生物 1

光の色と藻の色の関係
茨城県立日立第一高等学校
臺
拓海(2年)
安齋
正人
【はじめに】
水槽に当てる光の色を変えてメダカを育てたときに,当てた光と同じ色の藻類が生えたという
話を聞き,興味をひかれた。そこで,水槽に生える藻類は当てる光によってどのような影響を受
けるのかを調べるため,平面クロマトグラフィーによって光合成色素を分析することにした。
【仮説】
光合成色素とは,光合成に関与する光エネルギーを受容する色素の総称なので,当てる光によ
って生える藻類の光合成色素にも違いが出るのではないかと考えた。
【実験とまとめ】
<実験1>当てる光の色を変えて,生える藻類の違いを観察する。
①水槽を3つ用意し,それぞれに金魚を1匹ずつ入れ,暗所に置く。
②3つの水槽に上から赤,青,緑の LED ライトをそれぞれ照射し,金魚を飼育しながら藻類が
生えるのを待つ。
③それぞれの水槽に生えた藻類の様子を観察する。
約半年後,水槽は以下の写真のような状態になった。当てる光の色によって生える藻類の色に
大きな違いはなかったが,生え方に若干の違いがあった。
▲赤い光を照射した水槽
▲青い光を照射した水槽
▲緑の光を照射した水槽
<実験2>平面クロマトグラフィーを用いて,光合成色素の分析をする。
①平面クロマトグラフィーにおいて,溶媒で試料を展開する。
②溶媒の進んだ距離に対する目的とする試料の移動した距離の割合である Rf 値を計算し,分析
をする。
各水槽ごとに生えた藻類について平面クロマトグラフィーを行ったが,水を除去しないままに
実験してしまい,藻類の色素が取り出せなかった。現在,藻類における光合成色素の分離方法に
ついて模索中である。
【今後の展望】
当てた光の色によって藻類の色に大きな違いがでなかった原因を調べるとともに,藻類の平面
クロマトグラフィーによる光合成色素の分離方法を確立させていきたい。
生物1-①
ヒカリモの黄金色の膜と光の関係を調べる研究
茨城県立日立第一高等学校
発表者 山﨑 朝子(2年)
担当教員 照沼 芳彦
【はじめに】ヒカリモは水面に立ち上がり,光を反射して黄金色の膜のようなものを形成するが,
それはヒカリモが光合成を行うための黄色い葉緑体をもち,水面に立ち上がるからである。これ
までの本校の研究でヒカリモに適した水温,pHについて明らかにされている。しかし,光の強
さについての研究は進んでいない。そこでヒカリモに適した光の条件(強さ・色)について調べる
ことにした。また,生物資料室に 2 年前に採取したヒカリモがプラスチック容器に保管されてお
り,ヒカリモの浮遊相が観察された。このことからヒカリモは保管する容器にも影響されるので
はないかと考え,保管する容器から光の当たり方との関係も調べることにした。
【目 的】 ヒカリモの黄金色の膜と光(強さ・色・光の当たり方)との関係を調べる。
【実験方法】 光(強さ・色)との関係を調べるため,透明なプラスチック容器にヒカリモを水
ごと採取し,そのままにしたもの,新聞紙,アルミホイルで包んだもの,赤,青,黄の色つきセ
ロハンで包んだものを人工気象器(温度 18℃,明暗周期 12 時間)に静置し,ヒカリモの膜および
浮遊相の有無を調べる。また,光の当たり方による影響を考え,ヒカリモを水ごとビーカー,紙
コップ,お椀,白塗りおよび黒塗りの茶碗,プラスチック容器,缶の 7 つの容器に入れ,生物資
料室(照度 0~約 1500 lx)に静置し,膜の有無を観察する。
【結果と考察】 光の強さの実験では,実験開始 1 週間では変化がないが,1 ヶ月後にはヒカリ
モは観察できなくなった。また透明な容器にいれたままのものは 2 週間後にヒカリモではない他
の生物が繁茂していた。光の色のついては,青のセロハンでヒカリモの膜が長い期間観察された
が,やはり 1 カ月後にはヒカリモが観察されなくなり,また黄緑体が通常よりも小さくなってい
るヒカリモの浮遊相が観察された。しかし,生物資料室の直射日光が当たらない場所で行った7
つの容器の実験では,全ての容器で 1 ヶ月後もヒカリモの膜が観察され,特にお椀や黒塗りの茶
碗で黄金色の膜が観察された。このことからヒカリモを保管する容器は側面から光が入りにくく,
上方からのみ光が入る容器が適していると考えられる。
