長期投資家のポートフォリオ① 代表取締役社長 澤上 龍

2015.5.29
さわかみファンド 月次レポート
長期投資家のポートフォリオ①
代表取締役社長 澤上 龍
■月次報告書が新しくなりました!
皆様の「さわかみファンド」は設定以来毎月、どのよう
な企業にどれくらい投資をしているかという情報を公開し
ています。いわゆるポートフォリオ情報です。長期投資とは
将来の納得を現在の不納得で行動するものです。皆が逃げ
たくなるような悪い環境でも果敢に買い向かう…運用をさ
せていただく立場からすると納得の上での現在の投資行動
なのですが、いかんせん長期投資は結果がすぐに出るもの
ではなく、100% ご納得いただける説明はできません。説
明できる頃には株価は上がっているはずですので。
買っていただいてから価値が上がっていくファンドのよ
うな金融商品は、説明して売り切るものではなく、未来
しかし長期投資家がリスクをテイクすることで、逃げた投
資家が次の行動に移ることができます。その行動とは新し
い経済活動に他ならず、結果、長期投資家による資金提
供は経済を下支えする効果を生むことになるのです。
株価上昇局面では、長期投資家は保有株式の利益確定
を徐々に進めます。利益回収も大切ですが、次の暴落に
備えることこそが最重要です。株価は常に企業業績を軸
に下に上にと振子の動きを続けます。株価が軸より上にあ
る時に利益確定をしておかないと、次の暴落時に投入す
べき資金を確保できません。皆が群がる上昇局面こそ、
長期投資家は最も緻密で繊細な行動をとっているのです。
に向かって共に歩むものだと考えています(故にお客様
■長期投資の威力
を「ファンド仲間」と呼ばせていただいております)。し
例えば「さわかみファンド」に組入れられているタカタ。
たがって弊社では現況の全ての情報を共有するのが一番
リコール問題に直面している自動車部品会社です。ファン
だと考え、「戦略上お見せできません」という常識にとら
ドで保有するタカタ株の「評価損益」はマイナス(▲)で、
われず、毎月一度リアルタイムでポートフォリオを公開して
買った時(平均)よりも株価が下がっています。しかしな
いるのです。
がら隣の「投資損益」を見るとプラスとなっており、現在
この度、そのポートフォリオに新しい情報を加えました。
保有するタカタ株の「評価額」を大きく超えています。こ
これにより「さわかみファンド」の実態がわかりやすくなっ
れはつまり過去の売買で既に大きな利益を得ており、極
ただけでなく、長期投資の威力というものをご理解いた
端な話タカタ株が 0 円になっても累積での投資損益はプ
だけるのではないかと考えています。早速、新しくなった
ラスで終えられることを意味します。無論、タカタ株が 0
ポートフォリオの見方を解説していきます。
円になるなど想定していませんが。
評価損益は現在のような株価上昇局面では「+」が目
■投資損益とは?
従来からの「評価損益」に加え、今回から「投資損益」
という情報を掲載します。評価損益とはレポート発行時点
で保有する株の損益のことですが、そこには過去の利益
確定などは反映されておらず、長期投資の醍醐味を伝えき
れる情報ではありませんでした。新情報となる投資損益は、
現在を示す評価損益、過去に実現した売買損益、更に企
業の配当金も計上した合算値となります。これによって、
「さわかみファンド」が一つの企業への長期投資でどれほ
どの成績を出しているのかというイメージが伝わると思い
ます。
長期投資とは、社会に必要だと思える企業の株式を安
い時に買って高い時に売るというリズムを大切にするもの
です。皆が売り逃げたい暴落時にリスクを取って資金を投
立ちますが、株価全般が下がってくると「▲」が増えてく
る可能性があります。▲とは株価が取得単価を割っている
状態です。しかし長期投資家はそういう時こそ買いに転じ
ます。上昇局面でゆっくり現金をつくり、次の暴落で買い
増すことで保有する株数を積み上げていく。10 年 20 年
経ったらかなりの量の株式を安く仕込んでいたということ
に繋がります。この繰り返しが長期投資なのです。
現状を表す「評価損益」、そして過程と今の位置を示す
「投資損益」。過去に全株を売り切った企業については組
入れ直してからの計算になるなど、多少なり集計におけ
る制約はありますが、とは言えようやく長期投資の醍醐味
を表現できるポートフォリオ情報となりました。さて、次
号では二つ目の新情報である「持株比率」について解説
いたします。
入する。そういったリスクテイカーがいなければ誰も売り
逃げられず、株価下落をただ眺めているだけとなります。
【2015 年 5 月 27 日記】
※さわかみファンドにおけるリスク・手数料については、最終ページに記載の「ご留意事項」をご覧ください。
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