中学校国語 2014 年 前期 198 no. CONTENTS [羅針盤]生徒の授業認識の改善と思考力の形成 ● 髙階 玲治……1 [ひととことば]宇宙飛行士とアンパンマン ● 山口 タオ……2 [授業実践例]話し合いを通して登場人物の人物像・心情に迫る [すぐに役立つワークシート] 「漢字を見抜く」● 林 浩司……13 ● 山﨑 裕……7 ものに変える必要がないか、などが課題の して生徒を学習課題に引きつける魅力ある 行った」学校で、生徒が否定的な回答をし と こ ろ が、「 よ く + ど ち ら か と い え ば、 成績がよいとされたことである。 国立教育政策研究所は全国学力調査結果 た割合はなんと %であったという。 だけでいいのか、学習への「動機づけ」と について多様な分析を行っているが、昨年 ように思われる。 授業の動機づけが思考を促進する 度の調査についても興味ある分析を行っ 務担当マニュアル』など多数。 90 が生徒に受容されることが大切である。 国教研のもう一つの調査分析は、総合的 総合的学習との関連指導の重視 いう形で行うことが多い。その場合、例え 意識の高まりが大きいのである。 学力形成は、学ぶ主体である生徒の学習 連動である。 せ る 必 要 が あ る。「 活 用 」 と「 探 究 」 と の 合的な学習のあり方を生徒にもよく理解さ の相関が明らかになったことで、両者の統 ただ、今回の調査は教科と総合的学習と は異なると判断するのではないか。 やすい。そのため生徒は教科と総合的学習 回答をどう引き出すか、という傾向になり 行う学習活動は稀で、与えられた課題から し か し、 教 科 は「 自 分 で 課 題 を 立 て て 」 重視である。 ら追究する」という生徒の学びの主体性の つが、その基本は「自ら課題を見出し、自 見・設定→課題追究→成果発表の流れをも 総合的学習のパターンは、例えば課題発 らきているのであろうか。 それは教科の学習と総合的学習の違いか はその効果を認めていない。 総合的学習が生徒の活用力を高めるとさ 月 全 6 巻 』 、『 見 て わ か る 教 さらに生徒が自覚的に学習に取り組める 編著書『新学校経営相談 12 か た。 教育創造研究センター所長。 れながら、教師の思いとは全く違って生徒 (財)学校教育研究所理事長。 た め の「 目 標 」「 ま と め 」 へ の 教 師 の 説 明 Takashina Reiji 一 つ は、 「 授 業 の 冒 頭 に 目 標( め あ て、 ねらい)を示す」とB問題の回答率が高く なったというのである。周知のようにB問 題は「活用型」であって思考力・判断力・ 表現力等を問う問題である。 ところが生徒の反応は、そうした授業を %で、 「よく行った+どちらかと言えば、行った」 学校で否定的な回答をした生徒が 半数を超えていたという。 髙階 玲治 指導が必要、と考える。教師の授業スキル 生徒の授業認識の 改善と思考力の形成 羅*針*盤 学習で探究活動を行った学校ほどB問題の に授業のスタイルを、導入→展開→終末と 実のところ、わが国の教師たちは伝統的 受容していない。 と考えている。しかし、結果として生徒が 行ったことが活用型の学力を上げられる、 教師は、授業の導入や終末をていねいに なぜ、こうしたことが起きるのか。 な回答をした生徒はなんと %である。 も効果があったとされるが、同様に否定的 学習したことを振り返る活動」を行う学校 さ ら に 注 目 さ れ る の は、 「授業の最後に 60 ば導入において、単に「目標」を提示する 生徒の授業認識の改善と思考力の形成 1 93 宇宙飛行士とアンパンマン 人は言葉とともにある。 山口 タオ やまぐち・たお 童話作家。兵庫県生まれ。東京在住。星新一ショートショート コ ン テ ス ト 最 優 秀 作 受 賞。 著 作 は、 童 話『 の ら ね こ ソ ク ラ テ ス』シリーズ(岩崎書店)、講談社スローブックシリーズ、諺 学 < 校を楽し を掲げて、出前授業を行う。出前募集中です。 > 遊び本『ことわざおじさん』(ポプラ社)など。 く メージの集積といえば近いか。声や文字になる前の段階とも言 え て、 形 が 定 ま ら ず、 瞬 間 ご と に 浮 か ん で は 消 え て し ま う の を行っている。その教室では、直接子どもたちと触れ合う楽し とのない時間はたくさんある。だから言葉を使わないことも多 一日の中で、話したり聞いたりしない時間、読むこと書くこ で、気づきにくい。 さだけでなく、いろいろと考えるきっかけをもらうのでありが い、と思っている。しかし考える時にも言葉を使うとなると、 ぼくは童話作家なのだが、時々小学校から頼まれて出前授業 たい。 ことにならないか。いや、夢を見ている間も……。 これほど言葉は人間と密着しているものだったのか、と今さ 目が覚めた時から眠りにつく時までほとんどずっと使っている 言葉って何ものだろう? そんなことを考えてみたのも、言 葉 遊 び 授 業 を や る の に、 遊 ん で げ ら げ ら 笑 っ て い る だ け で は ちょっと申し訳なくなって、少しは身になることを加えよう、 もに子どもたちに伝えることにしている。言葉がぐっと身近に らながら気がついて、そのびっくりを、言葉遊びの楽しさとと なって、本好き、国語好きになってくれれば、授業をやった甲 と思ったからだ。 考え出すと、分かることがあって面白い。 斐がある。 当たり前のように使っている言葉だが、それは何かと改めて 見つめると、まず口から出て、声になり、相手の耳に入る。ま 他 者 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が で き な く な る。 だ が そ れ 以 前 人は言葉とともにある(存在する)。もし言葉がなかったら、 葉には、声と文字という二つの現れ方・使い方がある。 に、考えることができない、ということなのだ。それでは人間 た、手で書かれて、文字になり、読み手の目に入る。つまり言 「 で も 言 葉 に は も う 一 つ、 使 い 方 が あ る ん だ。 い つ ど こ で と呼べないだろう。 先のソチ五輪では、フィギュア男子羽生結弦選手の金メダル 人は言葉によって造られる。 言葉を持った時に人間が誕生したのだ。 使っているか、分かるかな?」 と、見つけた答えを出前授業の教室で質問にしてみた。意外に 分からないものだ。 分かったあ、とあちこちで笑顔が出る。 「ようく考えてみて。ほら、か・ん・が・え・て」 ― というと、 言 葉 は 心 の 中 で、 考 え・ 思 い と な っ て 現 れ て い る の だ。 イ 2 教科研究国語 No.198 れた。けれど、いつまでも記憶に残っていくのは、フィギュア ジャンプでの四十代メダリストが日本に興奮と歓喜を与えてく 獲得やスノーボードハーフパイプでの十代メダリスト、スキー 逆の恐さも実感できるし、知っておかなければならない。 を砕いて、生きる力を奪ってしまうことがある。そんな言葉の 人間の本来の姿だ。そう考えれば、心ない言葉や無視が人の心 世界が認める浅田選手だが、ショートプログラムで緊張のあ んできて、長く居座っている二つの言葉について書こう。心の ここまでを長い前置きとして、ぼくの心にずっと昔に飛び込 女子の浅田真央選手がくれたメダルにはない感動だろう。 