炭素繊維複合材ケーブルを用いた地表伸縮計について About the extensometer that uses the carbon fiber composite cable 大川滋*、斎藤浩之、坂東和郎、(株式会社興和) Shigeru OOKAWA 、Hiroyuki SAITOU、Kazurou BANDOU(Kowa Co.Ltd.) キーワード:炭素繊維複合材ケーブル、地表伸縮計 Keywords:Carbon Fiber Composite Cable、Extensometer 1.はじめに そこで、従来の地表伸縮計の欠点を考慮し、イ 地表伸縮計は、主として地すべりの移動状況の ンバ線の替わりに炭素繊維複合材ケーブル 把握を目的に使用される。特に地すべりの活動が (Carbon Fiber Composite Cable)を利用した地 活発化し、クラックなどが発生した場合に、その 表伸縮計を考案した。 クラックの拡大や地すべりの移動状況を把握す る目的で設置されることが多い。また、地すべり の発生当初や、活動の活発化が確認された時に、 比較的短時間で設置し、観測を開始することが可 能なため、多くのケースで利用されている。 従来からの代表的な地表伸縮計(写真1)は、 観測対象の両端に丈夫な杭を固定し、片側に地表 伸縮計を設置し、もう一方の杭からインバ線(低 熱膨張率ニッケル鋼線)をテンションを掛けて張 る。通常はインバ線を空中に張っている区間に塩 ビ管と杭を設置して風雨、動植物、その他からの 影響を受けにくいよう保護する。 この従来の地表伸縮計には以下の欠点がある。 ① 杭や塩ビ管などの防護設備の設置に手間がか かる ② インバ線を空中部に設置するため保護管を設 置しても、気象条件、動植物その他の外的要 写真1 従来型伸縮計の設置例 2.炭素繊維複合材ケーブルの特徴 炭素繊維複合材ケーブルは、高強度かつ耐食性 に優れているほか、剛性とフレキシビリティを持 ち 合 わ せ て い る 。 特 に 線 膨 張 係 数 は 0.6 × 10-6mm/℃と従来のインバ線の約半分である。ま た直径は 4.2mm(写真2)であるものの、単位質 量が 30g/m とかなり軽量である。 因の影響を受けやすい ③ インバ線や保護管について定期的な保守・点 検が必要であり、長期計測には不向きである ④ 積雪地での設置には、耐雪圧等への防護が必 要である 以上のことから、従来の地表伸縮計を利用する 場合、外乱によるノイズを考慮して運用する必要 があり、定期的な保守・点検も重要となる。 写真2 炭素繊維複合材ケーブル 表1 炭素繊維複合材ケーブルの主な仕様 項 目 直径 最小曲げ半径 単位長さ質量 破断加重 弾性係数 線膨張係数 耐熱性 耐腐食性 仕 様 4.2mm 50cm 30g/m 23kN 137kN/mm2 (ピアノ線78.5kN/mm2 の1.7倍) 0.6×10 -6 /℃ (インバー線1.1×10 -6 /℃の半分) 130℃ 通常土中環境において腐食せず ガイド管(塩ビ管 VP13) 炭素繊維複合材ケーブル 写真3 炭素繊維複合材ケーブルの挿入 炭素繊維複合材 ケーブル型伸縮計 3.炭素繊維複合材ケーブルの優位点 炭素繊維複合材ケーブル 伸縮 従来型伸縮計 炭素繊維複合材ケーブルは剛性があるため、写 真3のようにガイド管内をスムーズに往復する。 そのため、図1のように従来の伸縮計では不可能 であった地表面に這わせる屈曲配置が可能とな る。これにより従来のようにインバ線を一直線に 計器 インバ線 地表 又は 地中布設 空中配線 変位計 ガイド管 固定ピン 末端部固定 張る必要が無く、設置が容易になる。さらに風雨 区間長の変化を測定 や動植物、その他の外的要因を受けにくくなるう 移動土塊 え、伸縮計が現場内での往来の妨げにならない利 図1 点もある。 設置概要 さらにインバ線を利用する場合と比較して、保 守・点検の手間が減り、外乱によるノイズも少な くなるため長期的な計測にも向いている。 また、積雪地での計測の場合、従来の伸縮計の ような大掛かりな雪囲いは必要ない。炭素繊維複 合材ケーブルを地表や地中に施工する場合は、大 掛かりな雪囲いをすることもなく安定した計測 写真4 が可能となる。 保護管による防護の事例 4.設置上の留意点 用した地表伸縮計について以下のことが期待さ ・ ガイド管(塩ビ管等)の熱膨張がデータに影 れる。 響しないようガイド管の所々にスライド部分 ・ よりスピーディで簡易な設置 を設けて伸びを吸収するようにする。 ・ ノイズの少ない良質な観測データを長期に渡 ・ 急激な段差や滑落部は、浮かせるように設置 し、場合によって杭や木板により支持する。 ・ 積雪地に設置する場合は極力埋設することが り取得 ・ 積雪地等条件の厳しい場所での計測 ・ 1スパン数十m単位の長尺計測の実現 望ましく、特にセンサ部と末端部を埋設した 今後長尺測線での計測や、積雪地での観測など 場合は雪囲いは不要である。埋設が困難な場 を行い、有効性について検証を行うものである。 合は半割の保護管(φ300mm~500mm 程度) 【参考文献】 などで防護する(写真4)。 1)地すべり観測便覧編集委員会(1996):いつでも、 5.まとめ 以上のことから、炭素繊維複合材ケーブルを利 どこでもすぐに役立つ地すべり観測便覧、地すべ り対策技術協会
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