劣駆動パラレルリンクロボットの非ホロノミック制御における追従性能の改善

平成 26年度創成シミュレーション工学専攻修士論文梗概集
計算システム工学分野
劣駆動パラレルリンクロボットの非ホロノミック制御における追従性能の改善
25413522 川崎 智紀
指導教員名
米谷 昭彦
1 はじめに
トは拘束条件を考慮すると 3自由度 2入力となる.
多自由度の閉ループ機構を有するパラレルリンクロ
本来なら入力より多い自由度を制御する事は出来な
ボットは,アクチュエータをベース上に配置するこ
いが,このパラレルリンクロボットは非ホロノミッ
とによって,機構の剛性と固有振動数が高くなり,
ク拘束を持つので,制御する事ができる.また,二
高速・高精度・高出力な作業を可能としている.し
つの台車を入力として扱うが,本研究では設計の見
かし,このタイプのロボットは一般に高価であると
立てをよくするため台車の加速度を入力として扱い,
いった欠点を持っている.
この欠点を克服するため,
カスケード制御を用いる事で,パラレルリンクロボ
パラレルリンクロボットのリンクやセンサの数を減
ットの位置や振動を制御する.
らすことにより,
コスト削減を行うとする.
すると,
パラレルリンクロボットは劣駆動となり,ロボット
3 予見と目標軌道からのフィードフォワードを組
の運動時にリンクが振動し,停止後もリンクは自然
み合わせた L
Q
I
に減衰することなく,振動し続けてしまうようにな
従来法である L
Q
I
(
L
i
n
e
a
rQ
u
a
d
r
a
t
i
co
p
t
i
m
u
m
る.そこで本研究では,車のサンルーフの取り付け
c
o
n
t
r
o
lw
i
t
hI
n
t
e
g
r
a
la
c
t
i
o
n
)
を使用してパラレル
などに用いられるワーク移動ロボットをアプリケー
リンクロボットの制御を行うと非ホロノミック拘束
ションとすることを想定したパラレルリンクロボッ
を利用して制御をしているリンクの角度が振動的に
トを制御対象とし,その位置制御を行うとともに,
なってしまい,振動を制定するまでに長い時間を要
その際リンクに発生する振動を制御によって抑える
する.そこで本研究では,予見制御と目標軌道から
ことを目的とする.
のフィードフォワードを従来の L
Q
Iに組み込む事で
動作時に発生する振動を抑える事にする.
2 パラレルリンクロボットのモデル
まず,パラレルリンクロボットの状態方程式をテー
今回考察するモデルは,奥行きを考慮しない,2台
ラー展開の 1次近似線形化を用いて以下の様な形に
の台車とそれらを繋ぐ3本のリンクからなる3自由
表す.
度の閉ループ機構とする.
x& (t ) = Ax(t ) + Bu(t )
本研究で扱うパラレルリンクロボットを図 2
.
3に示
y (t ) = Cx(t )
す.
(
1
)
次に目標軌道からのフィードフォワードを L
Q
Iに組
み込む為に、目標軌道サブシステムの状態方程式を
示す。本研究では目標軌道 r (t ) をステップ関数 z (t )
を二回積分して求めているので次の様になる.
d
r (t ) = Gr (t ) + z (t )
dt
(
2
)
図1
:パラレルリンクロボットのモデル
1
0
0 ö
æ - 0.01
ç
÷
- 0.01
0
0 ÷
ç 0
G =ç
0
0
- 0.01
1 ÷
ç
÷
ç 0
0
0
- 0.01÷ø
è
このパラレルリンクロボットのモデルは 2台の台車
次に予見部分の状態方程式を示す。本研究では伝達
とそれらを繋ぐ 3本のリンクからなる閉ループ機構
にかかる時間であるむだ時間を予見時間として使用
であり,車の製造ラインにおけるサンルーフ取り付
する。むだ時間要素 L をパデ近似を用いて 1入出力
け装置を想定している.このパラレルリンクロボッ
の状態方程式で表すと
平成 26年度創成シミュレーション工学専攻修士論文梗概集
計算システム工学分野
x& pp (t ) = A pp x pp (t ) + B ppr fp (t )
(
3
)
rpp (t ) = C pp x pp (t ) + D ppr fp (t )
となりこれを 2入出力の形にするには
x& p (t ) = A p x p (t ) + B pr f (t )
r (t ) = C p x p (t ) + D p r f (t )
(
4
)
Ψ p = blockdiag (Ψ pp , Ψ pp ) (Ψ = A, B, C, D )
r f (t ) = r (t + L )
図3
:中央リンクの縦方向座標
となる.ここで(
1
)
(
2
)
(
6
)
式で拡大系を構築すると
0
æ&r&f (t) ö æ G
ç
÷ ç
ç &x&p ÷ ç Bp Ap
ç e& ÷ = çD
C
ç
÷ ç ppp PPP
ç &x& ÷ ç 0
0
è
ø è
0 0 öær&f (t)ö æ 0 ö
æI ö
֍
÷ ç ÷
ç ÷
0 0 ÷ç x& p ÷ ç 0 ÷
ç0÷
+ ç ÷u& (t) + ç ÷z(t)
÷
ç
÷
0 C e
0
0
֍
÷ ç ÷
ç ÷
÷
ç
÷
ç
÷
ç
÷
&
0 Aøè x ø èBø
è0ø
(
5
)
e = y(t) - r(t)
となる.
この拡大系に対して評価関数
¥
J = ò [xe (t)Qxe (t) + ue (t)Hue (t)]dt
T
T
(
6
)
0
を定義してその評価関数を最小にする入力を求める
と
図4
:中央リンクの角度
図2
~図4
に示されるように,中央リンクの中心座標
¥
は目標軌道に追従しつつ,
角度は従来法のL
Q
I
と比較
0
すると振動を抑制する事が出来ている.
)
u(t) = K1rf (t) +K2xp (t) + K3 ò y(t) -r(t)dt+K4x(t) (7
となる.ここで上式の右辺の第一項は目標軌道から
のフィードフォワードを表しており,第二項は予見
5 まとめ
制御部分のフィードフォワードを表している.
本研究では,パラレルリンクロボットのコスト削減
のため,車のサンルーフの取り付けなどに用いられ
4 シミュレーションによる制御応答の評価
るワーク移動ロボットをアプリケーションとするこ
下に提案法を使ったパラレルリンクロボットの動作
とを想定したアクチュエータの数を減らした劣駆動
のシミュレーション結果を示す.なお本研究では中
パラレルリンクロボットを制御対象とし,劣鼓動パ
央リンクの中心座標と角度の応答で評価する.
ラレルリンクロボットの非ホロノミックを利用し,
その位置制御を行うとともに,その際リンクに発生
する振動を制御によって抑えることを目的とした.
今後の課題として,制振も含めた台車のより短時間
での移動を行えるような経路の考案,
また2
次元モデ
ルから3
次元モデルへの拡張,
実機検証などが挙げら
れる.
6 参考文献
図2
:中央リンクの横方向座標
[1]美多 勉:
“非線形制御入門 劣駆動ロボットの技能制御
論”
,昭晃堂(2000)