シリ コン/ガリウムヒツ光集積回路素子に関する研究

シ リ コ ン / ガ リ ウ ム ヒ ソ 光 集 積 回 路 素 子 に 関 す るT r y 究
ー
格子不整合 ヘ テ ロエ ピ タキ シ とマ テリアルインタ コネクシ ョン
酒井 士 郎
徳 島大学
工 学 部 電気 電子 工 学科 教 授
1 は
じめ に
シ リ コ ンは 、 「半導体」 とい う言葉 と、 ほ とん ど同意語 となる程度 にまで 開発 が
一 つ は、
進 んで い るが 、 そ の 限界 を指摘 す る人 は以然 と して 少 な くない 。 そ の 弱 点 の
族 半導 体 を組 み合 わせ 、
発光 の 機 能 が無 い 点 で あ る。 そ こで最近 、 シ リ コ ンとI I IV‐
ー
この 弱 点 をカバ ー しよ う とす る研 究 が進 んで い る。 この技術 は 、光 イ ン タ コ ネク
シ ョン、光 機 能素子 な ど、多 くの 新 しい デバ イ ス を可能 にす る もので あ る。 それ ら
が可 能 にす るで あ ろ うす ば ら しい 未 来技術 を実現 す る上 で 、 S i 上に作 製 され た発光
一
素子 はキ ー デ バ イ スの つ で あ る。
′
族半導体 を形成 す る こ と
発光 とい う点 以外 に も、 シ リコ ンの上 にG a A s な どのI I I ヽ
は、 シ リ コ ンの 大面積 、低 熱抵抗 の 有効利用 とい う観 点 か らも興 味深 い 。高 集積 度
ー
ー
ー
G a A s t t I C 、高 出カ レーザ 、 パ ワ F E T や シ ヨツ トキ ダイオ ドな どで は 、 バ ル ク
G a A s 基 板 上 に作 製 され た素子 の性 能 を上 回 る特性 がS i 上で期待 で きる。
半導 体 を融合 させ るた
この よ う な素子作 製 の基礎 となるのが 、 シ リ コ ンとI I I , v 族
ー
の
め の マ テ リアル イ ン タ コ ネク シ ョン技術 であ る。 この 実現 ため には、全 く性 質
の異 な る半導体結 晶 を組 み合 わせ る とい う特殊 な技術 が必要 で あ る。 しか し、 この
技術 は 、単 にシ リ コ ン上G a A s に とどま らず最近話題 にな つて い る窒 化物青 色 発光素
子 の 実現 に も大 き く貢献 して い る。 この論 文 で は、本研 究者 が これ まで に進 めて き
ー
た格子 不 整合 ヘ テ ロエ ピ タキ シ につい て述 べ 、 「シ リコ ン上G a A s 」 と 「窒化物青
色 発光 素子 」 との類似 性 につい て 言 及 した い 。
2 マ
テ リ ア ル イ ン タ ー コ ネ ク シ ョン技 術
ー
図 1 は 、 これ まで に提 案 され た マ テ リア ルイ ン タ コ ネク シ ョン技術 の 、 手法 、
可 能 な応用 範 囲、特長 、欠点 をま とめた もので あ る。
ELⅥ C
EL0
WAFER BONDING
率
欝
C C
I
E D
O 3
応 用れ
一
ゴ 欠 点
阜一一
よ一 一
作成 簡単
現実的
量産不 可
基 板 選 択 エ ッチ ング 層
出
甲
│
/ 1 \
│ぺ
Si基板
OEIC
3D IC
POWER DEVICES
SOLAR CELLS
CaAs IC's
POWER DEVICES
OEIC
SOLAR CELLS
CaAs IC's
POWER
DEVICES
集積化 容易
デ バ イス最適化可
基板 は何 で も良 い
3 層 以上 の積 層 も可
転 位 ,欠 陥 密 度 小
量産性
大面積
集積イ
し容 易
ブレー ナ化可 能
アライ メ ン ト?
■産 性 ?
S i との集積化 困難
ア ライメ ン ト?
1 1 - V / S i 界面抵抗 大
大面 積化 ?
オ リジナル基 板 の
コス ト?
熱 ひずみ ?
