九州工業大学学術機関リポジトリ"Kyutacar"

九州工業大学学術機関リポジトリ
Title
Author(s)
Issue Date
URL
移動体の速度計測を用いない軌道追従制御に関する研究
束, 攀峰
2015-03-25
http://hdl.handle.net/10228/5382
Rights
Kyushu Institute of Technology Academic Repository
氏
名
学 位 の種 類
学 位 記 番 号
学位授与の日付
学位授与の条件
学位論文題目
論文審査委員
束 攀 峰 ( 中国 )
博 士(工学)
工博第382号
平成27年3月25日
学位規則第4条第1項該当
移 動 体 の 速 度 計測 を 用 いな い 軌道 追 従制御 に 関 する 研 究
主 査 教 授
大屋 勝敬
教 授
田川 善彦
教 授
瀬部 昇
准教授
相良 慎一
学
位
論
文
内
容
の
要
旨
本論文では ,車輪 型移 動体に焦点 をあて ,速 度計測を必 要とし ない 軌道追従制
御法を開発している.
Ⅰ. 車輪型移動ロボットの軌道追従制御
車輪型移動 ロボッ トを 自律移動さ せるた めに は,位置情 報だけ でな く速度情報
(ヨーレート,進行方向速度:以下車速と略記する)が必要となる.一般に,ヨ
ーレートは ヨーレ ート センサを用 いて精 度良 く計測でき る.し かし ,車速の高
精度計測は 困難で ある .この問題 に対処 する ため,車速 を用い ない 軌道追従制
御法が開発 されて きた .しかし, これら の手 法では,一 部ある いは 全てのロボ
ットパラメ ータが 既知 である必要 がある .さ らに,モー タ特性 が考 慮されてい
ないという問題もあった.
上記の問 題を解 決す るため,モ ータ駆 動に よる車輪型 移動ロ ボッ トの速度情
報を用いな い適応 軌道 追従制御法 を提案 して いる.まず ,車速 計測 を含まない
新しい運動方程式表現法を提案している.この新しい運動方程式表現法を基に,
ロボットの 重さ, 重心 位置,左右 モータ ダイ ナミクス特 性等が 異な る場合でも
安定な軌道 追従が 可能 となる適応 軌道追 従制 御法を開発 してい る. さらに,数
値シミュレ ーショ ンに より,一つ の設計 パラ メータを設 定する こと により,開
発した適応 軌道追 従制 御を用いた 移動ロ ボッ トシステム におい て, 最大軌道追
従誤差を簡単に小さくできることを示している.
Ⅱ. 車両の軌道追従制御
今日まで,高速道路において安全に,かつ,より多くの車両を走行させるため,
前後輪操舵 を用い た車 線追従制御 法が種 々提 案されてき た.こ れら の車線追従
制 御 法 で は 車 両 の 二 つ 状 態 量 (車 両 と 車 線 と の 相 対 横 距 離 と 相 対 ヨ ー 角 ) が 零
となるよう に制御 が行 われる.し かしこ れら の制御法に は,車 両の すべて,あ
るいは,一 部のパ ラメ ータ値が既 知でな けれ ばならいと いう問 題が 存在する.
さらに,車 両のヨ ーレ ート計測だ けでな く車 両の横方向 速度計 測も 必要となる
という問題 も存在 する .これらの 問題を 解決 するため, 車両の 横方 向速度を利
用しない適 応車線 追従 制御法が提 案され た. しかし,提 案され た適 応車線追従
コントロー ラは, その 構成が非常 に複雑 であ り,実車両 への実 装に は適さない
という問題を持つ.
上述の問 題を解 決す るため,構 成の簡 単な 適応車線追 従制御 法を 開発してい
る.車両の 通常の 運動 方程式表現 には車 両の 横方向速度 が含ま れる .この運動
方程式表現 を基に コン トローラを 開発し た場 合,コント ローラ に横 方向速度が
必要となる .そこ で, まず,車両 の横方 向速 度を含まな い改良 型運 動方程式表
現を提案し ている .改 良型運動方 程式表 現で は,従来法 におけ る車 両の横方向
速度を含ま ない運 動方 程式表現に くらべ ,推 定すべき車 両の未 知パ ラメータの
数が非常に 少ない とい う特徴があ る.つ ぎに ,改良型運 動方程 式表 現を基に,
改良型適応 車線追 従制 御法を開発 してい る. そして,こ の改良 型適 応車線追従
制御法を用いた車両システムが安定であることを理論的に示している.さらに,
設計パラメ ータを 設定 することに より, 追従 性能を簡単 に改善 でき ることも理
論的に示している.
学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文では ,速度 計測 を用いない 車輪型 移動 体の適応軌 道追従 制御 法が開発さ
れている. 本手法 は高 性能な軌道 追従制 御手 法の実際へ の応用 に向 け大きな貢
献を果たし ている .な お,審査委 員なら びに 公聴会出席 者から 種々 の質問がな
されたが,いずれも著者から適切な回答がなされ,質問者の理解が得られた.
以上により,論文調査及び最終試験の結果に基づき,審査委員会にて慎重に審査
した結果,本論文が,博士(工学)の学位に十分値するものであると判断した.