平成27年度 北海道小学校長会地区活性化支援事業 【実践事例レポート】 1 報 告 地 区:函館市 2 事例報告学校名:函館市立中央小学校 3 報 告 者:校長 鳴海 裕 4 キ ー ワ ー ド:そろえる指導・つなげる指導(生活習慣の改善と家庭学習の習慣化) 1 はじめに 本校は,旧亀田市の人口増加に伴い,鍛神小学校及び昭和小学校の過密解 消として,昭和48年4月に開校し,その後,12月1日に函館市と合併, 一時は千名を超える児童数を誇るマンモス校でした。校区には大型スーパ ーを抱え,美原地区は,近年,渡島振興局が移転されてくるなど,一大商業 地となっています。しかし,中央小校区には,新しく住宅が建つ土地も少な く,児童数の減少に歯止めがかからず,平成27年度の3年生はついに一ク ラス編制となり,その教育環境も大きく変わりつつあります。 2 学力向上を目指した取組 (1)そろえる指導・つなげる指導 平成22年度の全国学力・学習状況調査において,本校は学力的にかなり厳しい状況でした。 特に,算数B問題では,正答率の低さもそうですが,無回答が目立つなど散々たる状況でした。 道の教育長が視察にいらしたのもこの後のタイミングでしたので,事の深刻さは相当でした。 そこで, 平成23年度よりその対策に乗り出すことになりました。 ここで重要であったことは, まず,学校長のリーダーシップの下, 「教職員が指導内容等をしっかりと共通理解をする」と言う ことでした。子どもへ指導するのは各学級担任です。その学級担任の考え方がまちまちであった ら, 指導内容に差が出てしまいます。 基本的に子どもたちは, 「6年間中央小学校の教育を受ける」 わけですから,担任が替わっても指導内容は変わらない一貫した「そろえる指導」が必要でした。 また,本校は2年間の学級担任担の持ち上がりを原則としていますが,特に高学年では,身に付 けておいてほしい指導内容が身に付いていないと,学級担任が替わることで,一から指導し直さ なければならなくなってしまいます。こんな非効率的な指導はありません。ですから,低学年か らの積み重ねを大切にし,次の学年へ「つなげる指導」をしていかなければなりません。 それから,学校として指導内容を統一して実践することが始まりました。前述の通り,学力的 にはかなり低いところからスタートしなければならないので,まずは,1年生の指導から保護者 も巻き込んで,しっかりと行われることになります。そのような指導を5年間継続して実践して きているのが,現在の中央小学校なのです。 (2)生活習慣の改善と家庭学習 きっかけは,学力低下の問題でしたが,学力向上を一 つの目標としたとしても,そこに特化して指導をする だけで,果たして本当の意味で,子どもたちに力をつけ ると言うことにつながるのでしょうか。それで, 「生き る力」を育むことになるのでしょうか。当時の「中央小 学校を変えたい。 」 と思う同志で, 日々炉辺談話を繰り返す中で, 一つの方向性が見えてきました。 それは, 「学校での指導には限界がある。家での生活を変えていこう!」ということでした。いく ら学校で教師が一生懸命指導をしたとしても,週が明けると,また元の木阿弥となっているので す。また,宿題プリントなどを出しても, 「それだけやればいい。 」とそれ以上の自主的な学習へ とは発展していきませんでした。 そこで,まず,保護者へ「家での生活」について,考えてもらおうと,生活習慣の改善と家庭 学習の習慣化の必要性を理解していただくことから始めました。生徒指導部が生活実態調査を定 期的に行い,データを示しながら具体的な改善策などを啓発していきました。そして,教務部は 家庭学習の啓発資料を作成し,基本的な考え方や学習環境整備の仕方,子どもたちの具体的な取 組内容や方法,担任や保護者がすべきことを明確にし,提示しました。 中央小学校の家庭学習は「自主性」のレベルで示されており, 「6年間で自分で考えて,自分で 取り組む」という態度を育てるというものです。また, 「子どもたちのがんばりを認め,励ます」 ということも特徴の一つと言えるでしょう。これは必ず保護者や担任が「コメントを書く」とい う方法で実践されています。これにより,子どもたちは,ノートを使う事に慣れ,その活用の仕 方を自然に知っていくことになります。 使用したノートは,校長室前に陳列し,他の学年のノー トをいつでも閲覧できるようになっています。休み時間等 に,友達と見ている子どもも多く,参観日には,保護者も 一つ上の学年や6年生のノートなどを手に取って見てい る姿がたくさん見られます。 このように,本校の生活習慣の改善と家庭学習について は,校務分掌を横断した取組となり,連携して進められた ことも改善のポイントの一つです。 (3)実践的な学習規律 そろえる指導や生活習慣の改善など,全職員の共通理解による取組が定着してきた中,函館市 の中学校区内による「小中連携事業」が,校長会の主導により行われました。ここで注目すべき 点は,事業終了後もこの取組が亀田中校区だけ続けられたということです。そして,この小中連 携事業をより実行力のある組織にしようと,学習規律についての交流が行われました。これは, 「中1ギャップ」への対応など,中学校の学習規律にある程度合わせた指導を,小学校段階から しっかりと行おうという取組でした。 そこで,本校では学習規律については未整備の領域であったので,より具体的な指導内容で, これも全校でそろえる指導となる「中央小学習スタンダード」を作成しました。 学習規律と言えば,通常,馴染みやすさや掲示などのことを考えて,キーワード的なものにな りがちですが,本校の学習規律は,その具体が文章で書かれているので,指導内容がはっきりと し,学級担任による指導の差が出ないように配慮されています。また,年間指導計画を立てて, 日々の学級のめあての中に取り入れて帰りの会で振り返りをしたり,学期ごとの重点について, 子どもたちは 4 段階の数値で,教職員は記述にて振り返りをし,各学級・学年の交流をしたりし ながら定着化を図っています。 3 おわりに 「学校を変えたい!」と言う強いモチベーションと一枚岩になれる教師集団であったことなど, 本校の変容には,様々な偶然や要因が考えられますが,なにより,それらの実践を通して子ども たちや保護者の意識が大きく変わったことが,大きな収穫であったと思います。 「学校教育校門出ず」という言葉を聞いたことがありますが,本校の教育活動も,なかなか効 力を発揮できなかったのですが,ここ数年の取組で,少しずつですが学校が変わっています。今 後も,これらを継続的に取り組んでいくために「継承の輪」を広げていきたいと思います。
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