高転位密度
熱ひずみ
文献
(7)∼ (10)
図 1 各 種 田―V o n s i の
比較 ( E L V I C = E l e m e n t L e v e l V e r t i c a l l y l n t e g r a t c d C i r c u i t
E し0 = E p i t a x t a l L i F t O r r )
- 2 0 -
2.l ELVIC(Element Lcvel Vertically lntegrated Circuit) は
、本 来 2つ の
集積 回路 を張 り合 わせ 集積 度 を上 げ るため に考案 された もので あ るが 、張 り合 わせ
る一 方 に発 光 素子 を用 い れ ば 、I I I , v と s i の 結合 が可 能 で ある。 ( 4 ) C M O S イ ンバ ー
タ とL E D を 組 み合 わせ た ものが 報告 されてお り、そ の動作 も確 認 されて い る。 この
方法 は 、簡 単 で は あ るが プ レナ ー配線 が 困難 で 、極 めて特殊 な方 法 を用 い ない か ぎ
り量 産性 に問題 が あ る。
2.2 ELO(Epitaxial Lift Off)
い わゆ るE L O と してG a A s を 別 の基板上 に形成 す る技術 は 、高価 なG a A s 基 板 を再
利 用 す る とい う発想 で 最初 に考柔 され 、太 陽電池 に適用 され た( 5 ) ◇そ の 後 、 エ ピ層
を機 械 的 に剥 離 す る c L E F T ( C l e a V a g e
of
Lateral
Epitaxial
Films
fOr
T r術
a nや
sfer)技
( 6 ) 、材 料 複合 化 を意図 したE L O が 発表 された( 7 ) 。
G a A s 基 板 上 にA l x G a l x A s ( x 〉
0 . 6 ) 及びデバ イ ス 活性層 を成 長 し、A l x G a l x A s をH F
エ
で選 択 ッチ ン グす れ ば基板 とエ ピ層 を分離 で きる。新 た な基板 に、接 着材 あ る い
は フ ァ ンデ ア ヮ ー ルス カ で マ ウ ン トす れ ば 、 どの よ うな基板 上 にで もG a A s を 形成 で
きる。 この 方法 に よ り、高反射 率基板上 にL E D を マ ウ ン トし、発光効 率 を大 き く改
善 した報告 や ( 8 ) 、S i 上金属 配線 の上 にG a A s 膜 をマ ウ ン トし、 M s M ( M e t a l ―
Semiconductor‐
Metal)光
検 出器が作 製 された例 が ある( 9 ) 。この 方法 は 、 シ リ コ ンプ
ロセス 終 了後 にG a A s 系 素子 との 集積 を行 な うので それぞれ の 素子 の 最 適化 が可 能 で 、
集積 化 も比 較 的容易 で あ る。 どの よ うな基板 上 にで もマ ウ ン トで きるが 、集積 化 を
行 な う場合 の ア ライ メ ン トお よび 、量 産性 に疑 問が残 る。
2 . 3 ウ エ ハ ポ ンデ イ ン グ
この 方法 は シ リ コ ン基板 ど う しを接着 し、 3 次 元 I C や特殊 な シ リ コ ン素子 を作 製
す るため に提 案 され た もので あ る。最 近 シ リコ ン とI I Iv‐
族 半導体 の接続 に同様 の技
い
る
を用
る
I
n
P
エピ
術
動 きが あ 。
層 をs i 基板 上 にH F を 挟 んで 密着 し、乾燥 後 6 0 0
℃で 熱 処 理す れ ば 原子 レベ ルで ボ ン ドが形成 され る。 この 場合 、I n P 表面原子 が再 配
列 を起 こ し、 シ リ コ ン原子 とボ ン ドを形成す る。 その後 、選択 エ ッチ ングに よ りI I I ‐
V 基 板 を除去 す ればI I I v O n s i 構 造が形成 され る( l o ) 。大面積 基板 ど う しを振 り合
わせ 、基 板 を除去 す れ ばI c 用 と して も使用 で きる。
G a A s 基 板 上 に 、A l G a A s / 1 n G a A s 系半導体 レー ザ構 造 と接 着用 I n P を成長 し、 シ リ
コ ン上 にマ ウ ン トした構 造 で レーザ動作 が確 認 されて い る( l o ) 。ホモ エ ピ層 を活性
層 に使 用 す るの で 、転 位密度 が少 な くデバ イ ス 特性 の劣 化 が少 な い 。