まり失敗ジャンプの連続で、まさかの 位に沈む。だがそのわ 底の大事な一部になっていて、今も自分を動かしている。 中学生にもぜひ伝えたい。そしていっしょに深く考えてほし い言葉だ。 〈地球は青かった〉 一つは、一九六一年四月十二日に生まれた言葉だ。 その日、ロシア(旧ソビエト連邦)の宇宙飛行士ユーリ・ガ ガーリンがロケットに乗って、人類で初の宇宙飛行を成し遂げ 紀の名言となっている。なにげない素朴さと簡潔な響きで、半 「あとはもうほんとに死ぬ気で行け。もし何かあったら、私 世紀後の今も瑞々しい感動が伝わってくる。 た。その時、宇宙から地球を眺めて言った言葉として、二十世 る」 による人類初の月面着陸に繋がるのだが、日本では東京オリン ここから宇宙一番乗り競争が始まり、一九六九年のアメリカ 人間は一人一人別々だが、言葉を共有することで心が繋がる ちょうど自分の中学高校時代と重なっていて、そこに入って ピックから大阪万国博覧会に続く経済成長真っ盛りの時代だっ きた言葉だ。ちなみに初の月面着陸時にはアームストロング船 のかもしれない。そうやって個人では限界のある知識や経験や あの時、浅田選手の心にコーチの信頼と自信が流れこみ、前 長(アメリカ)の「この一歩は私にとっては小さな一歩だが、 た。 日 の 孤 独 な 自 分 と は 違 う、 よ り 大 き な 強 い 心 の 自 分 に 変 わ っ ― ち ょ っ と カ ッ コ 良 す ぎ る ん じ ゃ な い か、 と 当 時 月 を 見 上 げ て 人 類 に と っ て は 大 き な 一 歩 だ 」 の 名 言 が 生 ま れ た が、 人が言葉によって造られるのを見た瞬間だった。 思ったことを覚えている。なんだか事前に用意してあったハリ 思えた。 た。そして臆することなく滑走し始めた。ぼくにはそんな風に 思考力を加えながら、成長できるようになっているのだろう。 だ。 い つ に な く 強 い 口 調 で 言 っ て、 最 後 の リ ン ク に 送 り 出 し た の が リ ン ク の 中 に 助 け に 行 け る か ら。 自 分 を 信 じ て。 絶 対 で き に、 熱 に 襲 わ れ な が ら も 滑 り 切 っ た 話 を 語 っ た 後、 そ の 時 と 同 じ 翌日も放心状態にあった浅田選手に、コーチは昔、教え子が高 そのドラマの陰には佐藤信夫コーチがいた。落胆と失意で、 世界中を感動させたのだった。 やってのけた。終えたと同時にあふれた涙が、日本だけでなく ぶ と い う 世 界 初 の 至 難 の プ ロ グ ラ ム に 果 敢 に 挑 ん で、 完 璧 に ずか二十四時間後のフリーで、 種類のトリプルジャンプを跳 16 他者の言葉も自分の言葉として、心を繋ぎ合って生きるのが 宇宙飛行士とアンパンマン 3 6 ウッド映画のセリフみたいだったからだ。 すべての人間の心に届いた宝石のような言葉だった。なんと幸 運だろう。その前日まで地上の誰一人として知らなかった。歴 史上のどんな天才・英雄たちも地球が美しいことを知らずに生 涯 を 終 え て い っ た の だ。 ガ リ レ オ や ニ ュ ー ト ン は も ち ろ ん、 一九五五年に亡くなったアインシュタイン博士でさえも。 なのに、この二十世紀からの素晴らしい贈り物を現代の子ど もたちは受け取っていない、というのだ。もらったのは「地球 は青く美しい星である」という写真付きのカタログのような知 4 教科研究国語 No.198 さ て、 そ れ よ り ず っ と 気 に 入 っ て い る 名 言〈 地 球 は 青 か っ た〉なのだが、今の中学生が聞いて、どう思うだろう。 知っている生徒は多いと思う。が、正直、感動はしないだろ う。写真や映像で地球の青く美しい姿をとっくに知っている。 何を今さら、ということだ。実際、出前授業で返ってきた反応 でもある。 それはとてももったいないことだ。……そう感じたのは十年 識だけだった。 「知っているつもりじゃだめだ。綺麗な景色や花の写真と本 以上前、二十世紀が終わる頃で、童話作家として、二十一世紀 に生きる子どもたちに何を伝え残そうか、と探している時だっ ぼくは二十一世紀の初めに寓話絵本『このすばらしい世界― 地球の美しさを」 物がどれくらい違うか、考えてみて。そして想像してごらん、 とはなん た。ずっと心の隅にあった〈地球は青かった〉がふと甦り、ぼ くはそれを伝えることに決めた。 ― ロバが語った宇宙飛行士の話』を書いた。嬉しいことに小学校 自分が住んでいる星がたとえようもなく美しい と幸福なことではないか。人類史上、ついに地球から宇宙に飛 六年の国語教科書(学校図書発行)に採用されて、その縁で頼 街の小さな音楽祭で、遠い被災地を想って、みん なで歌を歌いました。 「TOHOKU の空へ」(CD) び出して、それを知ったとはなんと誇らしいことではないか。 大きな数を実感する秘伝米つぶ換算術「もしも日 本人がみんな米つぶだったら」(B5 変型,39p) ま れ る 出 前 授 業 で 本 を 朗 読 す る。 そ の 最 後 に み ん な に 目 を つ 笑いと悲哀のことわざパロディ傑作選「ことわざ おじさん」 (B6,128p) 〈地球は青かった〉はその日、分け隔てなく平等に、地上の 寓話絵本「このすばらしい世界―ロバが語った 宇宙飛行士の話」 (A5,47p) ちながら、巨大な球体が静かに浮かんでいる。ここに人類のす 「宇宙はほんとうに真っ暗闇だ。そこに青く瑞々しい光を放 た〉は世界の外側に出て、初めて世界を見渡した言葉だ。それ じつはそれもこの名言に示唆があったのだ。〈地球は青かっ どうしたら守護の役割に目覚めるのか。 れないでいる。 べてがいる。すべての生命がこの中にある。青い光は生命を宿 までは地表面にへばりついた二次元的な見方しかできなかった ぶってもらい、こう話す。 した輝きなんだ。その中で君たちもいっしょに光りながら、今 人類に、宇宙からの三次元の視点が加わったことになる。世界 そんな を故郷として愛する、ほんとうの意味での〈地球人〉になるの 目を備えれば、意識が大きく広がる。そして国家を超えた地球 の外側に立って、世界全体と自分を同時に見つめる ― も宇宙を旅しているんだ」 子どもたちの心の中で〈地球は青かった〉という言葉が輝き 始めるのを知るのは嬉しい。 昨年夏に大人相手に朗読した時は、さらに探究できて、楽し ガ ガ ー リ ン の 素 朴 な 言 葉 は、 地 球 人 へ の 進 化 を 示 唆 し て い ではないか。 そう思ったら、イマイチだったアームストロング船長 る。 ― はロバに教えられて、 の「大きな一歩(飛躍)」もちゃんと繋がって、好きになって 人間だから地球の美しさを知ること が で き た、 と 気 づ く。 も し 人 間 が 地 球 か ら 飛 び 出 せ な か っ た きた。 寓話の中で、地上に降り立ったガガーリンらしき宇宙飛行士 かった。 ― ら、この究極の美が無駄になったのだろうか……。人間と地球 生物の進化は時間がかかるものだ。ならまだたったの五十年 〈地球は青かった〉はずっと昔、自分の中高生時代に入って じゃないか。そう考えて、希望を持ち続けることにした。 きた言葉だが、それ以来心の隅に住み着いて、宇宙に興味を持 という話だ。 の 間 に は 根 源 的 な 繋 が り が あ る に ち が い な い。 