特集 September Vol.26 No.6 老健施設の介護人材確保を考える 図 老健施設の介護人材確保を考える 2025 年に 38 万人の 介護人材が不足 べきだとされた。 2 つ目の考え方では、 「介護人材の構造転換」 の必要性が示されている。これは現状の専門性が 団塊の世代が 75 歳以上の後期高齢者となる 不明確、役割が混在といった構造(まんじゅう 2025(平成 37)年において、約 250 万人の介護 型)では、将来展望・キャリアパスが見えづらく、 人材が必要と推計されている。しかしながら、生 早期離職を招くほか、介護職への理解・イメージ ろうか。 受け止めるためには、介護人材の資質の向上にも 産年齢人口の減少、介護業界からの人材の流出な 向上が不十分だとされるためだ(図) 。 まず、介護業界への人材参入を促進させるため 注力しなければならないだろう。 どの要因により、約 38 万人もの介護人材がその こうした構造に対し、さまざまな年齢層で多様 には、介護の仕事の魅力発信や、介護職のイメー その達成のためには、いままでのような一様の 頃には不足しているとの見通しがなされた。 な人材が介護業界に入ってこられるように間口を ジアップのための地道な広報が必要ではないか。 人材確保ではなく、それぞれの役割や機能、必要 この危機に対する方策を打ち出すべく、昨年か 広げ、能力や役割に合致したキャリアパスを整備 介護を職業として認識していない層、例えば児 な能力、キャリアパスのあり方に対応するための ら議論を行ってきた社会保障審議会福祉部会の福 して専門性の向上や適切な機能分化を図り、職場 童・生徒、就職活動期の学生、地域の若者、主婦、 具体的な方策が必要とされる。加えて、マネジメ 祉人材確保専門委員会では平成 27 年 2 月、今後 への定着を促すという構造(富士山型)への転換 中高年齢者層に、介護の楽しさ、深さ、広さと ント能力などの必要とされる能力に応じた養成や の介護人材確保に向けた 4 つの基本的な考え方を をめざす。 いった魅力を伝え、マイナスイメージを払拭する 教育プロセスの確立、役割の明確化なども、きち 示した。 3 つ目は「地域の全ての関係主体が連携し、介 ことを第一に推し進める。そのためには適切な情 んと打ち出していくべきである。 護人材を育む体制の整備」 。介護事業者だけでは 報発信を行ったり、交流会や職場体験などを催し * * * * * なく、都道府県などが適切な役割分担を行いなが たりして、就職先の選択肢の一つに介護を捉えら 以上のことを踏まえて、今回の特集では「老健 ら、地域の関係者として連携して取り組みに注力 れるように、理解の促進を図ることが求められる 施設の介護人材確保を考える」をテーマに、介護 1 つ目の考え方である「持続的な人材確保サイ できる体制づくりを築く重要性を説いている。 だろう。 人材確保の現状や課題、今後の展望などについて クルの確立」は、人材の量的確保と質的確保の両 4 つ目の「中長期的視点に立った計画の策定」 また、介護分野においては、入職後 3 年以内に 考える。 方をベースに置き、介護人材の好循環が行える力 では、2025 年に向けた介護人材確保を、戦略的 約 7 割が離職していることから、早期離職防止の さまざまな視点・立場からの意見を集めるべく、 を養うことが重要というものだ。その上で、既存 に目標を定め、計画的に行っていくことの必要性 ために労働環境・処遇の改善の方策を考えていく 全老健の平川博之副会長と、現場で働く介護職の の労働市場の強化はもちろんのこと、介護人材の を打ち出している。 ことが必須といえる。それには、新任の介護職が 代表として日本介護福祉士会の石橋真二会長にイ 働きやすい職場を提供したり、結婚・出産・育児 ンタビューを実施した。また、独自の人材確保対 によって離職することなく生涯にわたって働き続 策に取り組んでいる、 「介護老人保健施設リハリ けられる就業体制を整えたり、意欲をもって業務 ゾートわかたけ」と「介護老人保健施設さくらが 参入促進と キャリアパスの整備を 層を厚くするために若者や障害者等、他業界から の「参入促進」を図ることも大切だと言及されて いる。 介護現場からは 介護の魅力発信を (平成 27 年 2 月 25 日第 5 回社会保障審議会福祉人材確保専門委員会) また、離職防止のための「労働環境・処遇の改 介護職の不足という未曾有の危機 ― 。この に邁進できるようなキャリアパスの構築など、腰 わ」を取材した。 善」や、専門性の高い介護人材を育てるための 課題と向き合うために、介護の現場では、どのよ を据えて取り組んでいくべきではないだろうか。 本記事が老健施設の介護人材確保の一助になれ 「資質の向上」といったことも併せて進められる うな人材確保の取り組みを行っていくべきなのだ さらに、今後の介護ニーズの高度化・複雑化を ば幸いである。 10 ●老健 2015.9 010-011特集 概論(五)0812.indd 11 老健 2015.9 ● 11 2015/08/12 14:06:37
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