図 7 塩基配列の不一致箇所
変異箇所を含む 2701 から 2778 塩基の範囲を抜き出した。上が作製したプラスミドの配列、下が RIG-I
の配列であり、円で囲んだ部分が一致しない箇所である。
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3-4SDS-PAGE
3-4-1 哺乳動物細胞によるタンパク質発現の確認
293T 細胞にプラスミドをトランスフェクションし、SDS-PAGE を行なった後、
FLAG 抗体、Myc 抗体を用いて ECL 法によって検出した。結果、FLAG 抗体を用
いた HEL1、HEL2i、HEL(図 8a)と、Myc 抗体を用いた P+CTD、CTD(図 8b)全
てにおいて、発現タンパク質の予想される分子量の位置にバンドが現れた。*は発
現タンパク質の予想される分子量を示す。
(a)
図8
(b)
RIG-I 各種ドメインの 293T 細胞での強制発現
293T 細胞にプラスミドをリン酸カルシウム法によりトランスフェクションし、36 時間後に細胞溶解液を
調整し Western blotting により FLAG 抗体、Myc 抗体を用いて ECL 法で検出した。
(a) p3xFLAG-RIG-I(HEL1)、p3xFLAG-RIG-I(HEL2i)、 p3xFLAG-RIG-I(∆CTD)
(b) pcDNA3Myc-RIG-I(P + CTD)、 pcDNA3Myc-RIG-I(CTD)、 pcDNA3Myc-RIG-I(735-925)
3-4-2 大腸菌によるタンパク質発現の確認
3-4-2-1 Simply Blue Safe Stain 染色
各クローンの対数増殖期(OD600=0.4~0.5)に IPTG を 1mM 添加し、2 時間培養
したもの(+)と、IPTG 添加前(-)を SDS-PAGE で分離し、Simply Blue Safe Stain
を用いてゲルを染色した。結果、ウェスタンサイズを比較しその位置にバンドが出
ているか確認した。Western blotting の結果により予測される分子量を赤枠で示し
たが、HEL1、HEL2i、HEL2、CTD においては染色による差が見られず比較しづ
らいため、Simply Blue Safe Stain では確認できなかった。(図 9A)。
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3-4-2-2 Western blotting
(3-4-2-1)と同サンプルを用いて一次抗体の種類別に SDS-PAGE を行ない、各一
次抗体と反応後、二次抗体 α Mouse IgG-HRP と反応させ、ECL Prime を用いて
化学発光させた。結果、Simply Blue Safe Stain 染色では確認不可能であった
HEL1、HEL2i、HEL2、
CTD においてもタンパク発現のバンドが現れた(図 9B~D)。
他にも HEL(図 9B)、P+CTD(図 9D)、ΔCARD(図 9E)のタンパク発現を示すバン
ドがすべて確認された。バンドの位置は各領域の予測される分子量を示した。
図 9 大腸菌発現タンパク質の Simply Blue SafeStain 染色、Western blotting による確認
各クローンの対数増殖期(OD600=0.4~0.5)に IPTG を 1mM 添加し、2 時間培養したもの(+)、IPTG 添
加前(-)を SDS-PAGE で分離した。A:Simply Blue SafeStain で染色を行なった。赤枠は、各領域の予
測される分子量を表す。B:Western blotting を行い、一次抗体として FLAG 抗体を反応させ、二次抗体
として、anti- mouse Ig-G HRP を用いた後 ECL Prime と反応させ、化学発光した各領域タンパク質のバ
ンド。C:一次抗体は HA 抗体を使用し、B と同様の手順で反応させたバンド。D:一次抗体は Myc 抗体
を使用し、B と同様の手順で反応させたバンド。E:His HRP 抗体を反応させ、ECL Prime と反応後、
化学発光した各領域タンパク質のバンド。
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4.考察
4-1 PCR 反応
哺乳動物細胞用、大腸菌用共に各領域の分子量に相当する位置にバンドが確認さ
れたことから、各サンプルにおいて鋳型として使用したプラスミドに特に大きな問題もな
く、PCR による増幅が成功し、次の実験手順に使用できたと考えられる。
