5. 「常時ݗ速接続時代」をむかえて インターネットへのݗ速での常時接続が、一般家庭でも常態化しようとしている。ダイアルアップ接続 というのがインターネットをちょっとのぞき見るだけの仮接続でしかなかったことを考えれば、ようやく 本来のインターネット時代が到来したといえるかもしれない。筆者の家でも、ADSL 回線に無線 LAN をつ ないでいるが、2400bps のモデムでしばしば切断されるアクセスをしていたころからみれば、たしかに夢の ような環境ではある。しかし、それはそれでまた、古くからある子ネットワーク固有の問題に再度気が つかせられるという側面もある。 政府は、2005 年までに、既存のメタル回線を利用した DSL サービスが 3000 万世帯に、光ファイバーに よるଵݗ速接続は 1000 万世帯が可能になると予想している。しかし、そうしたインフラ整備においてあと まわしにされる地域住民の怨嗟の声を、BBS などで聞くことも多い。子ネットワークは、ற市と郡 の情報格差をなくすといわれもしたが、以前にも書いたように、実際には日本で一番インターネット接続 に便利なのは東京であるという事態は今でもまったく変わっていない。情報ネットワークの整備は経済的 な採算を度外視したものでなければならず、むしろ夕刊の届かぬような地方にこそ優先的に光ファイバー を敷০すべきではないかと思うのだが、民間事業者に依存した現状ではそれも不可能なことである。最も 情報ネットワークを活用すべき大学などの研究機関にしても、地方大学などでは、学内にギガビットイー サーネットを引いてはいるものの、上流のバックボーンにはわずか 1.5Mbps という ADSL よりૺい速度で つながっているところもある。この意味では、現時点での格差は、過渡期的なものであるにせよ確実に増 大しているといってもよい。IT 立国などということをいうのであれば、こうした事態を改善するための公 的な援助を早急に行うべきであろう。 また、早さと便利さを求めて常時接続に切り替えるユーザの何割が、ネットワークに常時接続するとい うことが何を意味しているのかを理ӕしているかどうかも問題となる。家に新しい窓をひとつつけたとき にۇのかかるものにすることはあたりまえであるが、自分のコンピュータが世界の情報を入手可能な状態 にあるということは、世界のコンピュータが自分のマシンにアクセス可能になることであるという単純な 事実に気がついていない人がまだまだ多いようだ。ݗ速常時接続になったのをきっかけに、自前のウェブ サーバを立ち上げたり、Gnutella などのファイル交換プログラムを利用しようとする人の場合、英܃で書か れているからといって、ろくにマニュアルを読まずにソフトをインストールすることがしばしばあるだろ う。いつのまにか、自分のマシンが外から丸見えになってしまっているということも稀ではない。 例えば、Windows 用のある種のファイル交換プログラムには、デフォルトの共有フォルダ০定が C:¥に なっているものがあり、これを֬動した瞬間に、C ドライブのハードディスクの内容は世界中に公開され ることになる。そこまで極端ではないものの、Code Red ワーム事件で悪評をかった IIS(Internet Information Services)などのように、重大なセキュリティホールをもつソフトがプリインストールされて大量に出荷さ れている。しかも、そうしたマシンを探し出すソフトは、セキュリティチェックソフトという名目でそこ らじゅうにころがっており、小学生でも簡単に利用できる。一般家庭で常時接続を楽しんでいるユーザの どれだけが、セキュリティ情報に常に注目してパッチをあてたり、ウィルス除去ソフトの定義ファイルを 更新したりするだろうか。そしてわれわれは、そのようなユーザを「೪難」することができるのであろう か。 2001 年 1 月号でもふれたように、この「೪難」が正当化されるのは、こうした低いセキュリティ意ࡀの 結果が、たんに当人に災難をもたらすというにとどまらず、自分のマシンが踏み台となって、他人に被害 を与えることになるからだという理由があげられることがある。実際、Code Red 事件やその後おきたNimda 事件に関しても、アクセスログをみれば、バックドアを仕掛けられたマシンからの不正なアクセス要求が 膨大な数で行われていることがわかる。その発信元のドメインを調べてみると、どうも日本やչ国のADSL ユーザに割り振られているらしいIP アドレスがかなりの数に上っている。 こうしたユーザの多くは、自分のマシンが汚染されているということに全く気がついていないのだろう し、仮にその事実を指摘されても、ちゃんとした反応ができるとは限らない。事実、大学のある研究室の マシンが Code Red に汚染されていることをログから発見し、話でその事実を研究室の教授に伝えたとこ ろ、決して೪難がましいۗい方はしなかったにもかかわらず、たいへん不快そうな応対をされたことがあ る。 曰く「私がなにか悪いことをしましたか?」 。そう、あなたは何も「悪いこと」はしていない。では、何が 「悪い」のか。もちろん、ウィルスを作り、流した人間、そしてセキュリティホールだらけの「商品」を 流通させた上に、 「ねらわれるのは普及の証」とうそぶくソフトウェア会社だろう。しかし、個人の義務や 責任というものがほんとうにないのかどうかは、ݗ速常時接続時代をむかえた今、一度再考してみる必要 があるのかもしれない。全国で 4000 万世帯だそうである。 「不正アクセスේ止法」があるからといって、 これらすべてにセキュリティの確保を義務づけることなどできるはずもないということだけは確かである (2001 年12 月)
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