水力・風及び太陽エネルギーの動力変換利用技術

水力・風及び太陽エネルギーの動力変換利用技術
誌名
水力・風及び太陽エネルギーの動力変換利用技術
著者
農林水産省農林水産技術会議事務局,
掲載ページ
p. 1-126
発行年月
1986年10月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
グリーンエナジー計画成果シリーズ
1▽系(補助エネルギー変換)Nα4
水力・風及び太陽エネルギー
の動力変i換利用披衛
ア へ へ
、、 副.評ド
㌦鞭瀞・ρ認
昭和61年10月
農林水産技術会議事務局
劃
.,7 嚇鞠『’磯ミ
農林水塵技欝会諏N悪
i」臼和63.9.20受領
資 料 室
ま え が き
近年,資源・エネルギー問題,環境問題,都市問題等人類の生存と繁栄にかかわる
複雑かつ困難な問題が続出しているなかで,これらの諸問題を解決し,国民生活の向
上に寄与する革新的技術の開発が強く求められている。農林水産業の分野においても
21世紀における食糧,資源・エネルギー,環境等に係る諸問題を解決するための鍵と
なる新しい技術開発が要請されている。
このため,農林水産技術会議事務局においては,これらの要請にこたえるべく,産
学官の連携による,長期的かつ大規模なプロジェクト研究を構想し,その一つとして
昭和53年度から10力年計画で「農林水産業における自然エネルギーの効率的利用技術
に関する総合研究(グリーンエナジー計画)」を実施してきている。この研究は,光
合成能力の向上や生物的窒素固定の有効化など植物体そのものが持つ物質生産能力を
向上させるとともに,太陽エネルギーなどの自然エネルギーを一層積極的に利用する
ことにより,化石エネルギーに大きく依存している現在の農業生産技術から脱却し,
革新的な技術体系を開発することを目的とするものである。
本計画は,農林水産業の多くの研究分野が連携する学際的研究であり,研究内容も
多岐にわたるところがら,5つの研究系(エネルギーの分布と利用系,物質固定系,
生産環境制御系,補助エネルギー変換利用系及び生産技術系)ごとにチームを編成し,・
研究の効率的推進に努めてきたところである。
本書は,グリーンエナジー計画成果シリーズの一貫として,補助エネルギー変換利
用系の数年間にわたる研究成果を取りまとめたものである。大方の参考に供して頂け
れば幸いである。
昭和61年10月
農林水産技術会議事務局長
畑 中 孝 晴
目
次
緒 言………………………・・…………・……・……・……・……………・・…・・
1
1.水力利用技術
1,農業用小水力エネルギー変換プラントの開発 ……………・…・・………
2
2,波浪エネルギーの有効利用 …………………………・……・………・……・
24
∬.風力利用技術
1.風力の熱変換利用技術 ……………・・…・…・・……………・…………・……
41
2.風車および油圧装置組合せによる動力変換利用技術 …………………
70
3.風力の電力変換利用技術 ……・…・・……………・・…………・……………
89
皿,動力を主体とする機器の開発利用および複合利用技術
作物環境制御動力としての太陽熱ポンプの利用 ……………・・………・
!05
CONTENTS
Introduction .。。。。。。。。。。。。9。。。9.2。。,。.。◎。。。.。。。。。。。。。。剛。。。.。。。
1
1。 Ut■lizat二ion of Wave and Hydraulic Enerqy
l Development of Sma:Ll−size Hydraulic Energy
Conve■sion Plant for Ag■iculture..。.。。.。.。.......。。.。
2
2 Utilization Of Wave Enerqy
− De▽elopment Of Wa▽e Pump System 一 ・・。。.。。.。.・・。。。。・・。。
24
工1。 Utilization of Wind−Power
l Wind−powered Heat Generation System 。...。.。。...。。。。◎。。_
41
2 Conversion Of Wind Enerqy tO Hydraulic
Erlerqy for Agricultural Power Source ..。。。。。。・..。。・。・・
70
3 Conversion of Electric Enerqy frOm
Wind−Enerqy for Greenhouse Heatinq 。。。。.。..。。。.。.。.。.。
89
1工1. Utilization of Solar Pumpinq System
for Environmental Control of Crops.。。。。.,._..。。。。.
105
緒
日
本系(IV−2)では,農業生産のために自然エネルギーを動力源として変換利用する方法を
明らかにし,その効率を高めるための制御法を確立しようとしている。
かっては風車による揚水や水車による灌概・精米等がみられたが,これらはエンジンやモー
ターの普及に伴ってほとんど姿を消してしまった。そして,今日の農業生産の省力化・合理化
に大きく寄与している農業機械や施設の動力源は,燃料や電気として直接・間接にほとんどを
石油に依存している。
したがって,:本課題では水力・風力・太陽熱等の自然エネルギーを直接農業生産施設の動力
源として利用する。あるいは動力に変換して機械や施設機器の駆動に利用する新しい技術を開
発することを目標として研究を推進してきた。
具体的に述べると
1)水力の利用に関しては,我が国では恵まれている小河川の落差を利用した小水力エネル
ギーを電力に,あるいは直接動力に変換して利用する技術,すなわち,①.小水力エネルギー
を変換し,農業生産プラントに利用する。②・海波をピストンの住復運動に変換してポンプで
淡水を揚水する等の方法によって,海岸附近低地の電気・排水に利用する方式の開発を図る。
2)風力の利用に関しては,風車の回転エネルギーを油圧エネルギーに変換・蓄積して,動
力または熱として利用する技術,すなわち,①・風車の回転力で油圧ポンプを駆動して高圧の
油を蓄圧器に貯え,油圧シリンダや油圧モーターを作動させることによって,温室の窓・カー
テンの自動開閉やハウス内作業機の運転を行う ②.風車で油圧ポンプを駆動し,油圧式熱変
換器によって発生させた熱で温水を作り,その温水を畜舎の暖房等に利用するなどの方式の開
発を図る。
3)太陽熱の利用に関しては,太陽熱ポンプによって農業生産用の各種流体を圧擬する技術,
すなわち,太陽熱を集熱器で集めて蓄熱し,太陽熱ポンプを駆動して作物の栽培に必要な灌概
水等の流体を圧送するパイプラインシステムの開発を図る。
このような各種エネルギーの動力変換利用技術の開発を試みたものである。これらを活用す
ることによって,新たなエネルギー利用技術の複合化が図られ,その相乗作用効果による一段
と合理的な技術の発展を期待して,一応のまとめを行ったものである。
御参考にしていただきたい。
IV−2 サブリーダー
農業研究センター宮澤福治
一1一
1 水力利用技術
1.農業三三水力エネルギー変換フ。ラントの開発
DEVELOPME:NT OF SMALL−SIZE HYDRAULIC
E:NERGY CONVERSION PLANT FOR AGRICULTURE
川崎 健ぞ大黒 正道秀*宮崎 昌宏*
糸川 信弘誉天野 憲典*
Ken KAWASA照,Masalnichi DAIKOKU, Masahiro MIYAZAKI,
Nobuhiro ITOKAWA and Kensuke AMANO
的
圏
わが国山間地の急傾斜地と多雨という特長を生かし,豊富な谷川の小水力を安全かつ低コス
トに電気および熱エネルギーに変換するプラントを開発し,山間地農業の振興の一助にしょう
とする。
方
法
当地域の山間地における代表的な谷川を選定し,谷川の構造(こう配,河幅など),流況,周
辺の地形,被覆,地物,水利権,運搬手段などを勘案し,谷川の小水力を安全かつ低コストに
電気および熱エネルギーに変換するプラントを開発する。
結果と考察
1)小水カエネルギー変換プラントの基本構想
1)2)3)
水力発電は,落差を得る方式により水路式,ダム式およびダム水路式に分類される。 ダム
式は,ダムの築造に多くの経費を要するため経済効果の点から流量の豊富な大きな河川のこう
配が比較的緩い中・上流に設置される。谷川の小水力地点の場合,流量が少ないこととこう配
が急で貯水量に比べてダム築造に要する経費が相対的に過大になり,経済的な開発効果は期待
1)2)3)
できない。
水路式は,人工の水路によって落差を得る方式で,河川こう配の急な上流地点に設置される
ことが多い。これは,上流において取水ぜきを設け,取水口より河水を取り入れ,沈砂池を経
* SHIKOKU NATIONAL AGRICUITURAL EXPERIMENT STAT王ON
**INSTITU’IE OF AGR工CULTURAL MACHINERY
一2一
て導水路により緩こう配で山腹またはトンネルによって下流側に導水し,本流との間に落差を
拡大し,急こう配の地点においてヘッドタンク,水圧管路を経て水車に導水する。この方式は,
使用水量すなわち発電力が河川の自然流量で左右され季節的変動が大きく,最大使用水量以上
の水は越流されるので,流水エネルギーの利用効率の点ではダム式よりは劣っているが,建設
コストが割安でありとくに急こう配の小河川の小水力発電ではもっぱらこの方式を採用してい
1)2)3)
る。
しかし,水路式でも数10kw程度の極小規模の渓流になると,第1図のように谷川の雑地内に
河川こう配に平行して水圧管を敷設する方式(以下,これを急流発電方式と略称する)が有利
になろう。この方式は,既存の水路式よりヘッドタンク・沈砂池等の水槽の数が半減されるこ
と,長大な導水路の敷設に伴う用地費が不要であり耕地や建物の潰廃の必要がないこと,水圧
管を河川敷の地価の安い雑地に敷設することができること,導水路,水圧管路,排砂路および
余水路等のパイプラインが短縮されることのため,建設コストが大幅に低減される。また,水
圧管路等の水の流路に欠潰事故が発生しても,水は自然に本流に還元されるので,きわめて安
全である。ただし,この方式は,落差に対して水圧管のこう長が大きくなるので,損失落差が
大きくこれによる減収が大きい。数100kw以上の水力発電では,この方式は用地費やパイプラ
イン建設費の節減分より損失落差による減収分の方が大きくなるのが普通であり,したがって
現在のところこれが採用された例は見当たらない。この方式は,筆者等が目指す類Okw級の農業
用発電では,一般に前者の添削経費が後者の損失減収分を超え有利になる場合が多い。とはい
え,この方式は水圧管が落差に対してこう長が大きく,従来の水圧鉄管では経費が嵩むから,
ポリエチレン,塩化ビニール等の安価な低質管を使用する必要があり,急流地点を選定する必
要がある。
この種の極小規模発電では,コスト低減の必要から変圧装置の必要のない低圧の200V,3
相交流とするため電圧降下を小さくする必要
導水管
(沈砂池)
取水装置
\ツ/
第1ヘッドタンク
\
第1水圧管
i51m
\
水車・発電装置 排
河
第2へ。ドタ。ク\
\
余水路
↑
戸
落差40m
↓
落差41m
,取水ぜき
!〆 ニニ’
水:車・発熱装置
冷温水槽/∠
用せざるを得なくなり,落差は数101nの中。
1廓3m
γ
,〃¢z
二” ∠
/
/
つ’! ○
房/\
る必要があることを意味し,既存の取水設備
実際には水圧管路は既存の取水設備の間を使
/儲
送電線
は,水力設備をエネルギー利用地点すなわち
農業施設の位置する居住地域の近くに設置す
との水利上の競合が発生する。したがって,
路 川
第2水圧管 ↓
_道路一
から,また送電経費を節滅するためにも送電
距離は数100m以下に制限される。このこと
低落差にとどめることになろう。例え,既存
取水設備との水利上の競合がなくても,ポリ
エチレン,塩化ビニール等の低質管では強度
上,高落差は好ましくない。ただし,既存取
水設備に必要な水量を放水してなお残量があ
る場合は,残量を再度加圧してさらに下流の
放水路
栽培施設
地点で発電することも可能である(第1図)。
また,取水地点と放水地点との間に支流から
の合流水がある場合には,逆にこの水量増分
第1図 施設・装置の配置略図
を取り込んで再度加圧することもあり得る。
Fig・l Rough sketch of equipments
このような水力の多段利用は,建物や機械
of tested plant
が小規模分散されるのでその面でのコストは
一3一
割高になるが,上記のような低質水圧管を使用するかぎり総建設費でみれば,水圧鉄管による
既往の高落差1段利用方式よりは有利である。
以上のような観点から,ここでは流水多段利用による急流発電方式を取り上げることにした。
ただし,農業用施設では熱エネルギーの需要が大きいことを考慮し,上流部の第1段では電気
変換とし,その排水の一部を再加圧して第2段目を熱変換とする方式とした(第1図)。後で詳
述するが,第1段目の計画値は最大使用水量75.0〃sec,有効落差34.366m,最大発電力
13,96kwであり,第2段目のそれは最大使用水量154/sec,有効落差40.5m,最大熱発生
面(暖房時)9,800kcal/時である。
2)水力地点の選定
谷川は,上流へ上るほど河川こう配が急になり慣行水利権との競合が少なくなるので良好な
水力地点が得られるが,道路条件が悪くなりケーブルの敷設,運搬経費が増大する。一方,下
流になるほど水量は増大し機械,資材の運搬経費や送電経費が少なくてすむが,慣行水利権,
住宅,農用地等の既設施設との競合が大きく土地取得費が増大する。
以上を考慮して,標高約525m,流域面積2,23k㎡,河川こう配15,4Qの急流地点(高知県
長岡郡大豊町大字庵谷小字トベリキ山神,吉野川上流トベリキ谷川)を選定した。
3)水車。発電装置の開発
く1)計画的電力
この谷川の場合,上記取水地点の上流2カ所で4月上旬∼9月中旬の約5カ月闇,かんがい
用水を取水している。この取水量を差し引くと渇水量はおよそ0,015㎡/secとなる。これを
本施設の最大使用水量にすると,施設の利用率は最大になるが,施設規模が小さくなるため単
位発電力当たりの施設費が大きくなり,流水エネルギーの利用率は低下する。最大使用水量を
河川の流量に対してあまり大きくとりすぎると,流水エネルギーの利用率が増大するが,施設
の利用率は減少し発電原価が高くなる。
このように,与えられた流況曲線に対する最適発電規模が存在し,基礎データを収集整理す
れば容易に計算できるが,本施設を設計した時点ではこの種の極小規模の水力発電に関する基
3)
礎データが十分でなかったので,既往の水力発電の決定法を参考にして使用水量を0,075㎡
/sec(最大,3/3流量),0.050㎡/sec(2/3流量)および0.025㎡/sec(!/3流量)の3
段階の手動切換方式とした。
の
次に,水圧管路の総落差を求め損失水頭を計算して有効落差を設定し,水車効率の到達目標
を65%とし,発電機の性能試験成績から発電機効率を推定して発電力を第1表のように設定し
た。
第1表 使用水量と発電力(計画値)
② 水力設備の設計
Table l Rate of fIow and generated
大電力の民生発電は,耐久性を増大し故障,
output (designed v alues)
停電の防止に重点をおいていることと,高質
電力を産出する必要があること,営利上の理
水量
発電
@効
ヲ
水車
率
損失
?頭
@セn)
有効
発電
ヘ ㎞
由から効率がきわめて高いこと等から,この
詩キ
@(面
技術をそのまま小形化して農業用小水力発電
0,025
0.79
0.65
39,482
4.97
に適用すると建設費は相当大きくなり,発電
0,050
0.82
α65 2,593 37,567
9.81
原価は増大する。
0,075
0.85
0.65
0,648
5,834
34,366
13.96
本施設は,以下に述べるように自然環境維
持と公共安全を図りつつ,電力の中質化と水
力設備の簡易化によるコストダウンを最重点におき,水力エネルギーの効率的利用(余剰電力
の貯蔵)を目標にして,設計した。
一4一
取水孔
(3cmφ×60コ)
(長さ1.70m)
∈i
旨
一一
lrr
o ,016
o
畔
撫ガ
.L斗丁
一十
一『
キ一7『一.・・ 」 ’ ・・1・e ‘
第2図 取水装置の概要
Fig.2 Sectional view of intake devices
a 取水装置と導水管
経費節減と谷川の維持・保全を最重要視して,ダムやせきを設けずに第2図に示すような自
然吸引式の取水装置とした。すなわち,市販のコンクリートU字排水溝の底部に取水孔(取水
装置1本につき直径3cm×60コ)を設け,これを逆さに伏せて水深の浅い水溜部の河床に沈め
て取水する。この取水孔は,同時に薫じんの役目をなすので,特別に高価な除じん装置を必要
としない。
導水管の中の堆砂を防止するため,ヘッドタンクの水位を低くし取水面と導水管放水口との
落差を大きくして,導水管内の流速を大きく設定した。計画管内流速は1.45∼1,65m/secで
計画取水量は0,028×4本=α112㎡/secである。
b ヘッドタンク
既存の水路式発電では,ヘッドタンクと沈砂池とは別々に設置されるが,この研究で取り上
げた急流発電方式は第1図のように導水管路や水圧管路が谷川の流水に沿って設置されるので,
ヘッドタンクと沈砂池を一つに合体することができ,それだけ経費が節減され,操作,管理が
簡略化される。
既存の水車・発電装置の場合は,電力負荷の変動に応じて水圧管の流量を増減するので,ヘッ
ドタンクの容積が小さいと導水路と水圧管の流量差の変動によって水位が大きく変動し,水圧
管に空気が流入することがあるので地形が許す限り容積を大きくとるのが望ましいとされてい
2)
る。しかし,本水車発電装置では後述のように電力負荷が変動しても流量はつねに一定に設定
されているので,これを若干上回る流量を導水管に流していれば両流量の差は一定であり,水
位の変動はない。しかし,水圧管に充嘉する時には水圧管制水弁(第3図)を急に開くと水位
が下がり土砂をまき込むので,既存の水車・発電装置ほどではないにしてもある程度の大きさ
は必要とする。ところが,ヘッドタンク設置地点は大きな岩石が3方を囲んでいるので,ヘッ
ドタンク部は1.56㎡の小さなものに制限されることになった。
ヘッドタンク部にスルースゲート式の排砂門を設けた。経費節減のため沈砂部には排砂門を
設けないこととし,堆砂の都度デッキブラシ等でヘッドタンクの排砂門の前にかき出すことに
した。余水吐は横越流型とし,最大吐出量を導水管最大流水量の約3倍の0.329㎡/secに設定
した。
c 水圧管路
用地費の節減と決壊時の公共安全性を重視して,水圧管を河川敷の雑地に沿って配置した
(第1,3図)。材質は,軽量で施工しやすく,耐候性が大でかつ安価なポリエチレンH種管を
選定した。:本管は,高温時に強度が低下し線膨張が大きいという欠陥があるが,前者の問題に
ついてはなるべく埋設し林間部を通過させ,露出部は波板トタン(半円形)遮光を施すことに
一5一
より対処し,後者の対策としては,23∼45mに1個ずつ伸縮継手を設けた。
a)水圧管の設計
(a)管内径の設定
1)
水圧管の年間経費は,年間敷設償却費と水頭損失による損失電力料金の和で表わされ,管内
径によって変化する。したがって,これを最小にする管内径を最適値とすればよい。因みに,
4)
ポljエチレン且種管について計算すると本プラントの場合は内径約300㎜が適当であった。
しかし,ポリエチレン皿専管の場合,管径が大きくなると許容圧力が小さくなるので250皿
φを使用することとし,それも総落差22,30mまでとし,これより下流側については,許容圧
力の大きい同化管を試作することとし,通産省に特殊設計認’可申請を行う予定であったが,
JIS規格品かまたはJIS規格に基づく試験成績を添付していないと認可がとりにくい情勢であ
ることが判明し,工事期間の制約もあり,その時点で所要の試験成績がそろっていて総落差
402mに使用できかつ管径の最も大きい内径186㎜の特殊肉厚管を使用することで認可を得る
に至った。この場合,内径186mm 1本では,管摩擦による損失電力が相当大きいので本来なら
ば2本を必要するが,研究予算の制約もあり止むなく内径186㎜1本にすることとし,2本に
第2表 水圧管の諸元
Table 2 Specification of penstock.
項 目
ポリエチレン
ポリエチレン
g 種 管
チ殊肉厚管
STPG38−SCH20
│200(A)鋼 管
管胴本体の長さ圃
79.8
68.1
3.3
最 大 管 三具
9.0
149
6.4
最 小 管 厚㎞
9.0
14.9
6.4
最 大 内 径㎞}
249.0
186.2
203.5
最 小 内 径㎞}
249.0
材 料
硬質のポリエチレン
接 合 方 法
支 持 方 法
186.2
203.5
硬質のポリエチレン
炭 素 鋼
バット溶着接合
バット溶着接合
溶 接
アンカブロウク,地
アンカブロック,地
R支持および台枠支
R支持および増枠支
注) トラス酔醒64.Orn,梯子脚台枠25,0m,埋設および地山支持5&9m。
ついては1本でのデータから推定することにした。なお,最末端の水車との取継部の3.3mは安
全のためにとくに内径203m皿,厚さ6,4㎜の鋼管を用いることにした(第2表)。
{b)管厚の計算
本プラントに装備する調速装置は,後述のように閉塞器が装備されていないので電力負荷の
変動または,遮断による水撃圧は作用しない。しかし,発電停止のため水車入口弁(第4図)
を閉めると水撃圧が作用する。ここでは,水車入口弁を閉鎖したときの水頭を求めて管厚の計
3)5) 3)
算を行った。水撃圧は,既往のアリエビの式を用い,管厚は薄肉管の管厚計算に準じて行った。
6)
上記3種の水圧管は,設計水頭において十分安全であるとの見通しを得た。
b)空気孔の設計
5)
既往の設計法に準じて求め,内径41,6mmのSGP40(A)鋼管を用いヘッドタンクの直下に
設置した(第3図)。
c)伸縮継手の設計
一6一
この水圧管路は,後述のように既往の水圧鉄管とは異なる支持法を採用しているので,既往
の設計法をそのまま使えない。ここでは,蜜全側に管と支持台との摩擦力を加味した計算式を
6)
導き出して求めた。水圧管は,林間部および埋設部以外の直射日光の当たる露出部については
遮光するので,年間の温度差は60。C以上にはならないと推定した。ここでは,伸縮量を年間温
度差60℃,線膨張係数1.2×10−4/℃として求めた。計算によれば,伸縮継手の伸縮量は余裕
をみて45cmもあれば十分であるが,水圧管の圧力測定の必要があることと,伸縮継手をアンカ
ブロック上に固定する方式としたため取付部の寸法・強度の上から全長エ.20m,伸縮量約70c皿
のものにした。設置位置を第3図に示す。
沈砂部
余水吐
4
ヘツ総畿/
夢
空気孔
アンカブロック①一}
㊥娩
醗’,
/
}丸 アンカ
… .! 取水装置
\ 導水管(4=19,0m
ノ 内径151mm×4本)
蒸 余水路(4−10.5m,
早 内そ星298mm)
排砂路(2;14,0m,
\泌離谷
川1
㌦/
串畠740m狙)
ポリエチレン水圧管
内径249田皿
①一② 杉植林
②・一④ 採草地
④一水車 雑木林
発電機室\帆到
\.「一アンカブロック⑤
2 伸縮継手④
STPG38−SCH20−200’(A)鋼管 内径203、5mm
温水タンク
」
放蝉ン
一一」
0 10 20 30m
1/
2
覧づ
第3図 水車。発電装置の主要設備の配置図
Fig・3 Arrangement of main equipments of trial hydroelectric plant・
d)’水圧管支持台枠の設計
本水力設備の水圧管は,可焼性に富む軽量のポリエチレン管を用いるので,鋼管のようにア
ンカブロックと支台を支点とする橋桁状に敷設することはできない。水圧管は,直接地山で支
持するか,埋設,トラス台枠または梯子状台枠で支持する。トラス台枠,梯子状台枠とも構造
6)
的には不静定連続梁であるが,単純梁の連続体として安定計算を行った。
e)アンカブロックの設計
本水力設備の水圧管はポリエチレン管であり,既存の水圧鉄管と支持法が異なっているので,
1)2)3)
アンカブロックに作用する外力の計算は,既存の設計書には示されていない。若干の仮定を設
6)
けて単純化し,安定計算を行った。なお,計算に当たっては,水平震度0,12,滑動抵抗係数
0,6とした。設置位置を第3図に示す。
d 水車および発電装置
経費の節減を最優先にして,水車はクロスフロー型を選定し使用水量は谷川の自然流量に応
一7一
じて手動で3段に切り換える方式とし,発電機は一般に市販されている交流発電機を使用した。
水圧管内の堆砂を除去したり,水車停止時に通水して管温上昇を防止するために,制水弁と制
水管を装備した(第4図)。
伸縮継手④一
抗Nα12 トー一 3,000m l
RL=59.53m
RL=60.00m目
’8\
魑1蹴こミ≧鵡
水車入口暮
水圧管
\{一一_
環
帰
、
アンカブロック⑤
、
、
、
/!
制水弁
日
水車
暮・
8
『
解杭Nα13
粗一一
RL
( RL=58.50 rn
=57.795rn
・._⊥_
RL=57,85m∼
糞⊃ .
発電機 放水管STPG38
制水管 一SCH20−200(A)
排水ピット
第4図 水車。発電装置の概要
Fig・4 0utline of trial hydroelectric plant・
従来の水車・発電装置の調速機は精密な油圧式が多くいずれも電力負荷の変動に対応して水
車に流入する水量を調節する方式であるが,ここでは電力負荷の変動に対して調整負荷(ヒー
タ)が自動的に作動し,水車および発電機に作用する全負荷を一定に保持する比較的安価で小
形・軽量の電気負荷調速機を採用した。この方式は水量をつねに一定しているので,水撃圧は
発生せずしたがってポリエチレン等の低質水圧管の利用が可能である。
調整負荷ヒータで得た温水は温水槽に蓄熱され,有効に利用される。温水槽は,内装面がス
テンレスで断熱材で外装したもので,貯水量1,0634(950mmφ×1,500mm)の円筒型である。
{3)水力設備の機能
a 取水装置と導水管
取水量は計画最大使用水量(0,075㎡/sec)の約1,3倍であった。ごみの付着等による取水
量の減退を考慮すれば,ほぼ適切な値である。観察した結果,通常の流水状況では枝葉・石礫
などは流水で自然除去されるので,取水孔のつまりは皆無であった。ただし,11月下旬の落葉
期で谷川の流量が少ない場合には,取水孔がつまりやすい。この時期は,洪水はないので,取
水装置のまわりを柵状のかこい網を張るだけで,解決できるようである。洪水時でも取水装置
が破損することはなく構造的には安全であったが,洪水時には取水装置の上面に5∼10cm程度
の堆砂がみられた。これは,鍬などで容易にかき出すことも可能で,取水装置内に流入しても,
管内流速を1.45∼1,65m/secと大きくとっているので,ヘッドタンク部の沈砂部に簡単に流
去せしめることができた。ただし,人力排砂のため洪水で堆砂すると1∼2日間は停電するこ
とになった。この取水装置の場合は洪水時の排砂にははね上げ橋式の作業台が有効である。
b ヘッドタンク
余水吐は,最大越流水深が25cmと大きくとっているが,最大取水量(97.2ぞ/sec)におい
て越流水深はわずかに13cmであり,余水能力は十分大きいことが確かめられた。また,側溝お
よび余水路も,最大取水量を流去せしめるに十分な通水能力があることが観察された。
池砂部の沈砂効果は大きく,排砂能力も十分大きいことが確認された。ヘッドタンク部の底
部の堆砂は,排砂門を開けるだけで排砂されるが,沈砂部のそれは流水だけでは時間がかかり
一8一
補助的にデッキブラシで押し出すと能率よく排砂することが可能であった。
ただし,前述のように地形上の制約からヘッドタンク部は使用水量の割に小さく設計したの
で,排砂門と水圧管入口とが接近しすぎており,排砂門を開放したり水圧管に充水するときに
土砂の一部が水圧管に流入することがあったので,、水圧管入口に立上りエルボを取り付け,排
砂門と水圧管入口との間に仕切板を設置し,改善効果が大きいことを確認した。しかし,取水
量が少ないときに急激に水圧管制水弁を開いて充水すると,沈砂部の水深が下がり流速が増大
し土砂を引き込むことがあったので,このトラブルを避けるため水圧管入口の上部にキャップ
ネットを取り付けた。ただし,この種のネットは長時間使用していると落葉・ごみが堆積して
詰まりの原因になるので,水圧管漏水時のみ使用することにした。
使用水量に影響を及ぼすほどではなかったが,排砂門から若干の水もれが認められた。この
種のゲートは精度の高い市販品は相当に高価であり,この程度の小規模な排砂能力であれば,
人力引き抜き式のパイプで十分であり,価額はさらに安くなる。
排砂路には,内法が幅60cm×深さ60cm×厚さ7∼8cmのコンクリートU字溝としたが,こう
配が急なため水流が速いことから上流部の一部を除く中・下流の大部分は,余水路なみの直径
が30c皿程度のポリエチレン管で十分目ある。道路条件の悪いこの種の施設では,軽量かつ安価
な資材を使用することが肝要である。この排砂路は,大きさ,強度とも過大設計であった。
c 水圧管路
第3表 水圧管各部の有効落差と損失水頭
a)有効落差
Table 3 Effective head and loss of head
各測定地点での総水頭・水圧力および流速
at each flexible joint・
の測定結果から有効落差,損失水頭を算出し,
項目
第3表に示す。水車入口直前までの損失水頭
は,最大使用水量時(77.6〃sec)。5.01m,
ャ量(幽ec)
常時使用水量時(27.26/sec)・1.17 mとな
り設計値より前者は0.82m小さく後者は0,52
m大きい値が得られた(第1,3表)。前述の
ように現行制度ではポリエチレン管を用いる
総水頭
有効落差
損失水頭
@ 血n}
@ 仕n)
@ 仕n)
位置
伸
27.2
11.0
10,904
0,096
縮
継
手
54.5
11.0
10,516
0,484
①
77.6
11.0
10,033
0,967
伸
縮
27.2
22.0
21,704
0,296
継
手
②
54.5
22.0
21,316
0,684
77.6
22.0
20,433
1,567
27.2
32.5
31,808
0,692
54.5
32.5
30,732
1,568
③
77.6
32.5
29,065
3,435
伸
27.2
38.7
37,508
1,192
54.5
38.7
36,232
2,468
77.6
38.7
33,765
4,935
27.2
40.4
39.23
1.17
54.5
40.4
37.74
2.66
77.6
40.4
35.39
5.01
限り,下流側半分は内径186mmの特殊肉厚管
を使用せざるを得なかったため有効落差は小
さくなっているが,上流側と同様の内径250
mmφ程度で所要の強度の肉厚管を作製するこ
とは可能で安全上問題はなく,.仮に,下流側
も上流側と同様の内径249mmφの管を用いる
と損失水頭は実測値から推算すると最大使用
水量時・2.97m,常時使用水量時・0,56m
となり,それぞれ現状よりも約40%,約52%
低減される。
b)水撃圧
運転中の負荷変動,負荷遮断にともなう水
撃圧は認められず,水圧管の安全度はきわめ
て高い。以下,発電停止等のため水車入〔]弁
を閉鎖したときの水撃圧を検討する。
伸
縮
継
手
縮
継
手
④
水
車
入
口
第5図は,各伸縮継手別に水車入口弁閉鎖
弁
時間の最大水撃圧に及ぼす影響を最大流量
一9一
77.66/secの場合について図示したもので
ある。最下流の伸縮継手④において弁閉鎖時
10
間3.6secで水撃圧は8kgf/罐を若干上回わ
8
最
大 6
水
撃
圧 4
(kgf/c㎡)
2
下流側水圧管
許容常用水圧
’\
る大きな値を示した。しかし,この閉鎖時間
3.6秒はこの試験の都合上,弁のハンドノヒを
片手で高速回転できるように改造して,ハン
_ 賦
緊\〕申懸購④
準品の丸ハンドルで普通にまわした場合は12
上流側水圧管
秒は十分にかかるから,最大水撃圧は6kgf
ドルを最大に回転せしめた結果であって,標
・、轟
㌦\…薦指圧
/c㎡を超えることはなく,水圧管の耐圧強度
からみて十分安全な値である。
㌦△一一一伸縮継手①
前述のように,電気事業法で採用されてい
0一一議一一一一
〇 5 10 15
るアリエビの略算式を用いて水撃圧を計算し
弁閉鎖時間(sec)
た。それによると,伸縮継手④において最大
第5図 弁閉鎖時間と最大水撃圧
流量756/sec,弁閉鎖時間3秒において水
(流量77.64/sec)
撃圧は5,41kgf/c㎡という値が得られた。こ
Fig.5 Relation between closing time
れと第5図の値を比較すると実測値の方がは
of main valve and maximum
るかに大きいことがわかる。
waterhammer pressure
この原因については,解析実験の結果,ポ
(at 77.6老)/sec)
リエチレンの体積弾性係数の正確な値が得ら
れていないことから,温度7∼9℃の引張弾性係数を代用したため,設計周期が過大になった
こと,水車入口弁が開度に対して流量が非直線性で実際の閉鎖時間は設計値よりかなり小さく
なっていることがあげられる。すなわち,低質水圧管の手動弁閉鎖の水撃圧計算は,電気事業法の
71
技術基準で定められた方法では不十分であり,秋元の式がよく適合することを明らかにした。
c)空気孔
計算値
水車入口弁と水圧管制水弁を締め切り,制
水管制水弁を開いて,排水流量と水圧管外圧
c=0.4 c=0.5
/c=0.6
/
との関係を示すと第6図のようになる。発電
中に緊急事態が発生してヘッドタンク直下の
0,4
水圧管制水弁を閉鎖した場合の最大排水量は,
最大使用水量の77,64/secとみればよい。
排0.3
この時の水圧管の外圧は,第6図よりアンカ 水
ブロック②でα04麹gf/c㎡であり,空気孔部 時
でもおそらく0、1kgf/c㎡を超えることはな 外0・2
/ /
/ !
/ ’
4’実
二:1ψ隊
/ 測
値
,.//
/!!
いと思われる。水圧管や水車を修理するため 圧
C”
》一一一一一一一一一一一設計値
//
0、1
に水圧管の充水を排出する場合は,水:車入口
(kgf/c㎡)
弁を切ってから水圧管制水弁を締め切り,制
.4
水醐水弁を開放して落水する。第6図1まい ・々嚇
0,100 0.150 0.200
排水流量(㎡/sec)
わばこの時の制水管制水弁の開宴と外圧の関
全諦。,,。,。栓開
係を示したものであり,同上弁開度を全開に
制水管制水弁開度
すると排水流量は約1804/sec,外圧は0.35
kgf/c遺に達し圧潰のおそれがある。したが
第6図 空気孔の性能
って,水圧管の充水を排水するには,制水管 Fig・6
Performance of air vent
一10一
制水弁の開度を0、3程度にし,徐々に排水する必要がある。
空気孔の流入断面積は大きい方が排水時の外圧は小さくなるし,冬期の凍結による開口部の
閉塞事故も発生しにくくなる。直径60㎜程度にすれば排水流量2004/secでも外圧を0,1kgf
/c面乙おさえることができると推定される。
d) 水圧管の温度
夏季における気温,水温および水圧管表面温度の1日の最高値と最低値の観測例を第4表に
まとめた。夏季は,林地や波板トタン遮光では管表面が完全に直射日光からさえぎられるので,
通水すると管温は26℃とかなり低い値になっている。雑草地の場合,6月中旬ではまだ十分雑
草が繁茂していないので通水しても34℃とやや高い値となっているが,真夏には雑草が繁茂し
遮光効果も大きくなるので,通水時には雑草地では管温は35℃以上にはならないと思われる。
第4表 水圧管温度および気温,水温の最高最低値(夏)
Table 4 Temperatures of㏄nstock and maxi田um and minim㎜temperatures
of outside air and water (in s㎜mer).