4-2 コロニーPCR
いくつか分子量に相当しないバンドが現れたが、ライゲーション時目的領域の DNA
が各ベクターに挿入されずベクターのみのコロニーが発生し、そのコロニーをピックア
ップしてしまったためと考える。ライゲーションが正常に行なわれていると思われたコロ
ニーは、その後の精製等の際に沈殿の析出や、吸光度測定によって十分な濃度を呈
していたことから、シークエンスによって配列の確認が行えるものと判断した。
4-3 シークエンス
結果でも述べたように、P+CTD、CTD、HEL、ΔCARD において、データベース上
の配列と比較したところ 2709 番目の塩基が A ではなく G となっていたが(図 6)、構成
するアミノ酸に変化はなくその他の領域では問題なく一致が確認されたため、多型と考
えられ、この配列を含む各領域で起こっているため、これは大元の鋳型として使用して
いる FLAG full-length RIG-I(20ng/µl)プラスミド(pFLAG –RIG-I)の配列自体この
配列を持っていたと考えられる。
4-4 SDS-PAGE
哺乳動物細胞発現ベクターに挿入した各領域は、Western blotting によって全て
バンドを確認する事が出来た。
大腸菌発現ベクターに挿入した各領域では、Simply Blue Safe Stain 染色で
HEL1、HEL2i、HEL2、CTD においてバンドの比較ができなかったのは、これらの
コロニーが古かったか、タンパク発現時に大腸菌に対して毒性を呈したためと考えら
れる。また、確認できなかった断片のタンパク発現も確認するため、より感度の高い
Western blotting を行なったところ、結果全目的領域の(+)サンプルでバンドが確
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認された。よって、作成した各領域のプラスミドは全てタンパク発現が可能であり、今
後続行される実験の材料として問題なく使用できると判断する事ができた。
5.おわりに
今回の実験において、各作製プラスミドでタンパク発現が確認されたことから、ベクター
と結合した各目的領域プラスミドを得る事ができ、後に続く実験の材料として使用できると
判断された。
RLR ファミリーの生理機能やその活性化メカニズムは、抗ウイルス薬、ワクチン開発、
自己免疫疾患の解明などに利用されているが、由来ウイルス依存的な RNA 認識の選択
性がなぜ生じるか、LGP2 がなぜ MDA5 の認識する多くのウイルス由来 RNA による免
疫反応にかかわっているのかなど、いまだに解明できていない点が多くみられる。
このプラスミドを用いて今後研究が進み、現在特に明らかとなっていない LGP2 の由来
ウイルス依存的な RNA 認識の選択性などの解明や、RLR に関する研究だけでなくそれ
を基盤とした抗ウイルス薬やワクチンの開発など、医療発展につながれば幸いである。
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謝 辞
本研究を遂行するにあたり、指導教員として終始ご指導戴くとともに本論文作成に当た
り多くのご助言を賜りました、新潟薬科大学 薬学部 生化学研究室 小室晃彦 准教授
に深く感謝いたします。
副査としてご助言を戴くとともに本論文の細部にわたりご指導賜りました、衛生化学研
究室 酒井聡 助教に深く感謝いたします。
本研究を行うに当たり、有益なご助言とご助力を賜りました、生化学研究室 宮本昌彦
助教に深く感謝いたします。
共同研究者として本研究の議論、検討を通じ多くの知識や示唆を戴きました、当研究
室 星野舞 氏、長洲裕久 氏に深く感謝いたします。
本研究において、共同研究者と同様に議論、検討を通じ多くの知識や示唆を戴き、実
験手順においても有益なご助力を賜りました、当研究室 5 年 中山克紀 氏に深く感謝
いたします。
研究室での生活においてお世話になるとともに激励、ご助力を賜りました、当研究室の
皆様に深く感謝いたします。
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引 用 文 献
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3. LGP2 is a positive regulator of RIG-I- and MDA5-mediated antiviral
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