医博甲391岡本 昌之

学 位 論 文 の 要 旨
な
り
が
名
ふ氏
※
整 理番 号
おか もと
ま さゆき
岡本
昌之
DBZ regulates cortical cell positioning and neurite developlnent by sustaining
the anterograde transport ofLisl and DISCl through control ofNdell
学位論文題 目
dual‐ phosphorylation。
リン酸化制御 に よ り Lislや DISClの 神経突起成長 方 向へ の輸
送 を調節 し、神経細胞 の成長や 大脳皮質形成 に働 く)
(DBZは Ndellの
研 究 の 目的】Disrupted‐
【
In‐ Schizophrenia
l(DISCl)は 、そ の部分欠損 が統 合失調症 を含
む精神疾患発症 と強 く関連す る こ とが報告 されてお り、精神疾患発症機序解 明 の鍵分子 とし
て 、そ の機能解 明 が待 たれて い る。特 に、DISClの 欠損部位 近傍 に結合す る分子 は DISCl
の機能 上重要であ る とされ 、そ の よ うな分子 の探索 。同定 も世界 で精力的 に進 め られて い る。
DISCl‐ binding zinc inger protein(DBZ)は 、DISCの 欠損部位 近傍 に結合す る分子 である
が 、現在 で も、生体 内で の機 能、特 に DISClと ともに、 どの よ うに神経細胞 にお い て働 く
のかについて は、未 だ明 らか とはな つてい な い。
一 方、大脳皮質 の形成 の仕組み、特 に神 経細胞移動 による大脳皮質構築 とそ の分子基盤 が
明 らかになるにつ れ、大脳皮質 の構造変異 と統合失調症 な どの精神疾患 の発症や発症脆弱性
との 関連性 が 明 らか とな つて きた。 なお、大脳皮質 の大部分 を 占める興奮性 の神経細胞 は、
胎児期 に脳 室帯にて生まれ表層 へ と法線方 向に移動 し、大脳皮質 の構成細胞 として働 くこ
と、そ して 、この細胞移動 には微小管 お よび微小管 上 を動 く蛋 白が重要 な役割 を果 た し、な
かで も神経突起先端 か ら細胞体方 向 に微 小管上 を逆行性 に運 ばれ る hslは 、 そ の変異や量
の減少 が 滑脳症 を もた らす こ とよ り、特 に重要な分子 とされ てい る。
以 上 を踏 ま え、本研 究では、DBZが
DISClと ともに、どの よ うに生体内、特 に神 経細胞
移動 と大脳皮 質構築 に働 くか につい て 、分子 レベ ル での検討 も含 め解析 を行 つた。 そ して、
DBZが Lislを 含む分子輸送 に重要 な役割 を担 うことを見 い 出 した。
DBZノ ックア ウ トマ ウス (以 下、
方法】DBZへ の RNA干 渉法 (以 下 DBZ‐ KDと 表記
【
DBZ‐ KOと 表記 )を 用 いて DBZの 大脳皮質構築 へ の影響 を検討 した。 さらに子宮 内遺伝子
導入法 にて 、側脳 室帯神経細胞 に DBZな らび に DBZに 結合す る分子 を コー ドす る遺伝子
)、
な どを導入 し、神経細胞移動 にお ける意義 を検討 した。微小管動態 につい ては 、微小管 プラ
ス端 に結合す る micrOtubule plus‐ end binding protein 3(EB3)を
(EB3‐
EGFPに て
)、
EGFPで 可視化 し
微小管動態 を経時的 にモニ ター し観察 した。 (他 の方法 は結果 の項に
記載 した)。
結果 】
【
生後 3日 目の DBZ― KOの 大脳皮質 では、対照群 と比 較 して神 経細胞 の樹状突起や軸
索 の形成 が不十分 であつた。また胎 生 13.5日 目に分裂 中の神経細胞を標識 し、大脳皮質内分布
を検討す ると、DBZ‐ KOで はその分布 に乱れ が認 められた。ただし、標識 された細胞数 は有意 に
は変 化 がなく、DBZの 神経細胞増殖 へ の影響 は認 められなかつた。 さらに、DBZぃ KDで 、急
激 に DBZ発 現を減弱させ 表現型を検討 したところ、DBZ― KD神 経細胞 では、表層 の大脳皮 質 ヘ