【まとめ】 人工気象器内で行った光の強さと色の実験では実験開始から 1 ヶ月経つとヒカリモ
は観察されなくなる。生物資料室にお椀や黒塗りの茶碗で保管するとヒカリモの黄金色の膜が 1
ヶ月以上観察された。
【今後の課題】 今後も継続的に観察し,ヒカリモの黄金色の膜と光の関係について調べていき,
それらの結果を生かして学校でヒカリモの黄金色の膜を観察できるようにしたい。
図1.東滑川海浜緑地の洞穴内
ヒカリモの黄金色の膜がない(左)。ある(右)。
生物1-②
図2.お椀で観察された
ヒカリモの黄金色の膜
光による切り花の伸長促進
青森県立名久井農業高等学校
小向美沙紀(2年)嶋守雄大(2年)
担当教員 木村 亨
背景と目的:
同じ草花でも切り花用では花瓶に生けるため、茎が長い方が高品質として高値で取引さ
れる。しかし生長調整剤の多くは徒長を防ぐ伸長抑制作用のものばかりで茎を伸ばす薬剤
はない。ガーベラは、遮光すると茎が伸びるという特徴があり、農家は遮光して茎を伸ば
すが、それでは日陰のため葉色が薄く品質に問題ある。そこで遮光以外の方法で生育環境
の光を制御することで、伸長促進できないか研究してみた。
材料:
草花名:ガーベラ、ジニア
試験区
Control (太陽光)
赤色光区 (波長 660nmLED+太陽光)
遠赤色光区(波長 740nmLED+太陽光)
太陽光に加えて赤色光を 20μmol/m-2/s で 24 時間照射した。遠赤色光も同様に照射
したが光量子計の測定範囲外の波長のため光量子量は測定できなかった。
結果:
花茎は赤色光を照射した区が太陽光だけで栽培した Control より伸びなかった。しかし
遠赤色光では約 20%も伸長した。品質を左右する葉の色を葉緑素計で測定すると赤色光、
遠赤色光とも Control より増えていた。蕾は遠赤色光を照射した区で増え、結果、2ケ月
間の1株当たりの切り花収穫量は、Control3本、赤色光4本に対して、遠赤色光では7
本と約2倍となった。
考察:
研究の結果、遠赤色光では花茎がよく伸びることがわかった。園芸ではガーベラを遮光
すると茎がよく伸びると経験からいわれている。木陰は赤色光より遠赤色光が多くなる。
今回、遠赤色光を照射したことで木陰環境と同じ光環境となり、そのため花茎が伸長した
と思われる。さらに太陽光を十分に当てた人工的な木陰環境のため、葉緑素量は確保でき
健全に生長したと思われる。また今回の結果からガーベラでは遠赤色光付近で花芽分化が
促進される可能性が高まった。今後の園芸業界に役立つ技術になると思われる。
生物1-③
光による無臭セロリの研究
青森県立名久井農業高等学校
中山恭輔(2年)佐々木敦也(2年)
担当教員
木村
亨
背景と目的:
セロリはポリフェノールを含む健康野菜だが、独特の香りのため嫌いな野菜の代表でも
ある。光、特に紫外線は消臭効果があるといわれている。しかし紫外線は植物の成長に悪
影響を与えることもわかっている。そこで紫外線よりエネルギーの小さい赤色光、青色光
を照射し、機能性成分はそのままで無臭セロリができないか探ってみた。
材料:
セロリ(品種:コーネル)
試験区
Control (太陽光)
赤色光区(波長 660nmLED+太陽光)
青色光区(波長 450nmLED+太陽光)
光量子量は太陽光に加えて赤色光、青色光とも 20μmol/m-2/s で 24 時間照射した。
そして収穫後、官能試験(試食)及びポリフェノール総量を測定した。
結果:
生育調査では赤色光を照射した区が太陽光だけで栽培した Control より大きくなった。
収穫した際の重量では、Control より赤色光、青色光の方が重かった。また食味試験では
赤色光の香りがほとんど無臭となり、逆に青色光では強まった。ポリフェノール総量では
Control、赤色光とも 6.3mg/100g と変化なかったが、青色光では 9.3mg/100g と増えてい
た。
考察:
セロリの香り成分は複数あるが、その中のアピインはポリフェノールである。青色光を
照射するとおそらくアピイン以外の成分は消臭されたと思われるが、ポリフェノールであ
るアピインが逆に増え、その結果香りが強まったと思われる。しかし青色光よりエネルギ
ーの小さい赤色光では、ポリフェノールであるアピインを増やすことなく、他の成分を消
臭したと考えることができる。本県には香り成分を分析してくれるところがなく立証でき
