-1- 平成27年7月7日校長講話 楠隼中高一貫教育校 校長 山﨑 巧 今日

平成27年7月7日校長講話
楠隼中高一貫教育校
校長
山﨑
巧
今日は生徒会長をはじめ役員の方々が任命されました。今、中学校、高等学校2人の生
徒会長に話をしてもらいましたが、本当に志のあるいい話をしてくれました。生徒会は行
事などを成功させるために、たくさんの下準備、なかなか目につかない陰の仕事が多いか
と思います。是非、皆さんの協力ですばらしい生徒会を作ってください。よろしくお願い
します。
さて、本日は七夕です。昨夜寮に行くと、皆さんも星に願いを込めて、短冊にいろいろ
な願いを書いていました。今でいう銀河系とは関係ありませんが、「天の川」のことを昔
のことばで「銀河」と言っていました。
そして、皆さんが住むこの地域「前田」は、江戸時代は「銀河郷」と言われていたと文
献には書かれています。「銀河郷」は「銀河の里」、すなわち「天の川の降る町」という
意味でしょうか、この地域は高台にあり、昔から相当に星のきれいな場所であったと推測
されます。
残念ながら、今年の鹿児島は雨がやまずに、なかなか天空の星空は見られませんが、す
でに5月から天の川は、国見山脈を斜めに横切って流れ落ちる滝のごとく、この大隅・肝
付の地に光り輝いています。ですから、皆さんの書いた願いの一つ一つや、また書かなか
った祈りの一つ一つが少しでも届くといいと思います。
さて、今日はあと一つ銀河系に関係するお仕事をしているあるお方のお話をします。
今日の中学生のシリーズ宇宙学講師、JAXA の「山方健士先生」のお話です。昨夜先生と
お話をして、とても大きな感銘を覚えましたので、今日そのことを話します。
その方は、幼稚園から高校まで十数年間を横浜のインターナショナルアメリカンスクー
ルに通われて日本語よりずっと英語を使って来られました。大学は自分の意志でアメリカ
のボストン大学理学部に入学・卒業されました。
そして、卒業後は筑波大学大学院に進学され、日本の宇宙開発に携わられています。現
在の職務は、名刺に「有人宇宙環境利用ミッション本部
有人宇宙技術部」と書かれてい
ます。つまり、最先端である宇宙開発の、最も最先端の分野を開発されている研究者・技
術者ということ。約18年ぐらい英語中心の生活をして、大学卒業して23歳で久しぶり
に日本語の環境に帰ってきたと言われていました。
私は「どうして最も宇宙の仕事をしやすい社会であるアメリカに残って仕事をしなかっ
たのか。どうして開発の仕事のしにくい日本を選んだのか」と聞きました。そうすると、
先生のお答えは至ってシンプルでした。
「日本の文化や言葉への順応はとても苦労した。しかし、自分は何よりも日本人として
NASA が何をしても追いつけないことをしたかった。そして、予算も NASA の1/10
である日本の JAXA が戦って勝つことに意味がある。とにかく日本人はそれができると
思った。」と答えてくれました。
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山方先生はいろいろなことをされています。例えば、世界の宇宙食300種類ありま
すが、中に日本の作った宇宙食が30ほどありますが、山方先生は全てを開発の端緒を開
いた人です。宇宙食の採用は難しく、NASA が宇宙で使用することを許可しないと導入で
きないものです。どうして、先生に作れたか、許可されたかというと、最後は決め手は英
語だったと言われました。先生は、日本食の宇宙食を作りたくて作りたくて、NASA に行
き宇宙食の技術者の知り合いを作り、宇宙食を許可される微妙な条件を電話やメール・デ
ータのやりとりで、全てクリアできたということです。彼が英語のネィティブレベルの微
妙でさらに微妙なニュアンスを分からなければ、絶対に教えてもらえなかったし、理解も
できなかったと言います。だから、自分みたいに英語があと一つの母国語のような日本人
にしかできない仕事もあるといわれます。
もう一つ、先生は、宇宙服の開発や危機管理の仕事にも携わっておられ、日本人の宇宙
飛行士が活躍しはじめた時代から仕事されておられますから、山崎直子宇宙飛行士などと
も、一緒に訓練したり、訓練中に本当に遭難されたりしています。若田光一コマンダーを
はじめ、国内外の多くの宇宙飛行士ともつきあっておられます。宇宙飛行士には共通して
何か計り知れない人間性の高さや頭の回転の早さがあると言われます。複雑な問題を最も
シンプルにしてしまうのが普通の人とは違う、そしてそのためにどんな時でもパワフルな
プラス思考であり続けるのが学ぶところと言っておられました。
また、国際宇宙ステーション終了までには、後10年弱はありますが、山方先生は次の
開発をどうするかというミッションに携わっておられます。現在、有人惑星探査の話し合
いが始まっており、今年もドイツやアメリカにも協議に行っておられると言うことです。
先生の誰にもない武器はそのネィティブの英語力。宇宙技術に熟達して、英語を駆使でき
る先生の仕事がそこにあるという様子でした。
短い時間での会話でしたが、私が最も感銘したのは、山方先生のチャレンジ精神はもち
ろん、日本を愛するお気持ち、そして日本人の能力を信じている一途な思いでした。また
人にその思いを託すのではなく、自分でそのことをアクティブに証明してみせたことです。
「日本の少ない予算の中でこそ、日本の技術が世界に勝つ意味がある」と、繰り返しおっ
しゃいました。陰で支えている人たちのこうした誇りと努力で日本の全ての技術が成り立
っていることを実感しました。
今日、中学生は山方先生の講義を受けますが、今日の講義の中では、おそらく話されな
いであろうことを全校朝礼でお話ししました。こうしたことも頭に入れて、講義を聴くと
いいと思います。あと少しで1学期も終わりますが、それぞれやり残したことがないよう
に、具体的な努力を尽くして有終の美を飾ってください。
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