KAGRA データ解析 : コンパクト連星合体の オフライン解析に向けた

KAGRA データ解析 : コンパクト連星合体の
オフライン解析に向けたパイプライン開発
講演番号 : 22pDJ-5
2015年3月22日
日本物理学会 第70回年次大会 @早稲田大学
譲原浩貴 ,上野昂^A^,成川達也^A^,田越秀行^A^,神田展行,高橋弘毅^B^,
大原謙一^C^,金山雅人^C^,若松剛司^C^,平沼悠太^C^,伊藤洋介^D^,
端山和大,有馬司,浅野光洋,枝和成^D^,廣林茂樹^E^,Chunglee
Kim^F^,Jeongcho Kim^G^,Hyung Won Lee^G^,宮本晃伸,中野将也^E^,
田中一幸,鳥谷仁人,山本尚弘,横山順一^D^,横澤孝章, KAGRA Collaboration
阪市大理, 阪大理^A^,長岡技科大^B^, 新潟大自然^C^, 東大理^D^,
富山大工^E^, Seoul N. Univ.^F^, Inje Univ.^G^
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コンパクト連星合体について
・コンパクト連星合体(中性子星, ブラックホール)は最も
検出が期待される重力波源のひとつ
・コンパクト連星からのインスパイラル重力波の
理論的予想
h(t) (Post-Newtonian approximation)
(1.4 1.4)M @1Mpc
- non-spinning waveform
h(t; r, m1 , m2 , tc ,
r : 距離
m1 , m2 : 質量
tc : 合体時刻
time [sec]
c , ✓,
c
✓,
, , ◆)
: 合体時の位相
: 到来方向
: 偏極角
◆ : 軌道傾斜角
2
KAGRAにおける連星合体重力波探索
iKAGRA 観測は2015年12月に予定
KAGRAデータ解析グループはiKAGRAデータを用いた重力波探索のため、
探索パイプライン開発を行っている
iKAGRA データ解析のターゲット
重力波探索パイプラインの長期安定動作
実データ解析を経験することでbKAGRA観測への準備
連星合体重力波探索 オンライン解析
速報性を重視した解析, 重力波アラートを電磁波望遠鏡に送る
=> 上野さんの講演 (22pDJ-5)
連星合体重力波探索 オフライン解析
オンライン解析よりも広いパラメーター範囲の解析を行う
目的 : 重力波を検出する、またはイベントレートなどに制限を付ける
本講演ではオフライン解析に向けたパイプライン、ライブラリの開発に
ついて現状を報告する
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Matched filtering method
重力波の波形が理論的に予測されているならば、重力波探索には
マッチドフィルターを用いることができる
解析データ(キャリブレーションされた主干渉計信号)
x(t)
データをチャンクに
重力波の理論波形(テンプレート)
←
分けてフーリエ変換
Z 1
x̃(f )s̃⇤ (f )
⇢⌘2
df
Sn (f )
1
- non-spinning template
←
ノイズパワースペクトル密度
s̃(f ; m1 , m2 )
m1 , m2 : 質量
・それぞれのデータチャンクと用意したテンプレートを用いて
マッチドフィルターを行い、 ρ を計算
・しきい値以上であれば、重力波候補事象と見なす
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オフライン解析(連星合体探索)のフローチャートと進
Tasks:
□ data quality check
Data access
DAQ
Data quality check
Data quality check
go to next data set
Input data
Average noise spectrum
nearby data : Sn(f)
FFT of data
Compute x(f)
Generate template h(f)
Compute ρ
no
ρ > ρ*
Template placement
yes
Compute
χ2
MF and chi-square
main computation
状況
Ξ <
Ξ*
yes
MF trigger list
no
□ input data (e.g., cache file)
●□ frame format IO
●□ FFT(IFFT) of data
●□ estimate noise PSD
●□ generate template bank
●□ compute SNR
2
□
compute
χ
●
□ : not yet done
● : available for use
● : in progress
5
KAGALI 開発 (重力波解析を行うライブラリ)
■ データ解析グループは重力波解析を行うライブラリを開発している
KAGALI : KAGra Algorithmic LIbrary
■ コンパクト連星合体からの重力波探索パイプラインに必要な要素(前ページ)
はKAGALIの中に含まれている
■ コーディング規約に沿って開発を行っている
http://gwdoc.icrr.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/private/DocDB/ShowDocument?docid=2019
■ Gitを用いたversion管理
■ コードレビュワーによる定期的なKAGALIのコードチェック
■ autotools(autoconf, automake)の導入が完了
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オフライン解析(連星合体探索)のフローチャートと進
Tasks:
□ data quality check
Data access
DAQ
Data quality check
Data quality check
go to next data set
Input data
Average noise spectrum
nearby data : Sn(f)
FFT of data
Compute x(f)
Generate template h(f)
Compute ρ
no
ρ > ρ*
Template placement
yes
Compute
χ2
MF and chi-square
main computation
状況
Ξ <
Ξ*
yes
MF trigger list
no
□ input data (e.g., cache file)
●□ frame format IO
●□ FFT(IFFT) of data
●□ estimate noise PSD
●□ generate template bank
●□ compute SNR
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□
compute
χ
●
□ : not yet done
● : available for use
● : in progress
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パワースペクトル密度(PSD)推定の計算フロー
1
< n(f )n (f ) >= Sone (|f |) (f
2
⇤
0
1. 時系列データが得られる
2. 小さいチャンクに区切る
f 0 ) : one-side power spectrum density
s(t)
....