一 方、問題 点 と して は
、S i l c との集積 化が 困難 、 エ ピ層 と基板 との 電気 的接 触 が
不 十分 、接 着層 の 原子 配列 が 同一 で な けれ ば な らな い ので ア ライ メ ン トが きび しい 、
面積 が 4 イ ンチ以上 になる とI I Iv‐
基 板 が無 い 、除去 して しま う基板 の コス ト、 な ど
が あ る。 さ らに、融 着 の段 階 で 熱処理 を行 な うので 、後述 の 熱歪 みが 発生す る。
3 111-V On Siの
エ ピ タキ シ ー ( 1 3 )
以上 の技術 は 、既存 の デ バ イス を既 存 の技術 で結合す る もので あ るので現 実 的 な
方法 で あ るが 、それ ぞれ個別 の 問題が あ る。 I I IV‐O n S i を 達成す る最 も素直 で 汎用
性 の 大 きい ア プ ロー チ は 、 ヘ テ ロエ ピ タキシ ャル成長 の よ うに思 える
全 く性 質 の 異 な る物 質 ど う しの この エ ピ タキ シ ー にお い て は 、当初 か ら格 子不整
合 、結 晶形 の 不整合 、及 び熱膨 張係 数差 に よる歪 みの 発生 、が懸念 され た 。 これ ら
の うち、 2 番 目の問題 だ け は界 面近傍 を除 い て ほぼ解 決 され たが 、格子 不整合 と熱
膨 張差 に も とず く転位 の 発生 は未 だ解 決 されて い ない 。
G a A s をs i 上に成 長 す る研 究 は 1 9 8 0 年
台 当初 か らあ っ たが ( 1 1 ) 、研 究 が広 が っ
たの は い わゆ る 2 段 階成 長法 が提 案 され、再 現性 良 く鏡 面 の 層 が 得 られ る よ う になっ
てか らで あ る( 1 2 ) 。この 方法 は、最初 4 0 0 - 4 5 0 ℃
程度 の 低温 で 薄 い ( 約3 0 0 A )
非 晶質 あ る い は多結 晶 G a A s を成 長 し、続 い て 6 0 0 ℃ 以上 の 温度 で 成長 を行 な う
もので あ る。成長前 の基板 処理 と、基板表 面 の 活性化 を適 切 に行 なえば 、再現 性 良
く鏡 面 が得 られ る。 肉眼 には鏡 面 に見 えて も、 この 方法 で 得 られ る転位 密度 は
- 2 1 -
段 と して 、 M E E ( M i g r a t i O n
Enhanced
︱︱ャ
位 ︱︱ ︱
■ヽ、ヽ ﹁ も 代 卜 わ 求
2 以上 で
1 08cm‐
あ り、 デバ イ ス に使用 す るには極 めて不十分 で あ る。 そ こで 、歪超
格 子 や 熱 サ イ ク ル ア ニ ー ル な どが 導 入 され、 1 0 6 c m 2 台にまで低 減化 が進 んだが 、
成長 後 の 降温 過程 で 熱膨 張係 数差 に基 ず く歪 が発生 し、それが新 た な転位 を生成 す
るので 、 これ以上 の低 減 は 困難 で あ った。す なわち 、転位密度 の低 減 の ため には熱
歪 の 低 減 が必 要 で あ る。熱歪 み は転移 を増加 させ るだ け で な く、発光素子 の寿 命 を
著 し く短 くした り、 ウエハ の 反 りを大 き くしマス クアライ ン メ ン トを困難 に した り
す る。
転 位 速 度 ∝ σ・c x p ( c Q / 末7 )
3.1 歪 の緩 和 法
エ ピ タキ シ ャル層 中 の歪 みの発生
源 は 、格 子不 整合 と熱膨 張係 数差 で
あ る。G a A s な どのI I I V 族
半導体 の格
子 危 数 はS i のそれ よ り大 きい ので 、
格 子不 整合 に よ リエ ピ層 中 に圧 縮応
力 が 印加 され る。 しか し、層厚 が臨
成 長温度
忌
i纂
よ
と
る
が導入
さ
転位
界厚 さ り厚 くな
図 2 成 長後、エビ層に印加 されるひずみの観略図
高 i獄
れ歪 み は緩和 され る。 臨界厚 さを越
G は 少しのひすムでは1 ちコl t が
大きくな り。ば│た
がい人され
、
る
えて も歪 み は急 激 には緩 和 されず 、
エ ピ層 の
厚 さ に よって は 、格子不 整合 に よる歪 みが残 留 して い る。t t μ m 以 上 の厚 さにな る
と後者 が前者 よ り十分大 き くな る。 一 方 、熱膨 張係 数差 に よる歪 み は 、引 っ張 り応
力 で あ り、厚 さに依存 せ ず 一 定 で あ る。 この 熱 歪 みが転移 の 動 きを活性化 し、新 た
