Wa j i m a M u s e u m o f U r u s h i A r t N ews 漆芸美術館だより 73 2014.12.20 文化交流大使に 口博啓氏就任 …………………………………………2 国際漆展・石川2014 輪島展……………………………………………3 第32回日本伝統漆芸展 輪島展 ………………………………………4 漆の小箱15「職人と道具―研炭―」……………………………………5 INFORMATION ……………………………………………………6 第 32 回日本伝統漆芸展 文化庁長官賞 蒔絵宝石箱「刻」 浅井康宏氏 Wajima Museum of Urushi Art News 73 文化交流大使に 辻口博啓氏就任 先 ご ろ﹁サ ロ ン・デ ュ・シ ョ コ ラ﹂を 2 ひろ のぶ 連 覇 し た 世 界 的 パ テ ィ シ エ 辻 口 博 啓 氏 が、 当 館 初 の﹁文 化 交 流 大 使﹂に 就 任 さ れ ま し た。来 春 3 月 か ら 輪 島 や 能 登 を 舞 台 に 放 送 ぎ さ れ る、 NHK連 続 テ レ ビ 小 説﹁ま れ﹂の じ モ デ ル で も あ る 辻 口 氏 の 就 任 は、誠 に 時 宜 て、著 作 や ス イ ー ツ も 当 館 ミ ュ ー ジ ア ム シ 西 田 敏 行 氏︶ で 紹 介 さ れ、 人口に膾炙すると 伝 子 ︱ 己 の ル ー ツ に 誇 り を 持 て ︱﹂ ︵司 会 を 得 た も の と な り ま し た。こ の 機 会 を 通 し ョップでの販売を予定しています。 こ ろ と な り ま し た。四 柳 館 長 の 手 引 きで けん さん かい しゃ 辻 口 氏 は 四 柳 館 長 の 秘 蔵 っ 子 で あ り、お 代から輪島を訪れて漆器について研鑽を深 世界があり、両者の提携は新しい地平 を拓 門美術館を標語にしている当館と相通じる を目指しておられます。世界唯一の漆 芸専 洋 を 制 す﹂と い う 新 し い 発 想 で、世 界 制 覇 化 を 学 び、食 材 を 再 発 見 し て﹁和 を 持 っ て 的に取り入れる試みを実践。広く日本 の文 を大切にし、地場の食材をスイーツに 積極 り ま す。辻 口 氏 は 能 登・加 賀 の 歴 史 や 文 化 め、海外でも輪島塗を紹介された実績 があ 20 くものと思っております。ご期待ください。 北陸新幹線金沢開業に向けて 2 0 1 5 年 3 月 の 北 陸 新 幹 線 開 業 に 向 け、当 館でも さ まざま な 取り組 みを 行って い ます。特に ミ ュージ ア ムショ ップ の充実 に 力を入 れ ており、お 手 軽に能 登土 産を楽 し ん で い た だ け る よ う 工 夫 を 重 ね ま し た。 前 述 の 辻 口 博 啓 氏 考 案 の ス イ ー ツ に 加 え、 能登の特産品である輪島塩やいしる︵魚醤︶ な どの食 品、黒 柿皮製 品 や能登 上布 などの 工 芸品な ど、さ まざま な 商品を 取り 揃えま す。ご来館の際にぜひお立ち寄りください。 −2− 輪島塗を鑑賞する若き頃の辻口氏 (2000年8月12日、四柳館長撮影) 二 人 の 心 温 ま る 交 流 は、 NHKの﹁心 の 遺 輪島市文化会館での辻口氏講演時の記念写真 (左 辻口氏、右 四柳館長、2014年11月30日) Wajima Museum of Urushi Art News 73 月 日︵金︶∼ 年1月 国 か ら 応 募 が あ り、漆 芸 の 新 し い 広 が り を 考える国際的な展覧会として高い評価を得 て い ま す。本 展 の 開 催 で は、漆 芸 品 を 用 い た現代的な生活スタイルや新しい感性の提 案 な ど を 広 く 国 内 外 に 求 め る こ と に よ り、 漆器産業の活性化と漆芸を通じた国際交流 の国と地域から 点 の 推 進、さ ら に は 生 活 文 化 の 向 上 が 期 待 さ れています。 今 回 の 公 募 で は、 一次審査︵画 ︵うち日本 点︶の応募があり、 207 像審査︶を経て、 の国と地域から 点︵う ち日本 点を展示します。なお、 点︶が 展 覧 会 に 向 け て 寄 せ ら れ ま した。輪島展では 日 ︵日︶ *会期中の休館 月 日∼ 12 日 31 す。