そ う 思 い 至 っ ― 生命を育む地球という星の価値が分かる人間。ならばそれを て、男は遠くを見はるかす 守護する役割を与えられたのではないか。それが人類の存在意 書かせたりして、ぼくを動かしている。きっと同様の人々が世 たせたり、本を書かせたり、出前授業をさせたり、今この文を 二十世紀半ばのあの日、人類は誕生以来初めて、地球という 界中にいて、中にはとうとう宇宙飛行士になるところまで動か 義なのかもしれない。 星の姿を知った。 〈地球は青かった〉は地球発見の言葉だ。そ された人がいるかもしれない。 人類の心 言葉というものを人間は持っているのだから。 国際宇宙ステーションに初の日本人船長が誕生する。宇宙か とのできる ― それは可能だ。どんなに離れていてもたくさんの心を繋ぐこ を一つにすることだ。そうぼくは思い込んでいる。 ることだ。だが、宇宙飛行士のいちばんの役割は ― 宇宙でのミッションは、そこでしかできない実験や観測をす して同時に、自分たちへの手がかりになる人間発見の言葉だ。 ……ぼくはそう受け取っている。 言葉は人を繋ぎ、世界を変える。 素晴らしい美しさを知ってから半世紀が経つ。なのにまだ人 間は戦争を続け、資源をむさぼり、地球を傷つけるのを止めら 宇宙飛行士とアンパンマン 5 ら の 美 し い 映 像 と と も に、 多 く の 人 を 繋 ぐ 言 葉 を 期 待 し て い 〈生きる喜び〉。 る。ジョン・レノンの〈イマジン〉のような……。 ― う。惜しくもやなせさんは昨年末に亡くなったが、たくさんの 人に生きる力をくれたのだ。いや、今もアンパンマンが力を与 え続けている。 〈地球は青かった〉は、自分のいる世界と人間のことに目を 開 か せ、 想 像 力 を 解 き 放 っ て、 ぼ く の 心 を ぐ ん と 広 げ て く れ 伝えたいもう一つの言葉 これは二〇一一年三月十一日の後、心に入ってきた。漫画家 日を歩む力を与えてくれた。今も二つの言葉が自分を支えてく た。〈生きる喜び〉は自分の内側の深いところを照らして、今 る。だから言葉が生まれたのはずっと以前だが、東北大震災直 れているのを感じる。 や な せ た か し さ ん 作 詞 の「 ア ン パ ン マ ン の マ ー チ 」 に 出 て く 後の被災地で、避難所や仮設住宅の人々をこの歌が勇気づけて ウジアラビアの宇宙飛行士の言葉を紹介しよう。空の彼方から そう願いながら最後に、出前授業の締めくくりに朗読するサ 中学生のみなさんが良い言葉と出会えますように。 大 人 気 の ア ニ メ だ か ら 歌 は 耳 に し て い る。 だ が 改 め て 聞 い いる、とニュースで知って、ぼくは出会ったのだ。 て、 そ の 歌 詞 に 驚 い た。 幼 稚 園 児 た ち が こ れ を 歌 っ て い る の 響く美しい詩のようだ。 (スルタン・ビン・サルマン・アル=サウド) 中学生たちにもぜひ読んであげてください。 だった。 五日目、私たちの目に映っているのは、たった一つの地球 三日目、四日目は、それぞれが自分の大陸を指さした。 最初の一日か二日は、みんなが自分の国を指さした。 か、と思うと。 そうだ うれしいんだ 生きる 喜び ………… なにもかも奪われた被災者の心に、この歌詞がどう響いて、 生きる気力を奮い立たせたかは、遠くにいる自分にはほんとう は分からない。けれど〈生きる喜び〉という普段聞けばなにげ 追記:東日本大震災の時、アンパンマンに歌の力を教えられ、 ない言葉がだんだんと深く心にしみこんできた。 人間は誰でも自分が生きる意味に悩む。だが頭で考えても分 OHOKUの空へ」検索ください。 いための歌なので聴いてみてください。 YouTube にて題名「T ぼくは被災地を想う歌を作って、みんなで歌いました。忘れな そう教えてくれている気がした。 かりっこない。生きて、喜びを感じることだ。生きていること ― 自分は生きている……。そう思うだけで、力が湧いてくるで が喜びなんだ。 はないか。 だからこれは人間の深いところをとらえた真実の言葉だと思 6 教科研究国語 No.198 A 深い理解には達していないが、自分の考えを積極 八人 的に発言する生徒 ある程度内容を読み取り、自分の考えを積極的に 六人 発言する生徒 伊豆の国市立大仁中学校教諭 以上の分類は、一斉場面での様子である。グループでの話し 合いの様子では、A・B・Cの生徒が中心になって積極的にか かわる姿が多く見られた。友達の発言に対して同意したり反論 したりしながら自分の考えを自由に述べることができる人間関 係ができていると思われる。Eの二名は内容の読み取りや質問 されている内容を把握することが苦手であり、質問内容を分か りやすく言い直したり個別に対応したりすることが必要になる。 一学期の授業を通して、自分の考えを発表する生徒が増え、 他者の意見に対して同意したり対立意見を出したりすることも 増えてきた。しかしBやDの生徒は、根拠を述べることができ な か っ た り、 同 じ こ と を 繰 り 返 す だ け だ っ た り す る こ と も 多 かった。また、他者の意見をつなぎ、学級全体の意見を深めた りまとめたりすることはあまりできていない。授業の話し合い の中で、他者の意見を聞くことで自分の考えを深めることが必 要だと感じた。 この教材で、手本と同じように面を打つことで満足していた 文吉が、伝蔵との出会いをきっかけにして面打ち師として成長 していく姿を、生徒に読み取らせていきたいと考えた。そして、 学習を通して登場人物の描写に注意して読み、内容を理解して 自分の考えやものの見方を広げていく力を付けていくことにつ なげていきたい。そこで、授業で自分の意見を書くときや発表 する場面では、教科書の記述に注目し、根拠を持って発言する ことを意識させていこうと考えた。 ― 「ぬすびと面」の授業実践 B 積極性には欠けるが、ある程度内容を読み取り、 四人 理解している生徒 山﨑 裕 話し合いを通して登場人物の人物像・心情に迫る ― C 自分の考えに自信が持てると、発言することがで 九人 きる生徒 一 生徒の実態 一学期の「風呂場の散髪」の学習では、父と子の行動や心情 を表した表現、会話に表れた心情を読み取り、登場人物の心理 の変化を捉えることを学習目標とした。また、「字のない葉書」 の学習では、父親の日常の姿には見られない心の奥にある娘へ の愛情を読み取っていった。これらの学習では、はじめに自分 の考えをノートに書き、その後四〜五人のグループで話し合う 場面を設定することで、自分の考えを発言しやすくするように した。生徒は、はじめは自分の考えに自信が持てず発言が少な かったが、後半になるにしたがって多くの生徒が文章の表現か ら人物の心情を読み取ろうとし、自分の読み取ったことを発言 する姿が見られた。 二学期初めの生徒の様子を、関心・意欲・態度の面を中心に して大まかに分類すると次のようになった。 D 国語の授業(特に話し合い)には、消極的な生徒 二人 E 話し合いを通して登場人物の人物像・心情に迫る 7 話し合いを通して登場人物の人物像・心情に迫る 二 教材観 この小説の主な登場人物は二人である。 文吉は、能面(狂言面)を彫る面打ち師である。狂言『山端 とろろ』のためのぬすびと面を制作するという仕事に苦しんで いる。 『山端とろろ』で使うぬすびと面は「どこか滑稽で間が 抜けている。