’落水の別
通 水 時
落 水 時
@ 測定日測 天定 _ 候
’84.7.15
?目
局最 低
’84.6.18
’84.7.20
快 晴
’84.6.16
雨
晴
雨
最 高
最 低
最 高
最 低
最 高
最 低
最 高
最 低
キ 度
キ 度
キ 度
キ 度
キ 度
キ 度
キ 度
キ 度
18.5
28.5
16.5
21.3
17.0
p
P7.3
P40
P7.0
P5.0
25.5
気 温(℃)
30.5
16.4
? 温(℃)
@ p
水計 無 被 覆
76.7
14.6
46.5
17.1
?林 地
度 雑 草 地
R3.2
P5.6
Q9.8
P7.4
P9.4
R6.0
P5.7
R0.9
P7.8
Q1.0
S8.0
P6.1
R2.7
P7.8
P8.8
i℃) 波板トタン
@ 遮 光
@皿
一一
夏季では,落水すると波板トタン遮光しても第4表のように管温は48℃に達し,安全範囲の
40℃を若干超えることになった。波板トタンと水圧管の間隙が5∼8cmと小さかったために空
気が停滞し温度上昇を招いたものと思われる。水圧管と波板との間隙をもう少し大きくし通気
孔を設ける必要があろう。無被覆状態で直接濁光にさらすと管温は約77℃に達していることか
ら,波板トタン遮光の効果は大きいといえよう。落水時でも雑草地では36℃にとどまり,林地
の場合は33℃と低い値になっている。
以上のように,夏季には落水すると波板トタン遮光しても管表面温度は48℃に達するので,
水圧管路の修理の必要上落水状態にした場合,再び通水するときには急激な充水を避け取直の
下降を待ちながら徐々に充水加圧するような配慮が望ましい。
春,秋,冬季については詳述しないが,夏季よりは安全側である。以上を要約すると,通水
をすれば一年を通じ安全な範囲に管温を下げることができるが落水後の通水操作において安全
範囲におさえるには地中埋設か波板トタン等による遮光が望ましい。これは,落石,倒木等か
らの管の保護にも有効である。雑草地は,雑草の繁茂にむらがあり完全な遮光効果を期待する
のは無理であろう。林地でも樹種や樹齢によっては太陽高度の変化とともに水圧管に直射日光
を受けることもある。遮光が完全な林地でも,倒木・落石等から水圧管を保護する意味で,半
一11一
割管で上面を被覆することが望ましい。
e)伸縮量
伸縮継手の摺動状況は良好で,水もれは認められなかった。以下,伸縮量の発生状況を検討
する。
伸縮量と水圧管温度差との関係を一次式とみなして回帰式にまとめて,時期別に例示したの
が第5表である。これは,波板トタン遮光の落水時の値である。平均伸縮率は,夏季が最も小
さく,次いで春季および秋季であり,冬季は夏季の約2倍の大きさに達している。すなわち,
平均伸縮率が外気温の⊥昇と共に減少するのは,四温が上昇すると水圧管は円周方向にも膨張
し管と継手のシールとの摩擦抵抗が増大するからである。
第5表管温と伸縮量の関係(落水時,アンカブロック④一⑤間,トタン波板遮光)
Table 5 Relation between temperature and expansion of penstock
(after draining,between anchor block④and⑤, shielding With
galvanized iron sheets)・
季節
春
?嘩
脚85.5.2
’85.5.7
’847.15
天 候
快 晴
曇
快 晴
管温差(△t)∼
△ぞ=2.78△t−10,55 △6=ヨ.30△t−0.80
L縮量(△のの
△ぞ=1.15△t−3,26
i0’
冬
秋
夏
測 定 日
’84,7.20
’84.10,12
’84,三〇,14
快 晴
雨
’85,2.23
蛇
晴
曇
△4≡D,71△卜1.23 △幽2,51△t−1,83 △6逼1.68△t−2,40
iO≦△t≦149) @(G≦△t≦10,6)
’85,2.24
△6匹3.04△卜2.11
△6=2.70ムレ4、54
iO≦△t≦28.6)
i0≦△t≦7.9)
i0≦△t≦IG.6)
i0≦△t嘉9,2)
相 関 係 数
G,971
0,941
o,978
0,962
0,993
0,894
0,975
0,974
平均伸縮寧
@ (℃一1)
生1.8×10−5
5,5XlO−5
4.87×1r5
3,01xIO−5
1α6XlO−5
7.lx1ザδ
12.9×10“5
11,4x10−5
齊汢
帰式
[△t≦3童.9)
i0≦;△t≦13,3)
・・平服概¥・澁 鰭長・・・…
以上に対し,林地内では管温が低くかつシールの摩擦抵抗が大きいので,波板トタン遮光の
約殆とかなり小さな値になった。
波板トタン遮光した場合の水圧管の伸縮量はこう長23,6mにおいて年間約14c田であり,ま
た管温の年較差は約52℃であった。一方当初の設計では,山斗の年較差を60℃で伸縮量を16.8
cmとしたがほぼ妥当であったといえよう。ただし,水圧管が林地内を走る部分については,設
計値は10倍以上に及び明らかに過大であった。以上のように,ポリエチレン管は管の支持法,
被覆状態で伸縮量が大きく変化するが,線膨張係数だけから求めた無拘束伸縮量を上まわるこ
とはないようであり,これで設計しておけば安全である。
d 水車および発電装置
設置した水車・発電装置が計画通りの性能を発揮しているかどうか確認試験を行った。
第6表 使用水量と発電力(Aノズル)
Table 6 Rate of flow and gerlerated output (experilnental values,nozzle A)・
項 目
l歌負荷
1/3流量
2/3流量
3/3流量
流 量
i4為ec)
有効落差
水車効率
発電機効率
@(m)
@(%)
@ (%)
発電力
@(kw)
0
27.2
39.7
55.9
70.9
4.20
最 大 ※
27.3
39.7
57.8
76.2
4.68
0
54.0
36.2
39.8
72.7
5.55 』
最 大 ※
53.8
36.2
44.2
80.3
6.78
0
75.2
33.9
35.1
75.2
6.60
最 大 ※
75.0
33.9
39.3
81.7
8.01
※ 最大発電力士を示す。
一12一
第6表に流量別の有効落差,水車効率,発電機出力を示した。これを前掲第1表の計画値と
比較すると,流量はほとんど両者に差はないが,発電機出力は実測値の方が小さく,1/3流量
では計画値の84.5∼94.2%とほぼ満足する値であったのに対し,2/3流量では計画値の56,6
∼69.1%にとどまり3/3流量では47.3∼57.4%という低い値に終始し最大出力はわずか8.01
kwであった。これは,有効落差や発電機効率はほぼ計画通りであるのに対し水車効率が低いこ
とからみて,ノズルから放水路までの流水に原因があると予想した。
(4}水車・発電装置の性能向上
a 水車出力の向上
a)排水機能の改善効果
流量別に,ケーシング内圧と水車の無拘束回転数を測定し,放水管の自由水面および水車軸
受からの漏水の状況から,排水ピット内水面を低下することにより水車効率の増大が達成され
ることが予測された。
㈲ ケーシング内圧の調整(実験①)
ケーシング上部に直径15皿mの吸気孔を開けたところ,1/3流量では吸気孔を設けても水車
効率の増大はほとんど認められず,56.6%と開口前とほぼ同等の値であったが,2/3流量では
孔の数を増やすごとに水車効率が増大し,3コ目で最大値に達し開〔]前の約1,5倍の目標値に
近い63.6%を得た。しかし,3/3流量では開口前より水車効率は約7%増大したにとどまり,
吸気孔だけでは排水ピット内水面の下降が十分でないことがわかった。
(b)放水管および排水ピットの改修(実験②)
実験①において,3/3流量ではまだ水車効率が低いことから放水管および排水ピットの排水
能力が不十分であると予想し,能力アップの改造を行った。すなわち,内径268mmの放水管を
幅800叩×高さ490㎜の広幅U字溝に換えて断面積を増大し,排水ピットの容量を約1.9倍の
0,186㎡に拡大し,さらに排水ピットの平面形状を台形とし出口を広くして水の流れを良好に
した。第7表に改造後の試験結果を示す。
第7表 放水管,排水ピット改造後における発電力(Aノズル)
Table 7 Generated output after improving outlet conduit and drainage pit
(nozz玉e A).
項 目
ャ量 }次負荷
1/3流量
2/3流量
3/3流量
流 量
i4/sec)
有効落差
水車効率
発電機効率
発電力
@(m)
@(%)
@ (%)
@(kw)
0
26.5
39.7
62.5
71.3
4.59
最 大 ※
26.6
39.7
62.4
80.9
5.22
0
53.4
36.2
65.5
78.9
9.78
最 大 ※
53.7
’ 36.2
66.8
8a7
10.65
0
76.6
33.9
61.6
77.5
12.15
最 大 ※
76.1
33.9
61.8
85.1
13.29
※ 最大発電力時を示す。
水車効率は,1/3流量および2/3流量では改造前に比べてそれぞれ約5%および約3%増大
し,3/3流量では46.4%から61.8%とほぼ目標に近い値に増大し,最大発電力が目標の13,96
kwに近い13,29kwを得た。
b) ノズルおよび羽根車の改良効果
各種のノズルを試作して実験に供したが,ここではその中の一つのDノズルについて述べる。
一13一
福富らは,総落差が約1,5mの室内実験ではあるが,クロスフロー水車の場合,ノズル開き
8)
角度30∼900Cの範囲ではノズル開き角度が大きいほど水車効率が大きくなると報告している。
そこで,総落差40mにおいてノズル開き角度の増大効果を確かめるためにDノズルを試作した。
これは,ノズル開き角度をAノズルの2倍の600に設定し,さらに,ノズルから羽根車への流
入時の水のエネルギー損失を低減する必要から,羽根車も幅の狭い特別なものを試作した。ま
た,漏水を抑制するために,ノズルと羽根車の接触部をかみ合わせ構造とした。Dノズルの性
能は第8表のとおりである。
第8表 使用水量と発電力(Dノズル)
T・b1・8 R・t・・f fl。w and g,。erat,d・・tp・t(・xp・・im・nt・l val・es…zzl・D)・
項 目
ャ量 一次負荷
流 量.
有効落差
水車効率
@ (%)
発電機効率
発電力
@ (%)
@ (kw)
i6/もec)
@ (m)
O
21.9
40.1
56.5
76.4
3.72
最 大 ※
21.7
40.1
59.4
82.8
420
0
44.3
36.8
73.0
76.1
8.88
最 大 ※
44.2
36.8
74.0
83.0
9.78
0
63.6
35.4
74.2
76.6
12.54
最 大 ※
63.6
35.4
74.8
81.8
13.50
.馳一ヒ....一.
1/3流量
2/3流量
3/3流量
※ 最大発電力時を示す。
水車効率は,2/3流量において74.0%,さらに3/3流量では約75%と大きな値を示した。
Dノズルの最大出力は,3/3流量すなわち63.64/secにおいて13.5kwを得たわけであり,こ
れを計画最大使用水量75〃secに換算すると15.3kwとなり,計画値より9.6%向上させること
ができることになる。これは,下流側に内径186㎜φの水圧管を用いた場合であって,下流側
も上流側と同工のものを試作して使用すれば最大使用水量75〃secにおいて有効落差は37.4
m(損失水頭2.97m)となり,最大出力は16.8kwに達する。
しかし,1/3流量では水車効率は59.4%にとどまった。この原因についでは詳らかではな
いが,羽根車の羽根の取付け部の肉盛り高さ等の製作上のばらつきが,通水部の断面積に対し
て相対的に大きくなっており,これが水の流れを悪くしエネルギー損失に結びついているので
はないかと推察される。小流量のノズル,羽根車では鋳型を使わない限り高効率を得ることは,
製作技術上困難なように思われる。
b 水車。発電装置の特性試験
a)水車の性能
本水車・発電装置の調速機は,電力負荷(以下,一次負荷または一次出力という)の変動に
応じて自動的に調整負荷ヒータが作動し,水車および発電機に作用する全負荷を一定に保ち,
周波数(回転数)を一定に保持する仕組みになっている。第7図にAノズルの3/3流量におけ
る調速負荷試験の結果を例示する。一次電圧をほぼ一定に保ち一次電流を徐々に上げる(一次
負荷を徐々に増大する)と二次電圧および二次電流が直線的に減少し(二次負荷が低下し),全
負荷はほぼ一定に保持される。一次電圧は,自動電圧調整器により210∼220Vに保持され,
一次負荷の増大とともに水車回転数は770rprnから740rpmまで減少するが,周波数で表わすと
60.6Hzから58.3Hzとわずかな減少であり,負荷変動に対する周波数の安定度は農業用と
しては十分大きいといえる。また,水圧管の圧力および流量の変動はほとんどなく,理論水力
はほぼ一定であった。以上は,3/3流量時の調速負荷特性であるが,2/3および1/3流量に
ついても3/3流量とほぼ同様の傾向を示した。
一14一
蛋…「一_塑轍
∼1
40
1 1紡面ジ
て240
1
1
30
5
1
1220
(rpm)500一
20
次
200
次
電減
流
10
(A}
1180
圧
{V)力
㎞}
0
40
14
1、。
出1
8
力
婦6
4
2
0
2Q
電
流
10
軸
ト
18
ノレ
ク
16
塞
理論出力
』}一一一一→一一一一夢一一一尋
水車出カ
一一4一
トム_△一△一諭一一△
10 発電機出力
・\_
瀞\
12
二 1二
次101次
水
車
(kgfm)
30「
電
G1
\
ヒ
(A)
0
150
0
90
100 二効
次 80
電
圧率
70
(V)%)
150
識
ご電璽/o
水車効率
60
50
0
0 2 4 6 8 10 12 14
02468101214
一次負荷(kw)
一次負荷(㎞)
し_一__」一___L_一一」
第7図 調速負荷特性(Aノズル,3/3流量)
Fig.7 Performance of power plant in requlating operation
(nozzle A, at the maximum rate of flow)・
b)調速機の性能
第8図に負荷遮断時の水車軸トルク,水車回転数,水圧,流量,一次負荷(一次電圧,一次
電流)および二次負荷(二次電圧,二次電流)の変動状況の一例を示す。すなわち,一次負荷
を遮断するとこれを補完するように瞬時に二次負荷が作動している。負荷遮断によって一時的
に水車軸トルクが若干減少し水車回転数も微増するが,0.5∼0.6秒の間に整定する。整定後
の水車軸トルクは整定前よりやや小さく,したがって水車回転数は整定前よりやや大きくなっ
ている。流量と水圧は,負荷遮断によって全く変動がなく安定している。
既存の水車発電装置では,負荷遮断と同時にガイドベーンにより水の流れを遮断するので水
撃圧が生じるが,本水車。発電装置では負荷が変動しても二次負荷が変化するだけでノズルの
開口面積はつねに一定であるため,水量や圧力は変動しない。すなわち,本調速機は水圧管に
過大な水撃圧が発生しないので,水圧管厚を薄くすることが可能であり,またポリエチレン管
等の低質管の使用が可能になり,建設コストの低減に結びつく。コスト低減が最重要視される
小水力開発向けの技術方式である。以上のように,どの流量でも負荷遮断による水圧および流
量の変動が認められなかったが,水車の瞬時速度変動率は流量(出力)によって異なり,流量
が大きくなるほど増大はするが1.7∼3.4%の範囲であり,農業用としては問題となるような大
一15一
きな値ではない。
水 4
水圧
圧 3
C 水車・発電装置の連続運転性能試験
80流
70量
流量
2
(kgf/c㎡)
1
60
水1600
(6/急ec)
車
回1400
転
速1200
度
1000
(rpm)
800
流
(A}
ト
水車回転速度 \一
ノレ
0 ク
(kgfm)
圧
(V)
を二次負荷として確保し,残りの約92%を一
次負荷として配分して連続試験を行った。水
圧はほぼ一定であるが全負荷と流量の微少変
動に応じて水車回転数が変動し,周波数も基
準の60Hzに対し約2.5%上下するものの電
50
40
30
20
一次電流
10
二次電流
た。また,発電機の各部ベアリング温度はほ
一次電圧
とんど一定値を保ち,長時間の運転に対し支
圧は220∼222.5Vときわめて安定度が高く,
総じて農業用としては十分な精度と判断され
0
電
能試験を行った。試験では,流量,水圧およ
び負荷の微少変動に対して調速機が十分作動
するように,発電機出力(全負荷)の約8%
20水
天繭扇ク/
車
ズ ’/無調速状態1・
軸
600
電
Aノズルを供試して,5時間の連続運転性
250
200
150
100
50
0
障のないことが確認された。
の 水車。発熱装置の開発
二次電圧
遮負
断荷
(1)水力設備の設計
H
水車・発電装置の排水をそのまま使用する
2sec
ので,取水装置や導水管は不要である。第9
図のように,水車・発電装置の放水路の末端
第8図 負荷遮断特性
(Aノズル,3/3流量)
部にやや大きめの4,1㎡のヘッドタンクを設
Fig・8 Load cutting−off characteristics
(nozzle A, at the maximum rate
of flow)
けた。コスト低減のため,ヘッドタンクの底
部に塩ビ管(300㎜φ)を立てることにより
余水を排水し,引き抜くことにより排砂する
という簡易方式を採用した。
水圧管およびアンカブロックは,できるだけ既設道路の近い位置に敷設して建設費の節減に
つとめた。水圧管は,水車・発熱装置の場合は法的規制がないので一部にJIS規格にない特
注品を使用したり,支持法もワイヤでけん垂したり路肩に吊るすなどの簡易法を取り入れた
(第9図)。この種の簡易支持を行うには管径は細い方がよいが,損失水頭が増大するので施工
上許し得る最大径の150㎜φ(内径)のポリエチレン豆膝蓋(上流側107.Om)と特殊肉厚管
(特注品,下流側66.Om)を使用した。ただし,水車直上部の3.08mは流量測定の必要上
鋼管(6B−SGP)を使用した。管厚の計算アンカブロックの安定計算,伸縮量の計算は水
車・発電装置の場合と同様である。伸縮継手の長さは850∼1050㎜とした。アンカブロッ
クと伸縮継手の設置位置を第9図に示す。
水車とノズルは,上記の水車・発電装置の実験に用いたものを当てたので水車出力は20kw程
度は出し得るが,既設水利権との関係で水量を15,04/secに絞っているので,水車出力は最
大約4kwに制限されている。
ヒートポンプは開放型とし,圧縮機(2.5kw)のみ水車で駆動し,ファンとポンプ(0.29kw)
は上記の水車・発電装置の電力で駆動する併用方式とした。また,冬季の凍結のトラブルを配
慮して暖房は空気熱源とし,夏季冷房は谷川の冷水資源(17.5∼19.0℃)を活用する観点か
ら水熱源とした。圧縮機は水車で直接ベルト駆動するもので,圧縮機の負荷が外気温,水温,
冷媒条件で変動するので,負荷に応じて水車出力と減速比を最適に調節する方式とした。水車
一16一
第2ヘッドタンク
温水槽
アンカブロック①,伸縮継手①
アンカ
ブロック⑤
第1水圧管
アンカブロック②,伸縮継手②
\
IV区間 支台②
雑地
0 10 20 30 40
…、薄埋設
1 一
駐車場
V区間
織識細編手③
Ul水圧管路の概要
ζう長:173,0m,総落差:4LOm
内径:150岡,平均こう配:13.7。
②支 侍 方法
区間
ロぽ ll
・、!
水圧管の支持法
ワイヤけん垂方式
長 さ (m)
ll:l
}
アンカーけん垂方式
ワイヤけん垂方式
㌃
アンカーけん垂方式
VI〃
アンカーけん垂方式,埋設
}
器:1
,4
8キロ管150166m
/ ポリエチレン
ポリエチレンH種管
童50,107.Om
ll:1
ワイヤけん垂方式
Nα5
ポリエチレン8キロ管
コンクリート桝
150,66.Om
ヒートポンプ
合 計 監73.Om
ヲ‘’
両岩σ
種管250,64m
Nα8
栽培施設
Nα9
炭焼小屋
第9図 水車・発熱装置の主要設備配置図
Fig.9 Arrangernent‘of main equipments of trial heat generating plant。
出力の調節は,水車入[コ弁の開度を手動で設定することにより行った。なお,ヒートポンプの
保護のため水車と圧縮機との中間軸に電磁クラッチを設置し,自動的に開閉するようにした。
② 主要水力設備の機能
引き抜き式の簡易余水吐・排砂兼用装置は十分機能し漏水もほとんどなかった。この水圧管
路は,前述のように簡便な支持法を取り入れ,水車・発電装置の梯子釜台枠やトラス台枠のよ
うに管軸を固定する装置を設けなかったので,管玉による焼みが大きく管が伸縮継手から脱落
するトラブルがあった。そこで伸縮継手の長さを30cm延長し,改善効果が認められた。また,
管のこう配が緩い皿区間(第9図)のワイヤけん垂部分では,伸縮抵抗のため管の伸縮を伸縮
継手で十分吸収することができず管が屈曲する現象がみられた。これは,伸縮抵抗の大きさに
対して管径が小さく挫屈抵抗が小さいことに起因している。そこで,この部分については簡単
な梯子状台枠に管をのせて,枠ごとワイヤにけん垂するよう改造し,効果を認めた。
(3)水車。発熱装置の性能
空気熱源冷房の場合,熱発生埋は外気温と圧縮機回転数によって大きく変化するのに対し,
圧縮機の負荷は回転数による変動は大きいが外気温の影響は比較的小さい。圧縮機回転数400
∼600rpm,外気温22,0∼30,2℃(現地の夏季における日最低,日最高気温に相当する)
において,負荷1.5∼2,2kw,熱発生量3,250∼4,250kcal/時の範囲であった。
一方,水熱源冷房は谷川の水温が夏季でも17.5∼19.0℃(ヒートポンプ入口)と低く,し
かも日変動が小さいので,第10図のように熱発生量は4,500∼5,000kcal/時と大きく,当然
のことながら外気温の影響はなく安定している。また,熱発田鼠は圧縮機の回転数が低い方が
やや増大する傾向があり,総じて回転数の影響は小さい。これは,回転数が時間の経過ととも
一17一
lll\_
成
績
係
数
に若干低下するこの水車装置に対しては,好
ましい特性といえる。圧縮機の負荷は,空気
熱源式よりやや大きく回転数による影響は空
気熱源式と同程度である。水熱源式の場合は,
熱源の流量によって熱発生量・負荷とも変動
し,流量は少な目の方が大きくなる。当初は,
2.5
圧
縮
割
算2・o
ぎ
/・グ8’
量を調節する方式としたが,弁縮流部の流速
一△_・一 qニノ
が大きく二部へのわずかなごみの付着が流量
時1.5
/
二8ク都
)
熱源水量
何
(×103)
亀、\
(
kca1/時
) 4,5
4,0
の排水ピットの水をポンプで汲み上げて流量
を加減する方式に改良した。
以上要約すると,冷房の場合,水熱源式は
凹 17,6∼21.2
空気熱源式より熱発生量が大きくかつ安定し
△ 8.1∼ 8.4
\
5,0
の変動に結びつくことがわかったので,水車
Q 29.7∼30.34/う}
6.0
欝
水圧管からの加圧水を熱源水とし弁開度で流
A\_L△ 、鋤
こ霧噂一・ 阯
Q一一一一〇一
L___一_____
400 500 600
圧縮機回転数(rpm)
ている。夏季日中では,空気熱源式が3,200
∼3,700kcal/時であるのに対し,水熱源式
の場合は4,300∼4,500kcal/時と約27%出
力が大きくなっている。夏季冷房は,山間地
では冷水利用を取り入れるのが有利である。
空気熱源暖房については,外気温が1&9∼
21.2℃という好条件でしか測定していない。
この条件下では,圧縮機回転数400∼600
rPmにおいて負荷1,3∼2. O kw,発生熱量
7,000∼10,400kca1/時という良い結果を
第ユ0図 水車・発熱装置の水熱源冷房時
の性能
得ている。
Fig・10 Performance of trial heat
空気熱源冷房と水熱源冷房について,8∼
generating Plarユt during
20時間の連続運転試験を行った。空気熱源式
cooling with water heat
は,外気温の変化に対応して熱発生量が変動
SOurce・
し,大雑把にみると夜間は平均約4,300kca1
/時,昼間は平均約3,700kcal/時であった。圧縮機の回転数は夜間が524∼571rpm,昼間
が480∼565rpmと許容範囲におさまった。水熱源式の場合は,熱発生量の時間的変動は少
なく昼,夜間ともおよそ4,500kcal/時と大きく,圧縮機回転数は526∼548 rpmと許容範囲
におさまった。圧縮機の回転軸が変化するのは,負荷の変動よりは弁の精度不良による圧力損
失の変動の方が大きく関係している。水車入日弁の改造を必要とする。いずれにしても,圧縮
機の回転数の変動は予想より小さく,この程度であれば回転数が上限(600rpm)と下限(4QO
rpm)を超えた時に警報するような装置で十分であり,回転数を一定化するための高価な装置
の開発は必要ないように思われる。
この水車・熱発生装置の場合,以上のように流量を154/secに制限しているが,この水圧管
径では354/sec程度まで増大することが可能で,この水車の場合,水車禺力は8.58 kwは出し
得る。この水車出力に見合う圧縮機は,余裕をみても7.5kwの容量のものを取り付けることが
可能であり,以上の結果から冷房能力は約13,000kcal/時(15.7kw),暖房能力は24,000
kcai/時(28kw)と推定される。 これは,冷房時で水車出力の約1、8倍,暖房時でおよそ3,3
倍に相当する。
一18一
5)水カエネルギー変換プラントの問題点
小水力の電力変換は,確かに光・熱・動力等の各種のエネルギーに簡単に変換することが可
能であるが,現在の電気事業法の技術基準では30V以上の場合水車異常時の警報装置・緊急停
止装置等を必要とし,各設備の設置基準もかなり高度であり,さらに高度な資格を有する技術
者(ダム水路および電気主任技術者)がいないと開設できない,などの制約があり個人での開
設はまず不可能であり,事実上公営または団体営となるがこれも運営や利用を合理化しないと
コスト高になりやすい。これに対し,熱変換は産出エネルギーの汎用化の点では劣るが,電気
変換のような法的規制がないので現地の状況に即して装備をかなり簡素化してコストを下げるこ
とが可能であり,資格や繁雑な許認可申請の必要がないので,技術の普及性は大きい。
この研究では低コスト化を最重点においたが,水車・発電装置の場合は建設費は933千円/
kwと目標より多く要した。これは,発電規模が小さいことにもよるので20kw規模を想定して試
算すると707千円/kwとなり,これは既存の小水力発電の60∼70%に相当する。水車・発熱装
置については試作を重ねているので不確かな点があるが,暖房時基準でおよそ376千円/kw
となり,水車・発電装置に比べると発生エネルギ』当たりの建設費はかなり低い。
摘
要
わが国の山間地の急傾斜と多雨という特長を生かし,豊富な谷川の小水力を安全かっ低コス
トに電気および熱エネルギーに変換するプラントを開発した。このプラントは,ダムを設けず
に谷川の流水を簡易な取水装置で吸水し,軽量で施工容易な低コスト水圧管を谷川の雑地に最
短距離に設置したもので,水車も安価なクロスフロー水車を用い流量を手動切換えするなどに
より構造を簡素化している。上流部で発電を行い(総落差40,2m,最大使用水量75,04冷ec),
その放水量のうちの一部を再加圧して下流部でヒートポンプを駆動する(総落差40.5m,最大
使用水量15.06/sec),流水多段利用方式である。
1)水車・発電装置の性能
に)主要設備の機能
・取水装置は,洪水時には装置の上面に堆砂がみられたが,通常の水量では所定の流量が確保
できた。ヘッドタンクは,沈砂部の排砂能力,余水吐の排水能力ともに十分であった。地形上
の制約からヘッドタンクの容量が小さく,水圧管充水時の土砂流入がみられたので若干の改造
を行った。水圧管の水もれや亀裂は認められず,伸縮継手の摺動状況は良好で水もれはなかっ
た。
(2}水車。発電装置の性能
開設当初は,排水ピットと放水管の排水機能が低く,最大出力は目標の約60%にとどまって
いたが,改造の結果ほぼ目標に近い値となった。次に,ノズルを改造した結果,最大使用水量
63.64/secにおいて発電力13.5kw,水車効率74,8%の好結果を得た。電圧は210∼220 V,
周波数は58.3∼60,6Hzの範囲を保持し,負荷遮断による水撃圧の発生はなく周波数の変動
も1,7∼3.4%と小さかった。
2 ) フ}く車 9 発熱装置
ほ)主要設備の機能
ヘッドタンクの排砂装置の構造を簡素化したが,機能は十分で問題はなかった。水圧管の外
径が165m皿φと細いため,簡易な設置法を採用して敷設費を低減することができたが,夏季に
は伸縮継手が十分作動しなかった。
一19一
(2)水車・発熱装置の性能
本水車・発熱装置は水車で空気・水熱源兼用ヒートポンプ(水熱源は冷房のみ)の圧縮機
を直接ベルト駆動するもので,圧縮機の負荷が外気温,水温,冷媒条件などにより変動するの
で,負荷に応じて水車の出力と減速比を最適条件に手動調節する方式とした。
現地の気象条件では冷房は水熱源,暖房は空気熱源が有利で,冷暖房とも長時間運転におい
て圧縮機の回転数を500∼550rpmの許容範囲におさえることができた。この装置の場合,流
量を15,04/secに制限しているが,流量を増やすと水車出力は8.58kwとなり,7.5kwの圧縮
機を取り付けることができる。したがって,冷房能力は約13,500kca1/時(15,7kw),暖房能
力は24,000kcal/時(28 kw)と推定され,これは冷房時で水車出力の約1.8倍,暖房時でお
そ3.3倍に相当する。
1kw当たりの建設費は,因みに暖房時基準で示すと376千円となり,水車・発電装置に比べ
るとかなり低い。
文
献
1) 米屋秀三(1970):発電水力,コロナ社(東京)。
2)水越達雄(1978):電力土木施工法,山海堂(東京).
3) 千秋信一(1981):発電水力演習,学献社(東京).
4)川崎 健・大黒正道(1984):ミニ水力発電の設置事例と法律上の問題点(1),農業および
園芸,58(11),28.
5)水門鉄管協会(1981):水門鉄管技術基準,水門鉄管協会(東京).
6)四国農試機械化研究室(1982):四国農試大豊水力発電実験プラント工事計画書.
7)秋元徳三(1966):水力発電所における水撃作用について〔11∼(3),水門鉄管,49,1∼16.
8)福富純一郎外5名(1982):クロスフロー水車に関する研究,日本機械学会講演論文集,
No.820−10.
一20一
Summary
Makinq.Use of the features of steep slope arld much rain in
mOuntainous reΩriOns in our countries, we developed a. plant tO con−
vert a lot of small hydraulic power in mountain streams into elec一.
tric and thermal enerqies safely and at low cost。 mhis. plant con−
sists of simple intake devices to intake flowinq water in mountain
streams, instead of a dam, and light−weight, low−cost penstock
easy to execute the work tO be installed at variGus places in the
mountain streams at the shortest distance・ .]:ts cOnsセruct↓On is
simplified by usinq a low−price cross flow water wheel and by
manually switchinq the flow rate, etc。 This plant uses a flowing
water multi−staqe utili・ati・n・y・tem. 煤Eq・nerate p。wer at the u倉
st「eam(・「oss head 40・2己m’max’血um se「▽’ce.w
ンe「capac’ty 75…/
sec) arld to dr⊥ve a heat pump at the downstream by re−pressurizinq
apOrtion of the tail water capacity (qrOss head 40.5m, maximum
service water capacity l5。O l/sec).。
(1) Water w耳eel and qeneratOr
l)Function。f main equipmen.t
田he intake device co.uld obtain the specified quantity of water
when the streams are nOrlnally flowinq, thouqh sand accumulated on
the intake device durinq flood. The head tarlk had enouqh sand−
flash capacity at the qrit area and drainage capacity at the spil.1−
way。
Since the capacity of the head tank was sma工l because of tOpO−
qraphic restrictions and sediment entered the penstOck when it was
filled wi七h water, we performed some mOdifications。 As a result二,.
the penstock had no water leakaqe and was not.cracked.. .The flexible
joints slided smoothly and had no water leakaqe.
2) Performance Of water wheel and qenerat二〇r
At the beqirmirlq of operatiOn, drainagre functiorl of the
drainagre pit and outlet conduit was・low and the maximum output
一21一
remained at about 60∼とof the tarqet capacity。 HOwever, the maximum
Output reached nearly the tarqet after modification。 Then, after
modifyinq the nozzle,. we=have obtained good resultsF a power of
13.5 kw and water wheel efficiency of 74,8宅 at the Inaximum ser▽ice
water capacity of 63・6 1/sec・ The generator. maintained the ▽oltaqe
in a ranqe of 210 to 220 ▽ and the frequenc.y in a ranqe of 58。.3 to.
60.6Hz, produced no water ha㎜erinq pressure due tO cutoff of the
load and has as small fluctuation in frequency as:1.7 to 3。4∼き.
(2) Water wheel and heat qeneratOr
l)Function of.maヰn r99手pment
We simplified the head tank sand−flash equipment and as a
「esul仁’it h骨d q。・d f・・ρti・n and・g P・・bl・m・ccurre骨・Since th・.
outside diamrt・r.gf廿1e p・n・t・・ド.wa$.as small as l6与㎜’we used
arimple inrtallati。n m・㌻hOd t・「e⑳re the i兵stalla㌻ion crst・
How・v・・’th・fl・xibl・ゴ・i・t did・・t・・mpl・t・ly gperat・i・・u㎜・ギ・
2) PerfOrmance of water wheel and heat qenerator
This wat二er wheel and heat qeneratof dri▽6s directly throuqh
belts the compressor fOr the heat 診ump、 for both air and water heat
source (water heat $ource only for cooling) by mearls of.the water
wheel. Sirユce t.he compressor load varies accordinq to the outside.
air temperature, water temperature, refrigerant cond土tions, etc。r.
the Output Of the water wheel and reduction qear ratio should be
manually adゴusted tQ the optimum cOndition accordinq tO the lOad・・
Under the meteroloqical conditiOn in.the field, water.heat
source and air heat source are advantageOus for cOolinq and heat−
ing respecti▽ely。 The rotation speed of. the.compressor could. be
kept within the al.lowable rarlqe of 500 to 550 rpm during operation
fOr many hOurs for both cooling and heating, This equipment is
:Limited to l50 1/sec in .flOw rate。 〕二f the flow rate is increased
the water wheel output will be 8.58 kw and a compressor 7。5 kw can
be mounted。 AccOrdinqly, the coolinq capacity and heatinq capacity
一22一
are presumed to be aもOut l3,500 kcal/hou士 (..i5。7 kw) and 24,000
kcal/hOur (28 kw) respectively, which cQrrespond to about l。8 times
the water wheel out二put when coolinq and 3。3 times wh.en heatinq.
By the way, the ごonstruction とost per l kw amOunted to 376,000
yen in terms「of the basis for h6ati…nq seasbn arユd is considerably
low as cOmpared with a water turbine−qenerator plant。
一23一
2.波浪エネルギーの有効利用
Utilization of Wave
Energy
一Development of Wave Purnp System一
木ノ瀬紘一*,西村 司発大西 外明**
ONISHI
Koichi KINOSE, Tukasa MSHIMURA and Sotoaki
的
貧
通常の波浪エネルギー利用は発電を目的としたものが多い。しかし,発電を主目的にすると
エネルギー変換装置の規模が大きくなったり,発電のために介在するメカニズムが複雑となり
そのために効率が大幅に低下することが多く農業の場に応用するためには多くの問題がある。
そこで農業に波浪エネルギーを利用するとき,発電を介在させないで波運動を直接動力の形
態で利用する方法を検討した。農業での利用を考えると,その稼動のピークを比較的気候の
安定する潅画期間中に設定せざるをえない。すなわち海水浴ができる程度の比較的小さな波高
の波浪が対象となる。
本研究では,さまざまなエネルギー変換方式を水理模型実験から検討し,その結果を基に波
動揚水ポンプシステムを試作した。そしてそのシステムの設計のための解析を行ない,その結
果を模型実験の結果で検証し,ポンプシステムの動特性や効率を明らかにする。
方
法
’
まず,低エネルギーの波浪を対象にして効
lncident wave
率よくエネルギーを利用するために,湾内共
bay
z
振の原理(Figユ) を積極的に応用し波のエ
ネルギー密度を局所的に高める方策を検討し
z
た。共振は,防波堤などの一部を掘削して,
長方形の水槽(共振槽とよぶ)内に起こされ
る。まず,水理実験を基に,共振を起こさせ
ηマ
く二〇
♂
るのに最適な共振槽の長さ,深さを決定する
方法を朋らかにした。次に共振槽内の共振に
z
よって波高を増幅した後,揚排水の動力源と
bay entrance
して利用出来る形態で波エネルギーを抽出す
図1 湾内共振
る方法として,越波によって位置エネルギー
Fig・1 Harbor resonance
* 農業土木試験場水工部
、**東京理科大学理二[1学部(紹へい研究員)
一24一一
セじみハ ど
incident wave
磁
pulieyα三}
.◇
resonator
へγo
bottom
gravel血ound
図2 越波によるエネルギーの抽出
Fig.2 Energy extraction by wave over−
toppir19・
を得る方法(Fig,2), 及びフラップの運動
から動力エネルギーを得る方法(Fig,3)の
二者を対象に検討した。まず,越波による方
法によれば,単に堤防を越波されるより,共
振槽のによって波高を増幅させると,約2倍 図3 フラップー共振槽系
のエネルギーを抽出できることを水理実験か Fig.3 Flap−resonator system
ら確認した。
次に,共振槽入口部の底部のヒンジを中心に回転振動(首振り運動)するフラップを設置し,
波によるこの首振り運動から動力の形でエネルギーを抽出する方法を検討した。作用波に対す
るこのフラップー共振山系の応答特性は,Fig.2に示す基礎的な造波実験でその基本が明らか
にされた。(この詳細については参考文献1)を参照)。その結果をもとにこの系の動特性を解析
的に把握するために波動理論や共振理論を用いたシステム解析を行なった。そして,この結果
をもとた波動ポンプシステムを試作し,造波実験を行なった。
試作したポンプシステム模型は,次の二種類である。
①波動油圧ポンプ:振動系としての波動ポンプの動特性そのものを詳細に調べるために,
水圧より制御が容易である油圧系を採用。油圧としての動力にも直接利用できる。
②波動揚水ポンプ:揚水・排水に直接利用する水圧ピストンポンプ
さらに造波実験は,季節毎に変化する作用波の波向の影響などを検討するために平面水槽で
3次元の実験も合せて行なった。
結
果
1)波動揚水ポンプの概略
本報告で対象とする波動揚水ポンプは,先述のように湾内共振(harbor resonance) の原
理を応用したものである。その概念図はFig.4に示したとおりである。この波動揚水ポンプ系
は,(A)フラップ,〔B洪振古及び◎ピストン式水圧ポンプから構成され,護岸提防の一部として
設置される。共振槽入口で底面に碇着されたフラップは,入射波と共振槽内に形成される重複
波の双方の波力を受けて回転振動率する。この回転振動は,適当なリンク機構を経て,ピスト
ン水圧ポンプの往復運動に変換され,揚水等の動力へと変換される。このようにして入射波の
エネルギーは,ポンプ系によって直接揚水等のエネルギーへと変換される。ポンプ系において,
フラップはヒンジを中心として自由回転振動し,共振槽内では波が重複する。従って,系はフ
ラップの自由振動に対する共振と共振槽内での重複波としての波の共振の二つの基本的な共振要素
から構成されていると考えられる。参考文献1)で示した水理模型実験結果をもとに,次節で
脚注*フラップの首振り運動,ヒンジを中心とした回転往復運動
一25一
述べる波動油圧ポンプ(Fig.5(a)),波動揚水ポンプ(Fig.5(b))を設計,試作した。
outlet
o
wave
pump
z/
’、
8,∩、、
コノrl
O 、’
惣
o
1
ノ
〆
inlet
僻
0
曳8
flap ∫
%ee
(A∫ヒ、
6.Om 臼 ’
ll
ll
\
・1㍍\
畑がe
感凶㌔
いご、
図4 波動揚水ポンプの概念図
Fig.4 Conceptual desgirl of wave pump.