と て も 精 巧 な か ら く り で、飾 っ て 鑑 賞 す る だ け で は な く、触 れ て 楽 し む 要 素 を 取 り 込 み、工 芸 の 世 界 を 広 げ て い ま す。古 く か ら 中 国 な ど で は、犀 に 神 の 力 を 感 じ て き 門は計画的な生産や流通が可能な商品提案 表 現 を 主 目 的 と し た 作 品 部 門、デ ザ イ ン 部 か れ て の 出 品 と な り ま し た。ア ー ト 部 門 は にアート部門とデザイン部門の2部門に分 お り、漆 芸 の こ れ か ら の 方 向 性 の 一 つ を 示 楽しませる要素が込められた作品となって 踏 ま え た う え で、漆 な ら で は の 特 性 と 人 を ニ ー ク な 作 品 で す。伝 統 的 技 術 を し っ か り 願いを込める風習の語呂合わせのようなユ ま し た。犀 の 神 秘 的 な パ ワ ー と、賽 銭 箱 に の 部 門 で す。目 的 を 明 確 に し た こ と で、こ ちく 音 木 ピ ア ノ ブ ラ ッ ク﹂ ︹デ ザ イ ン 部 門︺ ︵写 回 展 記 念 特 別 賞 の﹁蓄 そ れ で は 入 賞 作 品 か ら、大 賞 の﹁犀 の 賽 真左下︶ 、作者は金沢市在住の東康弘氏です。 おん き 次 の ご 紹 介 は 第 銭箱﹂ ︹アート部門︺をご紹介します︵写真 電源を必要としないスマートフォン用スピ 覧会となっています。 左上︶ 。これは、輪島市在住の彦十蒔絵・若 ー カ ー で す。中 音 域 に 的 を 絞 り、表 面 を 漆 さい 宮 隆 志 氏 の 作 品 で、変 わ り 塗 の 一 つ、青 銅 で き っ ち り 塗 り 固 め る こ と で、音 圧 が 上 が せん ばこ 塗 に よ る 犀 の 形 を し た 漆 器 で す。本 物 の 青 る 効 果 が さ ら に 増 幅 さ れ る と い う 特 徴 を、 首 は 蓋 に な っ て い て 持 ち 上 が り、身 体 の 中 本 展 で は、漆 器 づ く り の 伝 統 が 今 も 連 綿 案であることが好評を博しました。 シンプルな形の中に上手に生かした商品提 から賽銭箱が出てくる仕組みになっていま さ ら に、体 長 は セ ン チ ほ ど で す が、犀 の 銅と見紛うほどの漆芸技術の確かさがあり、 さい したことで今回の大賞に選ばれました。 回 目 を 迎 え た 今 回 か ら は、新 た 10 れ ま で 以 上 に 厳 選 さ れ た 入 賞・入 選 作 の 展 ま た、 18 国際漆展・石川2014 輪島展 会期 回目の開催 10 と な り ま す。こ れ ま で 毎 回、世 界 の 十 数 カ ︵平成元︶に始まり、今回は第 本 展 は、漆 芸 の 公 募 展 と し て 1 9 8 9 年 19 輪島市在住の出品者は 名です。 と続く石川におい て、国内外からの息 吹に触れ、漆芸の新 しい未来像を探って いただく機会となれ ば誠に幸いです。 ︵高 柳 浩 子︶ −3− 2015 71 10 【第10回展記念特別賞】 蓄音木ピアノブラック 東 康弘 126 29 【大賞】 犀の賽銭箱 彦十蒔絵・若宮隆志 12 15 11 20 11 67 52 Wajima Museum of Urushi Art News 73 年1月 日 ︵土︶ ∼2月 回日本伝統漆芸展 輪島展 会期 2015 乾漆蓋物 山田勘太 作 東京都教育委員会賞 24 日 ︵月︶ *会期中無休 23 らく よう とき 受賞作品紹介 まき え ほう せき ばこ 文化庁長官賞 蒔絵宝石箱﹁刻﹂ 浅井康宏︵埼玉︶ かん しつ ふた もの 東京都教育委員会賞 乾漆蓋物 山田勘太︵東京︶ かん しつ もり き らく よう 朝日新聞社賞 乾漆盛器﹁落陽﹂ 伴野 崇︵石川︶ きち じょう か ちん きん ばこ MOA美術館賞 吉祥果沈金箱 水谷内 修︵石川︶ かん しつ す か ら べ は こ 日本伝統漆芸展新人賞 乾漆黄金虫箱 新谷仁美︵奈良︶ とぎ だし いろ え もり き せい さい 奨励賞熊本県伝統工芸館賞 研出色絵盛器﹁生彩﹂ 高橋香葉︵島根︶ かん しつ ぞん せい みず さし せ と かぜ 奨励賞輪島漆芸美術館賞 乾漆存清水指﹁瀬戸の風﹂ 孝史︵香川︶ −4− 第 91 日 本 伝 統 漆 芸 展 は、伝 統 の 継 承 と 現 代 生 活 へ の 応 用 を 目 指 し、日 本 工 芸 会 の 漆 芸 部 会展として毎年開催されています。 