s2 (t)
si (t)
(50% overlapping)
s1 (t)
3. 窓関数をかける
4. FFTを用いて周波数領域へ
s3 (t)
....
sw,1 (t)
sw,2 (t)
sw,3 (t)
|s̃1 (f )|
|s̃2 (f )|
|s̃3 (f )|
sw,i (t)
|s̃i (f )|
5. それぞれのチャンクから得られたスペクトルを用いて、パワースペクトル密度
(PSD)の推定を行う 推定手法 : mean, median, median-mean
[PRD 85, 122006 (2012)]
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KAGALIに実装した3種類の推定手法
■ mean
■ median
N
X
1
Ŝn (f ) =
Si (f )
N i=1
N個のサンプル点の中央値を推定量とする (外れ値に対して頑強)
Ŝn (f )
■ median-mean
median[S1 (f ), S2 (f ), .., SN (f )]
[PRD 85, 122006 (2012)]
overlapを用いて推定をする場合、隣合うサンプル点が独立ではない
N=5の場合
奇数番目
S1 (f )
S3 (f )
n=1
n=3
→
1.medianを取る
(i=1, 3)
偶数番目
(i=0, 2, 4)
Ŝodd (f )
n=0
n=2
n=4
S0 (f )
S2 (f )
S4 (f )
2. 重み付け平均を取る
→ Ŝeven (f )
Nodd Ŝodd (f ) + Neven Ŝeven (f )
Ŝn (f ) =
Nodd + Neven
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ガウシアンノイズを用いた推定結果の確認
ガウシアンノイズを用いて生成したシミュレーションデータに対して、
今回実装したPSD推定を行う
・種スペクトル Sn,one (f )
: BW2009_VRSED.dat
全データ長 = 512秒
チャンク個数=15[個]
50%overlap
チャンク長さ = 64秒
窓関数 : HANN window
fs=4096Hz
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ガウシアンノイズを用いた推定結果の確認
全データ長 = 512秒
mean
チャンク個数=15[個]
50%overlap
チャンク長さ = 64秒
窓関数 : HANN window
fs=4096Hz
median
median-mean
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glitch noiseによる PSD推定への影響
・gauss noiseにglitchノイズが混入した状況を想定して、
gauss noiseにサインガウシアン信号の注入を行った
- サインガウシアン
s(t) =A sin(2⇡f t) exp(
A =10
(t
t0 ) 2
⌧2
)
20
f =129[Hz]
⌧ =0.01[sec]
t0 =120[sec]
(インジェクション時刻付近を拡大)
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非定常雑音の影響を受けたスペクトル
定常雑音時のスペクトル
非定常雑音(glitch)の影響を受けたスペクトル
(ガウシアンノイズ)
(ガウシアンノイズ+サインガウシアン)
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各推定手法を用いたときのPSD推定結果
全データ長 = 512秒
チャンク個数=15[個]
50%overlap
チャンク長さ = 64秒
mean
Preliminary
窓関数 : HANN window
fs=4096Hz
glitchの影響を受けている
median
Preliminary
median-mean
Preliminary
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推定したスペクトル残差への影響
mean
残差 : (Ŝn (f )
S n (f ))
⇤ 100[%]
Sn (f )
glitchの影響を受けている
median
Preliminary
Preliminary
median-mean
Preliminary
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まとめ
■ コンパクト連星合体からの重力波は期待される重力波源のひとつ
2015年12月のiKAGRA観測に向けてコンパクト連星合体からの重
力波をオフラインで探索するパイプラインの開発は進行中
パイプラインは解析ライブラリ KAGALI の中に実装されている
■ 実装したパワースペクトル密度推定の計算部分がきちんと行えてい
ることをガウシアンノイズを用いて確認した
検出器に現れるglitchによるパワースペクトル密度推定への影響を
見積もるためにサインガウシアンのインジェクションを行った
median手法もしくはmedian-mean手法を用いることで非定常雑音
の影響を除けることを確認した
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