それでもやはり、一目見ただけで人が震え上がる ような顔」をしていなければならない。 その文吉のもとに伝蔵というぬすっとがやってくる。赤ん坊 を 押 し つ け る と い う 奇 妙 な ぬ す っ と の 容 貌 を 見 て、 イ ン ス ピ レーションをつかみ、新たな面の創作に成功する。 しかし文吉は、伝蔵が「間引きされそうになった子どもを助 けて、育ててくれそうな家へ、無理やり押しつけて回っていた」 ことを知る。文吉は、伝蔵の表情がぬすっとの脅しの表情では なく、間引きを許している世間に対する怒りであることを知る。 文吉は、伝蔵の本当の思いを知って、自分の作ったぬすびと面 を「もう一度彫り直そう」と決意する場面で物語は終わる。 面を彫ることに対する面打ち師としての思いの深まり、伝蔵 という存在を知った後の気持ちなど、文吉の心情の変化を読み 取り、自分のものの見方や考え方を広げていくことができる教 材である。 三 登場人物の人物像 ① 文吉 文吉は、若いが面打ち師として認められつつあり、自分でも 自信が出てきたという人物である。面打ち師としての技能の向 上に一生懸命であり、ぬすびと面についても適当に彫ってしま う こ と な く、 真 剣 に 取 り 組 ん で い る。 だ か ら こ そ、 伝 蔵 が ぬ すっとであるにもかかわらず、ぬすびと面にある滑稽と恐怖を 併せ持った顔を見つけることができたと考えられる。伝蔵に出 会ったときには間引きされそうになった子どもを押しつけてい ることは知らない。しかし、伝蔵の顔に普通のぬすっとにはな い表情を見抜いた。伝蔵が去った後、その顔をイメージし、自 分の思い描いた顔を自由に彫っていった。そのとき文吉の中で、 手本と同じものを作る喜びから自分で創作する喜びに変化して いった。この変化は、最後の場面で真相を知ったときに、ぬす びと面をもう一度彫り直そうと思う気持ちにつながるのだと思 われる。 ② 伝蔵 伝蔵は、奇妙なぬすっととして登場する。その奇妙さがぬす びと面の表情につながるのだが、本当は子どもを間引きしよう とした親、そしてそれを黙認している世の中全てに対しての怒 りの表情であった。やっていることは常識外れだが、世の中の 悪に対して自分なりの方法で正義を貫こうとする伝蔵の人間性 を考えることは、ぬすびと面を彫り直そうとする文吉の気持ち を考える手助けになると考えられる。 また、文吉は伝蔵の本当の心を知ったときに自分の浅はかさ を知ったはずである。自分で想像をふくらませて、自由な発想 でぬすびと面を作ったつもりだったが、完成した面は伝蔵の表 情だけを彫ったものであり、ぬすびとの内面を表現したもので はなかったということに気付いたのではないか。 ③ ぬすびと面の彫り直しをめぐって 最後の一文「文吉は、あの『ぬすびと面』をもう一度彫り直 そうと思った。」に着目する。文吉は、新たにどのような面を 彫ろうとしたのだろうか。そして、それはなぜだろうか。 文吉にとって、完成したぬすびと面は伝蔵の滑稽さと恐ろし さを表現したものであった。しかし、伝蔵の恐ろしさの理由を 知ったとき、自分の表現したぬすびと面と伝蔵の心の内面とは 異なることに気付いたであろう。 8 教科研究国語 No.198 新たに彫り直そうとした面について考えるとき、二通りの考 え方ができる。まず、ぬすっと伝蔵の心の中まで表現した面で ある。最初に作った面には、世の中の悪をにらむ伝蔵の心まで 表現できていなかった。同じものを彫るだけでなく、心の内面 まで表現することの喜びを知った文吉にとって、このままでは プライドが許さなかったのかもしれない。心まで表現できる面 を打つことが面打ち師としてやるべきことだと考え、作り直し ていったのではないか。 もう一つは、伝蔵とは違う顔を彫っていくという考え方であ る。はじめに手本にした伝蔵は、 『山端とろろ』に出てくるぬ すっととは心が全く違うものである。狂言に出てくるぬすっと は、ただ単にものを盗もうとし、とろろで滑って転げ回るとい う人物である。伝蔵の恐ろしさとは全く異なる心を持っている のだから、伝蔵を手本にするのではなく、もう一度自分自身で イメージをふくらませ、本来のぬすびと面を作っていくのでは ないか。 どちらにしても、文吉が伝蔵との出会いをきっかけにして人 間的に成長し、心の内面までも表現した面を彫りたいと願う面 打ち師に成長していったという主題につながっていく。生徒に、 新たに作るぬすびと面がどのようなものであり、その理由は何 であるのかを考えさせることで、主題に迫ることができるので はないだろうか。 四 教材の目標 ① 伝蔵の本当の気持ちやぬすびと面を彫り直そうとした文吉 の心情の変化を読み取ろうとしている。 (国語への関心・意欲・態度) ② 場面の展開や登場人物などの描写に注意して読み、ぬすび と面を彫り直そうとした文吉の心情の変化を捉え、面打ち師 第 「あの『ぬすびと面』をもう一度彫り直 場面の展開や登場人物など 4 そうと思った」のはなぜか、彫り直す面は の描写に注意して読み、ぬす 時 どのようなものかを考え、話し合う。 びと面を彫り直そうとした文 3 吉の心情の変化をとらえ、面 第 面打ち師としての成長や変化、面打ち師 打ち師としての成長について 5 としての生き方について文吉がどう考えた 考える。(読むこと) 時 のか話し合う。 としての成長について考える。 (読む能力) ③ 文章を読み、時代背景を描写する語句についての知識を深 める。 (伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項) 本文を音読し、時代背景や狂言など、作 第 品を読むための内容を理解する。 1 1 初発の感想を書き、深く考えたいことや 時 疑問に思ったところについて書く。 文章を読み、時代背景を描 写する語句についての知識を 深める。 (伝統的な言語文化 と国語の特質に関する事項) 初発の感想から、全体で考えたいことを 第 まとめる。 2 本文を読み、文吉が「ぬすびと面」をな 時 かなか打てないでいた理由を説明する。 2 伝蔵の本当の気持ちやぬす びと面を彫り直そうとした文 吉の心情の変化を読み取ろう と し て い る。( 関 心・ 意 欲・ 態度) 五 学習内容の計画、配当時間、評価 話し合いを通して登場人物の人物像・心情に迫る 9 評 価 学 習 内 容 次 時 第 文吉はなぜ伝蔵と出会ったことで「ぬす 3 びと面」を彫り進め、満足のいく面を彫る 時 ことができたのか、理由を付けて説明する。 話し合いを通して登場人物の人物像・心情に迫る 六 授業の実際 ① 第一時 この教材の学習では、まず初発の感想を書く活動を行った。 この中で生徒は伝蔵と出会うことで文吉がぬすびと面を完成さ せること、伝蔵の表情が間引きを許さない怒りの表情であるこ となどを読み取り感想に書いてきた。 生徒A よく意味が理解できないけど、何となく分かった。登 場人物が三〜四人出てきた。 A 伝蔵は、ただ優しいわけではなくて、世の中をにらみ続け ている優しい心の持ち主だと思う。 いでいる理由まで読み取ることができていない。生徒Gは、最 後の場面の彫り直す理由に疑問を持った。生徒Hは、内容をか なり理解し、伝蔵の顔が面にはふさわしくなかったということ まで読み取っていた。GとHの思いを第四時の授業につなげて いこうと考えた。 ② 第二時 第二時では、伝蔵はどんな人かという疑問を持った生徒が多 かったので、伝蔵について話し合いを行った。 