(1)波動油圧ポンプ模型
設計,試作した波動油圧ポンプ系及び測定センサーの構成はFig.5に模式的に示したとおり
である。Fig、6は,模型の概要図である。このポンプ模型は,農業土木試験場の風洞造波水路
(2次元水槽:長さ82,5m×幅2.Om×高さ3,0m)に設置し,ポンプの動特性把握のための
造波実験に用いた。水路は,(1}入射波の進行してくる部分と②共振槽に分けられる。この共振
槽の長さは反射楓7}を移動させることによって可変である。(3}フラップの回転振動によるエネ
ルギーはリンク機構を介して,(4)油圧ポンプを駆動させ,{5}アキュムレータに高圧の油圧とし
て蓄積される。揚程に相当するアキュムレーター内の油圧は,(6}分銅を載荷することによって
任意に設定できる。
(2)波動揚水ポンプ模型
油圧ポンプ模型の(4)油圧ピストンポンプを水圧ポンプに変更し,㈲アキュムレータを空気圧
の調整可能な圧カチャンバーに改造してある。この圧カチャンバーはポンプの吐出口に接続さ
れていて,空気圧を謂節することによって任意のポンプ揚程を設定すると同時にチャンバー内
の水位から吐出流量を計測できる。
この油圧ポンプの動特性を把握するために,次の項目を測定した。すなわち,(A)波高計によ
る入射波及び共振槽内の重複波の測定,(B}変位計によるフラップ振動振幅の測定,IC)圧力セン
サーによる圧力の測定,及び(D)分銅の引き上げ量,すなわち,獲得したエネルギー量の測定で
ある。一方揚水ポンプでは,さらに吐出圧,流量を測定した。
一26一
(B}displacement
@ sensor
{5}accumulator
1
阪
一
㎜
kA)wave
@ gauge
〔4)oil
pump (C)pressure
@ {3)flap
@ senor
@ 囚wave
〔D)load Iift
@ pickup
gauge
i1)incidient
@ ’
@ wave
亨
1
A
{7)
)
「e
m
O「 \ 、 (2}resonator
(6}load
…
図5(司 油圧ポンプシ.ステムのブロック図
Fig・5(a} Constitutional diagraln of oil pulnp systern
he母d ta翼1k
τ
P「essure
@ 9∂ugε
『
口
o「essure
@ cham馳r
ou縫eし
、
wave pumP
葡
air CGnlpressor
7 し
pnlel
1 /
P
図5{b)揚水ポンプシステムのブロック図
Fig,5(b) Constitutiorlal diagram of water pump system
図5.波動ポンプシステムの構成
Fig.5 Constit1ユtiorlal diagram of wave pump
一27一
3400
一1
1 2400
; !q一一一 一
1500
I 1
oi1.pump
@…
i l …F ト
1
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o頃
禔@li I■ 1■ 1
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1
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「
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3200
3400
。..・.・1..2000.?・・=..1町≒÷〒一π
。.. ド刊、辱....∴「
←
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.6.馳 .
. ■ , ・
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、9 0 ..
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X . .
Q:一..
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@ . 7
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「 .q
■ . o o ’ o
@ m凸
@。..Q. unit:
D o
o o D
図6{a)
Fig・6(a)
一90
ら 隔 勿6P.一...一..,{
ナ
図6(b)
Fig.6(b〕
図6 波動油圧ポンプシステム模型
Fig、6 Schematics of wave oil pump system
一28一
L
2)フラップー共振槽系の周波数応答解析
本節では,波動ポンプ系の動特性を把握するために,この系の基本を占めるフラップー共振
丁丁の振動解析を行い系の周波数応答特性を明らかにする。
解析を進めるにあたり,フラップー共振槽系を次のように規定する。
(1)フラップは矩形浮体とし,Fig.7のように底部ヒンジで海底に繋留され,このヒンジま
わりの回転振動だけが自由な半拘束浮体と仮定する。
(2}共振槽の岸側壁(反射板)で波は完全に反射するものとする。
(3}ポンプによる負荷は,リンク機構を介して,Fig.7のようにフラップ頂部に作用するも
のとする。
又,解析は速度ポテンシャルを用いた微小振幅波理論の解法によって行う。しかし,通常の
解法では,速度ポテンシャルに散乱波などの 1
影響を表示する無限級数項が含まれ,実際の
pu「np resonator
計算はかなり煩雑である。本報告では,方程
〆 \ flap
式やその解の表現が簡単であり,かつ現象の
a→ 一aR
理解や各因子の影響を明確に把握するために,
冊
伊藤ら2)が行った無限級数項を省略した解析
法を用いて,フラップー共振槽系の動特性を
検討する。この解法は,いわば第一次近解法
であり,精度が問題となるが,伊藤ら2}が行
ったさまざまな場合の精密解や実験値との比
較の結果を見ると妥当な精度を有するものと
判断される。
竺
Z
S
’・・蛆対h四
田
X
reflactor
Plant
、、。ge 一・X=Ol ・一・
図7 フラップー共振槽系
Fig・7 Schelnatics of負ap−resQnator
system
(1}波とフラップの運動の表示
aRとaTをそれぞれフラップへの入,反射波及びフラップ後面への伝達波の半波高とす ・
a ,
ると,Fig.7に示す座標系で,波形は次のように表示される。
欝i曇欝lll}一一一一一ω
ここで,i=V⊂7「であり,1はフラップの半幅である。σ,kは波の周波数と波数で,周期
Tと波長しの間には,それぞれ,
σ=2π/T, k=・2π/L …………・・……・……………………・・…・・………・・
@(2}
と表される。従って,フラップからrだけ離れた岸側に設置されている反射板とフラップの聞
の共振三内では,
η¥= 2aT cos 〔k( κ一7)〕eゴσ’ ・… 一・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・… 一。・… 。・・・・・… 一・・・・… (3}
の波形をもった重複波が形成される。
一方,ヒンジのまわりのフラップの回転角θは,θを回転振動振幅とし,作用波と周波数の
等しい回転振動を考えると次のように表示できる。
θ=θeゴσ’ ・・・・・・・・・・… 一・・… 一・・・・・・・・・・・・… 一… 一・一・・・・・… 一・一… 一・一一・・・… 一・一一・一・ (4}
(2)圧力と流速の連続条件
Fig.7においてフラップより沖側の(1}領域には,ηとηRが藁複する部分重複波が形成され,
フラップと反射板の間の(lm領域では重複波握が形成されている。このほ)と価の領域の連続
条件は,フラップの底と海底の間の(mの領域の底層流の圧力と流速の連続を吟味することに
よって把握できる。
一29一
a 圧力の連続
Fig.7のようにh.を水深,dをフ.ラップの吃水深として,z一一d∼一hでの平均圧:カと底
層流の平均圧力すとが等しいとすると,
1∴,1∵誰:鴛鷲1(7−1)/……・一……・一……・一…{・・
と表される。ここでρは水の密度であり,5。,はx一士〆における底層流の平的圧力で,か
つfBは,
・・一.、美、∫工co灘吉z)・・
一、(1.、)s’n謡孟d)…・・……一………・………………・・…一(・・
である。
b 流速の連続
{4)式で表示されるフラップの回転運動の壁面速度は,水面下zにおいては,
u=一iσθ(Z−Zd) ………。…・……・……………・・…・……・・…………・……… (7}
と表すことができる*。従って,フラップが波の運動とともに運動するためには,この壁面速
度と波の水平流速が等しいと考える。x=♂において,
Z=0∼一dで,
一・・θ(・一・、)」穿…。s・・k(・一1)c器蓋1+z)…一・…・…・一(・・
と表す。ここでZdはヒンジの座標である。一方Z一一d∼一hにおいては,底層流の平均流
速百と波の流速が等しいと考えて,x昇1において,
τ’」崇・・鱗…k(・一1)co磨墨(器z)……………・一…………………(・・
と表す。ここでU∼はX需〆における底層流の平均流速である。
c 連続条件
(5)ん(9)式を使い若干の演算2}の後に次の連続条件式(10)と(14)式を得る。
_ikd
fM♂θ+(1−iyB) 〔a−aT eゴkけ一1)〕+aT e一ガk(「』!)=a ・一・・・・・・・… 一・・・… (10}
n
ここで
,
’
f・=f・・+πf・’……○…”●’……’…………●…………(11)
∫幅一論∫∴(・一・・)c量器+z)・・
一kdk、1。、h kh{一kZ・s・・h kh・・(・…)…h・(・一・)
一…hkh・…hk(ト・)}・・………・……・…・一………・…・・・……(12)
・一二( 2kh1+ slnh kh)一与
・「舞k(h−dn)・孟一一……・…一・一・一…・……一…・一………(13)
脚注*以下eiσtの項は共通項として出現するので省略して記述する。
一30一
である。一方,aRは,
aR=a−2 i aTsink(r−1) 一一・・・…一・・…・・…一・・・・・・・・・・・・・・・… 一・・……・・・・・・・… {14}
である。
(3)フラップの回転振動運動
フラップはヒンジのまわりを圓転振動する。この時回転モーメントとしては,フラップの壁
面に作用する水平波圧によるモーメント,底面に働く揚圧力と静水圧的複元力によるモーメント,
更に,波動ポンプと作動させるための負荷によるモーメントが考えられる。
a 水平波圧モーメント
反時計まわりの水平波圧モーメントMHは,(14)式を用いてaRを消去すると,
M。一・9∫!、(・一・・)co輪(説z)…〔…c・・k(・一1)…・・)
=一2ρgd’fMH 〔a−aT el k{「『の〕 … …… 一・… ……・・…一・・…… …・…一・一 {15)
と表される。
b 揚圧力モーメント
回転振動をする矩形浮体の底面に作用する揚圧力p−dは,伊藤ら21によれば,
P−dP1+P一・+P1+P一’五
ρ 2ρ 1
2ρ
σ2θx {’言x2+(hデ)2}……・…………一…・・…一一・……・(16}
十
h−d
と表される。従って,揚圧力モーメントMwは(5)式と(14)式を使えば,
M。一∫二P−d・・d・
一遺旨12f,〔・一・。e・k・…〕
・2響{碁(h言d)2}・一・………・……・…・一・………・…・・(17}
を得る。
c 静水圧的復元モーメント
フラップはヒンジで拘束されていて,ヒンジに対して浮力に相当する拘束力が作用している。
すなわち,フラップ底部中央にこの浮力に相当する質量が付加されたものと同等と考え得る。
このように考えると,フラップ頂部から計った浮力の作用点は,次のように算出できる。
一 M・s/2+Bos
・・………………・……………・…・・……………・・…・……… {18)
y=
M+Bo
ここでBo;2ρd♂一MでMはフラップの質量,sはフラップの高さである。従って,ヒンジ
のまわりの静水圧的復元モーメントMsは,
Ms篇2ρgd〆(s−y)θ …・・……・一…………・…・…………・・……・…………… (19}
と表せる。
d 回転運動方程式
従って,全モーメントMTは,
一31一
MT篇MH+Mw÷Ms+MR
=一2ρgd/fM[a_aT eもk{r一’)〕
・2二三2ぎ3{爺・(hid)2}・
一2ρgd/(s一∼りθ+MR ……・・…一……・……・…・………・……・…・… (20)
である。
ヒンジまわりのフラップの慣性モーメントを1とすると運動方程式は,
d2θ
1−1匝一M・ebt………●・・………’…・”“’………●0’…’…●…”◎(21)
となる。附加慣性モーメント11を,
レ鴇{ぎ・(hid)2}
とすれば,⑳式は,
一σ2(1+11)θ=一2ρgd∫fM 〔a−aT eik(「一の〕
一2ρgd1(s−y)θ+MR ・・一………・・…・………・・…・… ・(22)
となるが,この(22)式は,若干の演算の後に,
θ一(2ρgd〆fM〔a−aTeik(「『」}〕一MR σ2_ 2ξ塁dζ(s−y))1毫L
正+11
となる。この式の分母が零となる周波数は,フラップの固有振動数を表している。すなわち,
1瑞∵}一一一一一一一⑳
である。このように固有振動数を使って上式を整理すると運動方程式は,次のようになる。
θ一≠W霞11≒〔・・gd1(・喝・・k・…)一M・〕………1一一(・・)
e フラップの回転運動振幅
回転運動振幅θは,この運動方程式(24}式と2節で見た連続条件式(10)式とからaTを消去する
ことによって得ることができる。すなわち,その解は,
θ一メ÷噸11≒〔2・gd〆f・11Ba−M・(11B−iゐ 11B− iyBQ IlB− i}徳Q)〕…一……・(・)
ここで,11B=1−e『2ik(「一’)
yBQ= yB十yQ
1 2ρgd12 kdf高
y・=。・一鴫+1・11 n
である。又,伝達波の半波高aTは,
・・一得、,課鴇≒、鍋・,・・一……………・・一…一……・・㈱
と表される。
以⊥,散乱波などの影響を表示する無限級数項を無視した速度ポテンシャルによる微小振幅
波理論を適用して,フラップー共振前払の振動解析を行いフラップの周波数応答を検討した。
一32一
得られた解は㈲や⑳式のように簡単に解析的に計算できる。
3)波動ポンプシステムの動特性
(1)エネルギー変換効率
Fig.5,6に示す波動ポンプ模型に,種々の周期Tの規則波を与え,フラップから沖側60 mに
おける沖波,フラップ直前波及び共振槽最奥壁面直前波のそれぞれの波高を計測しながら,油
圧アキュムレータに負荷する荷重480,400,200,100kgと変化させ,このおもりの引上げ
量を測定した。なお,これらの負荷を揚程に換算すると,それぞれ,135,8,113.2,56.5,
28.31nに相当する。ポンプの特性を代表するパラメータとして,エネルギー変換効率に相当す
る無次元量ηeを次のように定義した。
E
η・=二一………’●…………’…”…幽…’………喩”.●”…伽
ここで,Eは単位時間当たり負荷が獲得する位置エネルギーであって,負荷の重量Fg,単
位時間に負荷が引上げられる高さ∠hを用いると,
E=F9。△h o・・.●…………………・……・……・・…・…・…………・……………… (28)
と表される。一方EGは沖波のエネルギー流速で,フラップの幅Bとすると,
・・一壱・gH62・C・・B……・一・∵・…一…・………一…・…・…一一……(・・}
と表される。ここで,Bはフラップ幅,CGは沖波の群速度,そしてHるは沖波相当波高であ
る。
11:1際
1,00
∼
ηe
囲100 一
0.75
h瓢1.5m
㌶
脚
r;2ユ5m
ηe
T1;2,51 sec
ll,
0.50
O.50
糊蟷
0.25
h−1.5m
r=2.15m
Tl−2.51 sec
’
’
0.25
『蓋
幽
0.00
0
1.0 2.0 3.0 4.O T(sec)
100 200 300 400 500
10ad (k9)
wave period
図8 負荷の変化によるエネルギー変換効率
図9 負荷の変化によるフラップの固有振動
の変化
周期近傍のエネルギー変換効率の変化
Fig・8 Variation of energy extraction
Fig・9 Variation of energy extaction
ratio owing to chane of load
ratio at natural frequency of
flap owing to change of load
Fig,8,9にエネルギー変換効率η,の測定結果の代表的な例を示す。いずれの場合も実験水深
h篇1,5m,共振平群さr=2.15m,フラップの慣性モーメント1=393 kg・sec2であり,フ
ラップの形状はFig.10に示すとおりである。前節の(23}式よりフラップの固有振動周期Tlを
一33一
求めると,
’1
;2,51 sec
TI=
WRl
となる。Fig.8は油圧アキュムレータに似せられた各負荷に対するエネルギー変換効率の周波
数特性を見たものである。データは比較的長周期のものが少ないが,Tl−2.51sec近傍にエ
ネルギー変換効率η,ピークがあり,フラップの固有振動数が波力ポンプの動特性を規定する
要因の一つであると考えられる。Fig.9にはフラップの固有振動周期近傍のη,が油圧アキュ
ムレータの負荷により変化する様子を見たものである。高圧になるため装置の十全性から500
kg以上の実験は行えなかったが,負荷が500 kg程度でηeが1.0に近づき,それよりも大きな
負荷ではηeは低下するものと考えられる。負荷が小さくてもポンプ系の周波数特性はあまり
変化しないが,エネルギー変換効率は低下してくる。すなわち,過小な負荷(揚程)を与える
と作用波のもっているエネルギーを十分利用できないことになり,ポンプ系の設計に当たって
は,共振槽の長さ,フラップの周波数特性に加えて揚程の三つの要因を考慮しなければならない。
② フラップの回転振動の周波数応答
前項では,油圧ポンプを連結することによ
ってフラップの運動に対する負荷の影響のよ
「..…一100cm一「
一..一
うすを見てきた。ここでは前節で検討した振
u
i
動解析の結果と実験より得られる周波数応答
とを比較検討する。
a 負荷モーメントMRとフラップの回転
振動振幅
白
ε
前節での振動解析の結果,フラップの振動
萬
回転運動の振幅θは,(25)式で把握できること
1
L一.一
1
が明らかになった。具体的な実験値との比較
:
}
を行うに当たり,負荷モーメントの取扱い方
: 1
…
;
_」 _⊥
Lピa・臨
32.5cm
を以下に示す。油圧アキュムレータに乱す負
荷は,ポンプ系の圧力,すなわち揚程を規定
している。この負荷は㈱式の負荷モーメント
rnass:275 kg
width 18m
MRに反映されるが,その対応の概略をFig.
11の模式図に示す。図中,θはフラップの振
れ角であってsin曲線で示される。 fは油圧
図10 フラップの断面
ポンプのピストンからの反力としてフラップ
Fig・10 Cross section of nap
θ
貢租に作用する拘束力である。ここで取扱う
t
波動ポンプ機構では,図のようなステップ関
数によって表現される。一方,負荷モーメン
f
θ
t
トMRと拘束力fとの間には,
MR
MR罵f・s………………・・一…(30)
t
の関係があるから,本来,MRは図中の破線
で示すステップ関数で表示すべきである。前
節での解析では,負萄モーメントをMRe重σt
図11 負荷と負荷モーメントの対応
とsin曲線で表現することを前提にしている。
Fig.11 Relatiorl between load ristriction
従って,ここでは,計算に用いる負荷モーメ
rnoment by load
一一
R4一
ントとして図中の実線のようなsin曲線を用い,実際のステップ状のそれとの間には,両者の
一周期当たりの仕事量が等しいという条件をおいて,その対応づけを行う。演算の過程は以下
のとおりである。すなわち,拘束力fはθより位相がπ/2遅れるから,
f==il(θeiσt ・e曾… 一・。・・一・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… r・・・… 9響・… 一・一一・一・。・曾一・・・… 。一・ (31}
とおく・ここでKは実験定数である。又,負荷モーメントは,フラップの高さをsとすれば,
M・一iKsθ……一…・…・・……………・・…一一……・…一……一…・……62)
となるqそこで,比例定数Kを求めるために,拘束力fが一周期に行う仕事量を油圧ポンプの
行う仕事量とおく・拘束力fによる一周期当たりの仕事量をWlとすれば,
sσKθ2
W1= 2 T ・・……一一…・……一……・一・………・・………・…一…(認)
と表現される。一方,油圧ポンプの一周期当たりの仕事量をW2とおけばFig.7で示す,リン
ク機構の構造などを考慮すると,
W,」㊤s.F・…_…….…_.…_.…...._……._…..__……・・_.(鈎)
5A
ここで,上式の分母の5は載荷式アキュムレータの負荷の作用点とアキュムレータのピストン
の作用点のリンク機構から定まる定数である。又,Fgはアキュムレータに負荷した荷重で,A
とA’はそれぞれアキュムレータと油圧ポンプシリンダの断面積である。結局,
Wl=W2
として求まる比例定数Kを用いて負荷モーメントを表示すると,
M,一」嘗・…・・………・・一……一…・………一……・………………(35)
となる。
従って,フラップの回転振動振幅は,⑳式と(35)式から
θ一。,子Wい辛11〔響1耀1L・
琴÷鵡)〕……・…・・…………・……・…・・…一…岡
が導出される。
考
察
次に,以上の結果をふまえて今回試作した波動ポンプシステムの動特性の把握のための波動
および共振解析結果と模型実験結果とを比較しながら若干の考察を加える。
(25),岡三の特性からそれぞれの式には作用波の振動数σがフラップの固有振動数WR 1に等し
い場合やその他式中の分母が零になる場合が存在し,その点が共振点ということになる。従っ
て共振周期では,θは無限大の値をとる。このように本論で採用した解析法の性格上,実験値
から得られるフラップの回転振動振幅θと㈱式の計算結果とを直接その値を比較することは無
一35一
意味である。すなわち,解析の結果は,共振周期の値のみが物理的意味を有する。従って,以
下に示す図では,縦軸を計算値から得られる回転振動振輻と実測値から得られるエネルギー変
換効率ηeの二様にとってあり,それぞれ分布のピークに対応する共振周期を比較する。
_奪 observed
h凱1.35m
r=2,15m
__
value ofθ
ィ鯉 observed
value of ηe
value of ηe
_ calcalated
h=1.20m
r;10.Om
1.00
_ calculated
value of θ
1.00
Fg=480 kg
Fg二480 kg
0.75
0.75
θ
θ
ηe
ηe
0.50
0.50
025
0.25
0.00
0.00
1・02・03・0405・OT(sec)
1、0 2.0 3.0 4.0 5.O T(sec)
wave period
wave period
(a}
(b)
図12 共振槽長さrによる周波数応答特性の変化
Fig.12 Variation of frequency response owing to change of length of resonator
Fig.12は,油圧ポンプシステムにおいて共振槽長rを2,15 mと10,0mとした場合のフラッ
プの周波数応答特性の変化を見たもので,分布のピークの数とそれが出現する共振周期は計算
値とほぼ一致している。この実験に使用したフラップの諸元はFig.10で見たものと同じもの
である。図の(a)は共振槽長さが2.15mの場合で,図示した周期の範囲では二つのピークが存在
する。第一番目のピークは周期T−2.5sec近傍で,これは,フラップの固有振動周期T1=
2,51secと一致している。第二番目のピークは共振槽内で波が共振する共振槽の共振周期と考
えられる。(b)の場合は共振槽の長さが10mと長いためピークが幾つも出現する周波数特性を有
している。エネルギー変換効率ηeを見ると,全周波数域にわたってη,の値は(a}の場合の方
が高い値を示している。波動ポンプを構成するフラップの固有振動と共振槽内での波の共振波
動の二つの振動要素の各共振周期が互いに近い方が効率のよい波動ポンプ系を実現できるとい
うことを示唆している。
Fig.13は,同じく油圧ポンプシステムを用いて潮位の変動に伴って水深が変化した場合の周
波数応答特性の変化を見たものである。なお,共振弓長さrは2.15mとしてある。 Fig.12の
(a}を加えて検討する。Fig.12の(a},Fig。13の(a)と(b)はそれぞれ水深が1.50 m,1.35mと
1.20mの場合で,他の条件は全く同一である。 実験値も計算値も水深が低下すると共振槽内
の波の共振周期に対応する第ニピークの値がしだいに小さくなる傾向を示している。Fig. i4
は,揚水ポンプシステムを用いて,システムの周波応答特性を見たものである。一先ポンプシ
ステムの場合と比して,周期に対する応答は若干鈍くなるのと同時に最大効率が小さい。これ
はポンプの機械的な特性の差異によるもので,一般的に水ポンプは,油圧ポンプシステムより
ポンプ内部の摩擦ロスが大きく,そのためにポンプの往復動が鈍くなるためである。
Fig.15には,揚水ポンプシステムに対する負荷である揚程が効率や吐出流量に与える影響
一36一
observed
呼 valtle
of
噸麺 observed
ηe
value of ηe
_ calculated
value of θ
1.00
calculated
h =1,5m
value ofθ
=2,15m
1.00
r
h篇1.5m
r篇10,0m
Fg−480 kg
Fg瓢480 kg
0、75
0.75
θ
θ
ηe
1.0 2.0
3.O
翌≠魔
4,0
ηe
0.50
0,50
0.25
0.25
0.00
0.00
5.0
垂?rio?
1.0 2,0
s(sec)
3.0 4.0 5.O T(sec)
wave period
(a)
{b}
図13 水位の変化による周波数応答特性の変化
Fig.13 Variation of frequency response owing to change of water leve1
%
60
40
ηe
20
2θ(rad)
1
discharge
efficiency
efficiency head
×10』4㎡/sec
%
(・xperim・nt)・1033 m
80
1.6
。 3.55m
Pや
ダ 「軌・..風.
60
L2
バ/ 職り噸♂・噸・一甑.噸
⑦
o
ηe40
angle amplitude
(analysis)
efficiency
20
discharge
0.8
0.4
0.0 1.0 2.0 3.0 4,0 5.O sec,
0 10
図14 ポンプシステムの周波数応答の例
20 30 40 50m
head
Fig.14 A exarnple of frequency response
of wave pump system.
図15 揚程による効率と吐出流量変化
Fig.15 Variation of efficiency and dis−
charge owing to head change
を検討した結果の例を示した。効率が最大となる揚程が設計点となる。
一方,波向による影響はFig.16のように整理できる。これは周波応答特性(Fig.14のよ
うに表示)で効率が極大となる第一,ニピーク点の周期と効率が波向によって変化する様子を
見たものである。作用波が変換装置の正面から作用する場合が最も効率が良く,波が偏向する
ほど効率が低下するが,各ピークに対応する波の周期は若干大きくなる傾向がある。これらは,
波向の偏向によってフラップ前面に複雑な波が形成され,これによって直接フラップに作用す
る波が変形されたためと考えられる。・Fig.17のように,フラップ幅(B}を直前波の波長(L)の
約%以下に設定すれば,この影響を回避できる。さらに,ラッパ状に変換装置前面に恋心堤を
付加した場合の解析を行った。図表は省略するが,その結果は,集波堤の先端での開口幅(B2)
とフラップ幅{B)の比(B2/B)倍だけ装置に作用するエネルギーが増大し,その分だけ寸話堤
一一
R7一
%
70
(a〕efficiency
(謝
劔1st peak
④
㊤ ⑦
O2nd peak
50
η40.5:efficiency at wave
direction 40.50
1.0
ηo:at wave direction O。
②
㊥㊨
0,8
亀
o
⑦
ηe
⑨ o④
30
0.6
9
⑨
0.4
10
0
3
T
10 20 30
oo
40
0.2
〔b}period
⑦ ◎
㊤
o ⑦
sec
㊤
②
0.0
0.05 0.1 0.5 1.O
B/L
2
図17波向の偏向時のフラップ幅Bと波長L
10
の比の変化が効率に与える影響
10 20 30 400
Fig.17 Variation of efficiency owing
wave direction
to flap width on wave deflection
図16波向の変化がピーク周期と効率へ与え
る影響
Fig.16 Variation of peak period and
peak efficiency owing to wave
direction change
の無い場合より効率を向⊥させることが出来るという実験結果を裏ずけた。
以上,今回試作した波動ポンプシステムのフラップの振動解析と実験から得られる周波数応
答特性を,共振槽の長さr,フラップの慣性モーメントそして潮位に対応する水位による影響
を吟味してきた。いつれの場合も実験は解析結果をよく裏づけていると判断できる結果を得た。
さらに解析だけでは把握できないポンプの効率や作用波の波向など波浪の季節変化による影響
もほぼ明らかにすることができた。
摘
要
本研究では,海岸付近の低平農地の潅概や排水の動力源として波浪エネルギーを利用するこ
とを念頭において,各種のエネルギー変換方法を水理実験を基に検討し(詳細は参考文献1)
参照),フラップー共振槽からなる共振系を応用した波動ポンプシステムの開発を行なった。そ
して,そのシステムの動特性の解析を行ない,それを基にシステムの設計法を明らかにするこ
とができた。それらの結果を要約すると次のようである。
まず,波動ポンプシステムの機能を整理し,それらを満足するのに必要なシステムの構成を
示した。システムの諸元は,実験から得られたエネルギー変換効率や入射波の変動に対する周
波数特性あるいは,揚程の大小に対する負荷特性など基礎的な特性を基にフルード数相似を使
って決定した。なお,ポンプ系は,実験計測のため制御の容易な油圧ポンプ系と揚水水圧ポン
プ系の両方について検討したが,効率などの性能は,ほぼ予定したものに近い性能を得ること
ができた。
一38
次に速度ポテンシャル理論を用いてシステムの基本をなすフラップー共振糟系の振動解析を
行い,系の周波数応答性を把握することを試みた。すなわち,この系はフラップの自由回転振
動に対する共振と共振槽内での重複波としての波の共振が共存する複雑な共振系である。解析
ではこの複合共振系でのフラップの回転振動の把握に重点をおき,フラップの慣性モーメント
や共振槽の長さ,あるいはポンプ系に対する負荷などを組みこんだ解を導出することができた。
さらに,今回試作した波動油圧システム模型を使用した造波実験による系の動性についても
検討を行った。実験では,エネルギー変換効率に対するポンプの負荷(揚程)の変化による影
響,共振槽の長さの効果,そして潮位の変動に対応する水深の変化による影響などを検討した。
いずれの場合も,振動解析結果と比較して,実験から得られた系の周波数応答特性は解析から
得た計算結果をほぼ裏づけている。これらの解析と実験結果から波動ポンプシステムの動特性
を要約すると次のようである。
(1)フラップの回転振動運動の固有振動数と共振槽の長さが規定する波の共振振動数が系の
周波数応答特性を規定し,かっこの応答特性がエネルギー変換効率を支配する一つの重要な要
因である。
(2}フラップの固有振動数と共振槽の波の共振振動数が等しくなるようにすると全体のエネ
ルギー変換効率が上昇する。
(3)一方,共振子の共振振動数は,その長さを増加させることによって大きくすることがで
きる。
(4)潮位などの変動に伴って水深が変化して,水深が小さくなると,共振槽の共振振動の効
果が相対的に低下してくる。
{5}揚水ポンプシステムは油圧ポンプシステムとほぼ同じ動特性を有する。
(6)ポンプシステムの幅は直前波の波長(L)の約協以下に設定すると波向の影響を回避で
きる。
参考文献
1)木ノ瀬紘一・大西外明・西村司(1983):共振を応用した波エネルギー利用(1)。 予土試
幸艮, 23, 21∼30
2)伊藤喜行・千葉県(1972):浮防波堤の水理に関する近似理論と応用。港図報告,11,2,
137∼166
39一
Sumrnary
In this study, the wave pump system, which was driven by wa▽e
force and was μsed £or irriqatiOn and drairユaqe’was proposed’ and
the fundamental characteristics of the enerqy extraction ratio,
the frequency response arld the load response for the system were
made clear by the verious experiments。 The wave pump system is
cOmposed of two components, i.e。 the flap and the resonator. Each
cOmponent has a resOnance system whose rlatural frequency is differ−
ent respectively. The flap vibrates in consonance with incident
wave at its natural frequency and the wave in the resOnator reso−
nates as clapotis. TherefOre, in the system the complex coupl‡ng
Qscillation Occurs if wave with a specified frequency attacks.
田he rlew model Of wa▽e pump system which was made on an experi−
mental basis is intrOduced, and the behaviQur Qf the system is
discussed theoretically by use of the velOcity potential and an
approxirnate sOlutiOn is established. This apprOximate solution
shows a fairly qood aqreement with the experimental re$ults obtained
by use of the wa▽e pump system皿odeL
一40
]1 風力利用技術
1.風力の熱変換利用技術
Developrnent and Utilization of Wind−powered Heat
Generation S ystem
泊 功・石黒 忠之・宮田 明
王sao Tomari,Tadayuld Ishiguro,Akira Miyata
1 團
的
個渇が想定される化石資源の代替として,尽きることのない風力資源の利用技術は,広大な
土地を保有する農業にとって将来のエネルギー確保に有利で,生産発展の可能性を拡大する。
そこで,本研究では未踏の研究領域である風力熱変換利用技術の総合開発を昭和55年度に着手
し,最終目標を実用化段階に設定した。その過程では主眼を風力熱変換技術に置いて研究した。
また,発生する熱エネルギーに対応して省エネと効率の高い利用技術の開発も行った。
∬ 方
法
1)硯究計画と経過の概要
風力熱変換技術の開発は昭和55年に開始,59年に完了予定で計画された。昭和53年のGEP
の研究開始時にすでに,この研究課題を設定しており,実際には53年から研究計画と設計の検
討を開始した。
風力利用は古くから研究3)’5)され,風力動力変換,風力発電の研究1)’2)’4)’7)’8)P10)’11)’23)は
非常に多く,すでに実用化されて産業界に貢献している。とくに,アメリカの風力発電は近年
Wind−farmと称して大規模化され,石油代替エネルギーとしてその役割を果しつつある。
しかし,風力動力変換,風力発電はともに変換効率が低く,我が国の風力発電では0.1∼
5)
0,16の範囲であることが報告 されている。
風力発熱については研究計画を開始した当初は国内,外ともに研究報告が少なく,風力熱変
換方法の模索に実に2ケ年を費した。昭和54年に風力→油圧→発熱のシステムを構築し,その
後,風車の種類や規模を決定した。設置場所については種々の立地条件から二転三転したが,
北海道農試内に設置することに決定し,研究開始前年に全体計画が完了した。
北海道農業試験場農業物理部農業気象研究室
一41一
2)設計と建設経過の概要
全体計画の完了後,風力熱変換システムの検討に入り,予想発熱出力PH−870 kca1./hour
≒1kWを設定してMOD−1(ッキサップ1号機)の設計に着手した。
設計の概要は図1,図2に示した。木製Roter(2Brade,4mφ)を25mの高さにDown−
wind typeとして設置,その前方に流線型ナセルを設けて内部に発熱装置(Orificeによる発
熱)と風力制御装置(Over speed h1揃ter, Over heat lirniter)を装着し九。
Tower height
25m
ind power
w111U j/uwじ⊥
←wind dir,
鴨翻∫髄rspeed
Mechanical
1KW
nutput 馨
Rotor 2
Smφ
?ne「gy
oQwer
幽dir.、 、、 (Fall
Wind
耀←wind
р奄秩C
モ盾獅煤D
GG
Hydraulic
Hydraulic
垂浮高垂
?ne「gy
nrifice
Kinetic energy
Anemometer
A、\、
↓
Thermal energy
@ Tubclar
@ tower
@ up−down type)
αQ
Hot
vater
αc
→→
狽≠獅
Heat exchanger
壷
Hot water storage
GL
一
寄
讐
@ Control systems
nver speed
igh−efficiencyU
狽奄撃奄yatiOn SyStem
撃奄高奄狽?r?
nver heat irniter
愚・
1 8 , ■’
@15 響
Snow rnelting ☆Protected
☆Animal housing
cultivatiQn
図1. 1kW出力の風力熱変換装置(MOD−1)の構造とその発熱システム
ig。/ Lay out of an experimental wind/heat gellerator power−plant in MOD−1
and diagrarn of heat generation process・
42一
発熱装置で発熱した油は断熱した25mの高
さのタワーから下部に設置した熱交換機まで
輸送され,熱交換後は再びタワー上部の発熱
装置へと循環される。熱交換機では油から水
へ熱が交換され,温湯は6004の貯甘糟で貯
熱することにし,温湯供給の試験に利用でき
る(熱消費量測定)設計にした。
昭和55年9月から建設に入り,12月」二旬に
最初の運転試験を開始したが,問題点の続出
により,構造上で大きな設計改善に迫られ,
昭和56年に図3に示した構造のMOD−2(ツ
図2.風力。熱変換装置(MOD−1)の全景
キサップ2号機)を建設することになった。
Fig・2 The MODヨwind−turbine set a
MOD−1では大きい熱損失が算出され,ま
heat generation system on the tubu・
た,風力制御の不安定と云う欠陥が見られた
lar tower,
ためMOD−2では発熱,制御装置をタワー
下部に移し,熱交換機,貯湯槽とともに一ケ
團
∬
所にまとめて設置することにした。このほか,
大きな改善として発熱と制御装置を発熱媒体
である油に浸漬させるユニークな方法を考案
Tail bane
Gear box
し,製作,設置した。また,全く別系統の制
一
1
御法(尾翼による山田式姿勢制御法)を採用し
l I
たため,MOD−1のDown−wind typeから
Up−wind typeへと設計を変更し,安全性を
Ang正e inclined
height
高めることにした。MOD−1の試験では問
題点が続出したが,発熱だけは予想出力を得
\
\
たので,MOD一一2では出力を20倍に増強し
喝πし
て大型化した。MOD−2は56年12月に完成
Vertical axi5
し,運転試験を開始した(図4)、,
黛
戟
MOD−2の試験結果では尾翼による姿勢
Lattic tower
制御法に問題点が指摘され,改善が必要にな
った。
[師隔雛
昭和57年に遠心クラッチ方式によるDisk
brakeを採用し,風力制御法を主体に再び設
計を変更して安全性についての改善を図るこ
Heat _ _ _ _ 舅
とにした。ただし,発熱システムやその他の
generator
Hea毛 5uppling pipe
構造については問題点が見つからなかったの
図3,発熱システムを塔下部に移設した20
でMOD−2と同じ設計にして, MOD−3
kW出力のMOD−2の構造
が建設されることになった。制御法の改善に
Fig.3 111ustration of the MOD−2 const−
ruction moved wind−powered heat
より再びMOD−1と同じDowlrwind type
(図5,6)のMOD−3(ツキサップ3号
generator to the lower part of
機)が昭和57年12月に完成した。
lattiC tOWer.
一43一
Wooden rQtor
≦)._
Down−w三nd type
WLnd
A
Wind power
B
Mechanical
energy
@ Gear box
dir.
⇒A
@B
A ,
1
○、
u
o 一 吻
10血φ.1
〕 Il 一
臨 一}一
Tower he五ght
18m
Vertical axi5
∼
C
Σ{yd=au1Lc
gn已rgy
L【inetio enelrgy
D
Ill
Lattic tower Ther皿al onergy
、
」 し
ll
/
口
撃決黶D
墜
Or正ξ三ce
・.
