胃瘻症例に対する多職種での関わり ―経口摂取再開が可能となった症例― 介護老人保健施設 やまゆりの里 理学療法士 朝熊 奈緒子 はじめに 当施設は100人の入所者のうち約5%の方が胃瘻 を造設している. 胃瘻の方に対しても本人の主訴を尊重し経口摂取 への移行を目指し,医師の指示のもと看護師,介 護士,管理栄養士,リハ職が介入し,口腔ケアや 嚥下訓練を行っている. 今回,胃瘻造設者に対して多職種が連携し,頻繁 に介入したことが一助となり楽しみ程度ではある が食事が可能となった一例を経験したので報告す る. 【事例紹介】 年 齢:90 歳代 性 別:女性 疾患名:脳梗塞,パーキンソン症候群,横紋筋融解症, 認知症(MMSE12/30),弱視,除脈あり 備 考:「食べたくない」とのことでH24.10に胃瘻造設. H25.1に当施設入所,経口摂取を行わないまま1年 強経過後,H26.6に経口摂取再開を主訴に介入を 試みた. 介入当初 水飲みテスト:3点 フードテスト(ゼリー):5点 ※生活場面では頸部伸展 傾向であり唾液でむせる こともあった. 介入当初 観察から: 舌運動,口唇閉鎖,嚥下反射,食物の送り込み, 舌骨拳上は良好であるが,液体では喉頭蓋が 喉頭口を閉じるタイミング遅延を生じ誤嚥の危険 性があると考えた. 介入手段: 少量ずつゼリーを摂取するよう直接訓練を実施した. スプーン操作の統一 (多職種での情報共有) ①下唇にスプーンの背で圧を加える ②スプーンを口の中に入れすぎない ③スプーンを水平に引くことを伝達した. 4週間後 ゼリーの摂取をきっかけに経口摂取への意欲が 高まり「他のものも食べてみたい」という訴えに繋 がっている。また、自力でのスプーン操作にも繋がっ た.現在はエプリッチ1本を昼食時に摂取している. 現在の状況と課題 認知症や注意力,弱視の影響により一部介助は 必要であり,経口摂取量も十分ではないが,嚥下状 況や栄養状態についても多職種で情報共有しながら 段階的に食形態の向上、入れ歯の調整等を進めて いる. まとめ 症例の「食べてみたい」という気持ちの変化を職員 が察知し経口摂取に向けて迅速に介入できたこと, また認知症,頸部伸展傾向であることや栄養状態 を多職種が理解したうえで介助方法を共有し,嚥下 訓練を継続的に行ったことが経口摂取に繋がったの ではないかと考える. 今後も利用者のQOLを考慮したうえでより安全で 安定した栄養摂取の方法を検討していきたい.
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