事後のまとめを読むと、生徒A〜Hは左のように自分の意見 を書いてきた。 生徒C ぬすっとは、間引きされそうな子どもを配っていて、 優しい人だと思った。 B 伝蔵は世の中に怒りを持っていました。伝蔵の怒りが最大 生徒B 登場人物たちが、表情を変えながら何を伝えたいのか、 というのが僕の疑問だ。 生徒D 間引きされそうな子どもを助けているのに捕まるのは おかしい。本来は協力するべきだ。 C 伝蔵は捕まる必要はないと思う。でも、伝蔵の子どもの渡 し方はあまりにも強引すぎる。刃物を持っていたらびっくり たから捕まったのだと思う。 H 無理やり押しつけたり、他人の迷惑になることをしたりし G 間引きされそうな子を助けているからいい人だ。でも脅す のは良くない。 F 悪い人とも良い人とも言えない。包丁を持って脅している けれど、子どものためを思っているから。 しれない。 たら、伝蔵もそういう経験(間引き・捨て子)があったかも E 伝蔵はどうしても子どもを見捨てられなかった。もしかし D 子どもを無理やり押しつけるのは迷惑だし、よくないかも しれない。なにかいい方法はないだろうか。 するし。 になったので間引きされそうな子どもを助けたのだと思う。 生徒E なぜ他の人の子を配るなんてことをしたのか分からな い。自分だったら助けるか分からない。 生 徒 F 文 吉 は、 三 日 も 何 も し な い で 座 っ て い る。 な ぜ が ん ばって作らないのか。 生 徒 G 文 吉 は な ぜ「 ぬ す び と 面 」 を も う 一 度 彫 り 直 そ う と 思ったのだろう。 生徒H 最後に彫り直そうと思ったことが分からなかったけど、 文吉が面にふさわしくない顔と気付いたからだと思った。 生徒Aは、長文の読み取りが苦手で、今回もあらすじを捉え ることができなかった。生徒Bは、登場人物の表情に目を向け ながらも、そこから心情を考えることには至っていなかった。 生徒C・Dは、間引きに注目し、伝蔵は優しい人であり、捕ま る理由に疑問を感じている。対して生徒Eは、子どもを助ける 行為を自分に置き換えて考えている。生徒Fは、文吉の彫れな 10 教科研究国語 No.198 多くの生徒が、 「子どもを助けた良い人・優しい人」という 一面的な見方から、伝蔵の本当の心(間引きを許す世の中に対 する怒り)や「良い・悪い」の二者択一ではないのではないか と思考を広げていた。生徒Dは子どもを助ける他の方法がない かと提案し、生徒Eは、 (本文にはないが)伝蔵の過去につい て想像をふくらませていた。 ③ 第三時 第 三 時 で は、 ぬ す び と 面 の 制 作 に 苦 心 し て い た 文 吉 が、 ぬ すっと(伝蔵)に出会うことで自分なりの表現をする喜びを知 り、ぬすびと面を完成させることができたことを話し合った。 A 文吉は、面打ち師の意地を持っている。伝蔵のおかげでう まく彫れて良かった。伝蔵がヒントをくれたと思った。 B 一生懸命仕事に励んでいるから、たくさん考えれば良い面 ができると思う。手本なしで面を彫る楽しみが、良い結果に なったと思う。 C ぬすっとに出会って文吉は変わった。自分で納得できるよ うな面になった。 D 文吉は頑張り屋で、いい面打ち師になろうという気持ちが 伝わってきた。 E 名高い人々に近づこうという思いが文吉のいい結果につな がっていると思った。 F 若くて評判のいい文吉が三日も作れなかったということは、 それほど大変だったんだと思った。 G 「ぬすびと面」のような顔は想像できないので、彫るのは 大変だと思った。伝蔵と出会って、ノミや小刀の使い方まで 変わってきたのですごいと思った。 H 軽い気持ちで引き受けてしまったから三日も打てなかった。 伝蔵の顔がぴったりだと思って彫り始めることができた。 伝蔵の恐ろしい表情は間引 きを許さないという怒りの表 情 「山端とろろ」のぬすっとは と ろ ろ で 滑 っ て 転 び、 何 も 取 らずに逃げていくという滑稽 さ。 「山端とろろ」のぬすっと は、盗みのために人を脅す顔 ④ 第四時 第四時では、前時を振り返り、文吉が面打ち師として創造の 喜びを知ったことを再確認した。生徒の振り返りの記録から、 何人かの文章をまとめたプリントを配布し、読ませた後に生徒 に感想を聞いた。ぬすびと面がなかなか進まなかった文吉が、 ぬすっと(伝蔵)に出会ってインスピレーションがわき、自分 なりの想像をふくらませて満足のいくぬすびと面を完成させる ことができたことを確認した。最後の一文「もう一度彫り直そ うと思った」ことに気付いて疑問を持っている生徒がいたので、 他の生徒にこの思いを投げかけた。 彫り直そうとする文吉に視点を向け、彫り直そうと思った理 由を考えさせ、自分の考えをノートに書くことを指示した。生 徒は、文章から間引きを許しておけない伝蔵が子どもを助け、 育ててくれそうな家へ押しつけて回っていたという箇所に注目 し、伝蔵の恐ろしく滑稽な顔の理由に気付くとともに、伝蔵の 思いが「山端とろろ」のぬすっととは大きく違うことにも気付 いていった。彫り直そうとする文吉の思いについて、本文の記 述に注目させながら根拠を持って考えを書かせていった。 自分の考えが書けた時点で、なぜ彫り直そうと思ったのか、 何のためにどのような面を彫り直そうとしたのかを考え、話し 合いを行った。ここで、二つの考えが発言された。 伝 蔵 の 滑 稽 さ は、 子 ど も を 押しつけて回っていくという 普通では考えられない行動か ら来るもの。 話し合いを通して登場人物の人物像・心情に迫る 11 話し合いを通して登場人物の人物像・心情に迫る 多 く の 生 徒 は、 「伝蔵の本当の気持ちを表現した面を彫る」 ことと答え、もう一つは「伝蔵とは違う、新たなぬすびとの面 を彫る」と答えた。そこで、伝蔵の表情と「ぬすびと面」の表 情の違いを考えさせた。 「 伝 蔵 は、 世 の 中 が 間 違 っ て い る こ と を 正 す た め に 行 動 し、 そのことに気付いた文吉は、自分の作った面が本来のぬすびと 面とは大きく違うことにも気付いたのだろう。」このような意 見が話し合いで出てくることによって、生徒は、新たに面を作 り直そうとする文吉の心情の変化を捉えていくとともに、文吉 が面打ち師としての生き方を見つめていることにも気付いて いった。 ⑤ 第五時 第五時では、今までの話し合いを振り返って、「面打ち師と しての成長や変化、面打ち師としての生き方」について話し合 いを行った。 A 文吉は、面を彫り直すなんて、「これから間引きをするな」 と伝蔵に言われたようなことをするとは優しい人だと思った。 B 伝蔵のやったことは間引きされそうな子どもを助けること だった。自分の身を犠牲にしてまでしたことはすごいと思う。 文吉は、もう一度面を彫り直し、伝蔵の存在を未来の人に伝 えて間引きをなくしていったのだと思う。 C 文吉には、自分の力で面を打ってほしい。伝蔵が世の中の 人に言いたいことを面打ち師として広げていってほしい。 D 伝蔵の優しい心を次の世代に伝えていこうという文吉にも 優しい心があると思った。間引きを許す人たちにも伝蔵の思 いが伝わって間引きがなくなるといいと思う。どんなに小さ くても大切な命だ。 蔵のおかげで文吉が成長できて良かった。 E 文吉が、自分から彫りたいという面になって、結果的に伝 F 文吉は最初のころと比べると成長した。 