1 2 (57)【特許請求の範囲】 応器が広く用いられてきている。これは管型の反応器を 【請求項1】 毛管現象により液相移動させるウイック 鉛直に立て、下から気体を供給するとともに、上から液 を管内壁部に配設した管路を鉛直方向に対して屈曲して 体を流下または滴下して重力によって移動せしめ、管壁 立設してなることを特徴とする気液反応器。 または管内充填物上にて気液の接触を行うものである。 【発明の詳細な説明】 これを図1に充填塔による向流式の気液反応器を例にと 【0001】 って説明すると、反応器下部の気体入口(1)より供給 【産業上の利用分野】この発明は、気液反応器に関する された気体が圧力差により反応器管(5)を上方へ移動 ものである。さらに詳しくは、この発明は、大きな気液 し、気体出口(3)より排出されるのに対し、上部の液 接触面積によって反応効率を向上させ、かつ装置の全高 体入口(4)より供給された液体は、重力により下方へ を低くすることのできる新規な気液反応器に関するもの 10 移動し、液体出口(2)より排出される。充填物(6) である。 上では液体の適正な分散や気体との接触がこの液相の流 【0002】 れの鉛直性によって可能となる。 【従来の技術とその課題】従来より、気液間の反応や相 【0003】しかしながら、このような従来の気液接触 互作用を行う気液反応装置では、反応の効率を高めるた 反応器(5)の場合には、反応塔が傾斜していると、重 めに液相と気相を互いに逆方向に流通させる向流式の反 力によって下方へ移動する液体は管壁を伝って流れてし −1− (2) 特許第3006894号 3 4 まい、液体は充填物(6)と接触しないという事態が生 【0007】反応器(5)の管内壁には毛管現象によっ じている。このため十分に気液接触面が得られないとい て液体を移動させるウィック(60)を配設するが、こ う欠点がある。また、充填物のない濡れ壁塔のような形 のウィック(60)としては、反応器(5)内面に微細 式でも、鉛直でなければ気液接触の起こる液膜が形成さ な溝を形成するグループ加工のほか、エッチングなどの れないために不都合が生じる。また、この向流式の反応 疎面加工、網や繊維状の材料などが利用できる。もちろ 器の場合には、反応を十分に行わせるのに必要な塔長を ん、このような反応器(5)およびウィック(60)に とるために高い塔を鉛直に立てなければならないという ついては各種の形状、素材構成が可能であり、充填式、 欠点がある。特に、反応器全体を高温または低温にする 非充填式のいずれにおいても、その大きさも任意であ 場合には反応器を収納する恒温槽を高くしなければなら る。また、気液反応の種類にも特段の限定はない。たと ず、また表面積が大きくなるために、著しく不経済とな 10 えば以下の通りの実施例を示すことができる。 る。しかも、従来の鉛直な充填塔においては、移動する 【0008】 べき液体が充填物(6)上で液滴となり滞留しやすい傾 【実施例】図3に、この発明を適用した水−水素同位体 向があり、液相の移動上不都合でもある。 交換反応による重水素濃縮の実施例を示す。すなわち、 【0004】この発明は、以上の通りの事情に鑑みてな 反応器(5)は銅またはガラス製の螺旋管であり、内部 されたものであり、気液間の相互作用を行う反応装置に に疎水性水−水素同位体交換反応触媒(70)を充填し おいて、上記した通りの従来の気液反応器の欠点を解消 ている。ウィック(60)は銅管では金網を内面に圧着 し、向流式の管型反応器の全長と液体の分散性能を損な して構成し、ガラスでは内面に曇り加工して構成する。 わずに装置の全高を低くし、しかも滞留液量を減少させ 反応器(5)は恒温槽中に設置するが、全長3mの管 ることのできる新しい構成の気液反応器を提供すること を目的としている。 が、高さ約60cmの空間に収納された。同位体交換反応 20 は触媒(70)上で水素−水蒸気間で起こり、水蒸気と 【0005】 液相の水の間でも交換が起こる。この結果として水素か 【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題 ら水への重水素の移動が起こり、向流反応器の効果によ を解決するものとして、毛管現象により液相移動させる って液相に重水素が濃縮される。実際の実験の結果か ウイックを管内壁部に配設した管路を鉛直方向に対して ら、この反応器において水素と水が向流で移動し、重水 屈曲して立設してなることを特徴とする気液反応器を提 素の濃縮が行えることが確認された。 供する。すなわち、この発明の気液反応器は、特に、気 【0009】なお、この場合、気体としては水素、重水 体と液体を接触させながら逆方向に内部に流通する向流 素混合ガスを供給し、液体としては水(H2 O)を使用 式の管型反応器に関するものであって、流路が鉛直方向 し、疎水性白金触媒を反応器管に充填した。気相の重水 に対して角度を持つように螺旋、ジグザグ等の適宜な形 素は触媒上で水蒸気の軽水素と同位体交換を行い、重水 状に屈曲させ、液相を管内壁部に配設したウィックに沿 30 素を失いながら上方へ流れる。液相の水は、ウィック上 って毛管現象により管内に一様に分散させながら移動さ の気液界面で気相の水蒸気と同位体交換を行い、重水素 せることによって、反応器の全長を比較的長く保ちなが を濃縮しながら下方へ流れる。反応器全体としては、高 らも全高を低くし、しかも滞留液量を小さくしながら気 度に重水素を除去した水素ガスと、濃縮された重水が同 液接触面積を確保する。 時に得られる。 【0006】以下、この発明による反応器を内壁にグル 【0010】 ープを施したジクザグまたは螺旋管型の反応塔を例とし 【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ て図2によってさらに詳しく説明する。たとえば、この って、気液間の相互作用を行う反応装置において、従来 図2に例示したように、気体は反応器(5)下部の気体 の気液反応器の欠点を解消し、向流式の管型反応器の所 要の長さと液体の分散性能を損なわずに装置の全高を低 入口(1)より流入し、屈曲した管状の反応器(5)内 を上昇する過程で液体と接触反応し、気体出口(3)よ 40 くし、しかも滞留液量を減少させることができる。 り流出するようにする。一方液体は反応器(5)上部の 【図面の簡単な説明】 液体入口(2)より流入し、反応器(5)内壁を毛管現 【図1】従来の充填塔反応器を示した断面図である。 象によって移動し、液体出口(4)より流出するように 【図2】この発明の反応器を例示した断面図である。 する。毛管現象により管内壁は均一に液相で覆われ、所 【図3】この発明の反応器の一実施例を示した断面図で 要の気液接触面が得られるとともに、内壁上の液体は一 ある。 様に出口へ向かって移動し、滞留することはない。管型 【符号の説明】 の反応器(5)は鉛直方向に対して角度を持つように螺 1 気体入口 旋型またはジグザク型に屈曲しているため全長が長いに 2 流体出口 もかかわらず反応器の全高は低く、全体として小さな空 3 気体出口 4 液体入口 間に収納することができる。 50 −2− (3) 特許第3006894号 5 6 5 反応器 60 ウィック 6 充填物 70 触 【図1】 【図2】 −3− 媒 (4) 特許第3006894号 【図3】 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 成瀬 雄二 茨城県那珂郡那珂町大字向山801番地の 1 日本原子力研究所那珂研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7 ,DB名) B01J 10/02 C01B 5/02 −4−
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