22.中央放射線技術科 (1)はじめに 私たちが用いる放射線は、患者にとって、病気の診断や治療に欠かすことのできない ものであるということは理解されている。しかし一方、放射線は全て危険という認識 も持たれている.私たちはこうした患者の不安を取り除くことはもちろんのこと、常 に新しい技術の習得に努め、安全で良質かつ適切な医療サービスの向上に努めなけれ ばならない。 放射線技術科では年間 20 件弱のインシデント、 アクシデント報告が出されている. インシデント、 アクシデント報告を出す以前のうっかりミスなどはその何十倍もあり、 日常業務でヒヤリ、ハットすることは全ての技師が日頃経験している。慣れや慢心、 不注意を排除し日常業務で守るべき安全基準マニュアルを遵守すべきである。 (2)各部門共通の注意事項 ① 患者との信頼関係を築き、名前、生年月日、検査項目の確認を行う。 1)会話はゆっくり明瞭に発声し、患者の年齢、国語力などに応じて適切な言語表現を 工夫すべきである。決して画一的表現は有効でない。 2)検査、治療についての説明は主治医が行うが、医師によるインフォームドコンセン トが十分でないと思われる時は、技師がカバーする。検査に対して不安が強いとき は、特に丁寧に説明をする。もし不安が解けない時は強引に検査をせず、主治医に 連絡して不安を取り除くようにする。 3)患者のプライバシーには細心の注意を払わなければならない。また患者に触れると き(位置合わせ、体位変換など)はかならず声かけをし、了解を得る。 4)呼び込み後には必ず姓名を確認し生年月日を自称してもらい、伝票との確認をする。 5)指示誤認を防ぐために、電子カルテ上の検査依頼の検査部位、依頼医師、検査目的 を確認する.依頼内容が不明確であったり、間違いと思われる時は、依頼医に再確 認する。 ② 患者の安全に細心の注意を払う。 1)なによりも患者の安全を第1優先とする。 2)検査、治療中は、常に監視する.異常のある時、また事故が予想される時はすぐに 室内に入れるように準備しておく。 3)検査、治療機器は、毎日始業前、始業後に点検し、絶えず安全な状態に保守する。 また、定期的に保守点検を行い性能の維持と、安全性を確保する。 4)検査テーブル、治療テーブルの昇降に注意する.また移動による指はさみに注意す る.とくに高齢者、身体障害者、小児、妊婦の安全に配慮する。 5)患者の状態が悪い時や、検査に対する理解や協力が得られにくいときは、医師、看 護師の立会いを求める。 6)検査中に患者が急変したときは、直ちに、医師、看護師に連絡する。 ③ 新しい放射線防護の基本思想を遵守する。 1)医療被ばくの正当化:不必要な放射線は使わない前提で、その照射による期待効果 (利益) が、その放射線被ばくによる影響(害)の程度より優ると予想、納得できること。 かつ、同等の利益を他の方法で得られない(代替の手段がない)ことを示す。 2)被ばく防護の最適化:放射線利用(照射)が正当化されたと判断したうえは、最小 の放射線量で、必要な効果を得るような合理的なできうるかぎりの手段を講ずるこ と。すなわち、ICRP Pub、26 の“ALARA(as low as reasonably achievable)”の 思想の遵守である。 1) 線量限度:放射線利用の正当化、最適化が図られる前提で、放射線業務(診療)従 事者、その他の人々、公衆に対しては、ICRP 1990 年勧告で提示している線量限度を 超えないように留意する。ただし、放射線を受ける人(患者、介護者、志願者)の 医療被ばくはこの線量限度の対象外である。 ④ 放射線医学の知識、医療技術の向上に努める。 1)技術学会、技師会が行う研修会などに積極的に参加をし、常に医学の知識、技術の 向上につとめる。 2)医療法人徳洲会 和泉市立病院「放射線障害予防規定」に則り、放射線障害防止のた めの教育訓練を定期的に行う。 ⑤ 環境整備 1)検査室は常に清潔を保ち、備品などは生理整頓をする。 