G 伝蔵の本当のことを知ったから、文吉は彫り直そうと思っ たのが分かった。この気持ちは大切だと思った。 H 文吉は、伝蔵の顔が「山端とろろ」で使うにはふさわしく ない、世の中を怒りを込めてにらみつけている顔だと気がつ いたので彫り直そうと思った。 生徒の振り返りの記録を見ると、友達の意見を聞くことで自 分の考えを見つめ直したり読み取りが深まったりしていること が分かる。生徒Aは、「意味が理解できない」という段階から、 伝蔵の間引きを許さない気持ち、それを次の世代に伝えようと する文吉の心情に目を向けることができた。登場人物の表情の 持つ意味を読み取れないでいた生徒Bは、文吉が彫り直したで あろう「新しい面」はやはり伝蔵をモデルにしたものと考え、 伝蔵の内面を表現した面が人々に良い影響を与え、間引きをな くすことにつながると考えるようになった。A〜Dの生徒たち は、文吉が本当の伝蔵を彫ったと考え、E〜Hの生徒たちは、 「山端とろろ」に合った別の顔を彫ったと考えている。どちら も登場人物の心情について話し合っていくことで、「文吉は伝 蔵 と の 出 会 い に よ っ て 面 打 ち 師 と し て、 人 間 と し て 成 長 し て いった」という部分に迫ることができたと考えられる。 七 終わりに 「ぬすびと面」は、学校図書の教科書に長く使われている教 材であり、すでに多くの先生方の教材研究や授業実践が行われ ている。その中で今回の授業実践は非常に拙く恥ずかしいもの だが、私自身の授業の振り返りとしてまとめさせていただいた。 12 教科研究国語 No.198 ワークシート① 漢字の成り立ち 「六書」 ④ ⑩ ⑤ 洞 (声… 部首… ) 年 ( ) ③ ⑨ ② ⑧ 一 象形文字 ① ⑦ ⑤ ⑩ ⑥ → → → → → → → → ) ) ) → → → ・目が見えなくなることを( ) ・月がかくれて見えないのを、見 たいと願う心は( → 過 (声… 部首… ) 胴 (声… 部首… ) ) ・米を細かく分けると( ・木を反るほどうすくすると( ) ・もと来た道をもどるのは( ) ・土地が反っている所を( ) ・お金と物がいったりもどった りで( ・糸を分けようとしてこんがらかるので( ・雨がもっと細かくなると( ) ・お金を分けてあげないといけな いほど( 渦 (声… 部首… ) 伴 (声… 部首… ) ⑤ ⑨ ④ ④ ⑬ ③ ③ ⑫ 二 指示文字 ① ② ⑧ 三 会意文字 ① ⑦ エ - なる) ・することが多く心がなくなることを( ) 亡 (ボウ な く ・覚えていたことが頭の中からなくなること を( イ 反 (ハン そ る -) ア 分 (フン わ け - る) 2 ウ ) 4 8 ) 3 寮 (声… 部首… ) 僚 (声… 部首… ) 判 (声… 部首… ) 四 形声文字 例 肝(声…干 部首…月) 刊(声…干 部首…刂) ⑥ ② ⑪ 「漢字を見抜く」 7 6 キ …… ジョ ガイ ジョ コウ ジョ ジ シ 年( ) 礎 ・ 将 ・ 石 ( 土・石・木) キ ソ ショウ ギ ゴ イシ 形声文字 — ワークシート② 声符 一 其 シ …… チュウ シ フク シ シ カ 余 ジヨョ…… 外 ・ 行 ・ 事 詩 ( 又・阝・彳) 止 ギ …… … リン ロン ( イ・車・言) 理 ・ 図 書 ・ おけ ( 木・飠・竹) カン リ ト ショ カン カン 織 ・ 先 ・ 止 ( ネ・阝・糸) ソ シキ ソ セン ソ シ 牲 ・ 会 ( 言・牛) ギ セイ カイ ギ ……中 ・ 福 ・ 科 ( ネ・ ) 義 ソ ロン リン …… カン 且 官 二 ①侖 車□ ・□ 理 ・□ 理 お レン モ … お歳□ ・□ 府 ・ 砂□ ・□ 型 ( 氵・日・巾・木) ボ バク モ …□ 当 ・□ 心 ・ 時□ ( 言・刂・木) …□ 待 ・□ 和 ・□ 過 ( 日・走・扌) ショウ チョウ …□ 金 ・□ 別 ・□ 置 ( イ・扌・忄) シャク セキ … 内□ ・ 連□ ・□ 席 ( 宀・糸・門) …□ 用 ・□ 酸 ・□ 日 ( イ・日・酉) カク ラク キャク サク サ セイ ③莫 ガイ カク コク ②兼 レケンン …□ 譲 ・□ 悪 ・□ 価 ( 女・言・广) ④亥 ⑤召 ⑥昔 ⑦各 ⑧乍 すぐに役立つワークシート 13 1 5 ① ② ③ ④ 年 ホウ ボウ テイ チョウ セキ シャク サク ソ フ シン ジン 令 才 亡 ( ) 方 丁 シン チュウ シュ 申 辰 主 ④ 昔 付 ⑥ ⑤ ⑥ 六個作ってね ボウ モウ サイ ヘイ レイ リョウ ワークシート④ + 年 ( ) (共通する意味) ↓ なぜみな の部分に( )という字が入るのでしょうか。 (部首) 文字の学習「偏って何?」 (部首) ① ② 秋・種・穂 たね ほ はだか えり そで ③ 裸・襟・袖 か けず こ て ④ 刈 る・割 る・削 る ⑤ 熱 い・焦 げる・照 らす うら なや まず ⑥ 快 い・恨 む・悩 む 丁 才 反 ム 兆 同 冓 周 てい さい はん こう ちょう どう こう ちょう ⑦ 買 う・財 ・貧 しい こお ⑧ 冬 ・凍 る・寒 一 部首名のテスト 部首 音の部分 二 右の漢字を組み合わせて漢字を作ろう。 ・自分で考えた字 ・友達の考えた字 三 「偏」って何? 14 教科研究国語 No.198 ワークシート③ 「声符」で漢字クイズを作ろう ① ② ③ ⑤ 二 一の問題例にならい、下の声符を使ったクイズを作ろう。 ④ ③ ② ① 一 問題例です。下の声符を当てはめて漢字を作ろう。 「漢字を見抜く」 三 一、二の問題を参考にして、声符も班で考えて、クイズを作ろう。 出題者は○班 解答者は○班 ワークシート⑤ 部首 にんべん 名 称 イ くにがまえ れんが がしら づくり へん てへん 走 廴 尸 广 行 囗 灬 皿 耂 宀 卩 頁 阝 阝 扌 部首を覚えよう 偏 旁 冠 脚 構 垂 繞 象形 ⑤ → ⑧ 問 ⑪ 彩 ⑭ 蒸 意 人の様子 手の動作 味 火・熱の状態 囲み・囲む 初・券 → ⑥ → ⑨ 朗 → → ⑫ 史 → → ⑮ 聖 → 年( ) 引(ゆみへん ) 叫( へん) 背( ) 酪( (とりへん) ) 改( (のぶん) ) 雄( ) 登( がしら) 究( かんむり) 悲(した ) 泰(した ) 区( がまえ) 凶( ) 原( だれ) 戸( だれ) ) 兄( にょう( ひとあし) にょう) 魅( 裸・褒 → 秀・穀 → ② 魂・魔 → ③ 賓・賄 → ○部首はどこですか。 例 財・貨 → 貝 ① ④ 恭・愁 ⑦ 閉 → ⑩ 杉 → 回 → ⑬ ワークシート⑥ 何という漢字でしょう …… …… 漢字クイズ作り ― ― 答え 答え 「何という漢字でしょう」 部首 部首「日 」ひへん 年 」 ( ) 古代文字「 古代文字「 ・ 」 は太陽。 は草の根。 は草。 冬の間、閉じこめられていた草の根が、日の光を浴びて、草として芽 を出そうとする季節を表す。 部首「阝 」こざとへん は、神様が天と地上をのぼりおりする時に使うはしご・階段。 年 は、下向きの足あとの形。それを上下に並べ、神が地上に向かっ て歩く様子を表す。 