と法線方 向に移動する神経細胞 の移動 に遅れが生じていた。それ らの神経細胞 を個別 に観察す
ると、神経突起 の伸長 に障害 が起きており、中心体と核 との距離 が広がっていた。このことは 、中
心体 からのびる微 小管を介 する核 の移動 である、nucに okinesね の障害を示唆した。これ らのことか
らDBZは 神経細胞 の移動、神経突起 の成長 に微小管系を介 し機能する重要な分子であると考 え
られた。
次 に分子機序を解 明するため、DISCl、
DBZい ずれとも結合し働 くことが報告されている Ndell
との関連を調 べ た。すると、DBZ― KOで は、Nddlに お いて、Cdk5で リン酸化される219位 のスレオ
ニン、および Aurora Aで リン酸化される251位 のセリンの両方 のリン酸化 が克進していた。なお 、先
DBZが これらのリ
ン酸化制御 に関わる可能性を、血 宙伊oリ ン酸化アッセイにて検討 した。その結果 、DBZ存 在 下で
行研 究では、両方 のリン酸 が同時に克進することはないとされていたため、次 に
は、Cdk5,AuЮ ra Aに よるリン酸化 Ndellの 減少を認 めた。さらに上記 2か 所 でリン酸化を受けた
Ndellの 類似分子 (219位 、251位 のアミノ酸を同時にグル タミン酸 に置換 )を 過剰発現した神 経細
胞 は、大脳皮質での移動 が障害されていた。また、同類似分子を HeLa細 胞 に過 乗1発 現させると、
有糸分裂 中の紡錘体形成異常をきたした。このことからDBZは 、Ndellの リン酸化状態を調整 (2か
所 が同時にリン酸化されないように調節)することにより、微小管系 に作用 し働くものと考 えられた。
さらに、DBZ‐ KOの 神経細胞 では突起 の伸長 が障害 されて い る こ とよ り、EB3‐ EGFPに
て 、微小管動態 を経時的に観察 した。す る と DBZ‐ KD、 DBZい KO由 来 の神経細胞 では、微
小管 の伸長速度 は正常の神経細胞 に比 べ て遅 くな つていた。 一 方 、先行研 究では、DISCl
ま Ndell,Lislと 複合体 を形成 し、中心 体 か ら神 経突起先端 に輸送 され 、そ こで GSK‐ 3β
イ
活性 を抑制す ることで、微小管 プ ラスエ ン ドヘ のチ ュブ リン結合 を促進す る とされ る。そ こ
で DBZ‐ KDも しくは DBZ‐ KOで は、Ndellの リン酸化克進 のため、微小管 に乗 り、そ の上
を輸送 され る DISC1/Ndel1/Lisl複 合体 が減少 し、そ の結果 GSK‐ 3β 活性 が克進 し、突起
の伸長 が 阻害 され る との仮説 を立てた。事実、上述の Ndellリ ン酸化類似分子 を発現 させ
る と、DBZ‐ KDも し くは DBZ‐ KOと 同 じく微小管 の伸長速度 が減少 した。 一 方 、DISCl
の過剰発現では DBZ‐ KOの 影響 はキ ャ ンセル された。また 、photobleachig assayお よび免
疫 染 色 の 結 果 か ら、 DBZい KDも し くは DBZ‐ KOで は 、神 経 突 起 先 端 へ と運 ばれ る
DISCl,hslの 移動速度 は変化 しないが 、量 が減少す る こ とを観察 した。そ して 、GSK‐ 3β
の 阻害剤 は、DBZ‐ KDに よる神経突起伸長抑制 を低減 した。 なお、神経突起先端 か ら hsl
は逆行性 に再度輸送 され 、神経細胞移動時に機能す るが 、Lislの 神経突起先端 にお ける量
の減少 は、 この過程 に障害 をもた らす もの と考 え られ た。
結論】DBZは 胎生期の大脳皮質形成に Nudellの リン酸化調節を介 して、DISClや Lisl
【
とともに神経細胞の成長や移動、大脳皮質構築に大きく関わつていることが示された。
備考
1
2
※ 印 の欄 は、記入 しない こ と。
学位論文 の 要 旨は、和文 に よ り研 究 の 目的、方法、結果 、考察、結論等 の順 に記 載 し、
2,000字 程度 でタイ プ等 で 印字す るこ と。
3
図表 は 、挿入 しない こ と。