がんとお金の真実

サバイバー
サバイバ
サバイ
バ バー
がん患者が教えてくれた本当のところ
リア ル
がんとお金の真実
著 者 黒田 尚子[ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ)]
監 修 牧野 安博[査定医 MD&MBA]・ 池田 多鶴子[社会保険労務士]
知っておくべき
「がんとお金」の知識を1冊に凝縮!
がんに罹患すると、身体的、精神的、そして経済的にも生活が一変すると
いわれます。
お客さまご自身あるいはご家族ががんに罹患し、治療法はもち
ろん、
お金のことについての情報を求めている方も多くいらっしゃいます。
本書は2部構成。
第1部では、がんにかかる医療費と、医療費以外に必要なお金、経済的な
リスクに備えるにあたって知っておくべき公的制度やがん保険などの自助
努力等を、見開き単位のQ&A形式で紹介しています。
また、第2部では、代表的な6つのがんに罹患した場合について、働き盛り
の30歳代から50歳代までの実際の「がん患者(サバイバー)」にどんなタイ
ミングでどれだけのお金がかかったかを、
「がん患者(サバイバー)」
である
著者が取材してまとめています。
がんに罹患している方、
そしてがんに備えてがん保険・医療保険などの加入
を考えている方にとって、大変役に立つ一冊となっています。
第
1部
1
第 章
がんにかかるお金と経済的リスクへの備え Q&A
がんとお金 支出編
CONTENTS
治癒したとみなされるためです。ただし、乳がんや肺がんなど経過観察期間を10年とするが
んもあります。
がんになったら
どのくらいお金がかかるの?
このように医療の進歩によって、効果的な治療方法が開発され、生存率が向上するのは
●B5判 ●88ページ ●本文2色刷り
定価 本体1,200円+税
私たちにとって喜ばしいことです。その一方で、がんにかかる治療費が高額化・長期化する
傾向にあること。そのために、中長期(5∼10年)の
‘がん’
マネープランが必要だということを
母(70代)が大腸がんの疑いがあり、来週には精密検査を受け
る予定です。がんが確定したら、どのくらいお金がかかるので
しょうか?
(40代男性)
十分理解しておきましょう。
◆がんの部位別・自己負担額と償還・給付額
実質的な負担額は部位によって20∼50万円程度と差がでます。
一般的に、がんにかかる医療費は100∼200万円といわれてい
ます。ただし前項で述べた通り、がんの医療費は、がんの種類
自己負担額(年間) 償還・給付額(年間)
全体の
平均
や進行度、治療法などで異なるもの。これらの金額は目安と考
92万円
28万円
108
(約46%)
102
75
60
(約59%)
22万円
(約33%)
66
65
30
0
付額を差し引いた、患者の実質的な経済的負担は平均21万円となっています。
患者の実質的な経済的負
大腸がん
肺がん
胃がん
40
44
前立腺がん
乳がん
肺がんの事例
※出所:第3次対がん総合戦略研究事業「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究」
2013年度報告書
自助努力といえる民間保険の給付を受けたうえで平均21万円ですので、民間保険に加
がんにかかるお金と経済的リスクへの備え Q&A
57万円
97
険料36万円(同62%)などです。
一方、償還・給付額は平均61万円で、
内訳は民間保険給付金105万円(該当者49%)、
給付額は平均61万円
高額療養費29万円(同25%)、医療費還付9万円(同33%)です。自己負担額から償還・給
1部
47万円
98
90
入院28万円(該当者76%)、外来24万円(同98%)、健康食品等20万円(同36%)、民間保
33万円
(約31%)
126
がん患者に対する調査 ※では、がんにかかる自己負担額(年間)は平均92万円で、
は平均92万円
内訳は
第
*民間保険給付金、高額療養費、医療費還付など
(約22%)
120
がんの医療費の自己負担額は平均92万円
21万円
■自己負担額 ■償還・給付額*
単位:万円
150
実質的な負担額
61万円
えておきましょう。
1
第 章
がんとお金 支出編
2
第 章
がんとお金 収入編
3
第 章
がんによる経済的リスクへの備え方
入していない場合の実質的な負担額は、
もっと大きくなる計算です。
※出所:第3次対がん総合戦略研究事業「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究」2013年度報告書
