絶縁体

EPDM です。
3.絶縁体
また、ブチルゴム以上の機械的特性および電気的特性を有し
絶縁体材料としてはゴム、プラスチック材料があり、これらをさ
ており、キャブタイヤケーブルおよび高電圧ケーブルの分野にお
らに分類すると表 1-3-1 のとおりです。
いてブチルゴムにとって代わっており、ゴム絶縁材料としては一
表1-3-1 電線ケーブル用 絶縁体材料
天然ゴム
ム
エチレンプロピレンゴム
シリコーンゴム
SiR
ポリ塩化ビニル
PVC
c. シリコーンゴム
架橋ポリエチレン
XLPE
エチレン・四フッ化エチレン
ETFE
( )
CH3
PE
ポリエチレン
シリコーンゴム - Si-O -
(SiR) CH
3
n
シリコーンゴム(SiR)は無機の -Si-O-(シロキサン結合)に有
-
プラスチック
せん。
EPR
- -
ゴ
部の例外を除きほとんどが EPR であるといっても過言ではありま
NR
H
H
-
(
機のメチル基(-CH3)またはフェニル基(-C6H5)を結合させ
-
たもので、換言すれば無機と有機の中間的な構造をもっていま
)
す。
-
-
-
(NR)
-
天然ゴム -C-C= C -C-
H H CH3 H
SiR は使用可能温度範囲が-60℃から+180℃程度までのきわ
めて広範囲に及び、その範囲内における物理的性質の変化
n
が少ない。また電気特性は NR と大差なく、使用可能温度範
天然ゴム(NR)はシス形のイソプレン連鎖からなっており、生
囲内において耐電圧の変化はほとんどありません。また化学的
ゴムは表 1-3-2 に示すようにゴム炭化水素を 91%程度含んでい
にも安定で耐化学薬品性(濃アルカリには浸される)、耐油、
ます。分子中に二重結合を有しているためコロナに弱く、高電
耐候、耐オゾン性をもっていますが、蒸気に弱いことが欠点で
圧ケーブル絶縁用としては適していません。今日ではキャブタイ
あります。
ヤケーブルの絶縁体およびシースに例外的に使用されるにとど
まっています。
(2)
プラスチック
a. ポリ塩化ビニル(PVC)
表1-3-2 生ゴムの組成
化
水
含 有 量(%)
素
91.4
脂
肪
酸
2.9
蛋
白
質
2.8
脂
肪
1.0
灰
分
3.4
糖
分
1.0
水
分
0.5
H C
塩化ビニルの重合物で、アセチレンと塩化水素を反応させて得
などの 600V 以下の電線・ケーブルの絶縁体として使用されま
す。
H
もよいので、電線・ケーブルのシース材料としても広く使用され
-
-
一方、難燃、耐油、耐オゾン、耐薬品性がすぐれ、耐水性
H
m
-
-
H
H CH3
ています。
絶縁体としてはこの樹脂に、可塑剤、安定剤・充填剤などを
n
配合して混練し、混和物として使用します。配合によって硬質
EPR は、エチレンとプロピレンの共重合体(EPM)とエチレン、
な強じんなものから柔軟性に富むもの、また耐熱用から耐寒用
プロピレン、
ジェン三元共重合体(EPDM)の 2 種類があります。
までさまざまな性質のものが得られます。
EPM は飽和高分子で耐オゾン性、耐熱老化性、耐候性、
耐有機化学薬品性にすぐれ、良好な電気的性質と耐寒性を
示しますが、欠点としては飽和構造のため反応に乏しく加硫し
がたいことです。この欠点を不飽和結合を有する第三成分を
技術資料
6
n
られます。耐電圧および絶縁抵抗が比較的高く、IV、CVV
+ -C- C-
-
-
-
EPゴム -C- C-
(EPR)
H
H
H
-C- C-
( )( )
H
-
b. EP ゴム
( )
H
-
分
炭
-
ム
-
成
ゴ
-
a. 天然ゴム
-
(1)
ゴムおよび合成ゴム
共重合させることにより改良したのが EPDM です。EPDM の
二重結合はブチルゴムの場合と異なり、主鎖に入らず側鎖に
残っているので、EPMと同じ程度の耐オゾン性をもっています。
一般的に電線ケーブルの絶縁体に用いられる EPR はこの
70
d. エチレン・四フッ化エチレン(ETFE)
H
H
F
F
- -
H
-
-C- C-
H
- -
-
- -
(
H
- -
( )
H
- -
b. ポリエチレン(PE)
)
-C- C-C-C-
n
H
H
F
F
n
エチレンの重合物です。一般に低密度 PE・中密度 PE・高
エチレンと四フッ化エチレンの共重合体で、150℃の連続使用
密度 PEの3 種類があります。低密度 PEは超高圧・高温で
(高
に耐えます。他の材料では不十分な機械的強度、特に耐カッ
圧法 PE)
、中密度 PE および高密度 PE は低圧・低温(中
トスルー抵抗性を、電気的特性をそこなうことなく改善したもの
圧法または低圧法 PE)で得られます。
で、各特性のバランスのとれたすぐれた材料といえます。機械
誘電率および誘電正接が小さく、それらが温度や周波数にほ
的強度にすぐれているため絶縁厚さを薄くできるので、ロボット
とんど依存しないという大きな特長から、CPEV、JKPEV など
用ケーブルなどのメカトロニクスむけのケーブルの絶縁材料とし
の通信・計装用ケーブルの絶縁体として多く使用されています。
て適しています。
また、絶縁抵抗、絶縁耐力にもすぐれ安定であることから、電
力ケーブルの絶縁体としても使用されていましたが、耐熱性の
面で架橋ポリエチレンに置換えられました。機械的に強じんで、
耐薬品性、耐溶剤性にもすぐれており、特に耐水耐湿性がす
ぐれているためシース材料としても使用されますが、直射日光や
紫外線に弱いので、この場合はカーボンブラックを適度に配合
し劣化を抑えております。
-60℃~+100℃の範囲で柔軟性をもち、機械的にも強じんで
すが、ゴムなどの弾性体と異なり降伏点をもち、伸びがある値
以上になるとくびれ(Necking)を生じます。
PE の軟化温度は密度によって若干異なりますが、低・中密度
PE で 105~110℃、高密度 PE で 120~130℃です。
c. 架橋ポリエチレン(XLPE)
PE の分子間に橋かけを行ない網状の分子構造(架橋)とし
たもので、PE に有機過酸化物や有機シラン化合物を添加させ
て架橋する方法が一般的に用いられています。
PE に比べて耐熱性が向上し溶融しなくなります。ただし結晶
融点以上ではゴム状弾性を示します。そのほか耐応力きれつ
性、耐薬品性も改善されます。
PE のもつすぐれた電気特性に加えて耐熱性を改善できるため、
CV ケーブルの絶縁体として重用されています。
技術資料
6
71