めん羊による乾草の消化 率と乾草の組み合せ効果

J
.Hokkaido GrassloSci. 26:132-135 (19
9
2
)
めん羊による乾草の消化
率と乾草の組み合せ効果
緒
進・森田
穂
西埜
茂・福本
(酪農大)
仁司
反すう家畜の消化率は、飼料自体の成分だけでなく、同時に摂取した共存飼料の組成にも影響され
る(飼料の組み合せ効果). 飼料の組み合せ効果(相絡効果)について、組飼料:濃厚飼料による消
化率の変動から、共存飼料(濃厚飼料)の給与割合と給与飼料の消化率の関係が報告されてい
3,
4
)。 しかし、基礎飼料の消化率に対する共存飼料の化学的組成、
るし 2,
あるいは共存飼料の消
化率との関係は明らかになってない。
したがって、本試験では単一給与の可能な飼料による組み合せ効果を、基礎飼料に低品質乾草(イ
ネ科主体)、共存飼料に高品質乾草(アルフアルファ)を用いて、単用時および併用時の消化試験を
計 5回行って検討した口
材料および方法
3頭で、下記の飼料を合計延 1
5頭 ζ
l 制限採食(自
供試動物は去勢めん羊(サフォーク雑種 3歳 齢 )
由採食量の約 8
0%)させた。
c
m
)、高品質乾草はアルプアルファ乾
試験飼料は、低品質乾草がイネ科主体 l番刈乾草(長さ約 2
0cm)であった。飼料給与は、飼料区 lがイネ科主体乾草、飼料区 5がアルフ
草(輸入品、長さ約 2
アルファ乾草の単一給与(単用時)で、併用時の飼料区 2ではイネ科主体乾草とアルフアルファ乾草
表2
. 飼料摂取日量
表 1
. 飼料給与日量
単 用
飼料区
1
5
3
4
1
6
0
0
1
4
4
0
7)11フ ァ J
レファ
計
1
6
0
0
9
6
0
9
6
0
1
4
4
0
1
9
2
0
2
4
0
0
2
4
0
0
給与割合.%
イネ科主体
5
2
3
4
1
0
0
4
g
イネ科主体
4
8
0
2
4
0
0
1
飼料区
乾物摂取量.
乾草給与量.原物 E
イネ科主体
併用
単周
併 用
2
1
2
5
6
アJ
レ7 ァ J
レブァ
計
体重比.%
1
2
5
6
2
.
3
5
2
1
1
8
8
5
9
6
7
3
1
2
8
9
1
7
1
9
2
1
1
8
1
8
6
3
2
.
4
0
1
9
6
2
2
0
4
1
3
.
3
5
2
.
5
8
2
.
7
3
1
0
0
5
5
4
5
3
5
6
5
1
6
8
4
3
2
2
摂取割合.%
1
0
0
アJ
レファ J
レフ T
の給与割合(原物)を
1
0
0
6
0
4
0
2
0
イネ科主休
1
0
0
4
0
6
0
8
0
アルフアルファ
ーー
6
0:4
0、飼料区 3では 4
0:6
0、飼料区 4では 2
0:8
0の 混 合 給 与 と し た
(表 1
,2
)。
消化試験は、去勢めん羊を代謝撞に入れて、飼料の飼い慣らし後に各飼料区の試験期聞を 1
0 日間
(予備期 7日間、本期 3日間)として、連続 5回行った o 乙の場合、本期 3日間の全糞を採取秤量し
た。消化率は、乾物、粗蛋白質、中性デタ一ジエント繊
一l
に
ζついて測定した口
その他は大体常法とおり実施した。
-132-
北海道草地研究会報 2
6:1
3
2-135 (
19
9
2
)
結果および考察
各飼料区における給与飼料の成分含量を表 3に示した。併用時の乾物含量およびエネルギー含量は
表3
. 給与飼料の成分含量 a
飼料区聞に差がなく大体等しいが、組蛋白質含
量はアルフアルファ乾草の摂取割合に伴なって
単用
1
飼料区
増加し、中性デタージエント繊維含量および酸
8
6
.
8
乾物.%
性デタージエント繊維含量は逆に減少した。
時の乾物、粗蛋白質、酸性デタージエント繊維
8
9
.
5
8
8
.
7
8
9
.
0
4
8
9
.
3
6
.
7
1
7
.
5
1
2
.
0
1
4
.
0
1
5
.
9
中性デタージェント繊維
7
3
.
9
3
9
.
9
5
8
.
8
51
.9
4
5
.
4
酸性
4
6
.