出題者 古代文字 すぐに役立つワークシート 15 → → → 年 ( ) ⑤ ⑩ ⑤ ⑤ ・米を細かく分けると( 粉 ) ・糸を分けようとしてこんがらかるので( 紛 ) ) ) ・雨がもっと細かくなると( 雰 ) ・お金を分けてあげないといけないほど( 貧 ・木を反るほどうすくすると( 板 ) ・もと来た道をもどるのは( 返 ) ・土地が反っている所を( 坂 ) ・お金と物がいったりもどったりで( 販 → → → → → 分 亡 → 反 → → ・目が見えなくなることを( 盲 ) ・月がかくれて見えないのを、見たいと願う心は( 望 ) → - なる) ・することが多く心がなくなることを( 忙 ) 亡 (ボウ な く ・覚えていたことが頭の中からなくなることを( 忘 ) -) 反 (ハン そ る ア 分 (フン わ け - る) イ ウ ⑩ 4 2 エ 洞 (声…同 部首…氵) 8 6 ワークシート②〈解答〉 キ ジョ ガイ ジョ コウ ジョ ジ シ 年( ) ……基 礎 ・ 将 棋 ・ 碁 石 ( 土・石・木) キ ソ ショウ ギ ゴ イシ 声符 — 形声文字 一 其 止 ギ シ シ フク シ シ カ カン リ ト ショ カン カン ……組 織 ・ 祖 先 ・ 阻 止 ( ネ・阝・糸) ソ シキ ソ セン ソ シ ……犠 牲 ・ 会 議 ( 言・牛) ギ セイ カイ ギ ……中 止 ・ 福 祉 ・ 歯 科 ( ネ・ ) チュウ 余 ジヨョ……除 外 ・ 徐 行 ・ 叙 事 詩 ( 又・阝・彳) 義 ソ ロン リン ……管 理 ・ 図 書 館 ・ 棺 おけ ( 木・飠・竹) カン 且 官 二 ①侖 ケン レン お レン 理 ( イ・車・言) リン ロン 価 ( 女・言・广) モ … お歳□ 暮 ・□ 幕 府 ・ 砂□ 漠 ・□ 模 型 ( 氵・日・巾・木) ボ バク モ …□ 該 当 ・□ 核 心 ・ 時□ 刻 ( 言・刂・木) ②兼 … 車□ 輪 ・□ 倫 理 ・□ 論 …□ 謙 譲 ・□ 嫌 悪 ・□ 廉 ③莫 ガイ カク コク …□ 招 待 ・□ 昭 和 ・□ 超 過 ( 日・走・扌) ショウ チョウ …□ 借 金 ・□ 惜 別 ・□ 措 置 ( イ・扌・忄) シャク セキ … 内□ 閣 ・ 連□ 絡 ・□ 客 席 ( 宀・糸・門) …□ 作 用 ・□ 酢 酸 ・□ 昨 日 ( イ・日・酉) カク ラク キャク サク サ セイ ④亥 ⑤召 ⑥昔 ⑦各 ⑧乍 16 教科研究国語 No.198 ワークシート①〈解答〉 ④ ⑨ ③ ⑧ ② 漢字の成り立ち 「六書」 一 象形文字 ⑦ ① ⑥ ⑨ ④ ④ ⑬ ③ ③ ⑫ 二 指示文字 ① ② ⑧ 三 会意文字 ① ⑦ 伴 (声…半 部首…人) 胴 (声…同 部首…月) 判 (声…半 部首…刂) 渦 (声…咼 部首…氵) 3 過 (声…咼 部首…辶) 7 四 形声文字 例 肝(声…干 部首…月) 刊(声…干 部首…刂) ⑥ ② ⑪ 「漢字を見抜く」 寮 (声…尞 部首…宀) 僚 (声…尞 部首…人) 1 5 ワークシート③〈解答〉 「声符」で漢字クイズを作ろう 唇 娠 防 一 問題例です。下の声符を当てはめて漢字を作ろう。 震 訂 坊 振 頂 駐 芳 ② 庁 柱 訪 ③ 注 ① ④ 年 ホウ ボウ テイ チョウ セキ シャク サク ソ フ シン ジン 令 才 亡 ( ) 方 丁 シン 申 チュウ シュ ④ 付 辰 主 ① ⑤ 二 一の問題例にならい、下の声符を使ったクイズを作ろう。 ② ⑥ ⑤ 昔 ③ ① ⑥ 六個作ってね ② ③ ④ ボウ モウ サイ ヘイ レイ リョウ ワークシート④〈解答〉 文字の学習「偏って何?」(部首) 年 ( ) ↓ なぜみな の部分に( 雨 )という字が入るのでしょうか。 ② 秋・種・穂 衤 禾 (部首) 刃物を使った作業 ↓ 刀・刃物(りっとう) 着ることや服に関係 ↓ 衣服(ころもへん) 稲穂の実りに関わる ↓ 収穫・穀物(のぎへん) ( 共通する意味) ◦天候に関わる字だから ③ 裸・襟・袖 刂 火を使って行うこと ↓ 火・熱(れんが) ① ④ 刈 る・割 る・削 る 灬 こ て か けず はだか えり そで たね ほ ⑤ 熱 い・焦 げる・照 らす 感情 ↓ 心の様子(りっしんべん) 貝 言 木 冷たい ↓ 氷・寒さ(にすい) 广 + 氵 お金を使う ↓ 財宝・貨幣(かいへん) 忄 うら なや 冫 門 辶 ⑥ 快 い・恨 む・悩 む まず 丁 才 反 ム 同 冓 周 庁釘閉材販返 鈑板 払広 挑逃 桃 開 兆 てい さい はん こう ちょう どう こう ちょう 金 ⑦ 買 う・財 ・貧 しい こお ⑧ 冬 ・凍 る・寒 扌 一 部首名のテスト 部首 音の部分 ・自分で考えた字 打 訂調構購講溝 洞銅 桐 二 右の漢字を組み合わせて漢字を作ろう。 ・友達の考えた字 週 三 「偏」って何? 意味を表す部分 すぐに役立つワークシート 17 三 一、二の問題を参考にして、声符も班で考えて、クイズを作ろう。 出題者は○班 解答者は○班 阝 阝 おおがい おおざと こざと へん 耂 さらあし おい がしら 象形 意 人の様子 手の動作 味 階段・高地 人の住む場所 頭・人の姿 おす・下をむく 家屋 老人 容器 火・熱の状態 囲み・囲む 道・行為 屋根・建物 なきがら 路に関係 走る動作 年( ) 引(ゆみへん ) 叫(くち へん) 背(にくづき ) 酪(さけづくり (とりへん) ) ) 改(ぼくづくり (のぶん) 雄( ) ふ る と り 登(はつ がしら) 究(あな かんむり) 悲(した ごころ ) 泰(した みず ) 区(かくし がまえ) 凶(うけばこ ) 原(がん だれ) 戸(と だれ) ) 兄(にん にょう( ひとあし) 魅(き にょう) を出そうとする季節を表す。 部首「阝 」こざとへん 年 」 ( ) 古代文字「 古代文字 出題者 年 ・ 」 は、下向きの足あとの形。それを上下に並べ、神が地上に向かっ て歩く様子を表す。 は、神様が天と地上をのぼりおりする時に使うはしご・階段。 古代文字「 は太陽。 は草の根。 は草。 冬の間、閉じこめられていた草の根が、日の光を浴びて、草として芽 部首「日 」ひへん ワークシート⑥〈解答〉 何という漢字でしょう 春 降 …… …… 漢字クイズ作り ― ― 答え 答え 「何という漢字でしょう」 部首 18 教科研究国語 No.198 ワークシート⑤〈解答〉 名 称 部首 にんべん てへん 頁 ふし づくり 卩 うかんむり 皿 れんが くにがまえ まだれ ゆきがまえ 广 えんにょう しかばね 廴 尸 行 囗 灬 宀 扌 イ 部首を覚えよう 偏 旁 冠 脚 構 垂 繞 そうにょう ⑪ 彩 → 彡 ⑫ 史 → 口 ⑩ 杉 → 木 ⑬ 回 → 囗 ⑭ 蒸 → 艹 ⑮ 聖 → 耳 ○部首はどこですか。 例 財・貨 → 貝 ② 魂・魔 → 鬼 ③ 賓・賄 → 貝 ① 秀・穀 → 禾 ④ 恭・愁 → 心 ⑤ 初・券 → 刀 ⑥ 裸・褒 → 衣 ⑦ 閉 → 門 ⑧ 問 → 口 ⑨ 朗 → 月 走 「漢字を見抜く」 漢字博士になろう! 三回漢字講座 1 はじめに 学校図書の一年生の教科書に、 「漢字を見抜く」という漢字 の知識に関する学習材が1から5まで用意されています。その うち1〜3の漢字の部首と漢字の成り立ちを中心に、漢字に興 味をもってもらい、誰でも楽しく学習できるよう、クイズなど を取り入れたワークシートを紹介したいと思います。 2 講座内容とワークシートの使い方 第一回漢字講座(五月)漢字を見抜く1「漢字の成り立ち」 教科書を開く前に、漢字はどうやってできたのかを質問しま す。その後「六書」とは何かを簡単に説明した後、ワークシー ト①の問題一、象形文字の問題を考えさせます。