第 回 は、東 京・輪 島・広 島・熊 本 の 順 に 4 会 場 を 巡 回 し、重 要 無 形 文 化 財 保 持 者 ︵人 間 国 宝︶を は じ め、入 賞・入 選 を 果 た し た 作 品全 点 が 展 示 さ れ ま す。重 鎮 か ら 新 進 気 鋭 ま で、漆 工 芸 へ の 様 々 な 挑 戦 が 見 ら れ ま す。ま た 各 産 地 の 伝 統 が 育 ん で き た 地域性がうかがえるのも見どころの一つで す。 毎 年、地 域 別 で 最 多 の 入 選 数 を 誇 る 輪 島 は、今回も 名と最も多く、伴野 崇氏︵輪 かん しつ もり き 列品解説日程 会期中は全ての日曜日に列品解説を行いま す。時間は午後1時 分からです。 *要入館券 日︵日︶小森邦衞氏︵重要無形文化財 保持者・審査委員・鑑査委員︶ 2月 2月 日︵日︶西 勝廣氏︵特待者︶ 2月8日︵日︶山岸一男氏 ︵審査委員・鑑査委員︶ 2月1日︵日︶寺西松太氏︵特待者︶ 30 31 島市︶の乾漆盛器﹁落陽﹂が朝日新聞社賞を、 きち じょう か ちん きん ばこ 水 谷 内 修 氏︵穴 水 町︶の 吉 祥 果 沈 金 箱 が MOA美 術 館 賞 を 受 賞 す る な ど 地 元 作 家 の 活躍が目立ちます。漆文化を育んできた 当 地でぜひ、選び抜かれた漆芸作品をご鑑 賞 ください。 な お、会 期 中 は 毎 週 日 曜 日 に、出 品 者 に よる列品解説を予定しております。制作 過 程 や 技 法、作 品 に 込 め た 思 い な ど を、作 家 ご自身から直接聞くことのできる貴重な機 会です。ぜひこちらもご参加ください。 ︵河原法子︶ 22 15 乾漆盛器「落陽」 伴野 崇 作 朝日新聞社賞 32 32 Wajima Museum of Urushi Art News 73 は そ の 何 倍 も の 時 間 を か け て、漆 の 塗 膜 面 刷 毛 で 漆 を 塗 る 姿 を 思 い 浮 か べ ま す が、実 も繰り返して完成します。漆塗りといえば、 漆 器 は、漆 を 塗 る こ と と 研 ぐ こ と を 何 回 漆 の 塗 面 を 塗 り 重 ね る 前 に は、必 ず 研 炭 て使用します。 芯 と 皮 を 取 り 除 き、適 度 な 大 き さ に 切 断 し 研 磨 に も 使 用 す る こ と が で き ま す。木 炭 の ら か い た め、成 形 が 容 易 で、複 雑 な 曲 面 の に 研 磨 す る こ と が で き る の で す。研 炭 は 柔 当 て、水 を つ け て 動 か す と、や す り の よ う 木 炭 の 木 口︵ま れ に 柾 目 側 も 使 用︶を 押 し 剤 と し て 利 用 さ れ て い た こ と が 窺 え ま す。 炭を欠かすことができません。 品 制 作 や 文 化 財 修 復 の 現 場 で は、上 質 な 研 で も 研 炭 の 使 用 量 は 減 少 し て い ま す が、作 や 人 工 研 磨 材 等 の 登 場 で、漆 器 製 作 の 現 場 し、供給が危ぶまれています。耐水ペーパー し た が、社 会 の 変 化 に 伴 っ て 生 産 者 が 激 減 木炭はかつて日本全国で生産されていま で製造されています。 中に窯から引き出して消化するという方法 まさ め を研いで表面を均一に整える作業を行って を 用 い て 研 ぎ を 行 い ま す。こ れ は 前 段 階 の こ ぐち い ま す。研 ぎ に は、木 炭 が 使 わ れ て い る こ 塗 り ム ラ や 刷 毛 目 を な く し、平 ら に す る こ 漆の小 箱 とをご存知でしょうか。 と を 目 的 と し て い ま す。ま た、塗 面 に 細 か とぎ ずみ 木 炭 と 聞 け ば 燃 料 の イ メ ー ジ で す が、研 な 傷 を つ け る こ と に よ っ て、次 に 塗 り 重 ね とぎ ずみ 職人と道具︱研炭︱ 磨 用 の 木 炭 は﹁研 炭﹂と 呼 ば れ、漆 器 や 金 る漆をより密着させることができるのです。 向いています。 