OECD/G20 BEPSプロジェクト 最終報告書

OECD/G20 BEPSプロジェクト
最終報告書
2015年10月13日
経団連経済基盤本部
BEPSプロジェクト 経緯
背景
米国等の一部多国籍企業によるアグレッシブなタックス・プランニング
2012年6月
OECD租税委員会(議長:浅川財務省財務官)がBEPS
(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げ
2013年7月
BEPS行動計画公表
以降、OECD/G20のプロジェクトとして、OECD非加盟のG20メンバー8カ国(注)も対等の立場で議論に参加
(注)中国、インド、ロシア、アルゼンチン、ブラジル、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ
2014年9月
中間報告
2015年10月
最終報告
10月8日のG20財務大臣会合(ペルー・リマ)で報告
11月15~16日のG20サミット(トルコ・アンタルヤ)でも報告予定
1
BEPSプロジェクト 行動計画一覧
実体法的側面
手続法的側面
行動1 電子経済への対応
行動5 ルーリングの自発的情報交換
行動2 ハイブリッド・ミスマッチの無効化
行動11 BEPSデータの収集・分析
行動3 タックスヘイブン対策税制の強化
行動12 タックス・プランニングの開示
行動4 利子控除制限
行動13 移転価格文書化
行動5 有害税制への対抗
行動15 多国間協定の開発
行動6 条約の濫用防止
行動7 PE認定の人為的回避の防止
行動8~10
移転価格と価値創造の一致
紛争解決
行動14 紛争解決メカニズムの効率化
2
BEPSプロジェクト 経団連の取り組み
◆ OECDに対する働きかけ
(1) 公開討議草案に対する意見提出(計15本)
・21世紀政策研究所・国際租税研究会(座長:青山慶二 早稲田大学大学院教授)における検討
・税制委員会企画部会で意見取りまとめ、OECDに提出
(2) 公聴会への参加 2014年5月(行動13:移転価格文書化) 、2015年3月(行動8-10:移転価格税制)
(3) 税制担当幹部との直接対話
・2015年2月にOECDのサンタマン租税政策・税務行政センター局長を招き、経団連・21研主催の意見交換会を開催
・サンタマン局長とは2014年4月、5月にも意見交換。このほか、2014年9月には玉木OECD事務次長と懇談
◆ BIACを通じた働きかけ
・BIACが取りまとめる公開討議草案への意見に日本経済界の意見を反映
・2014年5月、2015年7月にモリスBIAC税制・財政委員長との懇談会を開催
◆ わが国財務省、国税庁、経済産業省との連携
サンタマン局長
意見15本
公聴会2回
国際会議
検討成果
働きかけ
青山座長
働きかけ
モリス委員長
3
BEPSプロジェクト 最終報告書の評価
○ メリット
・企業間の競争条件の均衡化
・新興国も含めたルール設定
(従来:先進国はOECD/新興国・途上国は国連)
△ デメリット
・事務負担の増加
・二重課税リスクの増大
4
最終報告書 一部多国籍企業への影響
行動3
X社の所得をA社に合算
行動12
タックス・プランニングの開示
親会社A社
(無形資産を実質的に
開発・維持・利用)
行動13
移転価格文書化
(国別報告の作成・提出義務化等)
無形資産の低額譲渡
オンライン販売・
巨大倉庫
収益の
配分
研究開発費
提供
行動8 【所得相応性基準】
無形資産を事後的に評価、事前の譲渡
価格との乖離が大きい場合、調整課税
行動7
オンライン販売・巨大倉庫は
PE認定
紛
争
解
決
メ
カ行
ニ動
ズ 14
ム
の
効
率
化
利子支払
行動8~10
実態のないX社に
超過利潤を認めず
関連企業X社
(=cash box)
(資本提供のみ実施、
無形資産の保有者)
ロイヤルティ
コミッショネア
行動4
A社の過大支払利子を損金不算入
知財流出
ロイヤルティ
行動6
租税条約の特典
(源泉課税の減免)を認めず
行動7
コミッショネアはPE認定
関連企業Y社
行動5
パテント・ボックスは
実質性基準を満たす必要
多
国
間行
協動
定 15
の
開
発
関連企業Z社
(パテント・ボックスの
適用を受ける)
5
最終報告書 日本企業への影響
行動13
移転価格文書化
(28改正)
行動4
過大支払利子税制の改正?
(29改正以降か)
行動3
タックスヘイブン対策税制の改正?
(29改正以降か)
行動1
越境役務につき消費税課税
(27改正で措置済)
行動8
所得相応性基準の導入?
(29改正以降か)
行動12
タックス・プランニングの開示制度導入?
(29改正以降か)
行動2
損金算入配当につき配当免税否認
(27改正で措置済)
親会社A社
(例)無形資産を現に保有
開発・維持・利用も実施
電気通信利用役務
オンライン販売・
巨大倉庫以外の
通常の倉庫
関連企業X社
(例)現地製造子会社、
販社等
行動7
新たにPE認定の可能性?
(準備的・補助的活動の実質判定)
行動8~10
新たな移転価格課税の可能性?