Heat exch己nger
l 律
「 r一「
C 。,
1ゆ1
■
i[創
F Hoセ water 5torage
置
3000
1
Hot oiI
F
efficigncy
G High U七正1izaition system
げ〕
PumP
「
一
』三G
Disk brake with
H centra三fugal clutch
1
Stable opera.tion
contro1 5y5tem
図5. 2段風力制御システムを備えた出力20kWのMOD−3の構造と発熱システム
Fig.5 Lay out of the MOD−3, rated 20 kW, installed a control system with two
speed rotation regulator to maintain safb and stable operetion,
一44一
図6 2段階の安全制御システムを設備した,
20kW出:カのMOD−3の全景
Flg 6 Rated 20 kW MOD−31nstalled
the two control systems for safe
and stable operatlon
3)試験方法
(!)風:力利用の立地条件と風力特性の解明
風力熱変換利用技術開発と並行して北侮道
における風力資源の特徴や設置場所の風力特
図4 Rotpr101nφ,20kW出力のMOD−
2の全景 ’
Flg 4 The MOD−2 moved wmd−power−
ed heat generator to the lower part
of lattlc tower
性の調査を行った。
(2)MOD−1の試験方法
a 構造に関する問題点の摘出
b 運転に関する悶題点の摘出
c 発熱量の測定と発熱効率の算定
d.全体系てのエネルギー損失の算定
e。Cut−1n, C ut−offならひに定格蓮転領域の判定
f 風力制御に関する問題点の摘出
(3}MOD−2の試験方法
MOD−1の試験結果を受けて試験方法に次の点を追加した。
g 装置の溝型化に伴う構造士の問題点の摘出
h 振動に関する問題点の摘出
1.尾翼による姿勢制御の風力制御効果の検討
」,風力変換熱の雪中ハウスへの給湯試験
(4)MOD−3の試験力法
MOD−2を改善したMOD−3について従来の試験方法に次の点を追加して試験を実施し
た。
k 遠心クラノチ作動によるDlsk brakeの機能性と安全性の検討
1 遠心クラノチとOver speed llmlter(風速10m/s以⊥は一定回転)との組み合せ試験
m 畜舎への熱供給の試算と有効性の検討
皿 風力熱変換の原理
風力から熱発生の技術過程は現在ては各種の方法か研究されつつある。風力→油圧→発熱の
一45一
過程は他の方法にさきがけて研究が実施され,好成果を収めた発熱技術と云える。ここでは装
置の理解に必要な要点について簡略に触れてみる。
1)風車によるエネルギー変換
この研究では風エネルギーを効率よく捕捉するため,高速プロペラ型風車を採用(図1から
6)した。
さて,風向に直角な単位面積を単位時間に通過する風の運動エネルギー,すなわち風のパワ
ー密度(W/㎡)は
・一÷・m…一÷・(・・V)・V・一÷…V・・一・…一・…・……(・)
で表わされる。ここで,m:空気の質量(kg),ρ:空気の密度(kg/㎡), V:風速(m/s)。
そこで,最初の変換を次のように行う。
〔風エネルギー〕→〔機械エネルギー}
但し,〔機械エネルギー〕=〔トルク〕×〔角速度〕。
・の変換では周脚一 VU・プ・べ・の聴・・脳と出力騰・・一ll(・・
:風九P。:出力)との関係が重要である。このβとCpとの関係からCpが最大となるよう
にβが決定されねばならない。そのときの最適風車負荷のトルク, To(N・m)は次式で表
わされる。
π R5
・ω2 …………・……・…・……………………………(2)
T・=C・.了9ρ.β・
ここで,・・プ・ぺ・の半径(m)…髄度,ω一器・(・ad/・)であ・・
(2)式は風速のどのような変化に対してもつねに最適なMatc雌ngを保つためには風車負荷の
特性として吸収トルクが角速度の2乗に比例し,その比例定数は②式を満足すればよいことを
示している。
2)油圧ポンプによるエネルギー変換
風車から得られた機械エネルギーは次の段階で圧力エネルギーに変換される。すなわち,
〔機械エネルギー〕→〔圧カエネルギー〕
但し, 〔圧力エネルギー〕幕〔圧力〕×{体積流量〕
この変換では油圧ポンプを機械エネルギーで運転し,油圧紬を得る。実際に油圧ポンプを運
転する場合,低圧側圧力をPo(kg/㎡),高圧側圧力をP1とすると,単位時問に発生する圧カ
エネルギー,Pw(N/㎡・s)は, Pw;(P1−Po)・g・N。Sで表わされる。ここで, g:
重力加速度(m/s2), N:回転数(1/s), S:油圧ポンプのユ.回転当りの吐出量(㎡)。
3)Orif藍ceによるエネルギー変換
変換された圧力エネルギーはオリフィスによって次の運動エネルギーへと変換される。
〔圧力エネルギー〕→〔運動エネルギー〕
但し, 〔運動エネルギー〕一〔(流速)2×油の密度〕×〔体積流量〕
この変換過程で油圧ポンプによる油の流量,Q(㎡/s)は
Q−Dω(㎡/s) ………・…・・…・・…・………………………・・……・…(3}
で表わされる。ここで,Dはポンプの押し除け容量(㎡/rad)である。油圧ポンプから押し
出された油はポンプ出口からOrificeを通り,再びポンプ入目に戻るが,その聞の圧力損失は
前項で示した4P一(PrPo)で,これは流量, Qの2乗に比例する。
4P−k・Q2(N/㎡) ・・…………一………………………………………(4)
ここで、k:Orificeの絞り穴の径,管路内径,管路長等によって決まる定数(kg/m7)。
一46一
また4Pは油圧ポンプの負荷圧力であり,風車によるポンプの駆動トルク, To(N・m)はこ
の4PとDとに比例する。
To=∠P・D ………・………・・………………・・………………・…(5)
(5拭に(3},{4}式を代入すると,
To=k・D・Q2
;k・D3・ω2 ……………・・・………………・…………・……・……(6)
となる。㈲式から明らかなように風車の負荷トルクは角速度の2乗に比例するが,その比例定
数,k・D3はOrificeの絞り穴の径とポンプ容量との組み合せを選ぶことで任意の値にするこ
とができる。従って風車との負荷トルクのMatchingは油圧ポンプとOrificeによって適合させ
ることができる。
4)オリフィス出口流路におけるエネルギー変換
運動エネルギーに変換されたエネルギーはオリフィス出口流路において熱エネルギーに変換さ
れる。
〔運動エネルギー〕→〔熱エネルギー〕
但し, 〔熱エネルギー〕二〔(魚町⊥昇)×(油の比熱)〕×〔質量流量〕である。
運動エネルギーを得た油はOrificeの絞り口で加速され,出口流路の運動エネルギーの小さ
い油との衝突あるいは摩擦により油分子を励起することで発熱がある。
以上の過程が風エネルギーから発熱にいたる変換過程であるが,原理的には変換過程でのエ
ネルギー損失はほとんどなく,風車の駆動トルクに対する負荷のMatchingがよいことがこの
発熱システムの特徴であると云える6)。
IV 結
果
1)風力利用地点の風力評価
研究開始以前に風力利用地点の簡単な評価を行ない,当試験場内に設置地点を選定した。し
かし,羊ケ丘の試験場内に設置したのは風力の評価よりも研究遂行に支障がないことを優先さ
せたためである。羊ケ丘は風力の評価によると年平均では低風速地帯で必ずしも好条件とは云
えないが,季節的には強風期間(3月∼6月)もあって野風域から強風域までの試験が可能で
あるため,研究には好都合である。
なお,北海道内の風力資源に関する調査はGEPの1系で風力資源分布の調査研究が実施さ
れているため,本研究では羊ケ丘に限って風力の解析と評価を実施した。
この風力の調査は研究開始以前と開始後に実施した。開始以前の簡単な解析についてはすで
に中間報告12)貯22)があるので,本報告ではその後の調査と解析結果について報告する。
(1)羊ケ丘気象観損1による風力特性
羊ケ丘気象観測露場の高さ10mの風向,風速から年間にわたって風力特性を調査,解析し
た。測定関連事項を次に示す。
a.測定期間:昭和59年1月∼12月(366日)
b.測定器:A−711風車型風向・風速計
c.記録:ペンレコーダによるアナログ連続記録,毎1E時前10分間の平均値のデジタル記録
(風向は16方位,風速は0,1m/s単位。1分聞隔でサンプ「,ングした10ケの瞬間値の平
均値を出力する)
d。精度:風向は±5Q,風速は10m/s以下では土0,5m/s,10m/s以土では士5%
なお以下に述べる解析では,特にことわらない限り,データ処理が容易なデジタル記録を用い
一47一
る。したがって,毎正時前10分間の平均値で1時間の風向・風速を代表させることになる。
まず,風速の観測値から月ごとに風力利用に必要な項目で統計をとった結果を表1に示す。
表1から,羊ケ丘の年平均風速は3.Om/s,標準偏差は2,21n/sであることがわかる。た
だし風速の頻度分布は正規分布ではない(図7参照)ため,標準偏差の重要性は低い。月別に
みると,6,3月が大きく,12,!月が小さい。また風速の3乗の平均値から(1)式を用いて計
算した風のパワー密度,Pは,年平均で47W/㎡,月別では3,6月が大きい。
さらに,風車のcut−in風速を4. O m/s, cut−out風速を15m/s,定格風速を!0m/s
として,利用可能な風速,V*を求めた。これをもとに計算した有効風力の全風力に対する比
V*3/V3は年平均で86%となる。月別では1月と10月が80%以下になっている。この原因は
1月は4,0m/s以下の風速頻度が高いため,また10月は10m/s以⊥の割合が高いため(図
8参照)と推定される。
次に,風速の階級を1m/sごとに区分して度数分布を求めたのが図7である。図7から一
般に風速が大きくなるに従って度数は低くなるが,5∼8月の期間は北海道,東北にヤマセ風
の吹く期間があるため,3.0∼5,0m/sの階級で度数が増大する特徴がわかる。また図8に
は相対累積度数分布(いわゆる財況曲線,実線で表わす)と相対累積エネルギー分布(破線)
を示す。
次に風向別に風速の統計をとり,図9に示す。図9の実線は相対度数分布(いわゆる風配図),
また破線は相対エネルギー分布を表わしている。年間ではSE∼Sの風が卓越しており,全体
の35%を占めている(無風状態は12%)が,風力はSE∼SとNW∼NNWがほぼ等しくなる。
これはNWの平均風速が5,0m/s,NNWは4,7m/sと, S∼SEの方向に比べて大きい
ためである。月別でみると,4∼9月はSE∼Sの風が頻度,風速ともに卓越している(ヤマ
羽風)。10∼3月はNW∼NNWの風が多くなり, とくに,エネルギーが大きい特徴を示して
いる。1月にはSW∼WSWの頻度が高くなっている。
(2)Weibull分布との関係
風速の度数分布を関数形で表わすことを考える。ここではWeibullの分布関数にあてはめ,
羊ケ丘の風速の度数分布特性を明らかにすることにした。Weibu11の分布関数は
・(・)一÷(÷)㌦{一(÷)k}……………一・………・・………侶
ここで,f(V):Vの風速が出現する確率密度関数, c:尺度定数, k:形状定数である。
風速がV。以下の確率F(V≦(V。)は(7)式より
・(VくV。)一∫詑・(・)・V−1一・・p{一(÷)k}……・一・………・・8・
である。f(V)が決定されれば, Vの平均値や標準偏差, 3乗の平均値などの計算は容易に
できる。
さて定数k,cの求め方であるが,⑧式より,
ln〔一ln{1−F(V≦二Vx}〕=k・lnVx−k。Inc
となる。そこでlnV,に対してln〔一1n{1−F(V《V。)}〕を計算し,最小二乗法で直線
のあてはめを行って定数k,一k.1ncを決定すれば, k, cが求まる。 V。(m/s)として2.0,
2.5,3.0,……9,5,10,0を選び,年間の風速度数分布からF(VくV.)を求めて,定数
を決定した。
この結果はk−1,5,c;3.5となり,これから平均風速や風速の3乗の平均を求めて先の
実測値と比較するとほぼ一致した結果がえられた。k=1,5は羊ケ丘の概況曲線が特異的な分
布でないことを示している。
一48一
表1.風速の月別統計値(:羊ケ丘,1984年)。v, v*はそれぞれ風速の観測値と利用可能な風速(本文参
参照)。横棒は月(年)平均した値を表わす。
Table l Monthly sねtistics of wind speed observed at H itsuligaoka in 1984. V and V*are respectively real
and extractable wind speed(see text).The bar indicates a monthly(or annual)averaged value,
Number of
Month
Mean,
Observa廿on.
▽
(hour)
(m・S−1)
Jan.
744
Feb.
696
2.8
Mar.
633
3.5
1
Apr・
720
3.1
お
May
744
3.2
June
720
3.7
July
721
3.2
Aug・.
732
2.9
Sep・
712
2.7
Oct.
744
3.2
Nov.
708
3.0
1
2.2
Standard
Devia廿on,σ
σ/V
▽3 V*3
V*3/V3
Cube FadDr,
Wind Power
fc
Density, P
(m3・S−3) (m3・S−3)
(m・S−1)
(W・m−2)
0.81
36
27
0.75
1.50
22
2.5
0.91
85
77
0.91
1.60
51
2.5
0.73
116
104
0.90
1.41
70
2.3
0.76
87
77
0.89
1.44
52
2.1
0.66
78
69
0.88
1.33
47
2.2
0.59
107
96
0.90
1.27
64
2.2
0.68
83
71
0.86
1.36
50
2.1
0.71
67
56
0.84
1.39
40
1.9
0.73
54
44
0.81
1.41
32
2.4
0.75
99
79
0.80
1.46
59
2.2
0.72
77
67
0.87
1.40
46
44
0.85
1.71
31
67
0.86
1.44
47
1.8
Dec.
743
2.2
2.1
0.96
52
Year
8,617
3.0
2.2.
0.75
78
40
Y6ar
20
0
40
Feb。
Jan。
Ma鴫
20
《
》
0
艶
⑳
40
May
Jun。
Jul。
Aug.
$ep・
Oct。
Nov。
Ap鎧
腰
⑩
轟
20
㊤
。藷
れ
鯉
0
40
20
0
40
Dec。
20
0
0 5 10 0 5 10 0 5
w喜醐叩醗翻《齢♂)
図7,風速段階別の相対度数分布(羊ケ丘,1984年)。
Fig.7 Relative frequency distribution of wind s脚ed observed at
Hitsujigaoka in 1984・
一50一
10
唱00
/
80
/冷・・
お。
「’
鵜。
!Frequency
ノ
ノ謡。,gy
盈0
0
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’
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⑳
o
麗
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/
,ノMa嶋
1
1
8
1
1
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ノ
ノ
ノ
’
ノ
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’
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’
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’
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1
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40
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60
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80
80
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60
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1
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60
June
’
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ノ
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20
ノ
ノ
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’
’
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0 ’
0 4
’
’
’
’
’
’
’
8 12 16 0 4 8 12 16 0 講 8 12 1㊨
Wl晒翻鐸灘盤翻(鵬・ず)
図8.風速段階別の相対累積度数およびエネルギー分布(羊ケ丘,1984年)。
Fig.8 Relative cumulative frequellcy and energy distribution of wind speed
observed at Hitsuligaoka in 1984
一51一
臨覧Nr6輪
また,c=3,5から風力利用地点として最
適とは云えないが,試験に支障ない一般的な
w\『 置
立地条件であると判定される。
(3)立方係数について
Frequency
風力利用では変動する風速からの出力算定
を容易にするため,立方係数,fcを用いるこ
s
疹1㎞\’
F。b. {’ M。,
とが多い。立方係数とは
Li慣
噂;ぜ
fc=(V3)3/V
で定義される。ここで一は時間平均を表わす。
ぐ APL
表1には月別ならびに年間のfcの値を示し
June
ハ May
てある。年間を通じてのfcは1.44が得られ
、ミこ
た。月別では12月が最大,次いで2月が大き
い。しかし,データの抽出法を変えるとfcの
値も変わると考えられるので,30秒間隔の瞬
July
醍、細“、踊
間風速と,その連続した20ヶ(10分間)の平
均値のおのおのからfcを計算して比較してみ
た。その結果,前者が約10%大きな値を示し
摂 \
k>
㏄し
一’
た。
祉?\㎞
y 覧・一螢
謡隠
マ
2)風車面での風エネルギーの評価
風車の出力を算定するには,現場のすなわ
ち受働衙の風速を知る必要がある。そこで,
図9,風向別の相対度数およびエネルギー分
布(羊ケ丘,1984年)。
気象観測露場と約200m離れた風車設置地点
との風速の相関関係から現場の風速の評価を
試みた。この結果によってはAMeD AS観測
Fig.9 Relative frequency and energy
distribution of wind direction obser−
網から風車設置現場の風力を算定する可能性
が生じる。
ved at]日[itsujigaoka in l984.
U)気象観測露場と風車設置点との風速の相関
風:車設置地点の高さ13mと23m(風車の受風面の最低部と最高部)に風速計を設置し,風の
比較的強い日を選んで約100時間の観測を実施した。そのペンレコーダ記録から10分間平均風
速を計算した。一方,気象観測露場(高さ10m)のアナログ記録からも10分間平均風速を求め
て,風車設置地点の風速との比較を行った。詳細は省くことにして,ここでは風車設置地点の
高さ23mの風速,Y(m/s)と露場の風速,X(m/s)との線型回帰の結果を図10に示す。回
帰の適合度はよく,最小二乗法で求めた回帰直線は
Y=α36+1.11X …・・……………・……………………・………・……・
o9)
となる。(9}式によるとX−0であってもY≠0となる。しかし実際に風力を算定する場合には,
このような低風域は計算結果にほとんど影響を及ぼさない。したがって(9)式をそのまま用いて
風車設置地点の風速を計算することができる。
同様にして,風車設置予定地の平均風速や風力を,現場のひとつの高さで測定された限られ
た期間の風速データと,最寄りのAMeD ASデータとを用いて推定することは可能であろう。
(2}風速の高度分布と受風面のエネルギー評価
風車の受風面を単位時間通過する風力,W(W)は(1)式のPを受風面について積分して得られ
る。すなわち
一52一
憶
× ’「 ’
《
Tgゆ
X X
X
X
x 瀦糞
X x 炎 x
鎗
麗u鵬わ豊貿◎曹翻翻豊翻呂6唱§
》
頴 XX X ×X
藁X挺 X X誕
菱・llX、X×1×X
唱◎
①
.籔
垂
認
鷲
.麗
×x×
8
雍1
蓼
X
鶉
葵x
鞠
盤
巽1
6
l,x
ll
綴美
うく 鑛
脚
劇
Xx護 瓶
轟
x×
瑠
①
①
P糞X
美・×
撃撃奄撃
x 葵
×x × ×
× x菱 萸
× x x × x
臨
婆
X× 姦X× × X
崇 英簸x×
鷲
琴
議
糞.数
x
・鐙l
菱X象
x㍉1
・靴萎x
◎
劇
.繹
illiili;ゼX
豊
翻騒%◎o蜻i翻豊『1《漁li㎜i豊
X X X
萎
X ×
炎
× X
菱.
鄭
隅㊧遡騰§翻◎醐恥馨呂Y豊◎。36噸唱。11》《
x
x
◎
◎
㊨
露
趨
唱◎
穏
x、Wl慮鱒囎瞭鵬鵬艶◎r◎1◎鰐翻伽動r轍1◎晒督i醐《囎・♂》
図10.離れた2地点の風速間の回帰直線。X, Yはそれぞれ,気象観測露場(地⊥101n)
および風車の最⊥部(23m)で観測された風速の10分間平均値
Fig・10 Regression line between wind speed at two separated places
X and Y are ten−minute averaged values of wind speed observed respectively
at the meteorological observation field (10m above the ground)and at the
top of the wind turbine(23 m).
W一∫去・P・V・・)・dS ……・一…………………………………・…・・…(1ω
である。ここでV(z):高’さZの風速(m/s)。受風面は円なので
・S一・R・一(・一a+b)2dZ…・・………・………・…一………・・{11)
2
:受風面の半径(m),a,
となる6ここでR b:受風面の最低。最高部の高さ(m)6風速の
高度分布としては対数法則を仮定する。すなわち
…)一V・b)・1・傷5)/1・(bZo)
(111,(12)式を(1ω式に代入すると
一53一
@ 。・・。・・・… 一・・・… 孕・・・… 。・・一・・・・… 1・・。・・(12)
・・…
W一
?…呵臨1・一(・一・振
次に,Wを次式のように無次元化する。
斑・W/(÷…V(・)3・πR・)
……………・…・・……・・…………・一・……
i王3}
÷{1。(1⊥Zo)ド9∬{1・(急)}3RL鴎b)2・dZ’”噸噂’(14)
Wの値は風車の形状と粗度,Zoに依存する。いくつかのZoの値について(14)式からWを実際に
計算した(R−5(m),a−13(m), b−23(m),積分は台形公式で近似)。その結果を表
2に示す。
た鵡鴨灘深思縣ll諜鰭綴鷲籠
壷・は
嚇一
鰍P倒3一一一一燗
となる。この値も表2に示した。
WとW*とを比較すると,、その差は0.4%以下であり,WとW*とは近似的に等しいと考え
てよい。このことは受風面での風速の高度分布を考慮に入れずにその中心高度の風速で風力を
表現してもよいことを示している。そして(151式で表わされるW*は,受風面の最高高度の風速,
V{b)を中心高度の風速V,{z童)に変換するときに必要な定数である。
ところで(15)式から明らかなように,W*は粗度Zoに依存する。(12)式から
.v(司1・(aZo)
「=V(b「1・(却
となるが,これをZoについて解くと
・・《評…・…一・…個表、さまざ、な粗_対す、静
となる・V(a),V(b}の襯測値から最小二乗法 の計算値
でrを決定し,〔16}式を用いてZoを求めた・そ Table 2 Calculated values of騨and鐘*
の結果,Zoとして0・8∼2・0(m)という幅 for several values of roughness Zo,
のある結果が得られた。しかしながら,表2
からわかるように,このZ・の鞭でのW*の Z。(m) 穂 軸
値の変化は小さい。したがって以下の計算は
W*一〇,8として行うことにする。
0,01
0,905
0,908
なお,この項では風速の高度分布として対
0.05
0,882
0.885
数法則を仮定して議論を進めた。厳密に言え
0,1
0,868
0,87/
ば対数法則が成り立たない場合も多いが,そ
0,5
0,817
0,820
のような場合でも地面近くの風速分布は対数
1.0
0,78!
0,783
法則で近似できることが知られている。
2,0
0.727
0.728
一54一
(3)風車設置地点の風力の算定
以土の結果を基礎に風車設置地点の風力を露場で長期間観測した風速データから評衝する。
まず(9)式を用いて露場風速Xを風車設置地点の高さ23mの風速, V(b)((9)式ではYとしてある)
に変換する。次に(13)式を書き直した次式によりWを計算する。
∼ 1
W=W*.7.ρ9V(b)3・πR2 ●.’…………’…………’…●”(17)
ただしW*幕0.8とする。
{9}式を用いて計算したV(b)の値,さらに(17)式を用いて求めたWの値を表3に示す。この結果
羊ケ丘の風車設置地点で受風面を通過してゆく風力は,年平均で4、7kW(≒1,1kca1/s)
と算定された。
表3 風車面における風速とパワーの計算値。Vlb}は風車最高部(地上23m)
の風速。横棒は月(年)平均した値を表わす。
Table 3 Calculated values of wind speed and power at the wind turbine. V(b)
is wind speed at the top of the wind turbine(23 m above the ground).
The bar irldicates a monthly(or annual)averaged value,
Month
▽研 Wind Power, W
V(b)
(ln・S−1)
(ln 3。s−3) (kW)
Jan.
2,8
61
2,3
Feb.
3,4
135
5,1
Mar.
4.2
182
6,9
Apr・
3.8
139
5,2
May
3.9
126
4。8
June
4,5
170
6.4
July
3,9
134
5.1
Au9・
3,6
108
4,1
Sep・
3.3
88
3,3
Oct,
3.9
156
5,9
NOV.
3、7
123
4,7
Dec.
2,8
84
3.2
Year
3,6
125
4,7
3)風力熱変換技術の開発
(1)風力熱変換装置の構造と特徴
① 風車の構造
風車を大別すると垂直軸風車と水平軸風車がある。この研究では寒地の気象条件を考慮し,
水平軸風車を採用した。水平軸風車にも多種類あるが,稀薄な風力の利用と云う観点から高効
率の風車の採用を重要視し,過去の技術的蓄積も多い高速プロペラ型風車を選定した。しかし,
水平軸風車は風向に対しRoter回転軸面をつねに正対させる技術が必要となる。プロペラ型風
車はRoter回転面が支持塔の風上の位置にあり,風下の尾翼により方向制御を行うUp−wind
{ype(図3,4)とRoter回転面を支持塔の風下に置き,回転面で発生するMomentにより自
動的に風向制御を行なわせるDo㎜一wind type(図1,2,5,6)とがある。それぞれ,利
一55一
点と欠点があるが,この研究ではMOD−1とMOD−3をDowrwind type, MOD−2を
Up−wind typeで試験した。
RoterはMOD−1からMOD−3まで山田式高速二枚翼を採用し,一貫して木製(北海道
産トドマツ)の集成材(MOD−1は長さ4mの節の少ない単材)を用いた。先述のように,
先端周速比が高い設計ではあるが,風切り音を少なくするため,先端の形状,プロペラ面の塗
装仕⊥に工夫と配慮を払って製作した。材質の選択や集成処理,製作法等の技術については興
味のある点もあるが,ここでは紙面の都合上省略する。図11はMOD−2とMOD−3に続載
した直径10mの設計図,その製作中の状況を図12に示した。
1一 u一‘ 一
レ
一一 〇σρ1 ρ
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ロ ばり
l l l
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壁卜一
『
Behind
Fig.11 Schematic diagrarn of the wooden
roter used for the MOD−2 and
Fig.12 Photo shows the 10mφroter of
MOD−3 rated 20 kW power・
MOD−3 whichbe nearing completion.
②風車塔の設計と構造特性
風車塔の型式は地土に固定点を持つ単柱(MOD−1)と柱を架構で構築した風車塔(MO
D−2,MOD−3)の2種類で試験した。いずれも利点と欠点があるが,2種類ともプロペ
ラの回転による荷重,風速の変動に対する繰り返し荷重や衝撃,さらに耐振動性の強度につい
て試験し,風車塔の設計上では2種類とも安全性の高いことが明らかになった。
MOD−1で用いた単柱で控綱で支えた風車塔はフ。ロペラ,回転軸や発熱システムで発生す
る大小の波長の振動をよく吸収する良好な特性を示した。この風車塔は最⊥部に荷重の大きい
Roter,発熱システムやMitre gearを塔載したままで蕪蒸を可能にする設計であるため,保
守点検,修理には有効であった。
MOD−2とMOD−3で採用した地盤⊥に支点をもつ片持式架構の風車塔では直径10mの
Fqの受風面積を通過する運転最大風速の圧力は1,352kgとなるが,実際にはRoter(効率:
0.47)にかかる圧力とみて,約%の700kg程度である。従って,風車塔はこの水平圧に耐え
る強度が必要である。実際に,風車塔へ水平方向に約800kgで引張り試験を行った結果,最⊥
部(高さ18m)で約20mmのたわみがみられた。この程度では構造上で問題はなく,1,000 kg程
度の圧力でも耐えることが実証された。
次に,風車塔で問題になるのは振動である。振動源は風の変動とRoterの回転による振動な
らびに垂直シャフトや熱発生システムでの振動があって非常に複雑である。痴人での振動は低
周波の吸収が大きく,安全性の高いことは先に述べた。架構式風車塔についての振動はMOD
一ユと違い,トルク伝達を18m下に垂直シャフトで行ない,その下部で発熱システムを稼動す
るので,振動を発生し易い構造になっている。そこで,FFTによる振動解析を行ってみた。
結果は図13に示している。図13のAは風向に対し左右(90。方向,X)のPower spectrumを
示し(下段),上段はその振動波形を示している。Bは風向に対し,前後(ooと1800方向,
Y)のPower spectrum, Cは上下方向のZを, Dは左右振動の1∼500 H zまでの Power
一56一
・り・
RUG(PEk) FNe(3UB) U・IT(}く=CP回 V留りr)
kKhl剛曾6S日野冊×=CP隅り「’
11S O/2
臼C.5U
10Hz
50臼
1。9
’
言nU
u
c
一』臼
巧
Winδdir。
Ax⊥
dB
喚5go
贈6
X
Ver七ica1:Z
1
烈し
巨§葺
モ
衣耳
蕊
⊥」
目欄 ・66
一6⑭
LIN 13 Hz
LI卜1 1〔〕Hz
ε譲= 2電95 Hz
願3−52,6dBり
WP・4.2 rpm・160
wp・3・5
rpm・170
自)〔5(PE}〈) FNC(SUB) UNTく}く呂CP「11 V昌Ur)
nりq(PEK♪ FNC(圏…=1」B)
UNT(尻呂CP阿 〉;りr)
自C 1り
50卵
o
PEIく 0/2
X塁 2騨8臼 H誤 V8 −11・OdBU
貞C 1し1 1臼H竃
PEK 臼”2
6
1
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Z
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TFIIB
工NT dB
δ
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X31 − 500Hz
dB
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Y
犠
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HR「4N − 60
一6臼
LIN
L工N 1臼Hz
卜書 2,5H器
X= 2,85 H翼 〉= “ヲ.6dBり
5囎Hz
盟: 一臼,5dBリ
wp・4.0 「pm・180
図13 MOD−3の運転中における塔の振動に対するFFT解析
Fig.13 FFT anaiyses of three demension, X, Y and Z,for vibrations
of the lattic tower ullder the MOD−3roter rotation.
spectrumを表わしている。普通,塔の振動では多点測定を行っている例8)もあるが,この研
究では塔のもっともだわみの大きい部分(⊥部から5m下のくびれた部位,図3,4,5,6
参照)に動ひずみ計を設置して測定した(Power SpectrumのdBは換算を簡単にするため,
次式,G−0,1923・R・e『捻で求めた。但し,Gl重力加速度(m/s2), R:Range, A:
dB)。図13からX, Y, Z方向ともに振動のピークが3種類(Max.2.8−3,0Hz,6−7
Hz,9−10Hz)あり,1−10Hzの閤でほぼ倍数のHzで出現している。ここで問題になる
のは塔全体の個有振動の領域である。振動の分析によって塔固有振動の周波数は2,8−3,0Hz
の範囲にあることが確認された。MOD−2の風車が建設された当時,プロペラ,垂直軸,熱
発生システムで発生した振動と塔の固有振動が一致して塔に大きな揺れが発生,一部破壊現象
があった。そこで,振動を分散する対策(塔の補強,垂直シャフトの振動吸収等)がとられた
ため,それ以後,問題となる振動は発生しなくなった。図にみられる2.8−3,0Hzの大きな
振動はプロペラの回転数,60RPMで最大であるが,その回転数は低い領域(低風速領域)で
あるため,負荷が小さく,問題を生じていない。この周波数帯のX方向における水平荷重を計
算すると,100∼150kg程度であった。先の引張り試験の800kgより遥かに小さいことが明ら
一57一
かになった。しかし,実際には繰り返し荷重や緊急起動,停止時の異常的な振動発生もあるの
で,今後もなお解析が必要であろう。ただ,MOD−2, MOD−3ともに運転中に事故が発
生し,瞬間に大きな荷重(記録からX,Y方向ともに約500 kg)が塔に振ったが,構造に変化
はなく,問題点はなかった。従って,試験で採用した2種類の風車塔とも十分に安全性がある
ことを確認した。
③風車のトルク伝導システム
a MOD−1の伝導システム
MOD−1はDown−wind typeで⊥部ナセル部内に発熱システムを設置しているため,油
圧ユニットの油圧ポンプ軸はRoterからの水平軸に簡単に直結することができた。しかし,そ
のため,後述の放熱の大きい構造欠陥の原因にもなった(図1参照)。
b MOD−2, MOD−3の伝導システム
MOD−2はUp−wind typeであるためRoterが塔に接触しないよう水平軸を上方に5。傾
斜させた。MOD−3では再びDowrwind typeとしたため,傾斜角度のない水平軸となっ
た。両機種とも発熱システム,熱交換機を下部に設置しているので,Gearを用いて垂直軸に
トルク伝導を行うとともに1:3のギヤー比で回転を増速した。
MOD−2のMitre gearはRoter軸が50傾斜しているので,構造上でやや不安定であり,
Gearの発生音が大きい。このため, Gear boxを設けてギヤーを油に浸漬させ,モリブデン
の混入等で消音措置を行った。両機種とも垂疸軸から下部の油圧ポンプへの接続やそれ以後の
システムは全く同じ構造である。
MOD−2とMOD−3とは塔の構造とトルク伝導システムは類似しているが, MOD−2
は5。傾斜したRoter,トルク伝導軸,それを受けるMtre gearに問題があり,結論的には
MOD∼3のDown−wind typeが勝れていると結論された。しかし、 Rolerの位置が塔の風
下にあるため,強風域では塔による風の乱れでRoterの振動をやや増大させる欠陥があった。
② 発熱システムと発熱特性
風力熱変換の原理については先に述べている。風力利用のような自然エネルギーの変換利用
技術は稀薄で不安定と云う不利な条件を越え,採算性で少しでも有利となる技術開発が望まれ
ている。稀薄なエネルギーに対応するにはエネルギーを収集するか,賦存量が多い地点の選択が
必須の条件である。次に,技術」二でもっとも重要なことは高い効率のエネルギー変換技術で対
応することである。また,不安定な条件に対応するには充分な制御技術の確立と損失の少ない
エネルギー蓄積技術で対応すると云う自然エネルギーの一環した新技術体系を必要とする。こ
の研究ではこれらの点を重点として発熱システムを開発することにした。
①MOD−1の発熱システムと効率
図1に示しているように,MOD−1の発熱システムは風車塔上部に設置している。油圧か
ら熱変換する全体技術は設計当時(.昭和53年)はほとんど研究実績がなく,MOD−1で初め
て本格的な研究に入ったと云える。しかし,MOD−1の研究結果では全体的に問題点が続出
し,多くの改善点を必要とするみじめな研究成果となった。しかし,唯一,発熱システムの作
動で,予想に近い発熱量が得られ,辛じて成果が見出された。図14はMOD−1の平均風速に
対す発熱量を示している。この発熱量,Pvは
距α・(玉。。.。R・。V・2)
で表わされ,MOD−1の場合, Cp(出力係数)の目標は0,3以土に設定された。MOD−1
の発熱量の測定は風が安定して吹いている時間帯を選び,また,充分な発熱時問(4∼5時間)
をかけての発熱量を熱交換機の二次側の出入日の温度差と流量(70ぞ/lnin一定)から積算し,
一58一
7
6
ハ
≧
k5
=
器4
暮
響3
1時間平均値を求めた。図14は少ない測定値
Mob−1 WINO TURBIN院 1
R。t・・4mΦ /
ではあるが,Cp=0.3(実線で示した曲線
’
25m Height 1
は予想出力)に近い値が得られた。
/
ここで,発熱全体過程での熱損失,ηtを次
Max. Pf ノ
、/言3贈lated
のようにして求めた。まず,CpをP.と{U3
から次式
/㍉
/
C・=
⑳Whd dir. IN ’
/
メ÷面3噸’●●’⑱
駕Wind dir・:S / lCut out
£2
/ 1
! 1
/ 1
/ 1
! 1
1
/ 幽
/ で求める。Cpはまた次のように表わすこと
ができる。
1
ノ ノ
,/! 躍 lCut in
Cp蔦 ηw・ηo⑦ηh。ηt ・・・・・・… (19)
123456789101112
ここで,ηw:風車効率(0,47),η。:油
0(mls)
圧ポンプの効率(0.90),ηh:オリフィスの
図14 MOD−1における時間当りの平均風
発熱効率(0.98),従って,
速と発熱量(出力)との関係
Cp
…・・…・…(20)
Fig.14 Power−wind speed characteristics
が得られたので,(20}式からη牝=0.738
1
OD−3
30 WIND TURBINE
1
Ro量or 10mΦ
そこで,全体発熱過程での熱損失は
1
18m Height
1 −0,738− 0.262
ノ
’
ノ
慧
§
となる。これは26%の大きな熱損失のあるこ
Max. P蕾 ’
㌦/
とを示している。その原因は風車塔土部の発
熱システムから熱交換機までの長い熱輸送距
・溜融/1翻
離(往復約70m)にあると想定した。そこで,
MOD−2では発熱システムを塔の下部へ設
・冊福冊,、議蝿。。、。、1、,。d
註10
ηwoηooηh
MOD−1のP.と(U)3から{㈹でCp=0、305
for the MOD−1.
’
MOD−2
§,。
ηt=
置し,近くに熱交換機と貯湯槽も設置して熱
/ lpower
ノ㊥ 1
損失を小さくする改蕃策をとることにした、,
ひく ②MOD−2, MOD−3の発熱システ
’ 1
! 1
誘 ;
/ ×x 撃
! 一一一一需一一・・一一戸一rJ
!! Cut in
ムと効率
MOD−2とMOD−3はRoterの{白:径が
123456789101112
U(m/S)
ともに10mであり,風車塔,発熱システム等
図15 MOD−2とMOD−3における時聞当り
もすべて同じであるが,Ro{erの位置でUp−
の平均風速と発熱量との関係(Up−
windとDown−windと云う違いがある。ま
た,MOD−1の成果を受けて発熱システム
wind type, MOD−2とDown−wind
Fig.15 Poweレwind speed characteristics
を改善し,大型化したMOD−2, MOD−
3の発熱量についてもMOD−1と同じ方法
of the MOD−2 and MOD−3.