なかったが、官能試験とポリフェノール総量から考えてこのような仮説を考えた。香りの
少ないセロリはポリフェノールも十分確保されており今後の農業に役立つ可能性がある。
生物1-④
ダイコンとカブの光に対する反応
青森県立名久井農業高等学校
川村健勝(2年)
担当教員 木村亨
背景と目的:
近年、太陽光の代わりに人工光を照射する植物工場が普及しつつある。しかし栽培され
る作物の多くは生長の早いレタスなどの葉菜がほとんどである。そこでハツカダイコンと
コカブに人工光を照射してその変化を調査するとともに、植物工場における根菜類の可能
性を探ることにした。
材料:
ハツカダイコン(品種名:キスミー)
コカブ(品種名:金町こかぶ)
試験区
Control (太陽光)
赤色光区(波長 660nmLED+太陽光)
青色光区(波長 450nmLED+太陽光)
方法
ガラス温室で栽培。光量子量は太陽光に加えて赤色、青色光とも 20μmol/m-2/s を
24 時間照射とした。4 月 16 日に一斉播種し、どれかひとつでも収穫できるサイズに
なったらすべて収穫して比較調査することとした。
結果:
ハツカダイコン及びカブともに Control よりも赤色光で小型化し、青色光でやや伸長し
た。生長はハツカダイコンでは Control が、カブでは青色光が約 3 週間早かった。また可
食部の重量は、ハツカダイコンでは Control、青色光、赤色光の順に重く、カブでは青色
光で Control の3倍も増え、赤色光は Control と大差なかった。
考察:
葉菜では草丈の伸長効果のある赤色光を照射するのが一般的である。しかしハツカダイ
コンでは赤色、青色光とも顕著な差はなかった。ところがカブでは青色光を照射した可食
部重量が 3 倍に増えた。青色光は茎を太くする効果があるといわれている。同じ根菜でも
ダイコンは根、カブは胚軸である。青色光は茎だけでなく胚軸も肥大させる効果があると
思われる。今後はさらに調査を進め、カブ類の植物工場実現を目指したい。
生物1-⑤
様々な花による花粉管の伸び方
茨城県日立第一高等学校
小針
玲美(2 年)
安齋
正人
【はじめに】
あちらこちらに咲き誇る花々はとても美しく個性的な姿をしている。彼らは,生物としても個
性的で,それぞれの子孫の残し方に特徴がある。そのなかでも私は,花粉管の伸び方に注目した。
ここでは,培地のスクロース液の濃度と時間あたりの花粉管の伸長速度を観察し,双子葉類と単
子葉類の差を見る。
【方法】
予備実験として,スクロースを 10%含んだ寒天培地を作る。固まった寒天培地の上に花粉を落
とす。これを 30 分間5分おき程度に検鏡し,花粉管の伸長を観察する。実験にはニューギニアイ
ンパチュアンス(Impatiens hawkerii) とアサガオ(Ipomoea nil)を用いた。
本実験では予備実験同様に,スクロースを 10%含んだ寒天培地の上に,アサガオの花粉を落と
す。午後 11 時から翌日の午後 11 時まで3時間おきに観察する。実験にはアサガオを用いた。
【結果と考察】
〈予備実験〉ニューギニアインパチュアンスは3時間経過後も出芽しなかったため,水をたらし
たところ出芽した。この事から,水分不足による培地の乾燥が,出芽を妨げていたと考えられる。
これを踏まえてアサガオでは水分量を多くして観察したところ,出芽が見られた。
〈実験〉予備実験を踏まえて,観察したが出芽は見られなかった。スクロースの濃度を 15%,20%,
25%にそれぞれ変え,柱頭を近くに置くなどして再度実験を行なったが,結果は変わらなかった。
このことから,出芽しない理由には水分不足以外にもあるのではないかと思われる。理由につい
ては文献を用いるなどして考察している。
ニューギニアインパチュアンスの種子の出芽
アサガオの種子の出芽
アサガオの種子
【今後の課題】
第一に,花粉管が出芽しない原因を解明しなければならない。時期的にアサガオを用いること
は出来ないので,他の植物を用いて寒天培地のスクロースの濃度と花粉管の伸長速度の関係につ
いて調べる。現在はヒマワリ(Helianthus annuus)とビオラ(Viola wittrockiana)を実験材料とし
て育てている。ビオラについては花粉管の出芽を確認しているので,今後詳しく観察する。また,