な転移 が 導 入 され る。転位増殖 の 割合 は、転位速度 ( = v O s m e x p ( e Q / k T ) , s i 応
力 ) に比
例 す るの で 、高温 ほ ど大 きい 。 この 過程 を図 2 に 模式 的 に示 す。 この過程 は 、転移
の運 動 が凍結 され る温度 、 T f 、 まで続 き、室温 で はT F と室温 の 差 に相 当す る歪 みが
印加 され る。 T f はG a A s で は 4 0 0 ℃ 程度 で あ る と言 われて い る。
熱歪 みの緩 和 法 には大 別す る と次 の 3 種 類 が あ る。
A.低 温 成 長
成長 温 度 をT f 以下 に下 げ れば、当然 の事 なが ら歪 み は小 さ くな る。低 温成長 の手
E p i t a、x 水
y )素
と添 加 M B E ( M o l e c u l a r
Beam
Epitaxy)が
試 み られて い る。 どち らの方法 にお い て も、歪 みの減少 に伴 う転移密 度
の低 下 が 見 られ て い るが 、成長後 にT r 以 上 で 熱処理 を行 な う と転移 が発生す る。
低 温 成 長膜 の 膜 質 に も未 だ疑 間 が あ り、デバ イス には応用 されて い ない 。 また 、
M E E に お い て は成長速度 が極 めて遅 い 点 も問題 となる。
B.2層
基 板 の使 用
G a A s を 成長 す る基板 をs i に 代 えて、例 えばs O I ( s i l i c O n O n S a p h i 使用
re)を
すれば
こ
の上
は
る応
は
る
2
層
に
に成
基板 中 存 在す
力が 、 そ
原 理 的 に歪 み 緩和 す 。 れ 、
長す
る膜 中 の応 力 を打 ち消 す ためで あ る。応 力 を打 ち消す ため には、 2 層 基板 中 の い ず
れか の 層 の 熱膨 張係 数 が、 エ ピ層 の それ よ り大 きい こ とが必要 で あ る。例 と して 、
G a A s o n S O I の外 、 I n P o n G a A s o n S i がある。 この方法 の 問題 点 は、 2 層 基板 の
結 晶性 が十 分 で ない 点 で あ る。
C.形 状 効 果
転 移密度 と応 力 を低 減 させ る領域 は、 デバ イス と して使用 す る限 られた部分 で の
みで よい 。c a A s の 成長後 に、図 3 に 示 す様 な加工 をす れ ば 、歪 みが緩 和 す る。
ホ トレジス ト
ゎ
彎ノ
( c )
図 3 形 状効果 を用 い たひずみの緩和
( a ) メ サ , ( b ) ヽ l R l ) ( M e s a R e l c a s e a npdo sDiで
( i A S ( ( I n d c r c u t (ヽ,、ao ′
n Si)
t i O n ) . ( c )cじ
- 2 2 -
C a A s を s i 上に選択成 長 す るか 、成長後 に島状 にメサ エ ッチ ン グす る と、歪 みが緩
和 され る。 これ は メサ 側 面が 自由端 で あ る こ とに よってい る。歪緩和 が 及 ぶ 範 囲 は 、
お お よそ メサ の 高 さ、す なわちエ ピ層 の厚 さの 数倍程度 で あ る。実 際、 この よ うな
方法 に よ り応 力 が 低 減 し、 それ に伴 う転移密度 の低 減 とP L 発 光 強度 の 増大 が 観測
されて い る。 しか しなが ら、改 善が な され る領域 が あ ま りに小 さい ので デバ イス に
は応 用 され て い な い 。
そ こで エ ピ層 を基板 か ら完全 に分離す る図 3 ( B ) ( C ) に
示 す よ う な方 法 が 考
M R D ( M e s a R e l e a s e a n d D e p o s i t i呼
o nば
)と
案 されて い る。 図 3 ( B ) は
れて お り、 フ ォ
トレジス トで支持 した分離 部 を基板 上 に再 付 着 させ る もので あ る。 この 方法 は 、 オ
リジ ナ ル基 板 が シ リ コ ンで あ る と言 う こ と以外 はE L O に 近 い が 、成長 した 同 じ部分
にマ ウ ン トす るので ア ライ メ ン トが 容易 で ある。 しか し、確 実 に 固定す る にはプ ロ
セス 上 か な り注 意 が必要 で 、基板 とエ ピ層 との 電気 的接続 が 完全 で な い 。