で計測した。結果は図15に示している。図15
type, MO D−3との差はほとんどない)。
で明らかなように,Cp=0,4の予想曲線に近い値が両機種ともに得られた。熱損失も小さく
なり,Cp(総合効率)は0,35∼0,45の範囲の値を得た。
しかし,熱出力,PHは次式
・・一÷・ρ・η・・η・・η・・…π・R・・(▽}・……一・一…・・…………{21)
一59一
の(V}3の平均時間や風向変動等でPHが変化することもわかった。(2i}式からPHと(V)3の関係
を風速Uのアナログ記録から解析して,次式のように,
(Vつ3一β1・β2・β3…β。(V)3
補正し,(V}3の精度を高める必要が認められた。ここで,β1は先述の立方係数,β2は先
16),2D
報 の乱流強度,β3は風向変化の頻度と強度(角度)であるが,風速計の種類による定数
も設ければさらに精度を高くすることができる。
MOD−2やMOD−3のようなRoterが10mφを越す大型では(V〕3はUの瞬間値を1分ご
とに10分間とって平均した,(Vlo)3一(ΣU/10)3でよいことがわかった。従って,数時間
ニた で発熱したPHは次式
馬一,糎〔・・一・η・Ψ・・…{β・・(マ1ゆ・D一…・………(22)
で精度よく求めることができる。但しΣはある時間内の合計値を表わす。
MOD−2とMOD−3での発熱システムはMOD−1に比較して高い効率が得られたが,
発熱システムの改善でもっとも成果のあった点は油槽に発熱システムと制御システムの一部
(Over speed limiter, Over heat limiter)をそっくり浸漬したことである。そのために, M
OD−1の欠陥が一一挙に解決したと云っても過言ではなく,安定な運転を可能にした。本研究
での一つの大きな成果と云える。
しかし,この浸潰方法は熱変換効率の面では,油槽中の油の熱容量分と熱容量の大きい油圧
ポンプ等も同時に昇心するので,運転開始,停止時にその分の熱損失があり,効率をやや低下
させる。しかし,この熱損失は運転停止時には簡単な方法で熱回収の可能性があるので,合後,
さらに発熱効率を高めることができよう。
(3}風力制御技術
変動が大きい風力を安全かつ安定的に利用するには風力制御技術の開発とその体系の確立が
必要である。
そのためには風力の変化を理解し,風力利用の種類や規模に店じて利用風力領域を設定する
必要がある。MOD−2とMOD−3ではCut−inとCut−outの風速をそれぞれ4mと15m
に設定し,さらにその領域を図16のように定め,それに対応する制御法の閉発をすすめた。
①MOD−2の制御法
MOD−2でのCut−in, Cut−out風速は41nと10mである。図20の運転領域での制御方法
はOver speed limiterと80℃以上に湖心が上昇したときに停止するOver heat limiterが主体
である。これら制御原理については紙面の都合で省略するが,Over speed Iimiterの作動特性
は風速10m/s(Roterの回転190 RPM,伝達軸570 RPM)を越する一定回転(伝達軸570
RPM)を保持する作動システムである。しかし,この作動システムによる制御だけでは15m/s
以⊥の強風が吹く場合に100%作動が継続され,20m/s程度の強風では再びRoter回転数が
増大し,危険となることが明らかになった。そこで,Over speed Iimiterの制御範囲に余裕を
もたせて風速10m/s以下の制御(例えば8m/sで一定回転)をOver−lapさせた。
10m/s以土の風速では尾翼による姿勢制御法(山田式)を採用した。 Roterの効力が尾翼
(風向に対し150傾斜し,取り付け部位のSpringの強さでユOm/sまで角度ユ50を保持)の風圧を越
えると,Roter面が風向と平行になるように徐々に回転し,さらに風速が増し,抗力が大きく
なると,平行となってRoterの回転が停止する。 Roterの移動から停止するまでの風速を危険
領域とし,それ以土の風速領域を緊急停止領域と定めて安定制御にとくに留意した(図16参照)。
実際には運転領域と危険領域の制御法が異なるので,ここでも両領域を適切にOVer−1apさ
せて安全性を高めることにした。その結果,10mφ程度のRoterになると,尾翼が大面積とな
一60一
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um/S
.図16 安全と安全運転のための風速領域の3区分とそれに対応する制御法(MOD−3)
Fig.16 Schema of three zones bordered by wind speed and the corltrol systems
assiglled a part of each・
り,そのため,突風に対する応答が遅く,Fluttering現象もあって,尾翼による危険領域の制
御は適切な方法でないと結論された。
②MOD−3の制御法
MOD−2の試験によって,風力制御は危険な情報に早く応答して対応できることが必須条
件であることを知った。すなわち,Roterが異常な高速回転をする前に停止させる制御法が必
要である。そこで,MOD−3の制御法では危険領域の制御法として遠心クラッチ法による
Disk−brakeを採用した。この方法は伝達軸の回転が異常回転を起こす以前に遠心力によって
Clutchが働き,停止させる方式である。 MOD−3でも運転領域と危険頒域の制御を重複さ
せて試験を実施した。その結果,停止を指定した回転数に対し,遠心クラッチの作動回転数は
±10%程度分散したが,Over speed limiterとの組み合せが可能であること.が明らかになった。
分散する最大原因が軸振動の周波数と大きさに依存することも明らかになった。
以上の制御法の研究から安全かつ安定運転を行うには① 風車の規模に応じた運転領域,危
険領域と緊急停止領域を定め,安定した無理のない制御を行うこと。②異常情報の早い検出
と停止等で早く作動処置ができる制御法を備えること。以⊥の2点がもっとも大切で.ある。
一61一
4)風力変換熱の利用
(1)施設ハウスへの利用
①雪中ハウスへの効率的利用
風力変換熱は現時点でかなりコスト高である。従って,従来の石油暖房とは暖房の考え方,
利用法を変えた利用効率の高いシステムを開発する必要がある。寒地ではとくにその開発の意
義は大きい。
効率の高い風力変換熱発生技術の開発に着手すると同時に利用効率の高い施設ハウスへの熱
供給システムの開発も行った。いわゆる省エネ型ハウスの關発である。その方法として,①
熱供給量を最少限にするために,他の自然エネルギーを総合利用する。②供給した熱量の損
失を小さくすること。であった。この目的に従って開発したのが図17に示す雪中ハウスである。
雪の保温性(雪には多くの有効利用できる物理特性がある)を利用するため,ハウスを積雪で
覆い,南面だけ日射投入のため除雪し,太陽エネルギーや地熱を逃さず利用する。また,供給
する熱量を最少回するため,積雪面から上に出るハウス容積を小さくするため,高さを2,5m
以下におさえ,ハウス内地面を大きくする購造にした。
雪中ハウスの研究成果についてはすでに報告15、17)’18)’21)しているので,主要成果だけを列
挙するだけに止めたい。
a.現在の営農用雪中ハウスの気象特性は図18に示したように,外気の厳しい低温に対し,
ハウスのトンネル内地面温度が0℃以下になることはほとんどなかった。
b.外気と雪中への2系統の放熱系路(図19参照と系路中の多くの熱貫流抵抗を計算し,実
証を行った。その結果,総合熱貫流率,Kt=0,5∼1,0kcal/㎡・hour・℃を算定した。
また,暖房負荷,Kheatは次式で
Qh,at−B
・一一・… 曜・… 一・・… (23}
Kh,at;
念(・…一・…)・会1(・…一・,・)
u∬工七 巳 へO皿
@ 1エusula七i。n ma七 〆署:つ神1・弾 。・・亀.: ・ ■ 一
秩A一…と蓬黍1〆◎難\ ’ ♪・ .r. \ 曝
・爵聡’騨ゆ窺一.き・・..,,.、,、,,..
漸蕉’茎㌔哩/∫二・き鱒 ・.・●.=郵●・,ノ !奥/ノ’
響 2.5
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幽
一 一
= Draia
5・0} → Pair p・1ycarb。聡七e b。ard
@ サi町ゴ七・血・1
Arrange皿ent
f。r sn。w meユ七ing
図17 断熱材(ペアーポリカーボネイトボード)と積雪利用による省エネ型雪中ハウスの構造
Fig.17 111ustration of an energy saving type snow−covered plastic house.
一62一
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臨1融朧朧捻◎開騨翻鵡銚磐鵬幽。㈹・
図18 ハウス外の日最低気温とハウスのトンネル内日最低地面温との関係
Fig.18 Daily millimum air temperature vs. minimam sbil surface temperature
at the outside and inside of snow−cov6red plastic house.
求められた.但し,A・,垂:それぞれ緬積に対する鱈熊と購雪醸の比,
Aw
Aw
θins:ハウストンネル内気温,θ。,,θ。、=外雪温と外気温, Qh,at:暖房熱量, B:地
中熱伝導である。
c.札幌の冬期間中,無加温で葉菜類と花卉の栽培が可能になった。湯タンポ方式で給湯す
ると,約1,000㎡の雪中ハウスに風力変換熱を効率よく供給可能で,生育の安定や制御に
有効である。
② 住宅の床暖房
効率のよいと云われる床暖房の試験を行ったが,試験面積が小さく,地中での横方向の熱伝
導による放熱が大きく,試験成果が得られなかった。今後に残された研究課題である。
{2}畜舎への熱供給の試算
先述の風力変換熱量と畜舎の熱需要(雑用温水)から畜舎単位面積あるいは乳牛一頭当りの
熱量を調査により試算した。
一63一
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図19 省エネ型雪中ハウスの放熱系路(上段)と,熱貫流抵抗の等価回路(下段).
Fig.19 Schematic diagram showing any heat−10ss passes(above)and the equi v−
alent circuites Qf heat conductance(below)in practical green−house cover一
.ed with a pair polycabonate board and snow.
一64一
畜舎での熱需要は地域,畜舎の種類,飼育法,さく乳法の違いて供給熱量か大きく変化し,
結論か出せなかった。平均的には羊ケ丘の風力賦存量とMOD−3の発熱容量で乳牛100頭分
の雑用音水(40℃)をまかなえることか予測された。
V 総合考察
昭和55年度から開始したこの研究では主な目的である風力熱変換技術の開発はほほ完成した
と考える。変換効率は平均04と云う好成果が得られ,重要な風力制御も自己制御方式て完成
領域に近い。残された問題は貯熱方法と集中制御方法の開発である。また,熱供給場における
利用効率の高いシステムの開発と実証も今後,多くの実績を積む必要かあろう。しかし,効率
の尚い利用システムの開発て,雪中ハウスを開発できたことは大きな成果と云える。また,M
OD−2の開発成果が現在,浜頓別町営,国民宿舎の風呂への給湯で実績(3ケ年間)を⊥け
つつあり(図20),むしろ,これからこの研究成果が実用化への推進力になると思われる。従
って,どこかで研究か継続されることを期待したい。
図20 北海道,浜頓別町営の国民宿舎の風呂に給湯している実用化
1号機(MOD−2 type),右端。
Flg 20 Photo shows the commerclallzed wllld tubll/e, MOD−2,suppllng
to the bath−house of Klta−okhotsk lnn wlth wmd/hot water
なお,末尾ではあるか,本研究は島津製作所中央研究所と北面道地熱綜合研究所との共同研
究体制をとって進められた。両研究所の協力に対し感謝の意を表したい。
VI摘
要
1 風力熱変換装直の設置地点(札幌,学ケ丘の試験場内)ての風力評価を行った。
2 気象観測露場の風速計(高さ10m)を利用し,年間の賦存量を求め,装置で利用できる風
力はその86%であると算定した。
3 三}風向はSE∼Sて相対度数は35%であった。冬はNW∼NNWか一L風向である。
4 Welbu11分布との適合性はよく,尺度定数, c嵩35,形状定数, k;15を得た。また,
立方係数,fc−144(年間)も算定した。
5 観血露場と設置点との相関は良好な関係かみられるため,AMeDASから設置予定地の風
力か予測てきると思われる。
一65一
6 風車面における風力は風車の中心高度の風速を代表点として算定してよいことを解析によ
って明らかにした。
7
研究の進展に伴って風力熱変換装置はMOD−1,MOD−2, MOD−3の3機種が建
設され,Roter!0mφ(出力:20kW)まで大型化した。
8 最終的に,風力・熱変換効率は平均0,4であった。
9 発熱システムを油槽に浸漬する新しい方法で安定運転が可能になった。
10MOD−2のUp−wind typeとMOD−3のDowrwind typeで出力の比較を行った結
果その差はほとんど認められなかった。
!1 叢要な風力制御法の開発で遠心クラッチ式ディスクブレーキが好成績であった。
12風速から運転領域,危険領域,緊急停止領域を設け,対応する制御法が確立され,安全か
つ安定運転が可能になった。
13 MOD−2の開発段階で実用化し,石油代替技術として実績をあげている。
14 風力変換熱の省エネ,利用効率の高い雪中ハウスが開発され,実用化した。
文
献
1 FouseL D. A.(1982):Wind Energy in Northern C alfomia.6(6),173∼175.
2 Gouriざrとs,D.(1982):Wind Power Plants, Pergamon Press(oxford).
3 本間琢也編(1979)1風力エネルギー読:本。オーム社(東京)、
4 1nstitution of Mechanical E ngineers, E.S.Division(1984):Vibrations in Rotat−
ing Machillery. M,E.P.L.(London).
5 科学技術庁計画面(1980):「風トピア計画」調査結果の概要,
6 喜多康雄(1980):風力熱システム,風力エネルギー,4(1),1∼9.
7 Millhone, J.P.,etaL(1981):New Energy Conservation Technologies, I E A
(New York)
8 Musgrove, P.(1984):Wind E llergy C onversio11.1984. C a夏nbrige University
Press(Cambrige)・
9 内藤文男(198D:温室の環境制御における風エネルギーの利用,1武豊における風況特
野菜試報告,A(8),231∼248.
10 Palz, W, et al.(1982):Wind Enαgy(Solar Ellergy R&Din the European
Cornmunity, Series G, Volume 1).
11 清水幸丸(1984):ヨーロッパ,米国および日本の大,中規模風車の現況,ターボ機械,
13 (2), 15∼23.
12 泊 功,ほか2名(ユ981):寒地における風力熱変換利用技術に関する研究 〔1)風力熱
変換装置の構造とその特性 雛本農業気象学会大会,講要,1−50,
13 q981):風力ボイラーの実験計画,地熱綜研,22,3−1∼3−10.
14 (1982):寒地における風力熱変換利用技術に関する研究,〔2}風力熱変換装置
1号機の熱発生効率と2号機の構造と特性.日本農業気象学会大会,講要,2−87.
15 (1982):風カボイラー実験に関する中間報告について.地熱綜研,27別,3−
1∼3−10.
16 一(1982):風エネルギーと北海道,技術と情報,9(/),26∼32,
17 (!982):第4回風力エネルギー利用に関するシンポジューム,施設園芸への風
力利用 講要, ユ∼12、
一66一
18 (1982):風力熱変換利用技術.北国の住宅百科,30,126∼131.
19 (1983):寒地における風力熱変換利用技術に関する研究,(3}3号機の構造と
発熱効率ならびにその熱利用技術,日本農業気象学会大会,講要,2−51.
20 (1983):風力ボイラー「白鳥1号」,「月寒3号」の中間報告について,地熱綜
研, (29), 4−1∼4−13。
21 (1983):風力の熱変換技術,研究ジャーナル,6,(5),28∼32.
22 (1984):風:車利用.ニューカントリー臨増,新時代の農業機械と施設,208∼
212.
23 Warne, D.F.(1983):Wind Power Equipment. E.&F. N, Spon LTD(New
York).
一67一
Summary.
HOkkaidO暫s coastal areas abound in wind power resources。 At
Hitsuゴigaoka zone, proゴected the development oξwind−powe■ed heat
generation system, the hiqher wind ve二Locities, as shown in [Pable l,
Fiq. 3 and Fi自。 4,0ccur in wir比er coincidinq with the…period when
themal energy is in qreat demand。 The obゴective Of our research,
started in l980, was to de▽elop technoloqy capable of qeneratinq
heat by the direct con▽ertion of wind power irlto thermal energ「y。
Our s七udies of wind−powered heat qeneration system and related
equiplner比 started from the development of the 塾40D−l wind turbine
proセOtype (rotor diameter 4m, power output lkw). As a result of
this experimental study, the 贋OD−3 wind turbine (10mφ rOtOr, 20kw)
was develOped lastly and put tQ practical use。 Subsequently ou「
research was directed to the utilizatiOn Of this wind−power gener−
ated heat F i。e。, the develOpment of snow−covored plastic houses
which can efficierlゼly utilize heat, and also supplyinq with hOt
water for usinq in barn。田he results of our studies are su㎜arized
as fOllOWS:
L The wooden rQtors for the wind−POwered heat qeneration equip−
ment Of all units (MOD−l throuqh MOD−3) were made of HQkkaido−grOwn
abies. As shown in Fiqs l through 3 as well as Photos l through 3,
roセary enerqy, produced from wind enerqy via the wind turbine, is
used to drive a hydraulic pump, increasing the flud pressure. The
hiqh pressure of the fluid is converted into heat directly by being
fOrced throuqh Orifice. The thermal enerqy cOntained in the lOw
pressure f:Luid is transferred via a heat exchanqer and stored in
the fOrm of hOt water。
2。 Ahiqh.enerqy conversion effiiciency exceedinq O.4was
obtained with this syst二em (see Fiq。14 arld l5).工n addition, contrQl
systems consistinq of a two speed rotatiOn regulator and a hydτaulic
fluid temperature requlator were incorpOrated to maintain safe and
stable・perat‡・n・
一68一
3。 The heat qenerated directly from wind power u串inq this
system (20kw÷・172 00kcal) is sufficient to heat an enerqy savinq
type snow co▽ered plastic house wit二h a floor area of apProximately
lOOOm2 。
4. As an alternati▽e en.母rqy source, this system is currently
beinq introduce into the secondary and tertiary industries。
一69一
2 風車および油圧装置組み合せによる動力変換
利用技術
Converting of Wind Energy to Hydraulic Energy
and Its Utilization
川村 登,並河 清,藤浦 建史,浦 元信
Noboru KAWAMURA, Kiyoshi NAMIKAWA,Tateshi FUJIURA,Motonobu{JRA
1 圏
的
農林水産において石油などの化石燃料の消費節減をはかるため,風力などの自然エネルギー
を効率的に利用して,これによって代替させる技術を開発することは重要である。風エネルギー
は変動が大きく,風が止まれば使用できない。このため農業用として効率良く利用するために
は,風のある時だけ直接仕事してもよいものを除いては他のエネルギーに変換し,蓄積してお
くことが必要である。風車で得られた動力を変換蓄積する方法としては,電気変換して蓄電池
を充電するもの,電気分解により水素を得て水素の貯蔵を行うもの,風車の動力によりポン
プを回転させ,揚水して位置エネルギーに換えるもの,1}圧縮空気,油圧アキュムレ・一三等の
圧御職ネルギーに換えるもの,水の撹伴2)や油圧式3)あるいは固体摩擦4)等により熱変換し,
温水を得るもの等の研究や一部実用化が行われている。本研究は風車で油圧ポンプを駆動し,
油を媒体としてエネルギーの伝達及び蓄積を行い,温室での運搬台車の走行,天側窓・カーテン
等の開閉,かん水,病虫害防除等の艘作業用動力に利用するエネルギー変換システムを開発し
ようとするものである。
且 方
法
1)風エネルギーの特性と利用
風により取り出せるエネルギー(風車出力)及びトルクは次式で与えられる。
L二1/2 Cpρv3A’
T幕ユ/2 CTρv2AR
(1}
②
ここにし:風車出力,Cp:出力係数,ρ:空気密度, v:風速, A;山風面積, CT
トルク
係数,T:利用できるトルク, R:風車半径
出力係数は,風庫出力と風車を通過する風エネルギーとの比(効率)を表わす係数である。
出力係数の理論最大値は16/27−0.5925・一であり,実際の風車の場合は風車の種類,形状,周
速/風速の比(周納品)により異なる。出力係数を縦軸に周速比を横軸に取ると出力係数は一
京都大学農学部農業工学科農用作業機械学研究室
一70一
個の山状になり,ある周速比のときに最大となる。最大値はプロペラ風車とサボニウスではそ
れぞれ0,5と0,16位5)の値となる。風車を効率良く使うには風車と負荷のマッチングが大切で
ある。一定の周速比で風車を運転すると仮定すると,出力係数は一定となりまた(1)式に示すよ
うに風車出力は風速の3乗に比例するから,この時の風車出力トルクは風速の2乗に比例する。
従って風車の負荷トルクを風車回転速度の2乗に比例させて変化させると風速が変化しても五
二比は一定に保ち易く,これにより出力係数の大きい一一比で運転することが可能である。し
かし油圧ポンプの圧力を負荷圧カー定の条件で使用すれば,風車回転速さにかかわらず負荷ト
ルクはほぼ一定となり負荷の仕事率は風車の回転速さに比例することになる。従ってこのまま
では風速が小さいときは過負荷になり,風速が大きい時には負荷が小さすぎ効率のよい運転が
できない。効率よく油圧変換を行なうためにはなんらかの装置が必要である。
風速は例えば大阪では年間平均が3,7m/sであるが,過去の最大瞬間風速60m/sが記録
されている。風速比では16,2であるが,エネルギー的には3乗でその比は4252となる。このよ
うに定常的には取得できるエネルギーは小さくても,機械の開発及び設置に対しそは風車塔を
含めてこの最大風速に耐えられるものでなければならない。また強エネルギー発生時はある程
度予測できても,その発生時にはそれに対する措置を取り難いのが現状である。これは他の機
器には余りない特徴である。従って,安全策や点検のしゃすさが機器關発上大きな要素になる。
2)風車と油圧変換器との整合
風エネルギーを有効に利用するために前述のように風速の3乗に比例する風エネルギーと油
圧機器との整合が必要となる。大型のプロペラ風車では羽根の角度を変えることにより,低速
から高速の風に対して効率の良い周速比で運転されるが,本研究では風車が小型であるため,
負荷である油圧変換器で整合をとることを試みた。プロペラ風車はその出力係数は良いが,低
風速の地域では運転される時間が少ない。そのため,中高風速地域に適するプロペラ風車と油
圧変換装置の組合せと,効率は低いが比較的低風速から使用できるサボニウム風重と油圧ポン
プの組合せについて開発を行った。実験は京都大学農学部附属農場(大阪府高槻市)に試作機
を設置して行った。
3)油圧エネルギーの蓄積
風車と油圧変換装置によって得られた圧油はブルダ形アキュムレータの窒素ガスを圧縮する
ことにより高圧で貯留される。蓄圧されたアキュムレータから取り出せる圧油量Vmは6}
Vm;VleηF ……………・………・……・…………・……・・………・………・・……… (3)
ここにV一アキュムレータガス容積,e;ガス封入圧力比,η;アキュムレータ総合効率,
F;吐出係数で,eとFは次式により与えられる。
に陰1}一一一一一一一倒
ここでP1;ガス封入圧力, P2;最低作動圧力, m;蓄積時ポリトロープ指数, n;吐出時ポ
リトロープ指数,a;作動圧力比(P3/P2,P3は最高作動圧力)。アキュムレータに, P3ま
で圧力を高めて貯留しても,利用時の使用油圧機器はP2の圧力で作動できるようにしなけれ
ばならないので,P3/P2を小さくしVlを大きくすることがエネルギー的には好ましい。し
かしV1を大きくすると施設費が増大する。なおこの油圧装置に高圧ガス取締り法の適用を受
け,高圧ガス製造設備の扱いとなる。
一71一
皿 プロペラ形風車を用いた風力油圧変換装置
1)機器の構成
図1に装置の概要を示す。直径4mのプロペラ形風車1で直接油圧ポンプ2を駆動し,風速
によって流量,圧力の変動する圧油を,純油圧方式の自動制御機器8により制御される可変比
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図1 プロペラ見本を用いた油圧変換蓄積装置
Fig. l ConversiQn system of wind energy to hydraulic oil energy
and accurnulators.
って増置しアキュムレータ20,21に蓄圧する。プロペラ形風車は直径!mの流線形ケーシング
の後部に取り付けられ,風速を上昇させてプロペラに当てる後流形のもので,4本脚の塔を用
いて地上10mの高さに設置されている。油圧変換ユニットはラジアルピストンポンプ(170c㎡
/回転),過速過熱制限器3である圧力補償型流量制御弁及び油圧回転継手よりなり,塔上の
流線形ケーシング内に収められている。過速過熱制限器の作用は,強風時に流量が増加すると
流量を絞り,風車速度の上限を規制し,また油の温度が上昇した場合にも,弁内の油脂の溶解
に基づく体積膨張により,流量を絞ることである。風車直結の油圧ポンプの吐出圧力は風速に
よって変動し,また起動トルクも小さくなくてはならないので,可変比増圧器によって増圧し,
一定の圧油をアキュムレータに供給する。可変比増圧器は60面/回転のラジアルピストンモー
タと可変ラジアルピストンポンプから構成され,ポンプの偏心量を自動制御することにより一
一72一
定の圧油をアキュムレータに送る。この制御は図1の自動制御機器8によって純油圧方式で行
ない,油圧ポンプ2と油圧モータ6を循環する油が,途中の配管や過速過熱制御器で受ける圧
力損失が通常状態では管内流速(従って風車回転速さ)の2乗に比例することを利用している。
この自動制御機器のG,E及びFポートにそれぞれ風車直結油圧ポンプ吸い込み側圧力,吐出
側圧力及び油圧モータ入口圧力が導かれ,内部のダイアフラムピストンのカの釣り合いのバラ
ンスが崩れると,ピストンが移動して可変ポンプの偏心量を変える構造になっている。風車の
発生トルクは風速の2乗に此例して変化するが,風車に取り付けた油圧ポンプの流量は回転速
度に比例し,E, F及びGポートに導かれる油圧は管内流速の2乗に比例して作動し,可変ポ
ンプ偏心量を変える。すなわち,これにより風車の発生トルクに比例するように可変ポンプの
流量を変え,この油圧をアキュムレータに蓄積しようとするものである。
塔上下間には10mのヘッドがあり,管内キャビテーションを避けるためには常にチャージポ
ンプによって油を補給する必要がある。このため往復動形のチャージポンプ(図1の番号9)
、を設置しアキュムレータの圧油によってこれを駆動する。なお,始動時には外部から電動機に
より駆動される油圧ポンプでアキュムレータに圧力を蓄える。
2)変換実験
本風力油圧変換機をほ場に設置して運転し,構成機器の改造を行い,システムの改善を行な
った。本システムは速い風速の地域に適したもので,現地では技術的検討を行うに十分なデー
タが得られなかった。そのため主要機器を室内に設置し,機能確認実験を実施した。
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1,
P㎜P2, Motor for booster 3 Booster pump 4,㎞tomatic control device
5.
Relief Valve 6. Flow meter 7, Valve to control flow resistance
8.
Valve to control outlet pressure 9,10,11,12, Pressure transducers
13.
Torque meter
図2 油圧回路と計測点
Fig.2 Schema of the bench test system
一73一
U}実験装{置
実機は図1のとおりであるが,室内実験のために図2の構成とした。実機では定容量型油圧
ポンプを風車で回転させ,回転数に応じた圧油の流量を得ているが,室内実験では定速度の電
動機を使用するため可変容量型ポンプ(0∼40c㎡/回転)を用いて吐出量を変えられるように
した。アキュムレータの代わりにリリーフ弁を用いる事によって負荷圧力を調整し,タービン
型流量計により容積流量を求めた。これは比較的短い時間においてはアキュムレータの圧力変
化を無視できると仮定したことによる。風車は高さ10mの位置にあり管路内,過速過熱制限機
内での抵抗を無視できない。これに見合うものとして,室内実験では抵抗7を組み込んだ。な
お,ポンプ1は可変容量型であるが風車に取りつけたポンプが容量:固定型であるため以後固定
ポンプと称する。
② 測定項目及び方法
図2に計測点を示すが次のとおりである。①計圧器出口圧力,②増々器ポンプモータの回
転数,③固定ポンプの吐出圧力,④御階器油圧モータ入り口圧力,⑤爆圧器出口圧力,⑥アキ
ュムレータ流入相当流量,⑦増圧器ポンプ偏心量,⑧増圧器トルク。ここで①及び③∼⑤は電
気抵抗型圧力変換器で検出,⑥はタービン型油圧用流量計で検出。⑦は差動トランス,⑧と②
は同じ計測器からなりトーションバー式トルク計で両者ともアナログ信号に変換される。いず
れの信号も一旦アナログ磁気テープ記録計に記録され電磁オシログラム」二に再生された。この
ほか,差圧prp2については直接差圧指示計を併用した。これらの測定値より増圧器モータ
へ入る流量(Q),固定ポンプ出力(P)増圧器ポンプ出力(Pz),増圧器軸動力(Pz’)及び
効率(η)が求められた。
実験の条件として,爆圧器軸回転数,増戸器ポンプ吐出圧力及び管路抵抗用弁の絞りを変え
た。風車直径が4mで,周速比を8としてプロペラに直結した油圧ポンプの容積から,風速3,
5,7及び9m/sにほぼ相当する回転数を与えるように固定ポンプの流量を調整した。管路抵
抗用弁は3段階に変え,増圧器ポンプの吐出圧力は同図リリーフ弁5で調整したが一部の実験
を除いて50kgf/c㎡から25kgf/c㎡間隔で200kgf/c㎡迄変化させた。
風速の変動に伴う風車の回転数の変動に対して,可変比増圧器は追従しなければならない。
その為に固定ポンプ1の吐出量をステップ状及び正弦波状に変化させて,各部の応答を調査し
た。
(3)実験結果
効率と動特性については,次の結果を得た。図3に増圧器ポンプの効率(Pz/Pz’×100)
及び総合効率を示すが,風速5m/s相当の場合,吐出圧力50kgf/c㎡で27%と20%,861《gf/
c㎡で0%と低い値を示し,風速9m/s相当の場合でも最大70%と50%である。この図には表
われないが風速3m/s相当の場合は吐出圧力28kgf/c㎡で増圧器ポンプ効率が0%となる。こ
鴇
rev・speed of booster
一 一雪一922rpm
ね
の §馳
ω o
@ イ
コ リ の
___{}.一_ 一782rpm
臣.
『つ’一糟一一α\こδこ一552rpm
、、、「q、、
粟毒
o
㊤g α
羅
含§ 一一ひ一一一か一一。_詠一
の ヨち
§・δ “・一甑 ’q\。
o¢
臼 も 50 75 100 125 150 175 200
0utlet pressure of the booster pump(kgf/cの
図3 増圧器ポンプ効率及び総合効率
Fig.3
Efficiencies of the booster pump and the total hydraulic system
一74一
れらはドレインへの油漏れが大きいために容積効率が低下したと考える。当初,アキュムレー
タの初期圧を高く設定することも計画したが本実験の結果50∼100kgf/c㎡の範囲で使用する
ことが効果的であることを示している。これは油圧機器のみの効率であり,風エネルギーに対
する効率はこの総合効率にプロペラ風車の出力係数を乗じたものになる。風車の理論最大出力
係数の75%で運転され,油圧機器の総合効率を40%とすれば約18%となる。
固定ポンプの回転数をステップ状に変化させる場合,高速から低速に変化させる場合は比較
的速く150rprnの低下に対して0,25秒必要とした。この変化に対して可変比増圧器ポンプの
偏心は0.7秒で所定の位置に達し行き過ぎは認められなかった。これに対して低速側から高速
側に変化させた場合は同じく150rpmの変化に対して0.7秒要し,偏心に1秒間必要としてい
る。次に周波数応答を調査した。これについ
0
−2
−4
て厳密な正弦波の形状ではないが,0から6,5
べ6 憲
Hzの周波数で固定ポンプの吐出量を変えた。
「リリーフ弁圧力100kgf/c㎡の際の結果を図
の
4に.示す。静的な状態での入出力の関係をO
題一8 莇
バ10 ε
’蔑 o
dBとし,周波数によってゲインと位相差が如
−30拐
の
一60謂
山
一90
−120
−150
−180
何に変化するかを示す。風速の変動はかなり
0.30.5 1 2 3 5 10
3)本装置の改善を訓ずる点
速いものも認められるが,慣性が大きい風車
の場合その変動はユHz以下であろう。この
前提に立てば可変比増圧器の動特性は十分な
追従性を持っていると判断できる。
Frequency(Hz)
図4 増量器の動特性
風車及び油圧系の安全装置として風車の手
Fig.4 Dynamic characteristics of the
動停止弁,過速過熱制限器,アキュムレータ
booster
の圧力を規制するリリーフ弁及びアキュムレ
(lnput;Revolutional speed of t1燈
ータの安全弁がある。手動停止弁は風:車で回
booster, Output;Eccerltric dista
転する油圧ポンプと可変比気圧器モータの間
−nce of the booster pump)
の油の流れを止めることにより,プロペラの
回転を止めるものであるが,
この管路に空気が混入すると停止動作が不十分になるが,
この現
象が現実に発生した。過速過熱制限器は十分な室内試験を経て取り付けたが,管路内に空気が
混入したためか機能を十分に果たせず規定以一ヒの速さでポンプが回転することがあった。風車
塔が高ければそのヘッドが大きくなり,また風車ケーシング内の点検は制約が大きいため,風
車動力は傘歯車等を介して垂直軸で地⊥に移し地上に油圧機器全体を設置することが好ましい。
この手法によれば地土で純機械的に風車を止めることや,油圧機器の点検を風車運転中にも行
なうことができる。風車搭の安全については直接的な風に対する耐性の外に,風車が原因とな
るものについても考慮しなければならない。風車軸回りの回転不つりあいが振動源となり塔の
固有振動数と一致したときに塔の振動を発生した。これは不つりあいを直すことで大きく低滅
できたが,十分の注意が必要である。
また風向の変化する速さについても調査が必要であるが,垂直軸回りの運動についても安全
の面から検討を必要とする。油圧機器は油圧作動油で運転したが,各機器は僅かの添加材を加
えた水でも使用できることを前提の⊥に開発された。これは化石燃料の代替として風エネルギ
ーの利用を計る際に,循環して利用するもので消費消散するものではないが,鉱物油を媒介と
することを少しでも削減する立場で研究を進めたためである。また低風速域で総合効率が低下
しているが,この低下を防ぐことは精密機械加工の面から純技術的には可能であろう。総合出
一75一
率の点で改善の余地は残されている。
IV サボ農ウス形風車を用いた風力油圧変換装置
1)油圧変換装置の構成
前項の油圧変換装置は,技術的に高度な機器を必要とし,新たにいくつかの個別の機器を開
発して全体を構成した。これに対して,市販販の油圧機器を中心に電子的制御回路を組み込み,
比較的低風速でも使用できるサボニウス形風車を用いた変換装置の開発を行った。使用した風
車は羽根の直径3m,羽根の幅2,5m,風車上端までの地上高は8mである。油圧回路と制御
回路の流れ図を図5と図6に示す。サボニウス形風車1により直接ラジアルピストンポンプ5
START
1
Valve Off
ω〉ω正
NO
2
YES
10
[コ……
u
3
NO
∫ωdt≧N
5
4
YES
「’.5”一♂’1813・
ロ
i
!_一_ ・,「’12
valve On
7 [5
L.._._出」
1,Savonius wirldmill 3, Sensor of
YES
revolution speed, 4, FlywheeL
ω<ω甚
NO
5. Purnp 10, CQntrolle葛
図5 サボニウス風車を用いた油圧変換蓄積
装置
図6 コントローラの流れ図
Fig.5 Convevsion systeln of wind energy
Fig.6 Flow chart of the controller
to hydraulic oil energy with Savonius
windmill,
(理論吐出量99c㎡/圓転)を回転させるが,風速の小さい際には負荷を小くし,ポンプ5から
吐出された油を電磁弁7を通して無負荷でタンクに戻す。同時にフライホイール4に回転エネ
ルギーを蓄積する。風車の回転速さがω1以上になると,制御機器は回転角の積算を始め,こ
の積算角がN以⊥になると,電磁弁7が作動し圧油がアキュムレータに蓄えられる。この結果ポ
ンプの負荷が増大し急速に回転数が低下する。ω1及びNの設定値は可変でω1=45。/s,N嘉
一76一
9,6回転で実験した。フライホイールは外径1000m皿,質量6ユ2kg,慣性モーメント7,8kgfs2m
である。アキュムレータはガス容積30L初期ガス圧100kgf/c㎡である。リリーフ弁により
最大圧力が210kgf/c冠に制限されているが,油タンクのレベルスイッチにより約160kgf/c㎡
の圧力で油タンクの油量の減少から電磁弁7が作動しない構造とした。即ち2重の安全弁を設
置している。
2)油圧変換蓄積糞験
油圧変換蓄積実験風車の回転数と電磁弁7の動作状態を図7に示す。この時の平均風速は
Ope「ation @ofdi「ectonal cont キvalve約…m/・であ・・騨の回鱗・が・・
盆
(45。/s)を超えてからN=9.6回転するま
OFF
ね 。巳40
でフライホイールに運動エネルギーを蓄え,
冨と30 Revolutioual speed of the Windmi
その後作動して圧油を貯留し,ω且く450/s
の 罪20
(=7.5rpm)になるとポンプからの吐出圧
5智10
油がタンク戻されるが,圧油がアキュムレー
裁謬
0 1 2 3
Time(min)
図7 風車回転速さと電磁弁の作動
で見られるように電磁弁が作動する前に風速
Fig.7 Revolutional speed of WindmilI
が低下したために風車の回転数が低下し,フ
タに貯留される時間は極めて小さい。この図
and operation of hydraulic dir㏄tion
ライホイールに蓄えられたエネルギーを有効
−al Control val ve,
に利用していない場合がある。この図より設
定値ωp及びNは検討を必要とする。簡単な論理回路からなる制御回路を使用したが,風速信号
を併用し,周速比で制御すれば蓄積量は増加しよう。同じ風速のもとで貯留される量は,設定
N及びポンプの大きさに左右されるがこれはデジタルシミュレーションで検討した。
値ω1
6
聲
図8は30分間の平均風速と,この30分間に
。・・。。measured value
壽
simulation
5
も
アキュムレータに貯留された圧油の量を示垢
o
風速は風車から12m離れた地点で高さ10.4m
セ
4
の位置で風車形一般気象観測用風向風速計と
。
ご
。
3
o o
Φ窪
§圏冒
8
2
鞠
した。30・分間平均嵐気は10分間平均速度の記
ol.
録波形を30分にわたって平均し,風車の中心
o
り き
否8
諸
信号変換器により瞬間及び10分間平均を測定
高さの風速に補正ηした値である。
3 0009 0 0
り り
。;9㊤ 戟F:
1
謙淵+……・一・・…(・}
o
o
0 1 2 3 4 5
遷
Wind velocity(m/s)
(ノ) O
6
ここに,Vol観測された風速, V:風車中心
図8 風速と貯圧油量
高さに於ける風速の推定値,hol風速観測
Fig.8 Wind ve1㏄ity and storaged
高さ,h:風車中心高さ, n:経験則による
volume of hydraulic oil.