時間経過と花粉管の出芽能力の変化を観察し、双子葉類と単子葉類の差についても調べていく。
生物1-⑥
スイカ果実は三段階成長をする
茨城県立水戸第一高等学校
目時珠穂(高等学校2年),國府田宏輔
1. はじめに
スイカの果実はビー玉ほどの大きさの子房からドッチボールほどの大きさに成長する。その成
長の仕組みに興味を持ち,スイカの果実を観察することにした。
2. 実験結果
スイカ果実がどのような成長をするのかを調べるために,まず,雌花についた子房のころから
成熟した果実になるまで,果実の周囲の長さを毎日測定した。推定受粉*1 後0~平均8日では,
周囲の長さは,日数に比例して増加した。受粉後10~収穫日(平均22日間)では,周囲の長
さが一定であった。このことから,スイカは,果実の大きさが成長する時期,大きさが一定であ
る時期があることが分かった。
次に私は,果実がどのように成長しているのかを詳細に調べるため,果実内部の細胞数と大き
さに着目した。そこで,細胞がどのように変化していくか光学顕微鏡を用いて調べた。
推定受粉日後0日から収穫日までの小玉スイカを用いてスイカの果実内部の様子を観察した。
受粉後0~3日の果実では,うずまき(維管束)の周りに他の部分に比べて細胞の大きさがはる
かに小さく,細胞分裂が活発に行われる層(以下,成長層と呼ぶ)が存在した。一方,果実中心
部では細胞分裂は行われていなかった。3~8日の果実では細胞数はほぼ一定のまま,細胞が肥
大した。その中には10倍以上肥大した細胞も見られた。9日~収穫日までの果実では細胞の数,
大きさがともに一定で細胞内に赤色の物質をおび,甘くなっていった(図1,2)
図1細胞の大きさの変化
図2細胞数の変化
以上よりスイカの果実は,成長層での細胞分裂により成長する時期(細胞分裂期),細胞が肥大す
る時期(細胞肥大期),果実が熟する時期(成熟期)の三段階成長をすることが明らかとなった。
3. 考察と今後の課題
今回明らかにしたスイカの成長段階を制御する仕組みを考えるために植物ホルモンに着目した。
植物ホルモンとは植物内のさまざまな生理的機能を調節する物質である。新潟大学園芸学研究室
の児島教授の研究によれば,スイカ果実の周囲長が増加する時期と成熟期で各種植物ホルモンの
濃度が異なることが発見された(児島 清秀・佐藤 翔一・江 雪飛「スイカ果実における部位別の
内生植物ホルモン」 平成 26 年度 園芸学会秋季大会,佐賀,2014 年 9 月)。このことから,成長
段階の変化を引き起こしている機構は,植物ホルモンの濃度変化であると考えられる。
*1 自家受粉の実験系ではないため,成長曲線から受粉日を推定した。
生物1-⑦
リンゴによるエチレン生成の研究
茨城県立並木中等教育学校
小竹
1.
善宣(4年),粉川
雄一郎
研究の動機
農業の面において,青果の鮮度を保つ上で生体内でのエチレンの生成を抑制すること,また生
理作用を阻害することがひとつの鍵になっていることがわかった。そこで,簡単にかつ安全に,
また安価にエチレンを抑制する方法を探り,家庭や農業で生かすことが出来るのではないかと思
いこの研究をしようと思った。
2.
研究方法・計画
先行研究により,アリルイソチオシアネートがエチレンの生成を抑制することが分かっている。
アリルイソチオシアネートは主にアブラナ科に含まれる辛み成分であるため,安価に入手するこ
とができる。そこで,以下の実験を行うこととした。
【実験1】リンゴが生成するエチレンの濃度測定
(方法)プラスチック製の密閉容器に気体採取用の小さい穴を開け,パラフィルムで風をした
ものを2個用意し,それぞれの容器にリンゴを一つずつ入れ,4~6℃の暗室に置く。3
日間同じ時刻に気体検知管で気体を採取しエチレンが実際に計測できるかを調べた。
【実験2】アリルイソチオシアネートによるエチレン生成の抑制効果の検証
(方法)実験1と同様の装置の一方だけに,アリルイソチオシアネートを多く含むわさびを加
え,リンゴのエチレン生成が抑制されるかを調べる。
なお,エチレンの濃度の検知には気体採取器(GASTEC 気体採取器セット
体検知管(GASTEC
GV-100S)と気
No.172L (0.2~100ppm))を用いた。気体の採取方法は付属の説明書に則
って行った。
3.