図 3(C)は
、本研 究者 が研 究 して きた構 造 で あ り、そ の まま片側 に支持 部 を残
してお り、U C G A S ( U n d e r c u t G a A s o n S i )呼
とんで い る。 エ ピ層厚 が、 3 μ m 以 上 で
あれ ば機械 的強度 に問題 は無 い 。図 4 に 転位密度 をフオ トル ミネ ッセ ンス像 で 評価
した結 果示 す 。 U C G A S 中 で著 しい 転位密度 の低下 が 見 られ、 5 x 1 0 5 c m 2 以
下ま
で低 減 して い る。 この値 は 、発光 素子 が作 製 で きる程 度 に高 温 で成 長 した層 の 中で
は、最 も低 い もの の 一 つ で あ る。
3.2 デ バ イ ス 応 用
エ ピ タ キ シ ャル G a A s o n S i の 問 題
は依 然 多 い 。 GaAs ICあ るい はFET
へ の応 用 に 関 して は 、表面 の 荒 れが
F E T の しきい 値 電圧 を変動 させ る こ
とが示 され い る。 また歪 み に基 ず く
ク ラ ッ ク の 発生 や 反 りはプ ロセス に
制 限 を与 える。 しか しなが ら、高 密
度 の 転 位 はデバ イ ス 特性 に あ ま り影
響 しな い 。 また 、s i の抵抗 率 が 半絶
縁′
性G a A s の それ よ りも低 い こ とか ら
懸念 され たサ イ ドゲ ー ト効果 や 、周
波 数特性 の劣 化 もそれ ほ ど悪 くな い
年1 ) 1 5 ″
)
m l
い
事 が 示 され て い る。富士 通 の グ ル ー
プは 、 4 段 階成長 と呼 ばれ る成長方
図 4 本 トル ミネセ ン ス像 l _ ょ
る転 位 の 評価 r a )メレ
‐ ーⅢ
( 1 1 、(ヽⅢ
l 、i ! D i t ( !、( i 、
法 や 、 エ ピ表 面 の研 磨 に よ り表面荒
れ を抑 え、G a A s 基 板 上 の 素子 と同程
度 の 特性 を得 て い る。
一方
、発 光素子 は電子 素子 ほ ど う ま くい ってい ない 。 これ は、転 位 が 非発光 中心
となって 発光 効 率 を低下 させ るため と、強 い残 留歪 み に よ り寿命 が著 しく短 か い た
めで あ る。 しか し、歪 み を低 下 させ た構 造 で 長寿命 素子 が報告 され て い る。 一 つ は 、
I n P o n G a A s o n S i 上に作 製 した波長 1 . 5 μ m t t l n G a A s P 系レーザ で あ り、す で に 8
千 時 間 を こ える寿 命 が 実証 されて い る◇ この構 造 は、前述 の効 果 に よ り歪 みが 緩和
されて い る。 またI n P では転移 の 増殖 が起 こ りに くく、 またバ ン ドギ ャップが 狭 い の
で 非発光過 程 で格 子 に移 るエ ネ ル ギ ーが小 さい 。 これ らの 要 因 に よ り、寿 命 が 延 び
た と されて い る。
U C G A S 構 造 を用 い たG a A s t t L E D で は 、歪 み と転位密度 が低 減 した こ とか ら、 3
千 時 間 を越 える寿 命 と、G a A s 基 板上 の もの と遜色 の な い発 光効 率値 が 得 られて い る。
【
n G a A s / G a A s / A l G a A s 系 レーザ で は 、活性 層 中 の格子 不整合 に基 ず く歪 みが 熱歪
み を打 ち消 す ため 、寿命 が 改 善 されて い る。 い ず れ に して も、発光 素子 へ の応用 に
関 して は 、転移 密度 と歪 みの緩 和 が 、効 率改 善 と長寿命 化 の カギで あ る。
S i I C と の集積化 に当た って は 、 まだ 問題 が ある。上述 のI n G a A s P / 1 n P / G a A s / S i
-23-
レーザ は 、1 0 μ m 以 上 のバ ッフ ァー層 をs i 上に成 長 して い るので プ レー ナ化 が 困
難 で あ る し、U C G A S は 特殊 な加工 を必要 とす る。集積 化 に当た って は 面発 光型 の
方 が好 ま しい が 、発 表 され て い るシ リ コ ン上面発光 レーザ は、未 だ しきい 値 が高 い 。
集積 用 素子 は数 μm 角 程度以下 の小 型 で 、 しか も消費電力が小 さい事 が求 め られて