定数。貯留量はこの30分間の初めと終わりの
アキュムレータ圧力(電気抵抗ひずみ式圧力計を使用し風速と同じ記録紙に記録)から式(3)に
よって推定した。貯留量のばらつきが大きいが,これはアキュムレータへの平均流量がアキュ
ムレータ圧力(即ちポンプ出口圧力)に影響されることのほか,アキュムレータ圧力が外気温
の影響を受けることや,風速が刻々変動し,風エネルギーが風速の3乗に比例するため,同じ
平均風速でも風速の変動状態により貯留量が異なるためと考えられる。
3)デジタルシミュレーション
この風力油圧変換装置には非線形の要素を含むため,デジタルシミュレーションによって,
制御機器の設定値,風車及び油圧機器の組合せについて検討した。風車と油圧機器の運動は次
一77一
式で示す事ができる。
(J1+J・){卜TQrTQ・…・・一一…・一・………一一…一…………(・}
ここに,」1及びJ2は風車及びフライホイールの慣性モーメント, TQ 1は発生トルクで, TQ2
は消費トルクである。TQ 1は風速と周速比により式(2)により求まる。
この式②で用いた風車のCTは不明である。サボニウス形風車はその特性がまだ標準化され
ていない。これは流体力学の立場から羽根の形状が標準化されていないために,羽根の形状が
風車によって異なることや軸受などの損失によるものが大きいと思われる。そのため特性調
査を実機を使用し自然風のもとで行った。
風車の下端を負荷から切り離しころがり軸受で支持し,風車軸にプローニブレーキを取り
つけ種々の負荷をかけた。負荷と回転数はロードセルと磁電式ピックアップで求め,周速比(γ)
とトルク係数(CT)の関係をもとめた。これに軸受け負荷を推定加算して式(7)を求めた。
γ〈0,22; CT=0,30
γ≧0.22; CT=一〇,327’十〇.37 ・・・・・・・・・・・… 。・・・… 一・。… 一・… 一・一・… 一・・・・・・・… 。・ (7)
油圧ポンプの圧力と所要トルクは単体の特性実験から次式を得た。
TP=0,332+0,15668p ………・……・…・……・………・…・…………・……・・……… (8)
ここにTPはポンプ所要トルク(kgf・In)pは吐出圧力(kgf/c㎡)である。圧力Pについて,
アキュムレータに圧油を蓄える場合は,蓄えられた圧油の容積から式(3)及び(4)で求まるが,直
接タンクに戻す場合は,配管及び電磁高等における圧力損失を与えた。⊥式はポンプ単体の性
能であるがフライホイールの軸受の負荷等も考慮してTQ 2−TP/η』とした(ここにη;効率)。
供試ポンプの容積効率については,実際に使用したポンプの回転数は3∼20rpmであるため
次のように推定した。一般に低速時におけるポンプからの油滴れは時間当たりほぼ一定であ
ると経験的に言われており,低速時の容積効率が極めて低いと考えられる。供試したラジアル
ピストンポンプは本来モータとして設計されたものを一部改造したもので,モータとしての最:
低使用回転数は50rpmである。ポンプ単体の容積効率は10rpm以下の場合は実験の都合で得ら
れなかったが,30,20及び10rpm,でそれぞれ93,92及び88%を示し,10rpm以下で急激に低
下すると考えられる。同形のポンプで1回転当たりの吐出量が1/10のものについて容積効率
を実験的に求めた結果10rpm以下になると急激に低下している。これらよりWilsonの式81を用
いて,2,4,6,8及び10rpmで,それぞれ68.1,84, L 89,4,92.0及び93.6%と推定した。し
かし遠心力の効果が少ないことなどを考慮すると実際にはこれより低い値を示すと考えられる。
シミュレーションに当たっては0∼10rplnに対しては2次式,10rpm以上では2つの折れ線で
近似した。計算は式㈲をルンゲクッタ法で繰り返し行った。なお,計算は京都大学大型計算機
センターで行った。
シミュレーションにおいて必要なことは,実測値が得られる場合は実測値とシミュレーショ
ンの結果が一致することであるが,図8に示すように実験結果とシミュレーションの結果はか
なり良く一致している。そのため種々の条件のもとに於ける特性について,このシミュレーシ
ョンプログラムのパラメータを変えることによって求めた。
試作機のポンプ容量,設定値ω1及びNはそれぞれ99c㎡/回転,450/s及び9,6回転である
が,先ずω1を変化させた場合については検討した。表1に示すようにω1の影響は小さい。
僅かではあるが風速の小さい場合はω1は小さい方が良く,逆に風速の大きい場合にはω1が
大きいことが好ましいことを示している。これは風車の出力係数が周速比に支配されることも
その理由である。ここで括弧内の数字は風エネルギーと使用可能なエネルギーの比を示すが風
速5m/s以上で2%と極めて小さい。次に表2はNの影響を検討するためのものである。こ
一78一
表1 ω1の影響
Tab.1 Effect ofω1(N霜9,6rev,Capacity of the pump
99C㎡/rev)
(units
4/30min,幽)
nd Velocity
m
ω1
1
/s
1
/2
3/2
0,
0
(0,
0)
0.0
0)
0.
0
(0.
0)
0,0
(0,0)
95)
0,
22
(0,
94)
0.17
(0、75)
69)
0,
95
(1.
76)
0,94
(1,74)
01
(1,
90)
2,
09
(1,
98)
2.11
(2.00)
58
(1,
96)
3,
74
(2,
05)
3、79
(2.08)
61
(1.
94)
5.
80
(2.
0!)
5.93
(2,05)
1
0,
0
(0,
0)
2
0,
0
(0,
3
0,
22
(0,
4
0,
92
(1,
5
2,
6
3.
7
5,
(0.0)
表.2 Nの影響
Tab.2 Eff㏄t
of N (ω1=45。/s, Capacty of pump 99c㎡/rev)
(units
Wind
m
4/30min,(%)
N
velocily
1
/s
1
/2
3/2
1
0.
0
(0,0)
0.
0
(0.
0)
0,0
(0.0)
2
0,
0
(0.0)
0,
0
(0,
0)
0,0
(0.0)
3
0,
26
(1.13)
0,
22
(0,
94)
0.18
(0,79)
4
1,
14
(2.12)
0、
95
(1.
76)
0,80
(1,49)
5
2.
38
(2.26)
2,
09.
(1,
98)
1.84
(1.74)
6
4.
10
(2.25)
3,
74
(2,
05)
3.37
(1,85)
7
6,
20
(2,14)
5.
80
(2,
01)
5,33
(1,84) ’
表3 ポンプ容量の影響α)
Tab.3 Effect of pump capacity(1)
(N=9.6rev,ω1=450/s, Pump capacity 1罵99c㎡/rev)
4/301nin(%))
(units
Wind Velocity
m
Pump
1/3
/s
2/
1
0,
0(0.0)
0,
0
2
0,
07(1.03)
0,
3
0,
53(2,34)
4
1.
5
6
7
3
●
モ≠垂≠blty
1
(0.0)
4/3
5/3
00(0.0)
0(0,
0)
0.
0(0. 0)
0.
002(0.03)
0,
0(0,
0)
0,
0(0,
0)
0,
0,
36
(1,56)
0,
22(0, 94)
0,
35(2,49)
1,
15
(2.12)
0.
95(1, 76)
0,
80(1,
2,
59(2,46)
2.
31
(2,22)
2,
09(1, 98)
1.
89(1. 79)
1,
1 68(1,59)
3,
76(2.06)
3,
99
(2.18)
3.
74(2. 05)
3,
48(1, 91)
3.
6,
09
(2.11)
5,
80(2. 01)
5,
32(1, 91)
5,
5,28(1,82)
0,
11(0、 47)
47)
00(0,0)
0,
0 03(0,15)
0 63(1.17)
0.
3 24(1.78)
の結果Nの値は現状よりも小さくした方が好ましいことを示す。Nの値を1/2にすることに
よって約10%貯エネルギーの増加が期待できる。表3はN=9,6回転,ω1=45。/sとして,
ポンプの容量を変えた場合であるが,風速の速い場合でポンプ容量が2/3位が好ましいが,
風速の小さい場合はポンプの容量がより小さいほうが好ましい。例えば4m/sの風速の下で
一79一
はポンプの大きさを1/3にすることによって使用できるエネルギーの割合が60%近く増加で
ぎることを示している。設置する地域の季節別風況と季節別需要から好ましいポンプの大きさ
を運ぶ必要がある。次に表4によればω1を大きく,Nを小さくしてポンプの大きさを変える
表4 ポンプ容量の影響②
Tab.4 Effect of pump capacity(2)
(N=4,8rev,ω1=67,5(ン/s, Pump capacity 1=99c㎡/rev)
(units 4/30rnin(%)
Wind
Pump
velocity
m /s
1/3
capac
1
2/3
4/3 5/3
1
0,
0(0, 0)
0.
0(0. P)
0,
0(0、 0)
0.0(0.0) 0,0(0,0)
2
0,
03(0. 46)
0,
0(0. 0)
0.
0(0.
0)
O,0(0,0) 0.0(0.0)
3
0.
59(2. 59)
0.
39(1,
72)
0,
22(0.
95
0,08(0.36) 0,0 (0,0)
4
1,
59(2.
93)
1,
39(2, 57)
1.
17(2,
16
0,95(1,76) 0,74(1,36)
5
2.
96(2,
81)
2.
70(2, 56)
2,
46(2.
34
2.28(2.11) 2,02(1,92)
6
4,
76(2. 58)
4,
50(2, 47)
4,
28(2.
32
3,99(2.19) 3、74(2.05)
7
7,
Ol(2,
42)
6.
71(2. 32)
6,
44(2,
23
6,19(2,13) 5.90(2.04)
ことにより,2m/sの風速から僅かであるが使用できまた風速4m/sではその効率が3%
近くまで上昇していることを示している。
このω1とNの設定値で電磁弁を作動させる方法は フライホイールにエネルギーを蓄え一
定値になれば圧子を圧帯するものであるが,これは出力係数の大きい拙速比の範囲で使用する
ことを狙ったためである。正しく周野比で制御するためには風速信号を制御器に入力した後門
算しなければならない。ここでは制御岩と論理を簡単にするためにω1とNの値で電磁弁を制御
した。図9のように山内比γ1どr2電磁弁を動作させる制御法を採る場合についてもシミュレ
ーションを行った・これまでのシミュレーションから・ポンプの大きさを変えて計算した場合
8
遍
8
お
き
臨
71 γ2
Speed R atio−Tip peripheral speed/stream speed
図9 周智五一出力係数模式図
Fig.9 Speed ratio VS. power coef. on Savonius windmill.
について表5と6に示す。表5は貯油量を表6は風エネルギーに対する効率を示す。平均風速
での効率が良くなるようにポンプを選定しても,本来低風速では貯圧油量が少ないため,時期
別のエネルギー需要量と風況からポンプサイズを決定することが効果的である。空気調和衛生
工学会の標準気象データ (HASP)9)を用いて計算した年間貯鉱油量を表7に示すが,用いた
サボニウス風車に対しては容量20c㎡/回転のポンプが好ましいことを示している。この表中の
風速は年番平均風速である。容量20c㎡/回転のポンプを使用した際の月別の貯圧油量は図10の
とおりである。
一80一
表5 ポンプ容量の影響(3−1)
Tab.5 Effect of pump capacity (3−1)
γ2罵0,83)
(γ1−0,35
(urlif
m/sS
0,
05『
0,
1
0,
1
0.
01
0.
01
0,
2
0.
18
0.
17
0.
3
0,
89
0.
4
!,
24
2,
5
1,
6
2,
’2.
7
ぞ/30min)
3
×99
cm/rev
pump Capacity
pum
nClty
Wind velocity
,
15. 0,2
0,3 0,4
O.5
0、6
0..7 0,8
1
0
0,0
0,0 0.0
0,0
0,0
0,0 0,0
0,0
16
0,14
0.11 0,08 0.03
0,0
0,0 0,0
0.0
73
0,
74
0.72
0,67 0,62 0,56
0,50
0.44 0,39
0.26
20
1,
46
!.86
1,81 1.74 1。66
1,59
1,52 1,45
1,30
73
2.
80
3.
19
3.64
3,36 3.27 3,19
3,11
3.02 2.93
2,77
19
3,
81
4.
81
5,22
5,63 5,32 5,21
5,12
5.02 4,94
4,77
64
4.
77
6,
20
7.28
7,71 7,81 7.64
7,54
7.43 7.35
7,16.
ポンプ容量の影響(3−2)
表6
Effect
of pump capacity (3−2)
Tab.6
(7’歪一〇,35 γ2・=0,83)
(unit %)
purnp capacity× 99cm3/rev
Wind vel㏄ity
m/s
0.05
0.1
0.15
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0,8
1,0
1
1.33
0.7
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0,0
0.0
2
2.64
2.53
2.33
2.11
1.64
1.14
0.46
0.0
0.0
0,0
0.0
3
3.91
3.21
3.24
3.16
2.92
2.70
2.45
2.18
1.93
1.70
1,12
4
2.29
4.07
2.70
3.45
3.34
3.22
3.08
2.95
2.82
2,68
2,41
5
1.64
2.65
3.03
3.45
3.19
3.10
3.03
2.95
2.87
2.78
2,62
6
1.20
2.09
2.64
2.87
3.09
2.92
2.86
2.81
2.76
2,71
2,62
7
0.91
1.65
2.20
2.51
2.66
2.70
2.64
2.60
2.57
2.54
2.48
表7.推定年間貯圧油量(kの
Tab.7 Storage volume of hydraulic oil per year with the digital
simulation(k1)
Windmill=Savonius type 2.5m×3m
Location
1
@ ①
9 ①
Q、×
@鋤
q
5
6
7
3.06
3,46
2,71
1.85
1,85
0.05
0.10
0.15
24.3
38.3
46.4
15.2
0.3
O.4
0.5
0.6
O.7
0.8
53.4
T3.9
52.5
51.3
T0.7
48.3
46.3
12.6
17.9
20,2
22.5
21.8
21.4
20,6
20,2
19.5
18.9
17.4
4,7
5,3
53.1
26,2
26,0
31,0
35,4
12.3
17,5
0.2
30.7
34.0
41.4
47.7
47.9
S8.5
47.2
46.3
S5.9
43.4
41.6
〉
p司Q
4
4.15
』巴伺
@ の日
3
4.40
Wind ve1.(m/s)’
’ご\
2
1.0
Location
1,Muroran
,
6. Yonago,
21,6
24,6
27.5
26.8
26,5
25,6
25.6
24,2
23.3
21,6
3.
2,Akita,
7, Kohti, 8.
/9,9
22.1
21.4
21,1
20,3
35.1
35,4
34,3
33,6
33.0
31.5
29.8
Maebashi,
工9,9
19.2
16.1
17./
4,
Kumamoto.
一81一
5,
Nagoya,
8
2.19
8,3
5,6.
!α9
11,8
6,5
13.1
5,6
12.2
12.0
5,6
5,3
5.2
4,9
4,8
3,9
0saka,
11.4
11.2
10.9
10。3
9.2
2
§
12
こ
10
ぎ
の
ε
三
〇
Muroran
8
6
4
_Akita
ノ
こ:ミ藁、.4一∠気 ㎎。
>
B
圏
お
あ
2
Osaka
0
Jan. Mar・May JuL Sept. Nov.
Month
図10 月別貯油量推定値
Fig.10 Storage volume Qf hydrculic oil per rnontl}by the digital
sirnulatiOI1.
4)風力油圧変換装置の特徴と改善
この風力抽圧変換装置を技術的な立場から検討するためには,使用可能風速範囲,維持の
し易さと安全性及び効率の向上が対象となる。使用可能風速範囲については図8にも見られ
るように,30分平均風速で1.5m/s位の低い風速から使用できる。実験期間中の瞬間最大風
速は30m/sの場合があったが,何の異常もなく運転された。また設置してから3年間故障な
く運転された。なお,その閤に1度油の汚れを除くために油圧作動油の交換を行なっている。
効率が低い欠点はあるが,このように維持に殆ど人手を要しないで低風速から高風速まで対
策を講ずることなく安定して使用できることは,専門の管理技術者の居ない地域でも使用でき
るものであり,農業用としては大きな特徴として挙げることができる。次に効率が小さい点
については,風車と油圧機器にそれぞれの原因がある。プロペラ風車に対してサボニウス風車
は出力係数がはるかに低いが,上記のような特徴があるため,空気力学の立場から,より効率
の高いサボニウス風車の設計手法が提起されることが望まれる。つぎに低回藍鼠さ時に於ける油
圧ポンプの容積効率の低さがあるが,回転速さに関係なく高い容積効率が維持されるポンプの
開発により全体の効率の向⊥が可能となる。機械的増速機により,ポンプの回転数を高める方
法も有り得るが,このような風力油圧変換機では,増速機の動力伝達損失に対して充分な配慮
が必要である。
5)サボニウス風車のための連続型油圧変換装置の試作
前述のサボニウス風車油圧変換蓄積装置は効率は良好と言い難いが安定して使用できること
が判明した。この装置は回転数を電気的に検出し,電磁弁を操作し,問欠的に圧油を蓄積して
いる。農業の条件によっては制御のための僅かであっても電気を使用し難い地域もあろう。間
欠的に蓄圧する場合は効率を高めようとすれば,コントローラが複雑にならざるを得ないと思
われる。そのために全く機械力だけで風車の発生トルクと油圧機器の整合性を取りながら連続
的に菩圧する機器を關発した。開発に当たって前記のサボニウス風車とアキュムレータを使用
することにした。風車と油圧機器の整合性を取る方法として,風速に応じてポンプ容量を変え
る方法と,油圧ポンプの容量を圃定し,ポンプの回転数を適正な値に取る方法等があろう。ここ
に二つの変換機を試作した。試作するに当たり運転に際して電気等他からエネルギーは一切必
要としない構造とした。もし必要とする場合にはアキュムレータに蓄積されたエネルギーを僅
か使用するものとした。つぎに安全装置としては多重の装置を併用することとした。実験地の
平均風速は低いが稀に高風速が観測され,過去の事例(大阪と京都の瞬間最:大風速:60m/s
と42m/s,1934年9月)から最大風速60皿/sに対して安全であることを前提とした。
一82一
1
(1}可変容量ポンプ式動力変換制御装置、
Savonius』
f
Windmi11
本装置の基本構成図を図11に示す。風車軸
に3連のプランジャーポンプ(各5c㎡/回転)
を取り付ける。風車の軸を3倍に増速してガ
3
バナーを回転させ,このガバナーの動きによ
って扇形カムに連なったシャットオフ弁を操作
させて切り替えるものとした。風速の小こい
時は1台のポンプのみから圧油を圧送し風速
の大きいときは3個のポンプから圧油をアキ
5
1
ュムレータに送る。ガバナーウエイトは5
kgfのものを2個使用しベルクランクレシオ
は4対1,スラストストロークは20mmとした。
4
謹
2
.∠
1.
4,
5,
ガバナーは風速11m/s,すなわち風車回転
数66rpm,ガバナー回転軸約200rPlnで作
山
動を止め,ガバナーハウジングによって破損
から保護するものとした。3連切り替え時の
Valve,
風速は,4m/sまでは1連,4m/sから
5.5m/sまでは2連,5.5m/s以上で3
Unload circuit. Shut off
連となるように設計されている。油圧回路の
Governor. 2, Cam, 3, Pumps,
図11,可変ポンプ式変換制御装置
Fig.11
Conversion system of wind
安全装置は,アンロード回路(設定値170
kgf/c㎡)とリリーフバルブ(設定値200
energy to hydraulic oil with
kgf/c㎡)の2重の対策を講じた。また高風
variab王e purnps・
速時や保守時の対策として手動によりつめク
ラッチを操作することとした。
② 定容量ポンプ式動力変換制御装置
本装置の基本構成図を図12に示す。1個のプランジャーポンプ(5c㎡/回転)を用い,風速
に応じて変速装置を切り替える方式である。変速装置は常時噛み合い歯車の多板クラッチによ
る高低2段,変速度比を2対!とした。前記可変容量式と同形のガバナーを用い,ク1,ックスプ
リングを持ったりンク機構でパワーシリンダーを動作させ,このロッドと連なったりンク機構
で⊥記の変速装置を作動するパワーシフト方式を採用した。変速装置の切り替えは風速4m/
s未満の場合に風車軸と油圧ポンプとが同一の回転数に4m/s以上の場合には油圧ポンプは
風車軸の2倍の速さで回転するように設計されている。安全装置については前記可変容量式と
同形式にした。
サボニウス風車と変換装置は両端にユニバーサルジョイントを付け,軸方向にスラストでき
る軸を用いているため,前記闇欠型の変換装置と並べて裾付け,風車軸の下端のみ移動させて
また油圧の手動停止弁を切り替えることによって,3つの変換装置が一つの風車で切り替えて
駆動できるようにした。実験は主として前記間欠型について行なったため,この2機種は機能
確認に終わり,長期運転における問題点の摘出等は今後の問題として残されている。
一83一
Savonius
Windrni11
1
ノ
、
!
2
6
3
4
5
1. Governor,2. Directional control valve 3, Hydraulic cylinder
4.Pump 5. Variable speed device 6, Unloading circuit
図12 可変速式変換制御装置
Fig 12 Corlversion system of wind energy to hydraulic oil with
variable speed (鎗vice
V 油圧の利用
望)利用方式
この研究では風力油圧変換装置で得られた圧油は省エネルギーハウスの温度制御や農作業に
使用することを前提にしている。省エネルギーを前提とした環境調節としては,天側窓の開閉,
保温カーテンの開閉,地中への蓄熱と放熱,ソーラコレクタ,タンク及び放熱器間での熱媒体
の循環などが挙げられる。しかし,地中と室内空間との熱交換及びソーラーコレクターへの利
用は運転時間が長く風エネルギーの利用には馴染まない。天二二の開閉,保温カーテンの開閉
が利用対象となろう。農作業として油圧ホースを引き回わすことは不可能でないとしても,面
倒なことになるため,動力源を固定できるものが対象となろう。この貯留圧油で防除機のポン
プの試運転と側窓の自動開閉を試みた。防除機のポンプの運転は単純なことであるため,側窓
開閉にっき報告する。
2) 実験方法
実験に用いたガラスハウスは長さ28mの東西棟である。1スパンは4枚のアルミサッシ製両
開きの窓からなり,i1スパンで構成されている。両端のスパンを除き,中央9スパンについ
て,南側窓と北側窓を独立して油圧モータで開閉することにした。油圧モータの回転数を減速
器で減速し,スプロケットを介しチェーン駆動した。チェーンの両端には9スパンを同時開閉
するために,直径18m田の鋼管をそれぞれ取り付けた。この鋼管に板ばね(ばね定数2,4kgf/
m皿)とコイルばね(0.128kgf/mm)が取り付けられ,これによって個々の側窓に取り付けられ
一84一
たレバーを押し,鋼管の左右の動きによって窓が開閉される。ばねによって開き始めと終わり
の衝撃を吸li又し約2kgfの力で窓を閉じておくこととした。なお,2本の鋼管に取り付けられ
たカムとリミットスイッチにより所定の位置まで窓が開閉すれば電磁方向制御弁によって油圧
モータを停止させた。油圧モータの回転数は流量制御弁で調節されるが,5,16cm/回転のギア
モータで回転させ,減速器で減速させたため,窓の關閉速度は11Cm/sで窓の開閉に約5秒を
要した。側窓の開閉は自動開閉とし閉窓状態を正常とし,次の条件で開閉することごとした。
1,アキュムレータに必要の圧油が蓄えられていなければ開窓しない。なお貯留量はアキュムレ
ータ圧力を電気抵抗ひずみ計で計測し貯留量を推定した。2強風がハウスに吹き込むことを避
けるために風速が6m/s以上の場合は風上側は開窓しない。3.午後5時以降は閉写する。こ
の実験は油圧モータによる側窓の自動開閉を目的としているため,この論理には作物栽培一L改
善すべき点もあろう,しかし秋冬期のトマト栽培中に行なわれた実験であり,特に障害は認め
られなかった。この制御には8ビットボードマイクロコンピュータを使用した。ここで風速,
風向等の気象データは気象観測装置の信号を入力し,アキュムレータ圧力には電気抵抗ひずみ
計を,ハウス内温度には入力レベルの点からサーミスタを使用した。
3)実験結果
窓の自動開閉については順調に行なわれた。ここで,油圧モータは5,16c㎡/回転のギアモー
タを使用したため,体積効率を0,9として開窓或いは閉門に約200c㎡の圧油を必要とする。こ
れは窓の開閉に要する仕:事に比較すると,アキュムレータの最低使用圧力が100kgf/c㎡であ
るため,やや大きい値になるがこれは次ぎの理由による。ハウスではトマトを栽培中であるた
め,確実な開閉が必要であり単純に1枚の窓の開閉に要する仕事と開閉引数の積だけでは決定
できず,余裕を見込まなければならない。しかしこの余裕はハウスによっても異なり,また風
圧を受けることによって窓開閉に要する力の増加程度が不明のため安全側を採用した。この実
験ではサボニウス風車で変換された油圧を使用しているが,前述のプロペラ風車を組合わせた
油圧変換装置を使用する場合は50kgf/c㎡程度の低い圧力の圧油で動作させなければならない
ことを考慮したためである。
このほか天窓の開閉,防除用ポンプの駆動及び運搬台車の運転に必要な圧油所要量を試算し
た結果を表8に示す。この数値はかなりの余裕を見て試算したものである。アキュムレータに
圧油が満ちた場合リリーフ弁を通して油をタンクに戻しているが,このような場合にはタンク
に戻す堅肥でかんがい水の汲み⊥げ等を行なうなど余剰エネルギーの有効使用の為の場を検討
する必要があろう。
表一8. 1日当たり所要圧油図心定値(200㎡ガラス室)
Table 8. Estilnated required hydraulic oil volulne per a day at 200㎡green house
Operation
1.
2.
3,
Flow rate(
Spraying
Conveying
尼/min)
No. of
4
Open and close of
operation
Required volume〔尼)
1
6,
0
0.
7
4
1,
3.
2,
4
4
1,
1
4
2,
0
10,
4
side window
4,
Open and close
㎡
3,
top window
Total
一85一
w 摘
要
この研究は非定常的でしかも希薄な風エネルギーを油圧に変換し,窒素ガスを圧縮すること
でアキュムレータに蓄え,これを動力源として必要な時に使用しようとする機器を關発するこ
とを目的としている。風車の動力利用については,風速の3乗に比例する風エネルギーと油圧
機器の整合が重要となる。利用については種々の対象があるが施設園芸を対象としハウスの天
堂窓の自動開閉による温度制御,防除機用ポンプの駆動及び運搬台車の駆動等を前提とした。
1.プロペラ風車で油圧ポンプを回転させ,純機械的自動制御機器で高圧の圧油を得る装置
を開発した。油圧機器全体の総合効率は条件によって異なるがほぼ40%で,風エネルギー
に対するプロペラ風車の効率を45%とすれば風エネルギーの油圧変換効率は18%となる。
本機を10mの高さに設置し安全性を中心にした改善策について知見を得た。
2.サボニウス風車と油圧ポンプを組合わせた変換装置を開発した。風車軸にフライホイー
ルと油圧ポンプを取り付け,フライホイールにエネルギーを蓄えて一定回転をしたら油圧
ポンプを駆動して圧油をアキュムレータに圧送し蓄える。効率は2%余りと低いがこれは
サボニウス風車の効率が低い(最高で16%)ことと油圧ポンプを低速で回転させた時に容
積効率が極度に低一ドすることによる。本機は低風速まで維持管理に気を配ることなく安定
して使用できる特徴.を持ち,3ケ年故障もなく運転を続けた。非線形要索があるため風車
を含め個々の部品の特性調査からデジタルシミュレーションを行った。これによって,コン
トローラを改善することにより,約4%まで効率を上げ得ることが判明し,また各地の風
の状況に対して変換貯留できる圧油の量を試算した。この外サボニウス風車を使用して可
変容量ポンプ型油圧変換装置と定容量ポンプ可変速油圧変換装置を試作した。
3.利用に際してはハウス側窓の開閉による温度環境の自動調節を行い,また他の作業に必
平な圧油量を試算した。
文
献
1)長町均q980)1風エネルギーの機械的利用,施設農業への新エネルギー利用「太陽,厘U
編,フジ・テクノシステム(東京)
2)奥谷順一(1981):地域エネルギーとしての風利用,日本風エネルギー協会第3回エネル
ギー利用に関するシンポジウム,65−69
3)喜多康雄G980):風力の熱変換,施設農業への新エネルギー利用「太陽,風」編,フジ。
テクノシステム(東京)
4)牛山泉,外(1980):小型風車ノ・ンドブック,パワー社(東京)
5)Wilson, R. EりLiassaman. P. B. S.(1974):Applied Aerodynamics of wind
Power M achines. NTIS U. S, Dept, Commerce(Washington. D. C.)
6)口本アキュムレータ㈱:Pleated−Bladder Type Accumulator資料
7)坪井八』十二,他(1968):農業気象ハンドブック,畔引堂(東京)
8)竹中利夫,他(1970):油圧工学,手早堂(東京)
9)松尾陽,仙(1980) :空調設備の動的熱負荷計算入門,日本建築設備士協会(第京)
一86一
Summary
The purpose of this research is to develOp the convertinq
method of wind enerqy セ。 hydraulic enerqy and to stOraqe the enerqy
in an.accumulatOr with compressirlq nitroqen qas, as an aqricultural
power source for cQntrollirlq of the qreerl house temperature and
farm work such as openinq and closinq of top and side windows of
the house, apPlication of aqricultural chemicals and runninq Of
smal:L qantτy for transpor七. Wind.energy is in propor七iOn tO three
powers of wind velOcity, so matchinq of the wind enerqy and the
hydraulic system is important.
1. Ade▽ice to convert of wirld enerqy to hydraulic enerζy by
an automatic control de▽ice was developed. And this device was to
obtain effectively hiqh pressur6 hydraulic oil frOm the lower pres−
sure oil converted with the windmill and a hydraulic pump。 TQtal
efficiency of the hydraulic system was 40 percent and an efficiency
of propeller type windmill (dia。 of 4 meters) was abOut 45 percents,
so tOtal con▽ersion efficierユcy was estimated as about l8 percents・
The windmill was set on the tOwer of lOm heiqht。
2。 A conversiOn syst二em with a Savonius windmill (3m × 2。5m)
and hydraulic system was deveIQped。 A hydraulic pump and a larqe
flywheel were installed on the vertical axis of the windmゴ.ll. A
simple electronic controller controlled an electric maqnetic direc−
tiOnal contrOl val▽e to chanqe the flow direction of hydrau!ic oil
that pressured by the pump。 Once enerqy was stored in the flywheel
and the windmill rotated certain anqular, t二hen hydraulic pressu]ぐe
oil flOwed and stored in the accumulator。 Efficierlcy Of erlerqy
conversion was about 2 percents・ This low val}ユe was by reason
that efficiency Of the Sa▽onius windmill was ▽ery lQw and ▽olumet−
ric efficiency of a hydraulic pump was low in a case that re▽Olu−
tional speed of the pump was slow。 But this system Operat:ed
smoothly from lOw wind velocity to hiqh and the maintenarlce was
almost free。 Arly troub工e didnlt Occur for three years・ This
一87一
system had nonlinear elements,. so the characteristics of the system
was s仁udied by digital simulatiOn。 By the simulatiOn it is obviOus
that efficiency of the system is able to improve Up to 4 percents.
Stored volume in the accumulatOr at ▽ario貝s regions in Japan was
calcul昌ted・ By the Sa▽onius wirユdmill, Other two enerqy cOrユversion
systems thQse were variable volume pump type and variable speed
type with a fixed volume pump type were built as trial.
3。 Automatic temperature control of green hOuse with openinq
and clOsinq the side windOws was dOne, usinq stored hydraulic oiL.
Required vOlume of the hydrau:Lic Qi工 fQr few farm work was calculated
as trial.
一88一
3.風力の電力変換利用技術
Utilization of Erectric Erlergy converted
from Wind Energy for Greenhouse Heating
内藤 文男・大原 源二
Yasuo NAITO, Genji OHARA
1.闘
的
風車を用いて風エネルギーを電力に変換し,これにより温室の暖房を行うシステムを設計・
開発するに当り,必要な請元値を明らかにしょうとした。
その内容は,風車設置地点における階級別風速出現頻度と風エネルギー賦存量(以下,風エ
ネルギー量),風車の発電効率(風車の翼回転面積当り風エネルギー量に対する発電量の割合)
と発電量,風車電力利用温室暖房システムにおけるエネルギー収支,並びに,風車発電装置の
経済性についてでφる。なお,経済性については,風車発電装置の年経費を年間発電量で除し
た電力単価で評価する。
合わせて,安全対策に係るシステムの保守・管理上の問題点を明らかにしょうとした。
2,実験方法
1)・実験実施場所
愛知県知多郡武豊町,野菜試験場施設栽培部圃場
2)実験実施期間
GEPにおいて,標題の元に実験を実施したのは1983,’84年の2ケ年である。しかし,供
試風車は,科学技術庁の風トピア計画(1978,’79)により当部に設置され,以後引きつづい
て実験を行ったので,この結論も合わせて報告する。
3) 風エネルギー量の測定
プロペラ型風速計(コーシンベーンK:L−111型)を地⊥10mの高さに設置し,1分間平均
風速を連続測定・記録(打点式記録計使用)した。これから1m/sごとに分級した各風速の期
聞出現時間を求め,次式により期間当りの風工エネルギー量を算出した。
・・一Σ・・着・A・・………・………一……・一……・………一………………・・…・……(・)
;Σ:n。0,6125V3(kWh/㎡。期間)……………一・・……………・…・・……・…・(2)
Ed:期間当たりの風エネルギー量(kWh/㎡)
ρ:空気密度(k9・S2/m4)
野菜試験場 施設栽培部
一89一
A:風向に直角な面に投影される翼の回転面積(㎡)
V :風速(m/s)
n :階級別風速の期間内出現時間(hr)
4)供試風車発電装置の仕様
表一L風車の仕様
Table 1. Specification of wind power generator
諸 兀
種 類
富 士 風 庫
山 田 風 庫
型 式
風
水平軸プロペラ型
ブレード直径(m)
5.2
4
ブレード枚数・材質
3.鉄
2.木
x持塔の高さ(m)
P0
P0
支持塔の構造
可倒式ポール
コンクリート柱
定格風速(m/s)・定格
6. 750
7. 1000
出力(W)
車
定格回転数(rpm)
140
210
起動風速(rn/s)
3
3.5
耐風速(m/合)
60
100
ピッチ可変の有無
有
無
過回転防止対策
フエザリング方式
姿勢制御方式
種 類
誘導子型三相交流
直流分巻
発
整流方式
全波整流
皿
電
定格客量(W)
750
1000
機
定格電圧(V)
29(直流)
29(直流)
風車との連結方法
ギ ヤ
直 結
種 類
ベント型ペースト式鉛電池
1000
ベント型ペースト式鉛電池
1000
電熱温風機600,1200W
750Wヒーター
電熱温風機600,1200W
2500Wヒーター
蓋
田電池
容量(Ah)
負
暖 房 機
ダミー負荷
荷
L「闇.−」」頃「」」}一一冒−}一
表一1に表した2基の風車を供試した。風車の設置高は翼の中心位置を地上10mとし,2基
の1鱒間隔は55mで東北の紐i・配置した.なお,地上の制櫨中i・は発電機麗外画8),
発電機直流電流計,発電機回転計,直流電圧計などが装着されている。
また,風車電力は,ベント型ペースト式鉛蓄電池に蓄電される。容量は1000Ahとした。電
池電解液の比重と電池電圧を常時検出し,過充電状態になると比重・電圧検出器のいずれかが・
作動して,風車電力はダミー抵抗側に流れる。また,過放電状態になると負荷が自動的に遮断
されてそれ以上の放電を防止し,電池を常に適正な状態に保つよう,自動制御した。過充電,
過放電防止のための蓄電池電圧は,それぞれ,25Vと22Vに設定した・
5) 湿室の仕様と暖房方武
間[=12,52m,奥行3,56rn,軒高1.30 m,棟高1,94 m,床面積8.97㎡,保温比0,34の小
一90一
型ガラスー重温室に,トマト,インゲン,メロンを栽培した。電熱温風器(1200Wと600W
の2段切替え)に風車電力を通電してジュール熱による暖房を行い,不足熱量は1kw容量の
空気一空気式ヒートポンプを商用電力で駆動して補った。なお,システムの総合効率(温室暖
房に消費されたエネルギー量の風エネルギー量に対する割合)を高める一つの方法として,こ
のヒートポンプとは別の空気一水熱交換ヒートポンプの成績係数を測定した。
暖房期間,並びに,暖房設定温度は,トマトが1月1日∼3月31日,8℃,メロン10月1日
∼12月31日,20℃,インゲン1月1日∼3月31日,15℃とした。
3.結
果
1)武豊における風エネルギー量
ア 風口特性
武豊における階級別風速の年間出現度数(%)は図一1(1979年)にその一例を示したとお
りであった。1∼2m/sの風速の出現度数が最も多く年間25%(2,190時間),ついで,2∼
30
睡翻 年 間
k二ニコ 日平均風速3m/sの日
20
10
0
0 1
2 3 4
∼ ∼
1 1 ∼
1 2
3 4 5
5 6 7 8
∼ 1 ∼ 1
6 7 8 9
9
∼
10
10 12 14
1 1 1
12 14 工6
16
∼
18
18 20
1 ∼
20 22
風速(m/S)
図一1,階級別風速の出現頻度分布(1979.武豊)
Fig 1, Apperance frequency distribution of classfied wind velocity
(1979.Taketoyo)
一91一
3m/sが約20%と多かった。ちなみに,1979年度の年平均風速は2,8m/s,平年値は3,1m
/sである。
同図には,口平均風速が3m/sの日だけを損卜して,その階級別風速の出現度数を並記した
が,風速分布の幅は,年間のそれに比べると狭いけれども,8∼9m/s域まで広がっている。
最多出現風速は,夏期は概して1∼2m/s,冬期は2∼31n/sであった。
イ 風況曲線
ある期間にある風速以土(又は以下)の風が何時間出現するかを示した図は風況曲線と呼ば
れている。。の蹴曲線はワイプ、レ分布獄6)でよく表す。とができた。即ち,年間,ある風速V
の現れる確率密度関数f(V)は次式で示された。
・(・)一耀(義)L如一’・e×P{一(翫)L40}……………・…一……一・・…)
式・1・1の数樹.40は形状定数(k)1・%.25は尺度定数(、)}・相当するものである。kの値は,
日平均風速が1∼2m/sの場合には0,96,3∼4m/sでは1,43,7∼8m/sでは297と,
風速の増大に伴って大となった。また,k値が大となるに従って階級別風速の出現度数分布は正
規分布に近くなった。
ウ 風エネルギー量
表一2に1979年から1984年までの問の月・年別風エネルギー量(kWh/㎡)を表した。6
ケ月平均の月別値は,3月が最多で61,2kWh/㎡・Inonth, 7月はその約%の20,3kWh//
㎡・monthで,冬期に多,夏期に少という季節変化を示す。また,年間では6ケ年平均で472
kWh/㎡・yearであった。
口単位に求めた風エネルギー量の月間変動係数(c・v%)は56%から248%という大きい値
表一2.月・年別風エネルギー賦存量
Table2, Monthly and annual variation of wind energy
(kWh/㎡)
年\月…… s』.7一…急’‘4 5
6 7 8
9 10 11 12 ,年合計
1979 39.8 45.5 73、2 47、8
38,7 10,7 13.6 11.6 22,8 34.2 29,6 26,6 394.1
1980 61.1 58.7 77,7 57,l
45.1 159 20.3 120 22.7 32.3 26.4 84.1 513.4
1981 80,0 52.4 45.0 61,2
53.0 21.5 23、3 30.4 27.3 37.9 34.5 41,2 507.7
1982 65.3 542 68.1 52.O
30.6 25.2 20.7 36.4 37,5 20.6 36.2 37.1 484.4
1983 51.8 65.1 57.9 34.7
43.7 36.5 20.9 428 18,9 37.0 40.3 40.1 489.7
1984 51.7 65,9 45.4 49.3
34.4 26.1 23.2 25.0 16.6 31.4 2α5 51.8 441.3
周過 58.3 57.0 61,250,4 40.9 22.7 20.3 26.4 24.3 32231.3 46.8 471.8
がみられた。c・vが最も大きいのは9,10,月の台風襲来の多い月であり,反対に小さいのは2
月であった。これは,北西の季節風が卓越する時期である。なお,日積算日射量の月間。・vが
28∼55%の範囲であったことと比べると,風エネルギー量の変動が極めて大きいことが伺われ
る。
3,10)
1日当たり風エネルギー量の変動周期をスペクトル分析
により求めた結果は図一2のとお
りであった。ただし,この解析は標本数が512日と少ないことから,30日を超える長期成分に
ついては信頼性が乏しいので,図からは省略した。細図から9,4日周期のところにやや大きな
ピークがみられるが,それ以ドの周期のところにもいくつかの小さいピークが認められた。こ
れらについては,更に長期間について,あるいは季節を限って再検討することが必要である。
一92一
エ キューピック因子
x[
ある時聞について,時々刻々の風速の3乗
値を平均した値V3の,その期間の平均風速の
撃撃
3半値(V)3に対する比をキューピック因子
(f,)という4).期蹴!日とした場合のf、は,
∼
一陰一,一,
〒
図一3のとおりで,日平均風速が1∼9m/s
聖
一
宵
の範囲では,いずれの風速においても1より
大きく,かつ,風速の増大に伴ってfcが小さ
。
20
E
109 8 7 6 5 .婁 3 2
くなる傾向が認められた。即ち,日平均風速
Vdとfcとの問には,
周 期(dayl
fc鶏2.347 Vd一α185・・…………・…(41
図一2,風エネルギーの変動スペクトル
Fig,.2, Power spectrum of wind energy
という関係のあることが認められた。なお,
図から,特に低風速域でfcの分散が大きいこ
variation
とが伺われる。同じ日平均風速の日でも,日
間風速変動が大きい場合にはfcが大となった。ま起,ワイブル分布の形状定数kとfcとの関係
は反比例的であり,kの増大に伴ってfcは低下した。このことは,階級別風速出現頻度分布が
正規曲線に近づくに従ってfcが小さくなり,1に近づくことを示している。なお,度数分布が
5
o o
o
fc=2.347 V冠一〇・ユ85
②
“
o
り りり
⑦ 。。、・o。8 8 。 o
りり り
。18,・。亀ol言∵ ・
り ねり コ ら
コ リ リ リ リ
;r;l!liiil巽li;lll
o o o
o
り
.t議
o
o
.。
o o り
。。:。・
`.。
o
o
・§0 8㌔ ・塊
1
0
2
4
6
ぎ
Vd(m/s)
図一3. 日平均風速とキューピック因子との関係
Fig・3. Relationship between mean wind velocity and cubic factor
正規曲線に近づくのはkの値が3.0附近であり,この時の年平均風速は10m/s以⊥の場合で
あった。従って,武豊のような年平均風速が3m/s程度の地点では,単に年,あるいは日平
均風速がら風エネルギー量を算出したのでは,著しい過少評価を招来することになるといえよ
う。
一93一
2)風車の発電二品
ア 発電機の回転数と出力
供試風車の一つである富士風車について,発電機の回転数と出力電流との関係を検討した結
果は図一4のとおりであった。図画の○実線で示した線は,ベンチテストにより求めた回転数
一出力曲線であり,鯵は,現場に設置した状
態で測定した両者の関係を示したものである。
r
風車発電装置では風速に対応した適正回転
1./.