実験結果
【実験1】
これまでに3回行った。その結果が以下のとおりである。
(1 回目)それぞれの密閉容器で毎日エチレン約 50ppm を計測することができた。
(2 回目)どちらの密閉容器でも,エチレンを計測することができなかった。
(3 回目)どちらの密閉容器でも,エチレンを計測することができなかった。
3 回実験を行ったが計測できる時とできない時があった。そこで,実験1において計測できな
かった理由を考察した。また,新たな実験計画を立て実験を行うことにした。
4.
参考文献

佐藤茂,「高等植物におけるエチレン生成の生化学」,化学と生物,31(7),431-438,1993

永田雅靖・矢野昌充,
「西條了康
アリルイソチオシアネートによるカットキャベツの変抑制
機構」,日本食品工業学会誌,vol39 No.4,322-326,1992

茶珍和雄,
「青果物の低温貯蔵に伴う生理的問題」,凍結及び乾燥研究会会誌
1991
生物1-⑧
Vol37,86-93,
ヒメコウホネの異形葉の分化に及ぼす水温の影響
茨城県立下館第一高等学校
生物部
大塚知征(2 年),金田吉来(2 年),砂岡裕基(2 年),高橋優人(2 年)
藤澤祐汰(2 年),永盛健汰(2 年),小川知輝(2 年),田中佑樹(2 年)
間々田勝洋(2 年),常峰閣(2 年),担当教員;的場浩子
ヒメコウホネは絶滅危惧Ⅱ種の水生植物で,湖沼や小川の減少にともない自生のものが
減少している。また,この仲間は 3 種類の異形葉を持つことでも知られている。水中葉は,
丸みを帯びた三角形で透けるほど薄く柔らかでワカメのように波打つ縁をもち,初生葉や
流れが速いところの個体に発達するとされている。一方、気中葉と浮葉は,切れ込みのあ
る楕円形で厚みがありスイレンの葉と似ている。浮葉は水深が深いところ,気中葉は水深
が浅いところの個体に発達するとされている。しかし,これら異形葉の分化について,水
深や流れの速さ以外の環境要因との関わりはあまり知られていない。
校内の池に生育するヒメコウホネ(西日本型)を 8 月から観察したところ,8 月~10 月
には 3 種類すべての異形葉が繁茂すること,11 月以降には浮葉や気中葉は徐々に枯れ,12
月以降には水中葉のみで過ごすことがわかってきた。この変化により,浮葉や気中葉の分
化や生育には水温や気温が影響している可能性があることが示唆された。
本研究では,ヒメコウホネの異形葉の分化に及ぼす水温の影響に着目して実験をおこな
った。材料には水中葉だけがついた 12 月の根茎(長さは約 10 ㎝)を用い,次の 3 か所に
置いて生じる葉の種類などを観察した〔①水温 25℃の水槽,②暖房なしの室温においた水
槽(~12℃)
,③構内の池〕。その結果,約 3 ヶ月間のうちに①からは浮葉や気中葉が平均 9
枚展開し,花径を伸ばして花をつけるものもあった。②からは水中葉が平均 2 枚展開した
が浮葉や気中葉は出現しなかった。③からは新たな葉の出現はなかった。
水温 25 度は真夏の水温を想定したものであるが,浮葉や気中葉への分化に関して,12℃
~25℃の範囲に閾値が存在するのか,あるいは積算温度が関係しているのか等についてさ
らに研究を深めていきたい。
③構内の池・水中葉
0
③構内の池・気中葉と浮葉
0
葉の枚数
②水温12℃・水中葉
2
②水温12℃・気中葉と浮葉
0
①水温25℃・水中葉
0
②水温 12℃の水槽
①水温25℃・気中葉と浮葉
9
0
2
4
6
8
10
参考文献
〔
1
〕
「
ヒ
メ
コ
ウ
ホ
ネ
」
http://minamiharima-shizen.com/sub4-365.html( 2014/9/2
①水温 25℃の水槽
撮影日
アクセス)
〔
2
〕
「
コ
ウ
ホ
ネ
北
海
道
2015 2.13
大
学
http://www.hokudai.ac.jp/fsc/bg/newsletter/2008/2008-2.pdfml(2014/9/2 アクセス)
生物1-⑨
①水温 25℃
」