派遣労働者は、正規雇用労働者に比べ、職業能力形成の機会が乏しい

派遣労働者は、正規雇用労働者に比べ、職業能力形成の機会が乏しいという現状を踏まえ、今回の改正法では、派遣労働者
のキャリアアップ支援が初めて義務付けられました。
段階的・体系的な
教育研修の実施
雇用する派遣労働者に対して、派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるような教育研修
の段階的・体系的実施が義務付けられました。特にその派遣労働者が無期雇用派遣労働者場合はその
職業生活の全期間を通じて能力発揮できるように配慮して実施することが求められます。
キャリアカウンセリ
ングの実施
雇用する派遣労働者のうち、希望する者に対して、職業生活の設計に関する相談の機会の確保(=キャ
リアコンサルティング)その他の援助を行わなければなりません。
派遣元責任者の
職務追加
派遣元責任者の職務に、「派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活の設計に関する相談の
機会の確保に関すること」が追加されます。
教育訓練等の実施状況については、事業報告が求められ、行政のチェックが行われるようになります。また、これらは「派遣労
働者に係る雇用管理を適切に行うに足りる能力を有するかどうかの判断基準」つまり事業許可の要件となります。
キャリアに関する
情報提供
派遣元の求めに応じ、派遣労働者の職務遂行状況や遂行能力の向上度合いなど、派遣元のキャリアアッ
プ支援に必要な情報を派遣元に提供する努力義務が定められました。
法改正により、派遣元事業主には派遣先の紹介と雇用管理に止まらず、派遣労働者の「育成」という役割が求められていることが明確
になりました。教育研修等にかかるコストは派遣元にとっては従来と比べると大きなコストアップになることは避けられません。いかに
その投資をいかに回収するかは、キャリア支援制度を自社の強みとして優秀な派遣労働者に選んでもらえる派遣会社になれるかどう
かにかかってきそうです。
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現行制度では、一般労働者派遣事業(許可制)と特定労働者派遣事業(届出制)の2制度が運用されていましたが、特定労働
者派遣事業を担う事業者が適正な運営を行っていないケースがみられるなどの背景があり、業界全体の健全化を目指すため、
すべての労働者派遣事業が許可制となりました。
法改正後
旧制度
許可制
許可制
一般労働者派遣事業
(登録型の派遣労働者を1人でも扱う事業)
届出制
特定労働者派遣事業
(常時雇用される派遣労働者のみを扱う事業)
労働者派遣事業
すべての事業所が許可制になることで、
許可取り消しを含めた厳格な指導が行われる。
旧法上の特定労働者派遣事業者は、経過措置である施行日から3年の間に新しい許可基準で許可を取得することが必要とな
ります。特定労働者派遣事業の事業者は小規模事業者が多いことから、資産要件についても暫定的な経過措置が定められて
います。
すべて事業書が許可制になることにより、行政による許可取り消しを含めた厳格な指導が可能になります。それにより業界全体が健
全化し、労働者が保護されることが期待されます。この許可制への移行もそうですが、今回の派遣法改正は既存の法律の微修正で
はなく、根本的な内容が大幅に見直されるものとなりました。「派遣を活用する」「派遣で働く」ということについて、派遣業界に関連する
人たちが、この制度をいかに良い方向に活用していけるか、今後の業界の動きに注目していきたいと思います。
さて、今回が最終回ですが、改正派遣法について概要をお分かりいただけましたでしょうか?皆様のお仕事の一助となりましたら幸い
です。
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