タマネギの高温期育苗技術の開発(PDF 263.15 KB)

タマネギの機械定植に対応した高温期育苗技術の開発
~8月下旬に種をまいて健苗を育てる~
富山県農林水産総合技術センター 園芸研究所
1.背景とねらい
富山県におけるタマネギの機械化一貫栽培では、全自動移植機で定植を行います。機械定植
の適期は10月中下旬と短く、この時期に機械で定植可能な苗を育てるためには、8月下旬から
9月上旬に播種しハウスで育苗する必要があります。
しかし、既存の県外産地では露地育苗が中心で高温期のハウス育苗についての知見がなく、
現地では発芽が不安定な状況であり、技術開発が急務となっていました。
そこで高温期においても発芽が安定し、かつ省力的な健苗育成技術を開発しました。
2.成果の概要
(1)高温期における発芽の安定化
①タマネギは30℃の高温下でも95%以上の発芽率となり、品種によっては33℃でも90%以
上の発芽率となるが、35℃になると顕著に発芽率が低下する(図1)。
②播種後から発芽揃いまで遮熱シート(商品名:タイベック)を被覆すると、培地内温度は無被
覆より低くなり、最高温度を33℃以下に抑制できることから、発芽が良好となる(図2、3)。
③セルトレイに播種後、覆土に用いる資材の材質や含有肥料量は発芽の揃いに影響し、覆土
専用土(ピートモス:バーミキュライト=1:1、窒素0%)を用いると発芽が揃う(データ略)。
45
100
タイベック
無被覆
ラブシート
シルバーポリトウ
90
80
40
70
培
地 35
内
温
度 30
(
℃
)
25
発
60
芽
率 50
(
% 40
) 30
20
10
0
ソニック
甘70
ターザン
ターボ
ネオアース もみじ3号 品種
発芽率
80
60
40
20
0
25 30 33 35 25 30 33 35 25 30 33 35 25 30 33 35 25 30 33 35 25 30 33 35 25 30 33 35 温度
アドバンス
発芽勢
100
発
芽
勢
・
発
芽
率
(
%
)
20
タイベック ラブシート
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314151617181920212223 時
シルバー
ポリトウ
無被覆
播種6日後の発芽率(%)
図1 温度と発芽率の関係
図2 被覆材の違いによる培地内温度の推移
図3 被覆材の違いと発芽
(2)健苗育成
①育苗時の追肥はポーラス状肥料を使用すると液肥と比べ
て苗の生育が良好となる。
②育苗培土に被覆肥料(商品名:マイクロロングトータル 201
70 日タイプ)をセルトレイ 1 枚当たり25g混和すると追肥が
不要で省力となり、苗質が向上する。
慣行(液肥追肥)
試験区
(ポーラス状肥料追肥)
慣行(液肥追肥)
試験区
(被覆肥料混和培土)
3.成果の活用
上記のタイベック被覆、専用土を用いた覆土、ポーラス状肥料による追肥技術は現地で実際に
活用され、普及しています。また、育苗培土に被覆肥料を混和する技術については、現在培土メー
カーと協力し、タマネギ専用培土として市販に向けて現地実証を行っています。