速度で風車が運転されるよう,励磁調整器に
30
2
)
なお,これらは,電圧23Vの蓄電池と,0.7
Ωの抵抗を用いた負荷運転時の値である。
より発電機励磁電流を調整して,その出力を
罐
制御している。図は,実際使用の場合にも,
20
設計どおり励磁調整器が正常に作動したこと
’
6
を実証するものである。
!
’
’
’
なお,同情に併記した△点線で示した線は,
4
鯉10
’
後述する風車のスリップリングの故障に伴う
’
1
出力電流の異常低下時に,励磁調整器の自動
5
5
電流制御回路をミス調整した結果生じた現象
である。これは,スリップリング修理後,正
常状態に複元した。
0 500 1000
発電機回転数(rpm)
イ 風速と発電効率との関係
図一4,風車発電機の回転数と出力との関係
発電効率は,定常風下におけるものと,実
際に風車を設置し,変動風下における値とを
Fig.4, Relationship between rotating,
number and out put of wind
測定した。
power generator
O−O 定常風.ド
定常風下の発電効率は,風洞内で得られた
欝 変動風下
△…ム スリップリング故障時
た場合の出力電流・電圧から発電量を求めた
風速と回転数との関係と,一定回転数を与え
ベンチテストの結果とを組合わせて算定した。
富士風車についての測定結果は,図一5の
とおりで,発電効率は風速3.9m/sの時最大で42%を示した。風車の理論効率の最大値は
59,3%,また,風車発電装置の機械伝達効率,発電機効率はそれぞれ95%,90%と言われてお
り,これから求めた風車発電の最大効率はおよそ50%となる。これに比べ,富士風車で得られ
た最大発電効率はかなり良好な値と考えられる。
他方,変動風下の発電効率は日単位に算出し,これと日平均風速との関係を図一6に表した。
図から,同じ平均風速の日でも効率はかなりの幅に分布することが伺われる。また,最大値は
約22%で定常風下でのそれと比べて小さい。このことは,平均風速は同じでも,階級別風速の
出現頻度分布が日によって相違したことによるものである。
日単位で算出した発電効率を月ごとに平均した結果は,表一3のとおりであった。概して6
∼8月に大きく,冬期はや\低くなった。また,年平均値は両風車ともほぼ等しく,12.3∼
12.4こ口あった。
ウ 月別発電量
山田風車の月別発電量は図一7のとおりで,風エネルギー量の月別変化と密接に関係してい
る。月別値の最多は,富士風車が148kWh/month,山田風車が93 kWh/month,最少はそ
一94一
含
三
早
A発電効率
φ \、 回転数
1 ㌔ 。/②
1 \ /
1 \。。/⑳ 出力
)
1/ζ襲ビ 君
8
・
§
20
・ ,
. o
● , ●
怐@ ,, 齢
(
鯛1ンら、3・’1・il∴’1=∵へ
X ,
)
Ao、
X 響
@■ o
E’●6
@。 ♪、 ワ
@● ♪、 ●
@ . 、
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レ’
@ ● 、
● 、● . 、 ,
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@’
ロ ヘ
回
E ◎ .
@ 9
ロリ ノ へ
ロバ つコ
●,
.
・
”・’ .言’,
鯉
@1 、
9 ●
、
潤@、
@ ● .
1
曹 ,
A、 .
@㌦:r3 ,軸●
@、
@ 、
@ 、
7
■,
、
’
r置.
03 4 5 6 7 8
風 速(m/s)
’
’
00
,
図一5.
定常風速と発電機の回転数,出力,
発電効率との関係
Fig・5.
Relationship betw6en constant
図一6,
2 4 6
日平均風速(m/s)
日平均風速と発電効率との関係
Fig・6,
wind velocity and rotating number,
Relationship between daily mean
out put, generating efficiency of
wind velocity and generating ef−
wind power generator
ficiency
月・年別発電効率
表一3.
Table 3.
Monthly and annual variation of generating efficiency
(%)
年\月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年平均
1979 13.6 13.4 11.7 15.2 11.3 11.2 12.4
i⊥11980 12.4 13.8 12.9 15.4 14.8 19.6 19.6 17,2 16.3 13.8 12.7 12.3 14.4
E日1981 12.3 12.0 12.0 13.9 10.2 8.0 9.5 11.4 12ユ
」風1982 15,1 124 12.1 11.4 12.9 11.3 12.4 7.4 10,1 10.2 11.2 11,3 11.5
車1983 1!.5 11.9 10,9 12.O l1.3 12.8 12.1 12.6 9.8 12.1 11.4 11.5 11.7
1984 12.0 12.2 12.2 12.1 11.7 142 12,6 10.7 9.8 11、7 11.2 123 11、9
.平均 12.7 12,3 12.0 12.7 12.7 13.913,7 12.2 10.9 11.5 11.5120 12.4
富
嵐平均1・・11.19112411.71・41・114512・9911.81211・・
車
れそれ64,33kWh/monthであった。また,年間発電量は富士風車が1,187kWh/year,山田
風車733kWh/yearであった。両者の差は翼の回転面積の差にほぼ比例している。
一95一
3) 風車電力利用温室暖房システムのエネル
風エネルギー量
隠題
@
lQ
犠一雨
〉
ミ\
茎go
A
\発電電力量
鷺・・ 、
、
期間中の2台の風車の翼回転面積(33.8㎡)
画ど
当りの風エネルギー量,発電量,負荷消費電
4
力量,並びにダミー負荷消費電力量は,表一
被/呵’辱、
’
冨
2台の風車を用いて温室を暖房した。暖房
・民淵
20H酢
、過!!㊧、
平心収支
発電効率1
§
砥 \
・. ・か” 1
、 ム
、 \
のワ
璽ム… ,凸!
・,,弁諏⑫’
、
畠、 /幽、
、》
、留ノ
遍
2)
0腰
12345678910↑112
月
4に表したとおりであった。
発電量に対する負荷消費電力量の割合は,
トマト暖房期間中が66.4%,メロン60.2%,
インゲン66,2%,3作物平均では63.1%で
あった。また,風エネルギー量に対する割合
図一7.風エネルギー量,発電量,
は平均6,8%となった。発電量の全量が負荷
発電効率の月別推移
で消費されなかった原因の一つは,蓄電池容
Fig.7. Monthly variation of wind ener−
量が不足したため,ダミー負荷で消費された
gy, amount of electric energy and
分(3作物平均で発電量の21,8%)が多かっ
generating efficiency
たためである。特に,昼間,暖房不要時にダ
表一4,風車電力利用温室暖房システムのエネルギー収支
Table4. Energy budget on glasshouse heating system using by wind power
generator
腎∼
作 物
平 均
トマト
メロン インゲン
風エネルギー量(kWh)
5,357
3,056
6,676
発 電 量(kWh)
524
334
負荷消費量(kWh)
201
775
485
65
122
商用電力消費量(kWh)
348
162
544
645
1,136
発 電 効 率(%)
9,8
10,9
11.6
10,8
負荷/風エネルギー(%)
6.5
6,6
7.3
6,8
ダミー負荷消費量(kWh)
負荷/発電量(%)
負荷+ダミー負荷/風エネルギー量(%)
負荷十ダミー/発電量(%)
66,4
60,2
62,6
63.1
9,5
8,7
9,1
9,1
97、3
79,6
78.6
85,2
ミー負荷で消費された電力が多くなった。
他の原因は,蓄電池の自己消耗分と制御装置内で消費された電力量(14%)が比較的多かっ
たためである。ちなみに,商用電力と風車電力とを合わせた全負荷消費電力量に対する風車電
力消費量の割合(負荷充足率)は,3作物平均で31%と低い値を示した。このことは,温室暖
房負荷(電力量表示)に対して風車設備容量が過少であったことを示している。
ダミー負荷は蓄熱水槽内の水温上昇に消費された。この熱も暖房に利用するとすれば,発電
量の82%が利用可能なエネルギーとなる。しかし,電熱温風機も投込みヒーターも,共にジュ
ール熱として電力を熱に変換する方式であり,風エネルギーを最終的に熱に変換して利用する
には効率が低い。こ.れに対し,風車電力によりヒートポンプを駆動して熱を取出し,これを暖
房に利用するならば,風エネルギーの利用効率は向⊥する。そこで,空気一水熱交換ヒートポ
ンプの成績係数を検討した。その結果は図一8のとおりで,気温一出湯温度差を25℃とした場
一96一
合の成績係数は2,9という値が得られた。
、⑰
3
空気一水蓄熱ヒートポンプを用いた場合に
\・、豊囎
は,昼間暖房不必要時にも風エネルギーを熱
’㊥
島
に変換して蓄熱できる利点がある。即ち,ダ
⑰
O
O
㊥ ④
⑳
ミー負荷で消費された電力もヒートポンプの
⑲\
駆動電力として利用できるので,風エネルギ
2
15
20
25
30
35
ー→ d力→熱変換の効率(総合効率)は,お
40
よそ26%に向⊥することが期待される。
図一8, ヒートポンプの出湯一空気温度差と
4) 風車電力のコスト
供試風車の年経費を年忌発電量で除した値
COPとの関係
を風車電力の単価(円/kWh)とし,この単
Fig.8. Relationship between out let
価と年平均風速との関係を検討した。風車の
water−irl let air temperatUre
建設費は表一5のとおりで,富士風車は690
difference arld COP pf heat
万円,山田風車151万円である。また,年経
pump
費は,装置の耐用年数を,回転体10年置発電
表一5,風車の装置費
機と支持体を50年,蓄電池を5年とし,償却
Table.5、 Cost of wind power generator
後の残存価格を建設費の10%として算出した
(単位;千円)
年償却費に土地代,管理費を加えたものとし
風車の種類
項目
た。これは,富士風車が69.3万円,山田風車
富士風車 山田風車
1)
20,9万円である。他方,年平均風速を異にす
回転体
1,300
機器装置
700
2)
3)
発電体
支持体
4)
諸経費
400
蓄電装置
土地代
合 計
100
る地点における発電量は,風速3m/sの地点
345
の値は本実験で得られた値を,他の年平均風
1ユ)
速の地点のそれは,資源調査所資料
と,本
1,700
315
実験で得られた発電効率とを用いて算定した。
1,400
300
検討結果は図一9に表したとおりである。
!,300
350
図から,年平均風速3rn/sの地点における風
100
100
車電力の単価は,富士風:車が584円/kWh,
山田風車285円/kWhと,商用電力のそれに
6,900 1,510
注1)ベレード,ハブ
2)ギヤボックス,シャフト,ヘッドブ
比べると極めて高額であることが伺われる。
レード
ほど低額となることが明らかである。
3)発電機,制御器
風車電力単価の低減には,装置費の軽減も
4)組立て,塗装,輸送等
重要であるが,同時に,風車設置場所の風速
しかし,電力単価は年平均風速の大きい地点
の相違が大きな影響を与えることも明白であ
る。なお,同図には,蓄電装置の有無別単価も試算した結果を並記したが,風車電力単価の申
に占める蓄電装置のコストが大きな比率を占めていることが伺われる。これについては,風車
電力の商用電力への直送方式による電力単価の低減対策を検討することが今後の一課題といえ
よう。
一97一
600
5)風車利用システムの安全対策
ア 風車の過回転防止対策
(500
ぶ
風車設置以降7年を経過したが,両風車と
\400
なかった。乙れは,強風時における風車の過
も,回転翼の破壊という重大事故は全く生じ
彦
ぷ
罵
回転防止対策が有効に作動したためと考えら
300
鯉
200
100
れる。
、
、、
\
富士風車の過回転防」上法は,フェザリング
遍・、
機構(遠心力による翼のピッチ変更)による
\\塾
図一10のとおりであった。図から,風速がほ
、、、血、
ぼ8m/s以上では回転率増大が緩やかとな
∼盒一一__r 喝軸一軸
り,かつ,周速比(翼先端速度の風速に対す
ものである。この作動状況を測定した結果は
0
3 4 5 6 7 8
る比)が低下しており,強風時の過回転防止
年平均風速(m/s)
は,ほぼ適切であったことが伺われる。
図一9,年平均風速と発電コストとの関係
他方,山田風車は姿勢制御方式(アップ式
Fig・9, Relationship between annual馳
とも呼ばれる),即ち,強風時には翼回転面
mean wirld velocity and generat−
を上向きに偏向させて受話面積を減少させ過
ing cost
回転を防止する方式である。供試機では,風
含蓄電装置 除蓄電装置
速がおよそ5m/s附近から角度が変り,7∼
富士風車Cトー一一一く) 鱒……_...鯵
8m/s以上では水平となって回転は極めて
中皿風車△一一一一一△ 盒…………盒
緩やかとなった。ただし,この状態でも僅か
ながら回転するため,いわゆるヘリコプター
効果によって方向舵の風向に対する角度が変わり,かつ,風速,風向の変動に伴ってフラッタ
リング現象を生じた。そこで,破損防止のため,台風時には,翼と方向舵支柱をロープで固定
して風車の回転を完全に止めるようにした。この作業は塔に登って行う必要があり,作業の安
全性からみて好ましい対策ではない。
イ 過回転防止対策に伴う発電効率の低下
強風時に翼の回転を停止させたり,あるいは,回転数の増大を抑制することは,安全性の面
からは極めて重要な対策である。しかし,反面,このことは,強風時の風エネルギーの利用を
阻害することになり,風車の効率面からは好ましくない。
そこで,富士風車について,フェザリング機構により生じる有効風エネルギー率(全期エネ
ルギー量に対する実際に利用可能な風エネルギー量の割合)の変化と発電効率との関係を検討
した。その結果,有効風エネルギー率は,年平均で65%,50%以ドの時間が23%,20%以下が
4%出現することが明らかとなった。更に,有効風エネルギー率の大小と発電効率の大小とは,
図一11にみられるように,ほぼ直線的な比例関係があることが認められた。
以上のことから,風車の発電効率を増大させるには,発電を停止する風速(cut out風速),
あるいは,フェザリング開始風速を大きくするのが有効であるといえよう。ただし,これには,
翼回転数の増大に相応した風車の耐風強度の附加が必要である。ただしこのことは,装置費の
増大を伴うことが懸念されるので,風車電力の単価を一つの指標として,経済性と安全性のバ
ランス点を明らかにすることが肝要である。
一98一
20
..㌧’・
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らど り
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4 8 12
16 O ’
O
周 速(m/s)
50
lOO
有効風エネルギー率(%)
図一10.風速と回転翼の回転数,
図一11.有効風エネルギー率と
周二三との関係
発電効率との関係
Fig.10, Relationship between wind veloci−
Fig.11. Relationship between ratio of
ty and rot at ing number, tip speed
wind energy effective and gener
ratio of propeller
ating efficiency
6)保守管理上の問題点
山田風車については,発電機のカーボンブラシの交換,及び,台風時の回転停止のためのロ
ープによる固定以外は保守は全く不必要であった。
他方,富士風車は,スリップリング切片材の材質,及びその取付けバネカが弱かったため接触
不良が生じ,月平均発電効率が5%台に低下したことがあった。このため,構造の見直しと再
設計を行い改良した。また,風車の回転を増速する歯車が損傷したので,歯幅を大きくし,更
に,軸受サイズを大きくするなどの改良を加えた。これらは,供試機が試作機段階のものであ
って,なお改良すべき点が残されていたことによるものである。
なお,このような発電機のスリップリング部の故障を無視して励磁調整器の自動電流調整部
の設定値,風車回転計の零点調節,及び,回転計の直列抵抗を調整し直したため,自動電流調
整動作開始回転数が異常に低くなった。このため,蓄電池への充電電流よりも界磁コイルに流
れる放電電流が大きくなった。更に,制御盤面の電流計のハンチング現象が生じた。これらの
異常は,スリップリングの改良後調整し直してiE常状態に復元した。要するに,風速と回転数・
発生電流などを常時監視し,異常発生を速やかに発見して,まず,制御部の点検,ついで,発
電機本体の点検を行うなどの監視・保守対策を講じることが重要である。
この他,風車回転時の異常音に注意することも肝要である。富士風車は低速回転時(風速1
∼2m/s以下)に「ゴトン」という異常音が発生した。これは,プロペラハブ内のブレードシ
ャフトとケーシングの間に隙間があり,20rpmの回転数以.下ではブレードの自重よりも遠心力
が小さくなって下にずれ動くため,音が発生していることが判明した。これについては,ベア
リングカバーを改善して,隙間をα2mmと小さく修正した。
以上のように,安全運転を行うについては,可能な限り,目と耳による異常発生を監視・発
見することが重要であることを体験した。
一99一
4.総合考察
風エネルギー利用上の難点の一つは,その変動が大きいことである。風エネルギー算定の基
になる風速の変動周期のスペクトル分析によると,30秒から3分くらいの問に一つの大きなピ
10)
一クがみられる。
このことは,まず,風エネルギー量算定のための風速測定法,つまり,サンプリングの最低
逸聞と個数とに関係する。本実験では,1分間平均風速の連続測定という方法を用いた。この
法から求めた日当たり風エネルギー量と,毎正時ごとに10分間平均風速を測定し,これから日
風エネルギー量を求めたものとを比較すると,最大33%の相違が生じた。また,1日8回,各
10分間平均風速の測定から求めた値とでは最大95%の相違がみられた。これらのことから,風
エネルギー賦存量,更には,風車の発電効率の正確な算定には,風速測定法を十分に吟味する
必要のあることが示唆される。
他方,変動の大きい風況下では,負荷の変動特性に適応した風車電力の貯蔵が必要となる。
同時に,定電圧,定電流の高品位エネルギー源を用いることが,負荷側の機器・装置運転上望
ましい。このため,本実験では,貯蔵設備として,容量1000Ahの鉛蓄電池を用いた。しかし,
蓄電池の電圧変化を22∼25Vに規制したことから,容量が不足した。これを大容量のものとす
ば,装置費の増大を招来するので,蓄電装置・方式の改善が,風車電力利用上重要問題といえ
よう.購池のエネルギー搬は,実弾な最高値は40wh/k、と言われており,)齪できる
ものではない。このことから,亜鉛 ハロゲン蓄電池,あるいは,レドックスフロー型電池な
どのエネ、レギー離が高く,かつ汰規模貯蔵に乱膳電池の醗研究が勘られている㌘
低コスト,高効率の蓄電池の開発・提供が早急に要望される次第である。
風エネルギー賦存量は,通常kWh/㎡として,風向に直角な面積1㎡当たりで表示されてい
る。しかし,地域全体のエネルギー量を表示する方法は,未だ策定されていない。即ち,水平
面単位面積当たり日射量(kcal/㎡)に,地域の面積を乗じる方法に相当するものである。そ
こで,ある地域の全風エネルギー量を表す方法として,ある大きさ(直径Dm)の風車を最大
限設置したと想定した場合,風車により取得できる最大エネルギー量をこれに当てるという方
法が用いられている。しかし,これは,風エネルギー賦存量ではなく,最大上里量を表すもの
である。地域全体の風エネルギー賦存量を表す統一的な方法を早急に策定することが,他の自
然エネルギー賦存量とを比較する上からも重要である。
風車電力による温室暖房システムの実証試験の結果,利用可能なことは明らかであるが,大
きな問題は,風車電力の単価が,商用電力に比べて極めて高額な点である。単価低減対策の一
つとしては,年平均風速の大きい地点(供試風車では6m/s以上)に設置するのが適切であ
る。他の一つは,装置費の低額化を図ることである。供試風車のように,定格出力1kW程度
の小型風車の装置費,並びに電力コストが報告されているが1)それによると,諸外国では,50
万円∼88万円という価格のものが用いられている。更に,これら風車の電力単価も年平均風速
3m/sの地点においてすら40∼60円/kWhと低額である。この程度になれば,我が国におい
ても実用化は左程無理ではないと考えられる。
5,摘
要
風エネルギーを利用した温室暖房システムの設計に必要な風速,風エネルギー賦存量,風車
の発電効率,及び発電量を愛知県武豊町において測定した。その結果概要は以下のとおりであ
った。
一100一一
1,風速Vの出現確率密度関数ノ¶(V)は,次のワイブル分布で表すことができた。なお,
/(・)一耀樹㌦{一(毒)’調}
的中の1.40,3.25は,それぞれ形状定数,尺度定数である。
2. 6年間にわたって測定した年間風エネルギー量は394∼513kWh/㎡の四辺にあり,そ
の平均は472kWh/㎡であった。 層
3,月平均風速並びに月合計風エネルギー量は冬期から春期にかけて最大を示した。
4, 日平均風速Vdとキューピック因子/(c)との関係は
/(c)幕2,347Vd−o」85
という式で表すことができた。
5.定常風下で求めた風車の発電効率は,風速3.9m/sのとき42%と最大を示した。これ
に対して,変動風下で求めた日最大発電効率,燕びに年平均発電効率は,それぞれ,22%,
12,3%であった。
6,風車のカットイン,カットアウト風速を考慮した年間全風エネルギー量に対する風車の
利用可能風エネルギー量の割合は,1979,1980両年の風速データから66%と算定され
た。
7.回転翼の直径5,2mと4,0m,定格出力750Wと1,000Wの2基の風車により発電され
た電力量は,年間,それぞれ1,187,733kWh/yearであった。
8.風エネルギーは最終的にジュール熱に変換され,トマト,インゲン,メロンを栽培した
温室を10月から3月の間暖房するため用いられた。このシステムにおいて,発電量の63,1
%が暖房用として消費され,また,21,8%が蓄電池の過充電相当分としてダミー負荷で
消費された。
9,年平均風速と発電単価との関係を検討した結果,発電単価は風速の増大に反比例して顕
著に低滅することが明らかにされた。風速が3m/sの地点における発電単価は,584,
285円/kWhと極めて高額であり,蓄電装置を用いない場合でも,なお高額であった。こ
れに対し,風速8m/sの地点におけるそれは,商用電力の単価とほぼ等しくなることが
認められた。
引用文献
1)Frost,WりB,H.Long and R.E.Turner(1978):Engineering handbook on the
atmospheric environmental gu.ideline for use in wind turbine generator development.
NASA Tech. Paper,1359.
2) Hennessy,J.P.Jr.(1976):Some aspects of wind power statics.J.ApPl.
Meteorol,16.119−128.
3)花房竜男(1977):スペクトル解析の方法と気象要素のスペクトル,気象研究ノート.131.
1∼60,
4)本間琢也(1979):風力エネルギー読本,PP117∼123.オーム社.東京
5)一色尚次(1970):各種エネルギー蓄積方式の特徴.省エネルーアイデア101選,PP 27
∼33.工業調査会,東京
6)Justus,C.G,W,r.Hargraves and A.Yalcin(1976):Nationalwide assesslnent of
potential output froln wind powered generators. J、AppL Meteorol.15.673−678.
7)金子正夫(1980):太陽エネルギーの化学的貯蔵方法,空気調和・衛生工学.59(9),
一101一
897∼904.
8)西本澄(1979):風車発電機の制御.日本風エネルギー協会,第6回風力エネルギー利
用シンポジウム講要.54−63.
9)牛山泉(1978):風車利用のコスト評価.日本風力エネルギー協会,第5回風力エネル
ギー利用シンポジウム講要,117∼133,
10)Van de Hoven(1957):Power Spectrum of Horizontal Wind Speed in the
Frequency Range from O,007 to 900 Cycles、 J.MeteoroL 14.160.
11)科学技術庁資源調査所(1980):自然エネルギーの地域的利用システムに関する調査.
3∼54.
一102一
Summary
n4easurements Of wind▽elocity, wind enerqy, qenerat二inq effi−
ciency of win.d power qenerator and amount of electric enerqy we∫e
made durinq the years from l979 to l984 at the Tak:etoyo Experiment
Station in Aichi Prefecture。
These data were utilized fOr the planninq of qreen hOuse heat−
inq system usirlg by wind enerqy。 The results so far obtained can
be su㎜arized as follows。
1。 Frequency distribution curve f(V) Of wind velOcity was found
to be affected by the mean wind velocity, and tO be well apProxi−
mated by the fOllowirlq W愈ibulll・s equation。
1.40
1.40−l
]
f(▽)=1.40/3。25(V/3。25) .exp[一(▽/3.25)
where, ▽ is t二he wind velocity, 1。40 and 3.25 are shape and scale
paraIneter, respectively.
2。 Annual total amQunt Of wind energy varied from 394 to 5:L3
kWh/m2 durinq・ix year・and血ean▽alu・w・re f・und t・b・472 kWh/m2.
3. Monthly mean wind ▽elocity and amount of wind enerqy core−
sponded to a curve wit二h distinct maximum in the periOd frorn winter
tO sprinq。
4. The wind dependence of▽alue of cubic factor f(c) was apPrOx一
・・…dby・(・)一・。34▽♂0・’85,・h・・e,▽、・・d…ymea・w・・d・・…i・y.
5。 Maximum qeneratinq efficiency under cOnditiOns of constant
wind velocity was carried out t二〇 be 42∼き at 3。9 m/s wind velOcity..
工n contrast, under conditiOns of ▽ariable wind▽elocity, daily
maximum efficiency and armual mean efficiency were culculated to
be 22宅, 12.3∼き, respectively.
6。 In taking into account the cut−in and cut一〇ut wind velocity
Of wind power generator, wind enerqy effective fOr the wind power
qenerator was evaluated by usinq wind data obtained in :L979 and
1980, and it was shown that the ratiO of effective wind energy to
annual tOtal wind enerqy was about 66∼と.
一103一
7。 Annual tOtal amOunt of electric enerqy qenerated usinq by
twO kind wind power qenerator which ha▽e 5・2 and 4。O diameter
propeller and 750, 1000 W rated power were Obtained to be :L187,733
kWh/year, respectively.
8. Wind enerqy were converted to Jouliar}heat finally, and
utilized for heatinq of qlass hOuse during the period from October
tO March ‡n succession in which cultivated tomato, musk melOn and
kidney bean plants.
On this system, 63。1∼き’of tot二al electric power qenerated were
consumed for qlass house heatinq effectively, and 21。8亀 were con−
sumed for dummy load which was equi▽alent tQ over.charqed amount
。f・t・rage batt・IY・
9. 工twas make clear that the relatiOnship betweerl qeneratinq
cOst and annual mean wind velocity。 Generatinq cost deprecated.
inversely as wind velocity irユcreased remarkdbly。 At the standpoint
of 3。O m/s wind velocity, much high cOst were carried out tO be
584 and 285 Yen/kWh。 E▽erユ thouqh except the uセilizatiorl of storaqe
battely yet二to be hiqh cost were found。
In cOntrast, at the standpoint Of 8。O m/s wind velocity, neary
same cost compare with that Of co㎜ercial electric power were
Obtained.
一104一
皿 動力を主体とする機器の開発利用および複合利用技術
作物環境制御動力としての太陽熱ポンプの利用
Utilization of Solar Pumping System
for Environmental Control of Crops
木谷 収,岡本 嗣男,芋生 憲司,
春原 亘, 坂井 直樹
Osamu KITANI, Tもuguo OK:AMOTO, Kenli工MOU,
Wataru SUNO}IARA, and Naoki SAKAI
闘
的
本研究は,太陽熱エネルギーの農業用動力への有効利用を目指したものであり,特にその中
心となる低温度差熱源の動力変換系のシステム解析,装置の開発,および各種技術の蓄積を目
的としたものである。
動力変換の形式としては,低温度差熱源に対しても比較的熱効率の高いランキンサイクルに
D
よる方法を取り上げ,太陽熱から取り出した動力でポンプを駆動する太陽熱ポンプシステムを
試作し,スプリンクラシステムや地.下パイプライン式作物管理装置などを動かして圃場作業の
2)
一部を自然エネルギーで代替することを目指した。装置の制約や実験条件を越える広範囲のシ
ステム特性を把握することを目的としてシミュレーションによる検討を行い,さらに補器駆動
用の電気エネルギーをほとんど要しない自然循環式太陽熱ポンプの開発を目的とした基礎研究
3>
を行った。
方
法
1)ランキンサイクルによる動力変換
ランキンサイクルは1854年にRankineによって提唱された熱サイクルである。図1に基本
4)
的なランキンサイクルの構成を示す。図において,各点iでの作動流体の比エンタルピーをhl
とすると,
1→2:昇圧ポンプにより作動流体の飽和液を断熱圧縮してエバボレータへ送るこの過程の
仕事量はh2−hl。
2→3:エバボレータ内で作動流体は等圧加熱され飽和蒸気となる。
3→4:過熱器で作動流体は完全に気化し,更に過熱蒸気となる。2→4間の熱入力はh4−
h2。
* 東京大学農学部 農業機械学研究室
**東京大学農学部 付属農場
一105一
3
4
s登
鴬X
罵P
5
罵P
e▽apoどaヒor 蒸発器
SH
ε;upeどheat二eご 過熱器
置X
expandeご 膨張機
CD
corldenε3er 凝縮器
P
=pump ボンブ
2
α)
P
1
図1 基本的なランキンサイクルの構成
Fig.1 Basic elements of Rankille cycle
4→5:エキスパンダで蒸気が断熱膨脹して仕事を行い,出力はh4−h5。
5→1:コンデンサ内で作動流体は定圧のもとで凝縮し,冷却水への排熱量はh5−h1。
したがって,サイクルの理論効率は次式で表される。
・」い差1≡鶏・一〃・)…・…・…一…・…・・一……………・一……………(・)
ランキンサイクルの作動流体となり得る物質は数多く存在する。高温高圧のシステムではほ
とんどの場合水が用いられているが,低渥度差熱源を利用するシステムでは,低沸点流体を用
5)
いることが多い。本研究では,熱力学的特性と安全性を重視してフロンR−114を使用してい
6)
る。R−114は飽和蒸気の状態から断熱膨脹すると過熱域に入るので,外部への放熱がない限
りエキスパンダ内で蒸気が液化することがなく好都合である。
ランキンサイクルによる太陽熱ポンプの構成を図2および図3に示す。システムは基本的に
は集熱部,出力部,冷却部と制御部から成る。集三部では,水などの熱媒により太陽熱を集熱
する。図3で,熱媒は蓄熱槽からポンプでエバボレータとスーパーヒータに送られ,作動流体
に熱を与えた後,ソーラーコレクタで再び加熱されて蓄熱槽にもどる。蓄熱槽は日射量や負荷
の変動を吸収し,システムを安定させる働きをする。出力部は,ランキンサイクルによって仕
事を取り出す部分である。冷却部は,冷却水により排熱を行い作動流体を液化させる働きをす
る。冷却水は貯水槽からコンデンサに送られ作動流体の熱を受け取った後,冷却塔で放熱し貯
水槽にもどる。制御部は,熱媒や作動流体のポンプを駆動し,流量や液位を制御する。これら
のポンプを動かすには通常外部からの電力を用いるが,図3には太陽電池を利用した場合の構
成を示してある。
2)低圧式太陽熱ポンプ
太陽熱機器では集熱コストが大きな比率を占める。そこで最も簡単で安価な平板型集熱器を
用いた低圧ランキンサイクルによる太陽熱ポンプの開発を行った。低圧式の場合には,ソーラ
ポンドや温泉熱水や温排水で動かすことも可能である。
試作した低圧式太陽熱ポンプ実験装置を図4に示す。これは熱媒に水を,作動流体にフロン
R−114を用いており,真空管式平板型集熱器(総集熱面積28㎡)で集熱している。またエキ
一106一
Solar
Solaど coL正ector,
radiat二ion
temperat二ure
temperature
temperature
慣sh T$c
囎ol
一
Coo1.ing unit;
Power outPU亡
冷却部
出力部
Kh
集 熱 部
τ(=
K(=
日頃射一
一
q(:l
↓
qs
Heat
Heat
P
図2 太陽熱の動力変換系
Fig.2 Conversion of solar heat into power
SO1日r cO夏lec仁or
Water pump
→Pumped water
←
↓
Expander
←
Storage [ank
Condenser
一シ
[
Supe=hea仁er
’「[
COQIing ヒ。覧・rer
一1匠
レくつ
Ev&pora仁。【
]
一〔
〔
Reservoir
!
↑
一
→
Freon pump
←
口 出
三r葦左ラ
ロ〔=コ[==コ
o薗。
忙狛〔ゴ
Con[ro1
亡〕口亡〕
5y5仁e鳳
∼
/!
