平成 22 年度卒業論文 「長野盆地の霧に関する長期データ解析と長野

平成 22 年度卒業論文
「長野盆地の霧に関する長期データ解析と長野盆地南部に発生する霧
の特徴」
筑波大学 第一学群 地球科学専攻 中島剛
要旨
長野盆地では秋から冬にかけて霧が発生することが知られている。信濃川や
犀川などの大河川からの蒸発霧に放射冷却による放射霧が加わることで濃い霧
が発生すると考えられてきたが詳しい観測的研究は実施されてこなかった。長
野気象台で観測された 1961 年から 2005 年までの現在天気のデータ解析による
と、11-12 月に霧が発生しやすかった。その時の気温と水蒸気圧の関係が 7-8 月
のものに比べ飽和水蒸気圧曲線に近く、大気中の水蒸気が凝結しやすい状態で
あった。長野盆地南部の千曲市にて 2009 年 4 月から 12 月まで 3 地点での自動
気象ステーション及び高台からのインターバルカメラによる霧の観測を試みた。
その結果、千曲市にて高湿度になる時間帯は降水が生じた日や風速が低下する
夜間であった。同期間中に霧が確認された夜間の気温・水蒸気圧の短時間変化
をみると、気温低下にともない混合比の減少がみられた。これは夜間の気温低
下により霧が発生していることを示唆している。また、気温の低下と正味放射
量に相関がみられることから、夜間の気温低下は放射冷却によることが確認さ
れた。しかし、霧が発生した日は放射冷却量が大きい日とは限らなかった。霧
の発生が明らかな日において水蒸気量変動を調べたところ、霧発生前日の日中
に千曲市では水蒸気量の増加がみられたが、長野気象台では増加が確認されな
かった。つまり同じ放射冷却が卓越しても水蒸気量分布が盆地内で非常に不均
一であることが、霧の発生を確実に観測・予測することを困難にしている要因
だといえる。