い るが 、 これ らの 要求 はホモ エ ピ結 晶 を用 い た素子 で も困難 で あ る。
素子 を小 型化 、小 電力化す る とい う方 向 は 、 シ リ コ ン上発光 素子 とい う観 点 か ら
は好 ま しい 方 向 で あ る。 1 0 6 c m 2 の転位密度 は 1 0 μ m に 一 個 の 転位 に相 当す る。
よって 、転 位 密度 の 絶対値 を減少 させ な くて も、そ の 位 置 を制御 で きれ ば
10x10 μ
m 2 以 下 の 素子 を無 転位 部 に作成 で きる。 この 意味 で も、形状効 果 を用
い た 部分 的歪 み緩和 は有効 で あ る。
窒 化 物 系 青 色 発 光 素 子 の 格 子 不 整 合 ヘ テ ロエ ピ タキ シ
I I IV‐
化 合物 半導体 にお け る最近 の大 きな トピ ックス は、G a N を ベ ー ス と した青色
発光 素子 の 実現 で あ る。 この 素子 の 実現 には 、実 は本研 究 で 開発 して きた格子 不整
合 ヘ テ ロエ ピ タキ シ技術 が 大 きな役 割 を呆 た して い る。 この デバ イ ス は 、 サ フ ァイ
ア基 板 の上 に成 長 した高 品質G a N が 使 われて い る。G a N は 格子整合す る基板 が存 在
しない た め エ ピ タキ シは格子不整合系 にな らざる を得 ない 。 そ こで 、 G a A s o n S i で
使 われ た 2 段 階成長法 が適用 され た 。 2 段 階成長法 の低 温成長 バ ッフ ァー層 の役 割
もほぼ 同様 で あ るが 、異 なる点 はG a N の 成長温度 がその 分解温度 よ り高 い ため 、高
温 で 成長 を開始 す る前 に低 温 成長 バ ッフ ァー層が蒸発 して しま う可 能性 が あ る点 で
あ る。転 位 の 影響 につい て もG a A s o n S i と全 く同 じで あ るが 、G a N 中 で はキ ャリア
の 拡散 長 が 非常 に短 い ので 転位 の 影響 は受 け に くく、従 って 転位密度 が高 くて も発
光効 率 は劣 化 しない 。 また 、結 晶構 造 が ウル ツアイ ト型 で あ るので 、c 面上 に成 長す
る と転位 は基板 に垂 直 に伝 搬す るので 、歪 超格子 や熱 サ イクル ア ニ ー ル とい った 手
法 で 転位 を低 減す る こ とはで きな い 。転位 が劣 化 に与 える影響 は今 の ところ不 明 で
は あ るが 、 G a A s o n S i と同様非常 に大 きな影響 を与 えそ うで あ る。G a A s o n S i と
G a N は 一 見 異 なる こ とが 多 い よ う に見受 け られ るが 、基礎 に立 ち返 る とそ の類似 性
は非常 に多 い 。G a A s o n S i で培 われた技術 が役 に立 つ こ とが期待 され るゆ えんで あ
る。
ま とめ
シ リ コ ン基 板上 に形成 した発光 素子作 成技術 の現状 と、窒化物系青色 発光素子 の
格子 不整合 ヘ テ ロエ ピ タキ シ に付 い て述 べ 、両者 の類似 性 につい て 議論 した。過去
1 5 年 の 間 に格子 不整合 ヘ テ ロエ ピ タキシの重要 な進 歩 が な され た 。転位密度 は依
然 と して高 い が 、 そ の生 成 メカ ニズ ムが理解 され、それ を低 減 あ る い は 回避す るた
めの手 段 が提 案 されて い る。
I I IV―o n S i 技 術 が もた ら した重要 な点 は、L P E 時 代 には常識 で あ つた格 子整合 条
件 が緩 和 され た 点 で あ る。窒化物系青色 発光 素子 の格子不整合 ヘ テ ロエ ピ タキ シは
そ の好 例 で あ る。今 後 も多 くの格 子不整合系 の エ ピ タキ シ ー が行 なわれ 、材 料 選択
の 幅 を広 げ る こ とが 予想 され る。 この発展 の基礎 となったの は 、G a A s o n S i の ヘ テ
ロエ ピ タキ シ ー で あ る。
最 後 に本研 究 を支援 して い ただ い た高柳 記念 電子科 学技術 振興財 団 は じめ 関係 各
位 に深 く感謝 い た します。
- 2 4 -
引用 文献
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信 学誌 、 7 5 、 9 、
p p . 9 5 1 - - 9 6 1 ( 1 9 9 2 0‐9 ) .