/
1
贈駝r
1日verter
Ba[【eじy
SoLa【 cekls
匝−
Wa【er tank
図3 ランキンサイクルによる太陽熱ポンプの構成
Fig.3 Solar pumping system by means of Rankine cycle
スパンダにはダイヤフラムポンプを用い,直接水を圧沸している。この装置はスプリンクラー
など,低圧かんがいに用いられる。
3)中取式太陽熱ポンプ
…般の半定置圃場作業や地下パイプライン式作物管理装置を駆動するためには,より高い圧
一107一
1
s冥
【=
〔
⑰一例一
→
FP :freon pump
CWP=cold waヒer pump
EP:evaporaror 蒸発器
CD:condenser 凝縮器
SH:superheaヒer 過熱器
EX:expander
CL=collecヒor
CT=COOler
H四P:hoヒ waヒer pump
CWT=cold waヒer ヒank
HWT:hoヒ waヒer tqnk
HT :heaヒer
膨張機
集熱器
冷却器
図4
Fig・4
VP :vacuum pump
LIT:!eve! conヒroller
SV=sa£eヒy valve
SP =sprinkler
フロンポンプ’
冷水ポンプ’
温水ボンフ’
冷水タンク
温水タンク
CW =C1ヒy waヒer
REX=reciprocal expander
レシプロ式膨張機
ノ
ヒーター
低圧式太陽熱ポンプ実験装置の構成
Low pressure solar pumping system
畳
一
⑦
一一一
①…
一匿
ヨ
罰
j
甲
囲
臨
真空ボンフ’
液位制御機
安 全 弁
スブリノクラー
水 道 水
⑰
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…①
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岡
①…
甲
ト:1
lp.2i
ト
マ
旦
一
㊥
岡
Solar cells
太隅電池
=
「…「’
インバータ{1}
Control
Inverter
E一トA
インノミータ(m
E−1−B
E− 2
E−3
E−4
コ コ
C■rCUlt
制御回路
T− I
蓄竃池
Battery
AO充電回路
Backup circuit
砲
T−2
P− i
P− 2
P−3
:
:
=
=
=
=
:
:
=
=
図5 中圧式太陽熱ポンプ実験装置の構成
Fig・5 Solar purnping system with higher pressu「e
一108一
Collector
Collector
E▽aporaヒor
Condenser
Superheater
oi1亡ank
Wa亡er 亡ank
oil pump
Freop pump
Waしer pump
力で水以外の流体も回送できる中圧式太陽熱ポンプが必要となる。このため図5の装置を開発
した。これは熱媒にシリコンオイルを用い,CPC(複合パラボラ集光)型集熱器により集熱
を行うものである。またこの装置では太陽電池による制御系を取り付け,熱媒ポンプとフロン
ポンプを駆動し,太陽エネルギーによる自立運転を試みた。
4)自然循環式太陽熱ポンプ
⊥記の太陽熱ポンプは,エバボレータやフロン圧送ポンプが複雑,高価で操作,制御も簡単
ではない。そこで集熱器と蒸発器を一体化し,対流を利用して,圧送ポンプを省いたシステム
の開発を目指して図6の装置を試作した。ここでは熱媒は用いず,セパレータ(気門分離器)
Expand巳r Wate「 pump
曲
オ
Pu叩ed
Super匝eater
覆
wat已r
_ Condenser
A
姫一 @ 臼 7 !
一Rec巳iv巳r
Sepaピato【
。
↑
EvaPDrator
羅
↑
Water 【ank
図6 自然循環式太陽熱ポンプの構成
Fig・6 Convection type sol ar purnping system
にたまっている作動流体の液をエバボレータ(蒸発用集熱器)に直接流入させ,太陽熱で蒸発
させて気液混合体とし,セパレータにもどす。レシーバ(三指器)への流路に取り付けられて
いる電磁弁のうち,Aは常時開いており, B, Cは閉じている。したがって,作動流体の蒸気
はスーパーヒータ(過熱用集熱器)を通って過熱され,エキスパンダ(膨脹器)に入る。エキ
スパンダは作動流体の膨脹仕事を取り出し,吸水ポンプを駆動する。膨脹した蒸気はコンデン
サ(凝縮器)で液化され,レシーバにたまる。この状態が続きレシーバが液で満たされるとレ
ベルスイッチが作動して電磁弁に通電する。Aは通電時言, B, Cは通電時開となるので,セ
パレータとレシーバの内圧が等しくなり,レベル差によって作動流体の液はレシーバからセパ
レータに移動する。一定の時間が経ち液がすべて移動したところで電磁弁への通電を止めて回
路を元の状態にもどす。このようにして構成されるランキンサイクルは,操作も簡単で,特に
7)
途上国などに適していると考えられる。
5)熱およびエクセルギー分析
本研究の熱およびエクセルギー分析は主として文献8),9)により,以下に述べる計算式を
用いて行った。
(a)流体の移動による熱およびエクセルギーの流量
フロン回路内の作動流体の移動にともなう熱流量QおよびエクセルギーEXは,
Q=㊥一妬)F
EX={@一妬)一7「(3−30)}F……………・・………………・一・………・……(2)
ただし,
h :流体の比エンタルピー
一109一
S :流体の比エントロピー
ho :基準状態における流体の比エンタルピー
So:基準状態における流体の比エントロピー
To:基準温度
F l流体の質量流量
㈲ 各ユニット(回路要素)において流体が得た熱Qおよびエクセルギー
ユニットで得た熱QおよびエクセルギーEXは,
Q一㊥2一乃1)F
EX; {(々2一ん1) 一70 (32一ε」)} F ・一・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (3)
添え字については
1:ユニット入口の状態量
2:ユニット出口の状態量
(c)各ユニットにおける放熱および非可逆変化による損失
放熱による熱損失QLR,エクセルギー損失EXLRおよび非可逆変化によるエクセルギー損失
EXLUは,
QLR一ΣQ一ΣQ2
EXLR−QLR(Tη∼一7’o)/ア。
EXLU 二2EX1一ΣEXLR一・・・・・・・・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一・・・… 一・・・・・・・・・… 一… 一・一・・一(4)
ただし
ΣQI
:ユニットに入る流休の持つ総熱量
がEX1
:ユニットに入る流体の持つ留用クセルギー
ΣQ2
:ユニットを出る流体の持つ熱量および有効熱量の合計
ΣEX2
T2η
ユニットを出る流体の持つエ.クセルギーおよび有効エクセルギーの合計
:平均放熱漏度
ここで,有効熱量および有効エクセルギーとは,エキスパンダにおいては取り出し仕事を指し,
蓄熱槽においては温水温度の上昇に用いられた分を指す。
(d}熱効率およびエクセルギー効率
システムの熱効率ηQおよびエクセルギー効率ηEXは次式で定義した。
ηQ−W/Q
η、X一罪/EX・・∴・……・…一一………・…・・……………・……一………・一……(5)
ただし
W:系からの取り出し動力
Q :系への入熱量
EX:系に入るエクセルギー
6)システムの自動制御
太陽熱ポンプでは,日射量や作業負荷の変動に伴い運転条件が著しく変化するので,システ
ムの安定を維持するためには各因子を適.切な状態に保つ必要がある。本研究では,このうち特
に電要なエバボレータへの温水流量とフロン液位の自動制御を行い,実験とシミュレーション
によって最適な制御変数を求めた。制御方式や制御変数の設定,変更および制御結果の記録が
容易なことから,自動制御は,マイクロコンピュータによるデジタルプロセス制御で行った(図
7)。制御方式は蓬本的にはPI制御によった。制御の基礎式は次の通りである。
・(・)一一器(・㈲・先重。璽)+隻(”一1))………一・一・・…一・(・)
一110一
「一一}}}叩}}}璽}}皿『}}「
l l
i l
l l
o.2・一lkg/cm2
l 争0−100% 1
1
AIP
LG
4−20mA
P/1
卜5V
1/E
A/D
PV
猛vaporator
Command
1 一
u
e l
十
I
「 }”皿} }
}ロ}
PI cont二ro1
14幽20mA
ゆ
FP
AII
A/D
室
Gain
adjustmen
Manual con亡ro1
し__._____一_____」
L_____。_______1
Controlled system
Computer
図7 フロン液位制御系
Fig・7 Control systern of freon leve1
ただし
y :直接操作量(%)
e :制御偏差 (%)
PB:比例帯 (%)
Tご 積分時間 (min)
yo:制御偏差が零の場合の直接操作量(%)
T :サンプリング時問(min)
7)
太陽熱ポンプのシミュレーション
太陽熱ポンプでは,轍射量や所要動力の経時変化に伴って運転条件が大きく変化するので,
実験のみでシステムの特性を完全に把握することは困難である。そこで本研究では,システム
の特性を明らかにし,適切な操作方法を見出すこと,およびより実用的なシステムの設計資料
10)
を得ることを目的としてシミュレーションを行った。シミュレーションは図8のフローチャー
トの順序で,差分法を用いて行い,刻み時間は研究内容に応じて10秒から1分とした。
主要ユニットのうち特にエバボレータについては,図9のように内部を9層に分割してモデ
ル化し,蒸発量を計算した。この計算は,入力とし七の飽和圧力,各層のフロン温度と質量,
11)
温水温度および温水流量の値を受け取り,飽和温度を求めた後,伝熱量とフロンの蒸発量を求
め出力し,次に1ステップ後のフロンと温水の状態を求めそのステップの計算を終えるもので
13)14)
i2)
ある。その他,コンデン坑集熱器,蓄熱槽等について,それぞれ数式モデルでその特性を表
し,図8の流れに沿って逐次計算を行った。
シミュレーションは,太陽熱ポンプシステムの定常特性,動特性および日射や冷却水温度の
変化による地域特性について行った。
一111一
/脚、
〔 sτ点RT !
lMTI糺IZE
(Evap。rator)
Qe,Ff已
し
(Cond師erl
@Qc,臼c
1:EXpa嘘「〕
efex,Fl」ρ
PR田T
@ r(
(Evaporator)
Ffc: Conden5ation rat8 0f チreon
Ffe: Evaporation rate oチ freOR
Ffex:
FIo国 rate of freon in 6xpander
P5c: 3aturation pre55Ure in conden5er
P5e: Saturat}on prε≦sur8 玉n evaporator
Qc :
H巳at 巳xchanged in c〔}nden5er
Qcl: Co11eCted heat
Qe :
Heat exchang8d in evapo「己tQr
鞠tl
τemperature of 5tored 回ate「・
t :
↑i醗e
dt :
Step timg
5t :
Set tlme
P雪e
(Cond臼n5er)
P3.c
{Collector)
Qc【
〔Hot 回at已r tank)
T吠
LoOP
ドt+dt
Ye望
tく5t
No
/ END )
図8 シミュレーションプログラムのフローチャート
Fig。8. Flow chart of the simμlation program
結 果
1)定常熱特性の試験結果
15)
定常熱特性試験の概要は以.ドのようであった。
一112一
Freon vapor ouロet
フロンガス ロ
↑
/子
、
/。鋸。・。鞭
ゆロ む り
。。。。o。。。。。。。
〆 ..㌔%・;
温水出口 、
・i‘
H・t・・t…ut1・t ’、。宅33呂
、、 _
巽9
↑
}…・
1更
ノ
フロン液入口
温水入口
Freon liquid inleし
Hot water inlet
㈲ エバボレータの略図
Evaporator
{b) エバボレータモデル
Evaporator mode1
図9 エバボレータとそのモデル
Fig.9 Evaporator and the simulation model
(a)エバボレータへの温水温度の影響
温水温度が変化しても,エクセルギー効率はほぼ一定であり,フロン流量や出力は直線的に
増加する傾向がみられた。
(b)エバボレ一癖への温水流量の影響
温水流量の増加に伴い,フロンが得る熱および出力は増加するものの,その変化率は次第に
小さくなった。効率的には最適流量があり,本実験条件』ドでは約1,2㎡/hであった。
(c)エバボレー心内フロン液位の影響
フロン準位の変化は出力に大きく影響した。エバボレ一半は,できるだけ沸騰による熱伝達
が行われるように設計し,フロン即位は高く保たれるように制御する必要がある。
〔d)スーパーヒータへの温水流量の影響
スーパーヒータへの温水流量を変化させても出力への影響は小さかった。この原因としては,
R114はエキスパンダ内で液化しにくいこと,ダイヤフラムポンプはその構造上作動流体の圧
力変動には敏感であるが,温度変化やミストの影響は小さいことなどが考えられる。
(e}負荷圧力とエキスパンダ配列の影響
負荷圧力の⊥昇に伴いフロン流量は減少したが,出力とエクセルギー効率は最大値を有する
曲線を描いた。エキスパンダの配列については2台を並列に.して使用した場合に条件によって
1台の時より大きい出力とエクセルギー効率が得られた。システムの運転条件に合わせて使用
台数を選べば,全体的に高い効率が得られる。
(f}コンデンサへの冷水流量の影響
冷水流量の増加に伴い,フロンの凝縮温度は低下し,出力は増大した。しかし冷水流量が
L5㎡/h以⊥になると影響度が/」\さくなった。
システムの定常熱特性をふまえ,適切な操作方法を把握した土で太陽熱によりシステムを駆
動して,装置の動特性を調べた。実験結果の例を図10に示す。この実験では1,5−2,2kg/c㎡
の圧力で1日に9,4㎡の吐出水量を得て,スプリンクラを駆動した。図でliムカの曲線が日射量
の曲線に比べて約2時間遅れているが,これは蓄熱槽の影響によるものである。
一113一
2)熱およびエクセルギー分析の結果
9
図10の実験の12時40分における熱の流れを
SoLar 【adiaしion
100 8
八州
1 、
§8・
3,
巨
5
量、
趨60
騨芦 臨
ノ1 唱\
3
図11に,エクセルギーの流れを図12に示す。
ぞ
重
2至
乙
鵠
誉4。
註5
(a)蓄熱槽:蓄熱槽からの放熱量は大きく,
口
高温であるのでそれによるエクセルギー損失
At田05phe【ic 亡emp. \
外気邑匿 \
曇
タタ話1醜=三r∼袖
書
_一___一ノー一『−曽一一一一一一一___\
ぎ
昌
20 4
9:00 11;00 は図のとおりであり,諸損失に対する改善策
16)
が次のように考えられる。
手
1.舞
舅
各ユニットでの熱およびエクセルギーの損失
至
も大きくなる。断熱を強化するとともにシス
テムの使用条件により適切な熱容量を決定す
る必要がある。
£
{b}エバボレータ:伝熱によるエクセルギ
13=OO 15=00 ユ7300
τime 時 刻
ー損失が大きい。熱伝達率を高くしたり,温
図10 太陽熱ポンプの実験結果の例
熱面積を大きくすることによってある程度は
Fig,10 An example of experimental
解消できるが,製作費が高くなるので検討を
results
要する。
〔c) エキスパンダ:
ダイヤフラムポンプでは,
内部での作動流体の膨脹率が小さく,エクセ
ルギーを十分に利用できない。後に述べるように別のタイプのエキスパンダを用いて効率を⊥
げることも考えられるが,ダイヤフラムポンプには,構造が簡単で取り扱いが容易であるとい
う利点がある。システムの使用条件に応じて適切なエキスパンダを検討する必要がある。
(ω 配管系:配管からの放熱を少なくするには断熱を強化することも考えられるが,まず配
管を短くすることが先決である。低温部の配管が多少長くなっても,高温部の配管ができるだ
け短くなるようにシステムを設計するべきである。
3)闘動制御試験の結果
温水流量は面積型流量計で測定し,0.5秒間隔のPI制御でコントロールバルブの開度を操
作することにより制御した。この制御系で外乱として作用するのは水圧の変化のみであり,こ
れも特定の流路を使用している限り変化が小さい。したがって,温水流量の制御は比較的容易
であり,経験的に定めた制御変数により良好な制御を行うことができた。自動制御の結果の例
を図13に示す。図(a)はフロン継句を変化させた場合,(b)は温水流量を変化させた場合である。
図中Pwep(S. P)は流量の設定値を示し, Pwep(P. V)は挙り定値を示す。この実験では, PB
を200%,Tiを0,1分 yoを50%としたが,この場合のみならず他の実験でも同じ制御変
数によって良好な制御を行うことができた。
フロン下位はフロンポンプの回転数を操作することにより制御したが,温水流量の制御に比
べて変化要素が多くシミ.ユレーションによって最適な制御変数を決定し,それに碁ついた制御
を行って良好な結果を得た。図13でF.Lはフロン液位を, Ffはフロン流量を示す。
4)シミュレーションの’ 級ハ ・
実システムで行った実験と同じ条件を想定してシミュレーションを行った結果,図14のよう
に実験結果をよく再現できることがわかった。そこで各種のシミュレーションを行い,システ.
10)
ムの特性や操作方法などを検討した。
回 システムの定常特性
図15は,集熱特性などを考えず,一定の温水と冷水が供給されるものとした場合のシステム
の性能を表す。高温熱源に工場排熱などを用いる場合はこのデータからシステムの性能を推定
することができる。
一114一
4L76
1.39
3.21
3
0.26
1
1 エ211.7
EX
エキスパンダ18.49
CL
0.1
蒸熱器
16.84
q
2.48
0.85
フ、 9
o
163
5 上06. 9
SH
0。q
工5.7
三
゚熟器
CT
!8.96
o
}二
CD
2. 5’
凝 縮器.
二
建、
…
一21。49
ミ
8 .9
9
工26
EP
23
23。9フ
暴甚
冷却器
7.2
嫡。 剛
華
ヒ
達
0.16
桑ゴ・
蒸発器
;
13.22
o阿一〇■o
, ・
}
ミ.
0.20
▽
::
。9
!45
55
0.36
重
J . ■ o
, 一.歪
暫,
HWT
伽
伽
HWP
FP
温水蓄熱槽 温水ボンブ
CWT
8.
8.27
CWP冷水タンク
フロンボンブ
冷水ボンブ
(Unit・lxl♂]KJ/h)
CL :Col!ector
CD :Condenser
HWT:Hot waヒer tank
HWP:Hot wa亡er pump
EP :Evapora亡or
SH :Superheaヒer
FP :Freon pump
CWP:Cold water pμmp
CT. :Coo圭ing t二〇wer
CWT:Cold water 亡ankl
EX :Expander
細・エ・p眈・f・・e・gy流入エネ・レギー
伽・L・ss by・adi・ti・・放熱・伝鱒による澱
奪コ・A・・il・b1・heat 渤腿
國=Enerqy by 工OW temperatUre低温エネルギー
図11 エネルギーの流れ図
Fi忌11 Flow chart of erlergy
まナこ図16は本システムと同様のシステムで太陽熱を高温熱源とした場合の性能を調べたもの
である。ここでは吐出圧力を1および2kg/c㎡に設定し,最適な制御を行った場合を想定して
単位集熱画積当りの吐出水流量を計算した。
(b}システムの動特性
システムの定常特性が明らかになったので,次に,運転条件が非定常な場合をシミュレート
し,1口に取りほ:1す仕事量を最大にする操作方法について検討した。その結果をま.とめると,
(D 本実験装置のようなシステムでは,最初に水温の上昇を待ってから仕事を開始させる必
一115一
0.36
!5.17
め
0.74 1.gg
1.06
0
BX
4.46エキスパンダ
20.14
1.37
0.20
CL .
集熟器
.05
証0
踊
灘
17,86
3.34
k8
35。3
1.53
過熱器
SH
CD
S36・
CT
凝縮器
冷却器
0. 5
0.59
0.56
.69
6.19
0
”発器
0.21
24.64
0
0.2
噛 28.33
3.3
3.
HWP
蓄熱憎HWT 温水ポンプ
蜘
FP
7rンボンブ
蜘
.35
CWT
CWP 冷水タンク
冷水ポンプ
(Unit・[x1611Kw)
幽・エ・p・t・f・xerqy 流入エクセルギー
働・L。ss by heaセt.an。fer伝纈失
魎・L。ss by。adi。ti。。繍損失
確=〕・Av・i1・ble exe・qy有効。。。ルギー
図12 エクセルギーの流れ図
Fig.12 Flow chart of exergy
要はない。
qD 蓄熱槽の容量を大きくするとシステムの安定性は高くなるが,総仕事量は小さくなる。
GID夕方その日の運転を早く切り上げて高温度の温水を蓄え,翌日の運転に備えることは,
総仕事量の点では有効ではない。
(M 作業負荷を適時に変化させることにより,総仕事量を大きくすることができる。
{c)地域特性
17)
別の地域に同様のシステムを設置した場合の特性をシミュレーションにより推定した。これ
i8)
は日射量ランク別日照時間,日照時平均気温などの資料に基づき,単位集熱面積当りの月間吐
出水量を計算したものである。計算結果を表1と表2に示す。ここでは,コレクタの傾斜角30
度,吐出水の圧力を1kg/c㎡と2kg/c㎡に設定した。また冷却水温度の設定には,各地の浄水
場平均水温の資料を用いた。なおここでは配管などからの放熱損失はないものと仮定している。
また例として,吐出水の圧力を1kg/c㎡に設定した場合の計算結果の一部を図17に示す。図
示した地域では,冬季に晴天の日が多いこともあり,冬季でもかなりの吐出水量が得られるも
のと推定される。
(d)冷却水温度の影響
低温度差の太陽熱機関では,その出力が冷却水の温度に大きく影響される。これはシミュレ
一116一
100
80
噴
、/
F.L(S.P
60
画
F.L(S.P)唱80噌30 署
40・
Fwep(S.P)冨1.00 m/h
4
壽
・.・{1
・餐1
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20 40 60 80 工00
120
時間瞥ime(丁層》=吊in。
(a).F.L(Chanqed),Fwep(Const:ant二).
フロン液位(変化),温水流量(一定)
100
幽80
二
F.L(S。P)・=50 老
→
Fwep(S.P)召2.0−0.25mシh
一60
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鱒 「→
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F.L(S.P)
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F・L(P.二▽)\
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一
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80
40 60
100
120
瞬間 Time(TM):min.
(b)・F・L(C。・・t・・t)’F・・p(Chang・d).
フロン液位(一定),儘水流量(変化〉
図13 制御系の応答例
Fig。13 Example of the response
G
loo
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出 暴
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2【=00 21:ヨ0 τi団8
Ti薗日
[ω,冒ith 501a「 coU日Ctor5
Ibi■じitbOUt コレクタを用いた場合
50[ar 22=00
co119Ctor
コレクタを用いなかった場合
図14 実験結果とシミュレーシ ヨンの比較
Fig.14
き
角
o
区
Results of the experiments and the simulation
一117一
22;30
0.3
(C・・li・9・・仁・・t。mp.200C)τa・40と
馬疏,
ロ
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1
4
窪 3
Load pressure (kg/cm2)
〔〕 200 400 600 800
負荷圧力
so上ar radia亡ion (kcal/mzh)
日射量
Ten!pe=aにu【e o藪 ho仁 waヒer : 60,70,80,90 (9C)
FLQw ra仁e.。f h。仁wa仁er =…一…500(kg/h)
’’’’’”一”一・・iGOO (kg/h)
図16 集配面積1㎡当りの瞬間吐出水流量
冒旧一一一一響1500 (kg/h)
一一2000 (kg/h)
Te田pera仁ure of cold wa[e【 = 25 (◎C)
FLow ra[e of cold waCer = IOOO (kg/h>
Fig46 Flow rate of pumped water per
unit solar collectiorl area
図15 太陽熱ポンプシステムの性能
Fig・15 Performance of the s olar pulnping
systeln
50
、50
SapporO
40
Toky.
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宅
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§20
こ
40
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Sapporo
Tokyo
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1 234567B9101112(凹on【h). 1 23456789101112(トlonth)
(a) CoLlecヒ。【 a員9乳e Oo (b) CoLLec[or ongLe 300
Load pressUre Ikg/cm2 Load pr巳ssu【e lkg/cm2
図17 集熱面積1㎡当りの月間吐鵡水量
Fig.17 Monthly volulne of pumped water per unit solar collection area
一ションの結果からも確認された。
5)廟然循環式太陽熱ポンプの実験結果
自然循環式太陽熱ポンプシステムの模型による基礎実験の結果から以下のようなことがわか
った。
(a}実験は高圧側最高圧力6kg/c㎡Abs,低圧側圧力3kg/c㎡Absで行い,自然循環によ
る運転が可能であった。
一118一
表1 集熱面積1㎡当りの月間吐出水量(㎡)
Table l Monthly volume of purnped water per u貝it sQlar collection area(㎡)
(三熱器傾斜角30a吐出圧力1kg/c㎡)
(Collector angle 300, Load pressure lkg/c㎡)
Month
Region
Sapporo
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
21.9
22.8
41.3
35.9
38.9
35.5
30.0
31.7
26.0
24.5
19.7
16.0
Sendai
30.4
29.4
46.6
35.6
35.3
29.2
24.2
26.5
22.2
22.5
22.8
20.4
Nigata
22.3
22.4
39.3
33.2
32.2
30.4
25.8
37.8
27.1
24.0
23.5
15.5
22.0
22.8
25.6
26.6
11
12
Tokyo
Nagoya
Osaka
38.1
31.8
43.2
34.2
34.6
25.4
28.8
30.6
37.6
34.5
49.2
35.3
36.1
30.2
31.6
37.0
27.4
28.2
30.7
28.1
33.7
29.4
46.4
34.9
33.3
28.1
28.8
32.7
27.3
25.4
27.7
24.9
Kochi
39.4
33.6
46.3
32.5
33.6
28.5
28.3
31.5
27.6
28.1
30.6
30.7
28.4
26.4
44.5
34.1
33.2
29.2
30.9
35.8
27.2
3α!
29.6
23.4
Fukuoka
Kagosima
33.1
28.7
44.0
29.8
30.0
25.8
29.1
34.1
28.5
29.9
31.1
27.9
Naha
31.5
27.1
36.5
26.7
25.9
27.3
33.1
33.5
92.0
29.2
30.2
24.4
表2 三熱面積1㎡当りの月間吐出水量(㎡)
Table 2 Mont姐y volume of purnped water per unit solar collection area(㎡)
(集熱器傾斜角300,吐出圧力2kg/c㎡)
(CoHector angle 300, Load presstlre 2kg/c㎡)
Month
Region
Sapporo
11.5
1.8
Sendai
16.2
5.4
Nigata
Tokyo
NagQya
Osaka
Kochi
Fukuoka
Kagosima
Naha
1
2
4
5
6
21.8
18.8
20.5
25.1
19.3
19.2
3
7
8
19.3
16.8
17.9
14.3
13.0
10.3
8.1
16.2
13.8
15.5
12.5
12.5
12.7
10.8
9
10
11
12
11.7
1.7
21.3
18.3
18.!
17.4
15.3
21.8
15.2
13.2
12.5
8.1
20.5
7.1
24.0
18.8
19.0
14.5
16.4
18.0
12.7
!2.8
14.3
14.4
20.2
8.3
27.0
19.6
20.0
17.0
17.8
21.3
15.4
157
17.0
14.9
18。2
5.8
25.4
19.5
18.7
16.2
17.0
19.5
15.6
14.4
15.4
13.4
21、7
8.4
26.2
18.5
18.8
16.2
16.6
18.8
15.9
16.0
17.4
16.7
15.5
4.3
24.8
工9.0
18.6
16.7
17.7
20.9
15.6
16.8
16.5
12.5
18.5
5.9
25.0
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14.9
17.2
20.2
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17.7
15.4
18.3
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21マ
15.9
15.3
16.2
19.8
20.1
18.9
17.2
17.8
142
樹 エバポ.レータとして用いた三熱器の傾斜角度をあまり小さくすると自然循環の状態が悪
くなったが,20度以上ではスムースに循環した。
(c) リザーバと均圧管を含んだ回路についても実験した。この構成ではレシーバからセパレ
ータへ液を移動する際,コンデンサに少量の液が溜まっても問題にならなかったため,リ
ザーバの効果は小さかった。
樹 エバボレータでの気泡の発生状態によりセパレータ内の液位が大きく変動するので,こ
の液位の測定値をもとにして制御したり,流量を計算することはできない。
一119一
(e)電磁弁で発生する熱でフロンが蒸発することがあるので,計測器などはそれを考慮して
取り付けなければならない。
(f)配管内にオイルが入ると自然循環の状態が悪くなった。これについては更に詳しい研究
が必要であるが,一般に潤滑油を必要としないエキスパンダを用いる方がよいと思われる。
考
察
各種実験結果の考察については,前節で結果とともに述べたので,ここでは全般にわたる考
察を行う。
1)効率を上げるためのシステムの改善策
システムの総合効率を高くするためには,ユニットの位置や容量のバランスなどをシステム
ェ学的に検討するとともに,各ユニットの効率を高めなければならない。このうち前者につい
てはシミュレーションによる方法が有効となるが,後者については図11および図12から次のよ
うな改善策が考えられる。
儲蓄熱槽
蓄面面からの放熱量は大きく,高温での放熱であるので,それによるエクセルギー損失も大
きくなる。断熱を強化するとともにシステムの使用条件により適切な熱容量を決定する必要が
ある。
㈲ 蒸発器
蒸発器では平熱によるエクセルギー損失が大きい。これは熱伝達率を高くしたり,伝熱面積
を大きくすることによってある程度は解消できるが,製作コストが大きくなるので検討を要す
る。
(c)膨張機(エキスパンダ)
ダイヤフラムポンプでは,内部での作動流体の膨張率が小さく,エクセルギーを十分に利用
できない。これについてはベーンタイプの膨張機などによる実験で,膨張機の効率を70%程度
まで⊥昇できることがわかった。しかし,ダイヤフラムポンプには構造が簡単で取り扱いが容
易であるという利点があり,メインテナンスφ点では他のものに比べて有利であった。
(d)配管系
配管からの放熱を少なくするには,断熱を強化することも考えられるが,まず配管を短くす
ることが先決である。低温部の配管が多少長くなっても,高温部の配管ができるだけ短くなる
ようにシステムを設計するべきである。
2)熱 源
低圧式太陽熱ポンプでは,真空管式平板集熱器を,また中圧式ポンプには集光式放物面鏡集
熱器で太陽熱から得た温水または高温シリコン油を熱源とした。前者は約600Cから,後者は
1000Cから十分システムを動かすことができた。したがってこれらのランキンサイクルシス
テムは,太陽熱のみならず,ソーラポンドや温排水,地熱水,廃熱などで,これらの温度以上
の熱源があれば,簡単に動かすことができる。太陽熱に限っても,冬季には,図18のように平
板コレクタの一部を直列につないで温度を確保することも考えられる。また,集熱器のコスト
が大きいことからして,ソーラポンドを熱源としてコストを下げることが考えられる。
3)利用システム
太陽熱ポンプの利用方法としては,図19の模式図のようなスプリンクラシステムによるかん
がいや,地下パイプライン式作物管理装置を通じてかんがい水のみならず,液肥や空気を圧送
するシステムが基本となる。しかし,図20のようなロータリエンコーダやマイクロコンビュー
一120一
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図18 コレクタ配列
Fig・18
Layout of solar collectors
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u チー一
So亘a= pu皿piDg sys【em
1 ___rジ」一一一
u チー一一
( High pressure )
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図19 太陽熱ポンプの利用システム
Fig.19 Utilization system of solar pumps
121
( Ini亡ial pressure )
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図20 エキスパンダの計測制御系
Fig・20 Control sys亡enl of the expander
タでシリンダ型エキスパンダを制御する方法で,安定した回転力を取り出し,防除やガントリ
ーシステム等の半定置的圃場作業装置1ご利用することも.可能である。
4)法規上の制約について
フロンランキンサイクルを用いた太陽熱ポンプは,商圧ガス取締法の対象となる。このため,
システムの設嚴にあたっては,事前検査,設置許可が必要となり,装置の各要素もすべて厳重
な検査を通過した高価なものしか使用できない。また運転にあたっては,化学プラントの管理
者と同じように,高圧ガス製造保安責任者の資格を持った者でなければならない。さらに,定
期検査が義務付けられており,保安管理に多くの労力と費用がかかる結果となっている。
安全性は何ものにも優先するとはいえ,簡単な自然エネルギー利用機器に大規模な工業プラ
ントと同じ法規を適用したのでは,ローカルエネルギーシステムの実用化は難しくなる。今後
検討されるべき課題である。
摘
要
太陽熱を動力変換して,膿業用動力や環境制御に用いる研究を行った。平板コレクタないし
は集光型コレクタで集熱し,かんがい水工を圧送するポンプを駆動した。最初に低圧かんがい
用の低圧太陽熱ポンプシステムを試作し,次いで汎用性と高効率化を狙って中圧システムを制
作した。また装置の操作の簡単化を狙って自然循環式太陽熱ポンプを開発した。
装置の試作,改良にあたっては,熱およびエクセルギー分析を行って問題点を摘出し,性能
の向⊥をはかった。また実験条件以外のときの性能や地域特性については,各システム要素の
一一
P22一
数式モデルに基づくシミュレ」ションを行って推定した。
利用面では,スプリンクラや地下パイプライン式作物管理装置を太陽熱ポンプで動かすこと
を試みるとともに,コンピュータ制御のシリンダ式エキスパンダ等を試作して回転力を取り出
し,広く定置または半定置圃場作業に利用することを考えた。主な結果は次のとおりである。
1)平板コレクタからの温水を熱源として,フロンランキンサイクルによる低圧式太陽熱ポ
ンプでスプリンクラシステムを動かすことができた。
2)低圧式太陽熱ポンプは,60。C以上の温水熱源があれば駆動できるので,ソーラポント∼
温排水,地熱水などにも利用できる。
3)集光式放物面鏡コレクターを用いた中圧式太陽熱ポンプで,より高圧の往復動ポンプを
動かし,同時に太陽光電池による補器駆動で,システムの自立運転が可能となった。
4)自然循環式太陽熱ポンプの開発によって,より簡単な構造,操作のものが得られた。
5)熱およびエクセルギー分析によってシステムの熱力学的特性を明らかにし,問題点の改
善に役立てることができた。
6)システムの各要素を数式モデル化し,実験結果から得た係数値を用いてシミュレーショ
ンを行い,実験条件以外でのシステムの特性を推定することができた。日本各地での特性
を調べ,冬季でも日射が確保されれば利用可能である。途上国等でも裁礎データがあれば
性能を推定できる。
7)エキスパンダが技術的に最も難しい要素であり,いろいろな方式を試作,試験したが,
ロータリエンコーダとコンピュータで回転を制御する方式で,安定した出力を得ることが
できるようになった。
8)太陽熱ポンプで,スプリンクラ等のかんがい施設,地下パイプライン式作物管理装置など
定置および半定置の圃場装置を駆動できる。
参考文献
1)木谷,岡本,芋生他(1984):太陽エネルギの利用による農業用動力の朋発に関する研究
(第1報),農業機械学会誌45−4,475−484
2)木谷 収(1980):揚水ポンプへの利用「施設二業への新エネルギーの利用」,フジテクノ
システム,484−492
3)芋生,木谷,岡本(1985):自然循環式太陽熱ポンプシステムに関する研究,農業機械学
会講演要旨
4)…色尚次,北山直方(1978):新蒸気動力工学,森北出版(東京)
5)杉原正浩,幸田利秀,柏村和生(1983)1これからのソーラーーシステム機器と材料,シー
エムシー(東京)
6)木谷 収他(1981):作物環境制御動力としての太陽熱ポンプの利用,GEPIV−2一{2)
一⑤ 昭和55年度報告書
7)木谷,岡本,三生,坂井(1985):太陽熱ポンプの将来,機械化農業1985.5,13−16
8)Ahern, J. E・(1980):The Exergy Method of Energy Systems・J・Wiley(New
York)
9)石谷清幹(1977):熱管理士教本,共立出版(東京)
10)木谷 収他(1984):作物環境制御動力としての太陽熱ポンプの利用,GEPIV−2一(2)
一⑤ 昭和58年度報告書
11)西川兼康,藤田恭伸,松尾篤二(1970):発ぼう点密度を考慮した核沸騰熱伝達の整理に
一123一
ついて,日本機械学会論文集(第2部),41−347,2141−2150
12)伝熱工学資料,日本機械学会(1975)
13)種村栄,野ロ哲男(1978)1集熱器の集熱特性とその測定法の研究,空気調和・衛生工学
52−9, 39−45
14)W.C. L ouie, D, C. Miller(1978):Evacuated一職bu Solar C ollector−Effect of
Control on Efficiency at High Operation Temperatures, ASHRAE J ourna1, May
1978
15)木谷 収他(1982):作物環境制御動力としての太陽熱ポンプの利用,GEPIV−2一(2)
一⑤ 昭和56年度報告書
16)同57年度報告書
17)同59年度報告書
18)ソーラーガイドブック(1982),電波新聞社(東京)
一124一
Summary
Studies were conducted.On the conversion of so:Lar energy into
power for aqriculture and environmental control. Three types of
Rankine cycle sOlar pumpinq systems were de▽eloped, namely, a) low
pressure type for ordinary field irriqation pUmping r b) hiqher
pressure type for qenera:L stationary farm operatiOns,=and c) cor1一
▽ection type for simple use,. especially for developinq countries。
Enerqy and exerqy analyses were carried out for the improve−
ment of the system performance and efficiency。 SimulatiOrls were
made on the basis of mat二hematical mode]一s of each element of the
system to estimate the system perfOr!nance irl the conditions beyQnd
tested ones。
Sprinklers and ur)derground pipeline systems fOr crop cultiva−
t■on were driven by the solar pumpinq system. A computer−cOntrolled
cylinder expander were developed for torque Output Which can be.
utilized for drivinq semi−sta七iOnary field equipment$.
The main result二s are the followinqsF
l) Alow pressure solar pumpinq unit with flat plate sOlar
cOllectors and freon Rank⊥ne cycle was developed. エt drO▽e sprin−
k!ers for irriqatiOn。
2) [rhe low pressure type ur}it二 could be used with such heat
sources as solar pond, geothermal heat, and waste heat with tempera−
ture hiqher than 600C。
3) Ahiqher pressure unit with parabolic cylinder collectors
were developed with sOlar cells which enabled to drive the whOle
system independent from the cOmmercial electric powe∫.
4) AcOn▽ection type solar pump was developed to make the
operations easier, and the system simpler and cheaper.
5) ThrOuqh the energy and exerqy analyses, thermal characteris−
tics Qf the system were c:Larified, which contributed much to the
ilnprovement of the solar pulnpinq systems.
6) On the basis of the mathematical mOdels of each element,
一125一
simulation of the system was carried out usinq the papameters
determined frOm the experiments。 System performarlces in ▽arious
districts of our cOuntry and those beyond test conditions were
estimated by this simulation。
7) One of the mOst difficult technical problems was to de▽elop
a qoqd expander for a small solar pumpirlq system・ ▽ariouS types
were developed and. tested。 A diaphragm pu血p was simple and success−
ful, but the efficiency was lO宙。 A cylinder expander with ヨrOtary
encorder and a computer created fairly steady rOtational output
for qeneral field Operations.
8) As a u七ilization system, sprinklers were installed and
driven successfully。 Later, an underqrOund perfOrated pipeline
sysセem. for crop culti▽ation was added. .The.solar pumpinq.system
with a rotational output can drive usual statiOnal or se}mi−statio.nal
farm facilitieS。
一126一
Bullefin of Green EnergY Progrαm
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