海外進出とタックス・プランニング(4)

Tax-009
2012 年 5 月
Summary
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海外進出とタックス・プランニング(4)~

外国子会社合算税制(いわゆるタックス・ヘイブン税制)の概要

タックス・ヘイブン税制に関する最近の主な改正
【外国子会社合算税制の概要】
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税負担が著しく低い国又は地域、いわゆるタックス・ヘイブンに子会社等を作り、この子会社等に所得を移転帰属させる
ことで親会社である内国法人等が比較的高い確率で課税されることを免れることができます。このような外国子会社等を
使った租税回避行為に対処するため、タックス・ヘイブン税制を制定しています。
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タックス・ヘイブン税制が適用されると、外国子会社等の所得に相当する金額を親会社である内国法人等の所得と合算し
て課税されます。
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タックス・ヘイブン税制は、外国子会社等が「特定外国子会社等」に該当し、
「適用除外基準」のいずれかを満たさない場
合に適用されます。また、
「適用除外基準」をすべて満たした場合でも、
「特定外国子会社等」が資産性所得(配当、利子、
使用料及び船舶・航空機の貸付等の資産を運用することにより生じる所得)を得ている場合は、部分的に合算され課税が
行われます。
内国法人等
合計で 50%超を直接及び間接に保有
保有割合が 10%未満の株主は対象外
外国子会社等
特定外国子会社等
該当しない
該当する
いずれかを満たさない
適用除外基準
すべてを満たす
資産性所得
なし
あり
合算課税
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資産性所得合算
合算課税なし
外国子会社等の所得に対する税率が 20%(トリガー税率)以下の場合、
「特定外国子会社等」に該当し、タックス・ヘイ
ブン税制が適用されます。ただし、特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え、かつ、その本店所在地国において
事業活動を行っていることについて十分な経済合理性がある等の適用除外基準をすべて満たす場合には、合算課税は行わ
れません。
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適用除外基準は以下の4つになります。
① 事業基準(主たる事業が株式の保有等一定の事業でないこと)
② 実体基準(本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること)
③ 管理支配基準(本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること)
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④ 次のいずれかの基準
(1) 所在地国基準(主として本店所在地国で主たる事業を行っていること)
※ 主たる事業が下記以外の業種の場合に適用
(2) 非関連者基準(非関連者との取引割合が 50%超であること)
※ 主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業の場合に適用
【タックス・ヘイブン税制に関する最近の主な改正】
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平成 21 年度改正
外国子会社配当益金不算入制度の導入に伴い、内国法人が受ける一定の外国子会社からの配当金は益金不算入となりまし
た。これに伴い以下の措置が講じられました。
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合算対象所得の計算において配当に対する課税との調整を行う必要がなくなったため、特定外国子会社等が支払う配
当は、合算対象所得の計算上控除しないこととされました。
・
特定外国子会社等がその子会社(親会社においては孫会社)から受ける配当が合算対象所得に含まれると、その配当
は結果的に内国法人の課税対象とされることになります。そこで、内国法人が直接配当を受ける場合とのバランスを
考慮し、特定外国子会社等がその子会社から受ける配当は合算対象所得の計算上控除することとされました。
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平成 22 年度改正
・
日本企業の主な進出先である周辺国における法人税率の引下げの動向等を踏まえ、企業の事務負担を軽減し、国際競
争力を維持するという観点からトリガー税率が 25%から 20%に引き下げられました。
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資産運用的な所得を外国子会社に付け替えるような租税回避行為を一層的確に防止する観点から、資産運用的な所得
として外国子会社が受けるポートフォリオ株式・債券の運用による所得、使用料等について、親会社の所得とみなし、
合算して課税されることになりました(資産性所得合算課税制度の導入)
。
・
タックス・ヘイブン税制が適用される内国法人の直接及び間接の外国関係会社の株式等の保有割合要件が、5%以上か
ら 10%以上に引き上げられました。この改正は、小口の株主については必ずしも租税回避のリスクが高くないと考え
られるほか、申告に必要な書類等の入手が困難との指摘があったこと、また、資産性所得合算課税制度の導入に伴う
内国親会社の事務負担を考慮して行われました。
・
近年においては、海外拠点を統括する統括会社の活用により、グローバル経営の合理化を図り、グループ企業全体の
収益を向上させているという実情があります。このような統括会社は、事業活動を行うことに十分な経済合理性があ
るものと評価することが適当であることから、企業実体を伴っていると認められる事業持株会社(被統括会社の株式
の保有を主たる事業とする統括会社)及び物流統括会社(卸売業を主たる事業とする統括会社)の所得については、
合算対象外となりました。
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平成 23 年度改正
・
適用除外基準において、事業持株会社については事業基準をみたすこととされ、統括業務を「主たる事業」として判
定することが明確化されました。
・
トリガー税率の計算において、外国子会社等の本店所在地国以外の国又は地域に所在する法人から受ける配当等が非
課税所得の範囲から除外されるための持株割合要件等が廃止されました。
<トリガー税率の計算式>
本店所在地国等において課される外国法人税 + みなし納付外国法人税
本店所在地国の法令
に基づく所得の金額
+
本店所在地国の法令で
非課税とされる所得(※)
+
損金算入
支払配当
+
損金算入
外国法人税
+
還付外国
法人税
(※)次の配当は、非課税とされる所得から除く。
(1)
本店所在地国に所在する法人から受ける配当
(2)
本店所在地国以外の国等に所在する法人から受ける配当のうち次のもの
①
一定の持株割合を要件として非課税とされるもの
②
本店所在地国の法令に定められた外国法人税の負担を減少させる仕組みに係るものでないことを要
件として非課税とされるもの(英国における配当非課税制度に係る配当等)
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ZECOO PARTNERS News Letter Vol.20(2012/05)
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担当 足立