4
3
5
.
7
4
2
.
6
4
0
.I
3
7
.
8
4
.
7
4
.
4
4
.
5
4
.
5
4
.
4
組蛋白質.乾物中%
各飼料区の実測消化率を表 4に示した。単用
併用
5 2 3
エネルギー. k
c
a
l
/乾物日
およびエネルギーの実測消化率は、飼料区 5が
a 摂取飼料の成分含量
飼料区 lより高く、なかでも粗蛋白質の消化率
が非常に高かった。乙れに対して、中性デタージエント繊維の実測消化率は、飼料区 5の方が飼料区
1f
乙比べてわずかに低かった。した
表4
. 実測消化率
併
単周
がって、併用時の乾物、粗蛋白質、
周
一
1
5
2
3
4
平均値
乾物.%
4
9
.
5
6
4
.
5
5
6
.
2
5
8
.
0
6
4
.
0
5
9
.
4
租蛋白質
4
2
.
1
7
6
.
9
6
6
.
7
.2
71
7
5
.
9
7
1
.2
飼料区
中性デタージェント繊維
51
.
3
4
9
.
4
5
2
.
0
5
0
.
0
5
2
.
2
51
.4
酸性
4
2
.
3
4
9
.
8
48.5
5
0
.
2
5
3
.
7
5
0
.
8
エネルギー
4
8
.
5
6
3
.
0
5
4
.
0
5
4
.
3
6
2
.
3
5
7
.
5
酸性デタ-:;エント繊維およひ守エネ
Jレギーの実測消化率が、飼料区
2、
飼料区 3および飼料区 4と高くなっ
た。とくに酸性デタ-:;エント繊維
の実測消化率が、飼料区 1よりは飼
料区 2が約 1
5必単位、飼料区 3が約 1
9労単位、飼料区 4が 27%単位高かった(乾草の組み合せ効
果
)
。
しかし、併用時の中性デタージエント繊維の実測消化率は、飼料区 1と差がなく、しかも
併用時の飼料区聞にも明らかな傾向がなかった。さらに、組蛋白質の実測消化率が積算消化率に
)
一致して相加性は成立したが、他成分の実測消化率は積算消化率とは一致しなかった(図 1。
阪件ーデタージエント繊維
粗蛋白質
0
副帰係数ー1.0
*
.
蜘
ぱ
戸
3
与
f
三u
E
』
視
E
ω
W
蛇
r
t
(
6
4
ー 0
.35 Pく 0.05
的
'
"
/
事
I
a
昨
∞
坦
~I
.//
・
ー0.88 NS
記ト
ト
司
、
旬
司
,
68
7
2
実測消化率
4
3
7
6
4
7
5
5
5
1
実損J
I消 化 率
.
9
6
.96
図1
. 実測消化率と積算消化率の比較
各飼料区の推定消化率を表 5に示した。推定値 Iは、併用時の実測可消化量と実測摂取成分量を用
いた回帰式で推定可消化量を求めて、各消化率を補正した(推定実測値)。推定値 Eでは、単用時の
各消化率で求めた併用時の積算可消化量と実測摂取成分量による回帰式で推定可消化量を算出して、
各消化率の補正を行った(推定積算値)。
u
内角
q
δ
J
.Hokkaido Grassl
.Sci、 2
6:1
3
2-135 (
19
9
2
)
飼料区 2
推定値
r
飼料区 4
1
1I差
1I差
平均値の差 b
組蛋白質
6
6
.
3 6
5
.
6 1
.1 7
1
.9 7
0
.
8 1
.6 7
5
.
6 7
4
.
3 1
.7
1
.5
中性デ 9ージェン卜鎗維
5
0
.
34
9
.
3 2
.
0 5
1
.2 5
0
.
0 2
.
4 5
2
.
5 51
.0 2
.
9
2
.
4
酸性
4
9
.9 4
6
.
5 7
.
3 5
0
.
4 4
6
.6 8
.
25
1
.6 4
6
.
9 1
0
.0
8
.6
5
6
.
15
6
.
9 1
.
4 5
7
.
75
7
.
90
.
35
8
.
85
8
.
5 0
.
5
0
.
4
"
エネルギー
0
.
4
a 推定値 I ー併用時の実測可消化置と実測摂取成分最を用いた図録式で推定可消化量を求
めて.各消化l.f!を繍正した.
推定値 E ー単用時の各滑化率で求めた併用時の可消化置と実測震取成分量を用いた図録
式で推定可消化置を求めて,各消化率を繍正した
b [-)l/lIxl00(%)
1
6
.