2)患者の検査や治療に際しては、「院内感染対策マニュアル」に従って注意、消毒を行 う。 3)ヒールアートの掲示、BGM など、少しでも患者の気持ちが安らぐことのできるよう配 慮する。 (3)各部門の注意事項 ① 一般撮影および病室撮影の注意事項 1)撮影部位を間違わないように、電子カルテ上の検査依頼を確認し、患者に撮影部位 を説明する。依頼内容が不明確であったり間違いであったりすると思われるときは 依頼医に確認する。 2)小児の撮影や介助が必要なときは、付添にプロテクターをつけてもらい介助を依頼 する。付添のない時は技師が介助する。女性に介助を依頼するときは必ず妊娠の有 無を確認する。 3)病室撮影時は、安全を保つため、また、トラブルをさけるためにも必ず看護師に立 ち会ってもらう。 ② CT 検査の注意事項 1) 造影検査では、検査前に問診表にて既往歴と腎機能のチェックを行い、救急セット の準備をする。 2)造影検査では、注射から抜針まで医師か看護師が立ち会う。 3)造影剤の投与中、および投与後しばらくは注意深く患者の状態を観察する。投与後、 数時間から数日中に出現するおそれのある遅発性の副作用や注意点、対処法の説明 を行い、注意書きの文章を渡す。 4)副作用の発生があれば直ちに医師や看護師に連絡をする。重篤な場合は「エマージ ェンシーコール」を行う。 ③ MRI 検査の注意事項 1)造影検査は「CT 検査の注意事項」に準ずる。 2)MRI 検査は強力な磁界および電界内の検査であり、それらに対しての細心の注意が要 求される。 2) 検査前説明では検査禁忌について、身体についている金属類(ヘアピン・ネックレ ス・補聴器・入れ歯)の確認を行う。 4)検査の概要(大きな音がする、所要時間、ナースコールの取り扱い)を説明する。 5)検査中は監視モニターや、患者からの連絡用ナースコールで安全を期すが、適宜検 査の進行状況を患者に伝え協力を求める。 ④ RI 検査の注意事項 ■RI 検査は放射性同位元素を使用する特殊部門である 1)管理区域と通常区域の領域、境界を明確にし、法令に基づいた標識注意事項看板を あげる。 2)検査試薬投与時には、床、壁、機器への汚染がないように十分注意し、万一汚染し た場合は、直ちに法令に従った処置を行う。 3)使用済みの注射器や針などは法令に基づいた分類保管をし、法令指定業者に引き渡 す。 4)法令に基づいた管理、対策を行い、月に1回の床、空中汚染量の測定を行う。 ⑤ 放射線治療の注意事項 1) 放射線発生装置は医療法および文部科学省の定める「放射性同位元素などによる放 射線障害の防止に関する法律」に従い使用する。 2)リニアック装置およびリニアック治療室の安全機構を常に正常作動状態に保ち、職 員、患者に対する安全を確保する。 3)リニアック装置は週に1度以上出力測定を行い、照射が適切に行われるように努め る。 4)重要事項連絡表を必ず確認し、病名など、患者への説明内容を把握しておく。 (4)放射線科情報システムおよび画像保存通信システム運用の注意事項 ① 放射線科情報システムおよび画像保存通信システムの運用にあたっては、守秘義務 を遵守し患者個人の情報を保護する。 画像サーバの管理をする為に診療放射線技 師3名に管理者権限でのログインを許可し、ID・パスワードは厳重に管理する。 ② コンピュータウイルス・不正アクセスを防止する為に許可なく USB メモリ、CD、DVD、 フロッピーディスクの使用を禁止する。 ④ 他院から持ち込まれた医用画像 CD は全てウイルスチェックをした後、当院の画像サ ーバへ保存する。 ⑤ システム障害時にはベンダによるリモートアクセスを許可し、協力しながら早期の 復旧を目指す。またシステム障害が長時間におよぶ場合は、直ちにフィルム出力に 変更する。
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