患者申出療養(仮称)の実施について
がんの医療費は高額化・長期化の傾向にある
公的医療保険適用外の治療(未承認の新薬や医療機器等)であっても、
医師の説明を
骨への転移が広がり、
薬物療法(分子標的薬)
的薬
的
薬)
を提案される。
を提
治療法を検討するた
受け
め、別のB病院のセカンドオピニオンを受けるが、
けるが、提示された治療法はA大学病院と
提
近年、医療の進歩に合わせて、がん医療費が高額化・長期化する傾向にあることが問題
長期化
視されています。
家族構成
ひとり暮らし
この制度が実施された場合、治療費高騰の問題は、さらに深刻化する可能性があります。
国立がん研究センターでは、この制度の対象になると予想される抗がん剤(欧米先進国で承認され日
たとえば、先進医療(第1部第3章(P●)参照)や分子標的薬*1 、免疫療法*2など新しい治
約3年前に肺がん告知を受ける。病期はⅢB期。
手術ができない状態
本では未承認または適応外)
のほとんどは、
1ヵ月あたり100万円を超える薬剤費が必要であると発表
罹患の経緯と
療法はいずれも費用が高額です。
しました。
と診断され、薬物療法を継続して行っていた。
1年前から治験に切り
現在の治療状況等
また、生存率*3の向上やそれにともなう治療の長期化、再発・転移の問題もあります。
替えている。
全額自己負担〉
全額
全
額自
額
月額100万円かかるとすると年間1,200万円。もちろん全額自己負担です。この負担に耐えられる患
者がどれくらいいるのでしょうか? 海外で標準的に使用されている医薬品が国内では使用できない未
2,000円 〉
2
一般的に、術後の定期検査は、多くのがんの場合、目安は5年間です。
がんが再発する時
目安は5年間
民間保険の加入状況 民間保険にはまったく加入していない。 承認の状態である「ドラッグラグ」が解消される以上の問題が生じるかもしれません。
を緩
を
緩和
緩
和す
和
す
入院費用(10日間)
(分子標的薬の副作用を緩和するため入院して治療)
期として多いのが治療から2年以内といわれており、治療から5年経過後も異常がなければ
負担
担3
3割
3
割:約28万7,000円〉
自己負担3割
正社員で働いていたが、罹患後しばらくして退職。現在は以前勤務して
罹患後の
6
生活・就業の変化
印の用語はP12の「用語解説」をご覧ください。
いた企業で契約社員として勤務。治療によってめまいやむくみなどの副
7
円
7,000
7,
7
,
※
作用はあるものの、
日常生活やデスクワークはある程度普通に行える。
◉薬物療法(1ヵ月に1回)
(22ヵ月間)
● 医療費総額・・・・・約20万円×22回=約440万円
1年目
1
〈自己負担3割:約6万円×22回= 約132 万円 〉
勤務先の人間ドックで異常が見つかり、紹介されたA大学病院を受診して精密検査
を受ける。非小細胞がん
(腺がん)
ⅢB期と診断を受ける。
◉精密検査(喀痰細胞診、気管支鏡検査、胸部CT検査、胸部MRI検査など)
● 医療費総額・・・・・約34万3,000円〈自己負担3割: 約10 万3,000 円 〉
※2ヵ月に渡ったため高額療養費の適用なし
5
薬物療法の耐性ができ、効果があまり得られなくなってきたため、主治医の勧めで
治験(P69参照)
に参加する
(現在も継続中)。あわせて毎月、定期検査も行う。
第
◉入院および治療・・・・・治験のため入院費および薬剤費は無料
◉定期検査(血液検査、胸部X線検査、CT検査など)
● 医療費総額・・・・・約40万4,000円〈自己負担3割: 約12 万1,000 円 〉
◉通院のための交通費・・・・・ 約11 万円 〈実費負担〉
2
入院して放射線治療と薬物療法を行い、その後、
さらに薬物療法を1週間程度入院
しながら繰り返し行う。
◉入院費用(放射線療法+薬物療法)
(20日間)
● 医療費総額・・・・・約92万円〈自己負担3割:約27万6,000円〉
● 高額療養費適用後の自己負担・・・・・ 約8 万7,000 円※
◉薬物療法(抗がん剤治療)(3ヵ月間)
罹患後約3年間の自己負担額合計 約
リアル
実例 がんにかかったお金の 真実
206万9,000円
※高額療養費適用後の自己負担額(年収約370万∼約770万円の場合)P25参照
胃がん・大腸がん・肺がん・前立腺がん・乳がん・肝臓がんの事例
赤囲み・赤文字の部分の合計
● 医療費総額・・・・・約68万円〈自己負担3割: 約20 万4,000 円 〉
66
2部
67
http://www.fps-net.com