8
N
S
/k
粗蛋白質含量
与己
5%
す)
ら数
た係
も帰
を回
化偏
変準
な標
大た
はれ
りさ
ー7
2
.
5
ー5
.
3
る餅住成分の消化率が、高品質乾草
8
.
2
の併用(給与割合約 4
5-845
ぢ)で約
目
2
6
.
9
5%
4
3
.
9
9%単位改善される可能性を示唆し
9
8
.
8
5%
5
8
.
4
ている。しかし、中性デタージエン
2
2
.
0
N
S
0
.
3
ト繊維含量と他の飼料成分含量(表
0
.
9
3
織維実測消化率
酸性
よ示
量が
含と
繊
維と
ン
ジ
ア
タ
性因
揖
望
以上の乙とは、低品質乾草におけ
決定係数偏回帰有窓水準標準偏回帰
乾物含量
中性デタージェント繊維含量
1
5
7
.
4 5
7
.
8 0
.
7 5
9
.
75
9
.
4 0
.
5 6
1
.4 6
0
.6 1
.3
品
川N
酸性デタージェント
説明変量
飼料区 3
1I差
乾物. %
方影
a
目的変量
1
中要
消)エん推
9
化明検エ一が織ののの
定値ジとの約消説でジタたト乙量率
推算一ほ惟で測(析一デしン
o 含化
る積タは織均実量分タ性加エた維消
け定デで卜平の含帰デ中増ジっ繊維
お推性一ンり維分回性、に一なト織
i
に/中ギエよ働成重酸は意タとン
区値・ルジ値ト料、。率有デ少エ
料測質ネ一算ン飼を)化で性減ジ喪
飼実白ェタ積一エと係
6 消量酸な一三宮
各定蛋びデ定
ジ)関表測含び意タ
、推組よ性推つ一量果(実維よ有デ
果(-お酸がかタ変因たの繊おは性
結差物維、値高デ的のつ維ト量で酸
のの乾織く測位性目)行織ン含量
そ率、トな実単酸(量をトェ物含合
化はンど定箔率変討ンジ乾維場
表5
. 推定消化率 a
エネルギー含量
7) 、また各飼料成分含量聞に高い相関が認
表
められた。乙のことから、酸性デタ-~エン
ト繊維の消化率には、各説明変量の多量共線
7
.
説明変量の単相関
成分含量
相関係数
中 性 デ タ ー ジ ェ ン ト 繊 維 含 量 x乾 物 含 量
性による関与があったものと思われる。
要 約
去勢めん羊による消化試験を制限給飼で行い、
一0.99
×粗蛋白質含量
一1.0
0
×酸性デタージェント織維含量
+1
.0
0
×エネルギー含量
+0.99
乾草(イネ科主体乾草、アルフアルファ乾草)
の組み合せ効果を検討した。乾草併用の相乗作
l
用が、後者の割合増加で酸性デタージエント繊維の消化率に約 9%単位認められた。上記の消化率ζ
対する影響要因は、正の中性デタージエント繊維含量および負の酸性デタージエント蛾維含量であっ
たが、多重共線性が他の成分含量聞にみれらた。以上の乙とは、低品質乾草の繊維消化率が高品質乾
草併用で改善される可能性を示唆している D
qべU
dq
北海道草地研究会報 2
6:
1
3
2-135(19
9
2
)
文 献
1)小川増弘・増淵敏彦・渡辺和雄、 1
9
8
6
0反第家畜の消化率に及ぼす関連要因の解析。 I
I。 乳 牛
3:5
7-6
2
0
における給子乾草の組蛋白質含量が濃厚飼料の消化率に及ぼす影響。草地試研報、 3
9
8
5
0 粗飼料と濃厚飼料の給与割合がめん羊の消化率に及
2
) 小川キミエ・押尾秀一・田畑一良、 1
ぼす影響。草地試研報、 3
2:27-330
3
) 関根純二郎・花田正明・森田 茂・諸問敏生・近藤誠司・大久保正彦・朝日田康司、 1
9
8
6。 子
牛の混合飼料の消化率に及ぼす粗飼料・濃厚飼料割合の影響。日畜会報、 5
7
(
3
)
:2
3
1-2
3
6
0
4
) 寺田文典・田野良衛・岩崎和雄・針生程吉・伊藤 稔・阿部啓之、 1
9
9
0。山羊における消化率
0
:
3
3
;
3
9。
の相加性に及ぼす濃厚飼料給与の影響。畜試研報、 5
Fhu
qべU