ここの問題は 難しいので、ヒントを与えながら解かせます。例えば、③は物 を切ったりする道具・④⑤は真上から見た形・⑦は動物・⑫は 人の手の形等を助言します。二・三の指事・会意文字はヒント なしでやらせます。時間制限をし、グループで競争してもよい でしょう。四の形声文字は、漢字の読み(音)と意味(義)と が合わさってできた漢字であることを確認して解かせます。続 いて、問題ア〜ウのように、読み(音)の部分が意味を併せ持 つこともあることも知らせ、問題を解かせます。ここでも競争 させるとよいかも知れません。発展として、ワークシート①の 問題を参考にさせて生徒に似たような問題を作って来させま す。当然、漢和辞典を活用します。できた問題は次の時間に紹 介します。 第二回漢字講座(七月) 漢字を見抜く2「声符による漢字の読み」 教 科 書 に 入 る 前 に、 教 科 書 巻 末 の 常 用 漢 字 表 を 利 用 さ せ て ワ ー ク シ ー ト ② の 問 題 を 解 か せ ま す。 そ の 後、 教 科 書 で 学 習 し、宿題に同じ声符をもつ漢字をいくつか集めておくよう指示 しておきます。次の時間にワークシート③を使って、漢字クイ ズ を 作 り ま す。 ま ず、 問 題 一 を 解 か せ 解 答 し ま す。 問 題 二 で は、問題一の例を参考にして、クイズを作ります。教科書巻末 の常用漢字表を利用させ、シートにある声符に合う部首を考え させるのです。その後、班を作って、班員同士でプリントを交 換してクイズに答えます。さらに、班員全員で知恵を絞って問 題三のクイズを作ります。声符も部首も自分たちで考えるので す。クイズが出来上がったら、破線で切り離し、いったん集め ます。他の班のクイズ(六班あれば、他の班の五枚)を各班に 配り、班員で分担したり相談したりして答えます。最後に出題 班に返して採点してもらいます。 第三回漢字講座(十月) 漢字を見抜く3「部首による漢字の意味」 導入で「心(忄でもよい)」のつく漢字を順番に生徒に書か せるゲームをします。間違ったり思いつかなかったりした生徒 は脱落するというルールで行います。次に、ワークシート④を 使い、①〜⑧を使って、部首がもつ意味を考えさせます。1で は部首のテストをします。出題は、「てへん・かねへん・もん が ま え・ さ ん ず い・ く に が ま え・ か い へ ん・ り っ と う・ ま だ れ・しんにょう」の九問です。次に2で、部首と音の部分を組 み合わせてできる漢字を個人で考えワークシートに記入させま す。タイム設定をしておくといいでしょう。その後、班を作っ て 他 の 班 員 が 考 え た 漢 字 を 付 け 加 え ま す。 そ の 後 は、 班 対 抗 で、順番に一字ずつ、黒板に書かせていきます。最後まで残っ た 班 を 勝 ち と し ま す。 次 の 時 間 は、 教 科 書 を 学 習 し た の ち、 すぐに役立つワークシート 19 ワークシート⑤を使って主な部首の意味を考えさせます。漢和 辞典を使わせ、班員で分担して調べるようにし、制限時間を設 けます。ちなみに「部首はどこですか」の問題は、教科書記載 内容の確認になっています。部首の学習の終わりに漢字の成り 立ちを紹介する宿題を出します。いくつかの部首をあらかじめ 生徒に分担させ、ワークシート⑥の例に倣って調べさせます。 生徒が調べてきた物を掲示し、 「何という漢字でしょう」とい うコーナーを作ります。 3 終わりに このような試みを、教科書の学習時期に応じて、三回行って みます。計三回の講座が系統性を持って学びのつながりや広が りになればと思い試みています。 年々、生徒の漢字離れ、漢字力の低下を顕著に感じていると ころです。漢字一字一字の持つ意味を知りません。音読みしか ない漢字はなかなか覚えられません。そういった漢字の学習に も挑戦していかないといけないと思っています。 (周南市立鼓南中学校 林 浩司) 「漢字を見抜く」 20 教科研究国語 No.198 中学校国語 漢字の学習 1~3 教科書の新出漢字に即して、新常用漢字を含む全て の常用漢字の「読み」 「書き」を完全マスター。 ● 見開き ・書き込み式の学びやすい構成です。 ● 27年度からの高校入試対策はこれで万全です。 ● ● B5判 ● 各学年1冊 ● 64~72ページ ●1色刷り ● 学校納入定価:各300円(税込) 学校図書株式会社 本社 〒114-0001 東京都北区東十条3-10-36 URL: http://www.gakuto.co.jp ・業務推進部 e-mail: [email protected] ・第一編修部 中学校国語 e-mail: [email protected] TEL: 03-5843-9433 / FAX: 03-5843-9440 TEL: 03-5843-9435 / FAX: 03-5843-9437 本 社 営 業 部 〒114-0001 東京都北区東十条3-10-36 e-mail: [email protected] TEL: 03-5843-9434 / FAX: 03-5843-9440 札 幌 出 張 所 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-1-30 TEL: 080-4083-6832 / FAX: 011-616-0202 東 北 営 業 所 〒038-0031 青森市三内字玉作5-6 e-mail: [email protected] TEL: 017-782-3195 / FAX: 017-782-1167 北 信 越 営 業 所 〒950-0916 新潟市中央区米山5-1-25 e-mail: [email protected] TEL: 025-241-2591 / FAX: 025-241-2596 静 岡 営 業 所 〒410-0306 沼津市大塚15 e-mail: [email protected] TEL: 055-966-1126 / FAX: 055-967-1393 近 畿 営 業 所 〒567-0865 茨木市横江1-7-1 e-mail: [email protected] TEL: 072-637-7216 / FAX: 072-637-7217 中 国 営 業 所 〒733-0037 広島市西区西観音町1-21-502 e-mail: [email protected] TEL: 082-232-3341 / FAX: 082-232-3342 四 国 出 張 所 〒790-0811 松山市本町6-11-1-101 e-mail: [email protected] TEL: 089-917-9251 / FAX: 089-917-9253 九 州 営 業 所 〒890-0034 鹿児島市田上3-3-11-202 e-mail: [email protected] TEL: 099-253-9437 / FAX: 099-259-6876 沖 縄 出 張 所 〒901-2126 浦添市宮城4-10-1 e-mail: [email protected] TEL: 098-874-0441 / FAX: 098-874-0441 教科研究国語 No.198 2014 年 4 月発行
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