緻 密 で、蒔 絵 な ど で 金 属 粉 を 研 ぎ 出 す の に 存会﹂ ︵岡山県︶が選定保存技術保持団体に 養 成 に 取 り 組 む﹁伝 統 工 芸 木 炭 生 産 技 術 保 こ の 度、木 炭 製 造 技 術 の 保 存 と 伝 承 者 の −5− け 属 器 な ど の 制 作 に 用 い ら れ て き ま し た。奈 一口に研炭といっても様々な種類があり、 成形された研炭 は 良 時 代 の 正 倉 院 文 書 に は、既 に 木 炭 が 研 磨 するが 工 程 に よ っ て 使 い 分 け ま す。ニ ホ ン ア ブ ラ ギ リ を 原 木 と す る 駿 河 炭︵静 岡 炭︶は、比 較的柔らかいため研いだ面に傷が入りにく ろ いろ く、中 塗 り か ら 上 塗 り ま で 幅 広 く 使 わ れ ま す。仕 上 げ の 呂 色 工 程 で 使 用 す る 呂 色 炭 は エ ゴ ノ キ・チ シ ャ・サ ル ス ベ リ な ど を 軟 ら か く 焼 い た も の で、細 か な 傷 を 消 す の に 使 木 炭 に は 黒 炭 と 白 炭 が あ り、黒 炭 は バ ー 認 定 さ れ ま し た。永 い 歴 史 を 持 つ 木 炭 と 漆 用 し ま す。ツ バ キ を 原 料 と す る 椿 炭 は 硬 く ベ キ ュ ー 用、白 炭 は 備 長 炭 な ど が 身 近 な も の 関 係 が、今 後 も 末 永 く 続 い て い く こ と を はくたん の で し ょ う か。研 炭 の 多 く は 白 炭 で、窯 で 願います。 ︵竹村祥子︶ こくたん 原 木 を 燃 焼・炭 化 さ せ、炭 化 し た 材 を 燃 焼 研炭で漆の塗膜面を研磨する 15 Wajima Museum of Urushi Art News 73 INFORMATION イベント案内 新春を寿ぐおもてなし 日時 2015 年 1 月 1 日(木・祝)∼1月3日(土) ・元日限定 甘酒のおもてなし 日時 1 月 1 日(木・祝) 9:00∼16:00 *要入館券 ・わんじまのお菓子プレゼント(なくなり次第終了) 日時 1 月 1 日(木・祝)∼1月3日(土) *要入館券 ・新春ゲームコーナー 日時 1 月 1 日(木・祝)∼1月3日(土) *入場無料 わんじま福笑い、新春の一句、コマまわしなど ・新春福袋販売(売切れ次第終了) 限定 20 個、2,000 円。わんじまや美術館のグッズなど。 昭和の想い出展 ∼レトロ博物館∼ カメラ、ラジオ、おもちゃ、自動車カタログなど多数展示 会期 2015 年 1 月 10 日(土)∼18日(日) 会場 エントランスホール *入場無料 オリジナルMy椀 (マイわん)展 日時 2 月6日(金)∼11日(水・祝) 会場 講義室 *入場無料 ふれて感じるうるしの温もり企画 輪島塗で味わう当館謹製の「さと山スープ」 日時 2 月 14 日(土) ・15日(日) *要入館券 展覧会をご覧いただく お客様に、地物野菜で 作ったスープをお出し します。 お問い合せ 0768-22-9788 いずれも詳細が決まり次第 当館 HP やチラシ等でお知らせします。 TOPICS かがやきナイトミュージアム 今年度も美術館に隣接する輪島市漆の里広場において、14,000個の太陽光発電LEDを使用した ライトアップを行っています。ぜひご覧ください。観覧料不要・無料駐車場あり 会期 2015年3月31日 (火) まで 日没から4時間 見ごろは 19:00∼20:00 会期中、毎週土曜日は 19:00まで開館延長。お茶もご用意しています。 (入館は30分前まで) 写真展作品募集 かがやきナイトミュージアム を収めた、ベストショットを 募集中です。 (詳細はHP) 締切 2015年4月4日(土) 休館日 2014/12/29(月) ∼ 12/31(水) 年末休館 2015 / 1 / 19(月) ∼ 1/30(金) 展示替え・館内整備 2015 / 2 / 24(火) ∼ 2/27(金) 展示替え 漆芸美術館だより第73 号 2014 年(平成26 )12月 20 日 編集・発行 石川県輪島漆芸美術館 〒928-0063 石川県輪島市水守町四十苅 11 番地 TEL.0768-22-9788 FAX.0768-22-9789 http:// w w w.city.w ajim a.ishikaw a.jp/a rt/
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