(契約や法的所有権の軽視等)
行動14
紛争解決メカニズムの効率化
仲裁がない中で紛争解決が可能か
行動15
多国間協定の開発
行動14との連動は
関連企業Y社
(地域統括会社等)
支払側では負債利子(損金算入)
受取側では配当(益金不算入)
非関連者
関連企業α社
(豪、伯子会社)
支払
行動6
条約特典が付与されない恐れ
(厳格なLOB、不透明なPPT執行等)
関連企業Z社
6
今後の取り組み
課 題
・一貫性のある施行(条約・国内法改正)
・積み残しの課題への対応
-PE帰属所得のガイドライン
-取引単位利益分割法の適用可能性 等
経団連の取り組み
・国内法改正への対応(行動13、3、8~10、4等)
・21研と連携しつつ、引き続きOECDへ働きかけ
(例:OECDとの意見交換会 第2回会合/来年春)
7
モデル租税条約の改訂(条文が新設・改訂されるもの)
条
内容
改訂内容
序論、条約名、 租税条約の締結・改定に係る決定に関連する租税政策上の考慮/条約が二重非課
前文(改訂)
税を創出させるために利用されることが意図されていないことの明確化
1
人的範囲
2(新設) 透明な事業体・取極が得た所得の取扱いの明確化
3(新設) セービング・クローズ
4
居住者
3(改訂) 二重居住者の居住地国は相互協議により決定するよう努力
5
恒久的施設
4(改訂) 準備的・補助的活動は実質判定(オンライン販売・巨大倉庫はPE)
4.1(新設) 細分化防止規定
5(改訂) 反復して「企業の名において」又は「財・役務の提供に係る」契約を締結し、
又は契約の締結に繋がる主要な役割を担う場合、代理人PE
6(改訂) 専属的に又はほとんど専属的に一以上の近接関連者(50%超支配関係)に
代わって行動する者は独立代理人とはならない
10
配当
2a)(改訂) 「25%以上直接保有」の意義の厳格化
13
譲渡所得
4(改訂) 不動産化体株式の意義の厳格化
X
特典資格
(新設)
1
2
5
7
適格者でなければ条約特典は付与されない
適格者の定義 3 能動的活動基準 4 派生的受益者基準
権限ある当局認定 6 用語の意義
主要目的テスト(PPT)
(注)このほか、条文の新設・改訂に伴うコメンタリの整備、25条(相互協議)等のコメンタリの整備がある。
また、米国モデル租税条約改定作業を踏まえ、特別税制レジームの取扱い等について改めてOECDで
検討することとしている。作業は2016年前半に最終化される。
8
移転価格ガイドラインの改訂
章
内容
改訂内容
1
独立企業原則
○一部改訂(セクションD 独立企業原則の適用のための指針)
・実際の取引の正確な描写(契約を実際の行動で検証)
・6つのstep(特定、契約条件、機能分析、解釈、配分、価格付け)でリスク分析、
その際、リスクの支配、リスク引受のための財務能力の検証
・商業合理性テストにより(例外的に)取引を否認(non-recognition)
・ ロケーションセービング、集合労働力、グループ・シナジーの取扱い 等
2
移転価格算定方法
○ 一部改訂(コモディティ取引はCUP(公示価格)で処理)
3
比較可能性分析
4
紛争の回避・解決
5
文書化
○全面改訂(マスター・ファイル、ローカル・ファイル、国別報告)
6
無形資産
○全面改訂
・無形資産の定義の明確化
・無形資産に関連するリターンの帰属につき改訂第1章Dの分析枠組みを援用
・DCFの容認
・評価困難な無形資産につき所得相応性基準
7
IGS
○全面改訂(低付加価値IGSにつき簡素化された計算アプローチ)
8
CCA
○全面改訂(貢献を(特に無形資産では)費用ではなく価値で測定)
9
事業再編
(注)PS法についてはWP6がガイダンス案を2016年に策定、2017年前半に作業終了。
この過程でDDが公表され、公聴会は2016年5月に開催される予定。
9
国内法の改正
行動
内容
論点
13
移転価格文書化
○施行時期
○条約方式の運用(適格CA合意の見通し含む)、子会社方式への対応
○記載項目(特に国別報告)の明確化
○同時文書化(OECDは慫慂)
○重要性基準
○罰則(OECDは勧告なし) 等
3
CFC税制
○現行日本CFC税制の評価(entity approach/transactional=income approach)
○租税政策、産業政策との関係
○カテゴリカル分析、実質分析、超過利得分析
○英国の税率引き下げの動き(ロイズ・ビジネス等)、航空機リース
○二重課税の排除 等
4
利子控除制限
○日本における利子控除を通じたBEPSリスクの評価
○適切な固定比率等の見極め
8-10
移転価格税制
○無形資産の定義、DCFの取扱い
○所得相応性基準の導入是非
○否認(non-recognition)と国内法の関係
12
義務的開示
○日本におけるアグレッシブ・タックス・プランニングを通じたBEPSリスクの評価
○他の開示制度との関係
2
ハイブリッド
○損金算入配当以外のハイブリッド商品・事業体を通じたBEPSリスクの評価
1
電子経済
○越境役務消費税の一部手直し(国外支店が受ける役務提供の取扱等)
5
有害税制
○日本における“有害でない”パテントボックスの導入是非
10