"、
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信学論 ( c I ) , J 7 5 , CI ‐
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(7)Yablonovitch Eli.,Gttitter T,,Harbison J.P.and Bhat R.:"Extreine selectiv
lift‐
off of epitaxial GaAs films",Appl,Phys.Lett.,51, 26,pp 2222‐
2224(Dec.
1987).
( 8 ) S c h n i t Z e r I . , Y a b l o n o b i t c h E . , C a n e a u C . a n d G m i t :t "e Ur i tT r」a h i g h s p O n t a n e o u s
emissiOn quantunl efficiency,99.7%internally and 72 歓
;externally,from
AlGaAs/GaAs/AlGaAs dOuble heterostructures",Appl Physt Lett.,62,2,pp.1311 33 1Jan.1993).
G i n e s t e t C . , K i m Y . W , J O k e r s t N . M . , A l l e n M G a n d B r o o k e M . AV .e :r Ⅲ
(9)Camperi―
tical
e l e c t r i c a l i n t y e r c O n n e c t i O n o f c O m p o u n d s e r l i c o n d u c t o fr l lt mh i dn e‐v i c e s t o
u n d e r l y i n g s l l i c o n c i r c u i t r y " , I E E E P h o t o n i c s T e c h n o 1 0 g y L e t t , 4 , 9 , p p .1 10 0 06 3 ‐
(Sept. 1992)
( 1 0 ) L o Y . H , , B h a t R . , H w a n7g1 4D,.C卜h u a C . a n d L iHni "CS―
elniconductor lasers
substrates using the technology of bonding by atonllc rearrangementⅢ
, Appl. Phys.
Lett.,62, 10,pp. 1038‐
On
Si
1040(単 larch 1993)
(11)Gale R.P,Fan J C.C.,Tsaur B‐
Y,Turner G.ヽ
V.and Davis F.M!"GaAs shallow‐
homOjunction sOlar cells oncoated
Ge‐ Si substrates",IEEE Electron DEvice
Letters,EDL‐
2,7,pp.169‐171(」uly 1981).
(12)Akiyama M.,Kawarada Y.and Kaminishi K:"GrOwth Of GaAs on Si by MOCVD",」
.
Crystal GrOwth,68,pp 21 26,(1984)
のセ ク シ ョンの文献 は非常 に多 いので一部 だ けを記す。G a A s O n S i 関
(13)こ
に して :
Fang S.F et al.:"Galllum arsenide and Other cOmpound sellliconductors on sllicon",
J . A p p l . P h y s 6 8 , 7 , p p . R 3 1 5‐8 ( O c t . 1 9 9 0 ) 、熱歪 み に関 して : 酒 井士郎 : " S i
"、
基板 上 のG a A s の 熱歪 み
団体物理、 2 5 、 3 、 p p 1 9 3 2‐0 1 ( 1 9 9 0 ) 、 最近 の
デ バ イ ス に 関 して : E x t e n d e d
A b s t r a c t s
O f
t h e
1 9 9 2
1 n t . C o n f . O n
Devices and Materials,Symp.on"HeterO epitaxy On Si",pp 622‐
688(1992).
- 2 5 -
S O l i d
S t a