2015.9.1 第13回 福岡呼吸器相談室 福岡大学病院呼吸器内科 内野 順治 日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン 2014年版 ver1.1 IV期非小細胞肺癌1次治療 【推奨グレード】 A 強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる B 科学的根拠があり、行うよう勧められる C1 科学的根拠は十分ではないが、行うことを考慮してもよい C2 行うよう勧められるだけの科学的根拠が明確でない D 無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる IV期非小細胞肺癌の治療 EGFR遺伝子変異陽性 1次治療 増悪 2 非扁平上皮癌 ALK遺伝子転座陽性 1次治療 増悪 次 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性もしくは不明 1次治療 増悪 IV期 非小細胞肺癌 治 療 以 扁平上皮癌 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性の検索は必須ではない 降 1次治療 増悪 IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 組織型による効果・安全性の違い ペメトレキセドの有効性 ベバシズマブの有効性 重篤な有害事象を回避するため、扁平上皮癌患者、喀血 症状を有する患者、脳転移を有する患者は除外 IV期非小細胞肺癌の治療 EGFR遺伝子変異陽性 1次治療 増悪 2 非扁平上皮癌 ALK遺伝子転座陽性 1次治療 増悪 次 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性もしくは不明 1次治療 増悪 IV期 非小細胞肺癌 治 療 以 扁平上皮癌 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性の検索は必須ではない 降 1次治療 増悪 IV期非小細胞肺癌の治療 75歳未満 EGFR-TKI単剤 プラチナ製剤併用±ベバシズマブ プラチナ製剤併用±維持療法 非プラチナ製剤併用 ECOG PS 0-1 75歳以上 非扁平上皮癌 EGFR遺伝子変異 陽性 ゲフィチニブ単剤または エルロチニブ単剤 非プラチナ製剤単剤 カルボプラチン併用 ゲフィチニブ単剤または エルロチニブ単剤 非プラチナ製剤単剤 プラチナ製剤併用 ECOG PS 2 注)ただし緩和治療については、PSの如何に関わらず、必要 に応じ癌治療と併行して行う ECOG PS 3-4 ゲフィチニブ単剤 ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group) Performance Status 0 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく発病前と同等にふるまえる 1 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできる。例えば軽い家事、事務など 2 歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助がいることもある。軽労働は出来ないが、日中の50%以上は起居している 3 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している 4 身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている IV期非小細胞肺癌の治療 EGFR遺伝子変異陽性 1次治療 増悪 2 非扁平上皮癌 ALK遺伝子転座陽性 1次治療 増悪 次 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性もしくは不明 1次治療 増悪 IV期 非小細胞肺癌 治 療 以 扁平上皮癌 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性の検索は必須ではない 降 1次治療 増悪 IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 非扁平上皮癌、EGFR遺伝子変異陽性 PS 0-1、75歳未満 ①EGFR-TKI単剤を行うよう勧められる(A) ②1次治療で推奨される細胞障害性抗がん剤を行うよう勧められる(B) ゲフィチニブ エルロチニブ アファチニブ EGFR遺伝子変異肺がん IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 非扁平上皮癌、EGFR遺伝子変異陽性 PS 0-1、75歳未満 日本人肺腺癌における発ガン誘発遺伝子変異 Kohno T, et al. : Nat Med 2012より改変 IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 非扁平上皮癌、EGFR遺伝子変異陽性 PS 0-1、75歳未満 ①EGFR-TKI単剤を行うよう勧められる(A) ②1次治療で推奨される細胞障害性抗がん剤を行うよう勧められる(B) 研究 EGFR -TKI 患者群 PFS(月) OS(月) N TKI CTx HR TKI CTx 0.32 27.7 26.6 35.5 38.8 22.7 28.9 22.9 20.8 N/A N/A N/A N/A EGFR変異で選択した患者における第III相試験 NEJ002 日本人 PNA-LNA Clamp ゲフィチニブ 228 10.8 5.4 WJTOG3405 日本人 Cycleave他 ゲフィチニブ 172 9.6 6.6 OPTIMAL 中国人 Cycleave PCR エルロチニブ 154 13.7 4.6 EURTAC 欧州 (西,伊中心) TqqMan PCR assay エルロチニブ 173 10.4 5.1 Lux Lung3 欧米26% アジア72% Therascreen EGFR 29 アファチニブ 345 11.1 (13.6) 6.9 Lux Lung 6 アジア人 Therascreen EGFR 29 アファチニブ 365 11.0 5.6 (0.24-0.44) 0.52 (0.38-0.72) 0.16 (0.10-0.26) 0.37 (0.25-0.54) 0.58 (0.43-0.54) 0.28 (0.20-0.39) NEJ002(ゲフィチニブvsChemo) におけるPFS NEJ002(ゲフィチニブvsChemo) におけるOS A Inoue,et al. Annals of Oncology24:54-59.2013 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌を対象にした試験において、 EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ)は、プラチナ製剤併用療法 に対して無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が報告されている 一方で1次治療での比較において、OSに対する優越性は示されていない。 EGFR遺伝子変異陽性患者において、全治療期間におけるEGFR-TKI単剤と細胞障害 性抗がん剤の投与順序に関しては、現時点では明確な結論はないが、EGFR-TKI単剤 による治療を逸しないことが推奨される IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 非扁平上皮癌、EGFR遺伝子変異陽性 PS 0-1、75歳以上 ①ゲフィチニブ単剤またはエルロチニブ単剤を行うよう勧められる (A) ②1次治療で推奨される細胞障害性抗がん剤を行うよう勧められる (B) 75歳以上のEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌を対象にしたゲフィチニブ単剤の単アーム第II相試験 PFS 12.3ヶ月 奏効率74% Maemondo m,et al.: J Thorac Oncol 2012;7(9):1417-22 IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 非扁平上皮癌、EGFR遺伝子変異陽性 PS 2 ①ゲフィチニブ単剤またはエルロチニブ単剤を行うよう勧められる (A) ②1次治療で推奨される細胞障害性抗がん剤を行うよう勧められる (B) EURTAC試験 OPTIMAL試験 Zhou C,et al.Lancet Oncol.12(8):735-42.2011 Rosell R,et al.Lancet Oncol.13(3):239-46.2-12 IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 非扁平上皮癌、EGFR遺伝子変異陽性 PS 3-4 ゲフィチニブ単剤を行うよう考慮しても良い (C1) NEJ001(EGFR遺伝子変異陽性、PS不良他予後 不良例に対するゲフィチニブ)の有用性 PS不良、男性、喫煙歴、既存の間 質性肺炎、正常肺領域が少ないも の、心疾患を合併したもの ⇒間質性肺障害発症リスク高い ⇒慎重な検討も必要 Inoue A,et al.J Clin Oncol.27(9):1394-400 Ando M,et al.J Clin Oncol.24(16):2549-56 現時点でのEGFR-TKIの使い分け EGFR遺伝子変異陽性例 L858R Del19 第二世代TKI:アファチニブ • LUX-Lung 3:EGFR遺伝子変異を有する転移 NSCLC患者を対象に アファチニブ vs シスプラチン+ペメトレキセド を比較した無作為化第Ⅲ相試験 • LUX-Lung 6:EGFR遺伝子変異を有するアジア人進 行肺腺がん患者を対象に、ファーストラインとしての アファチニブ vs ゲムシタビン/シスプラチン を比較する無作為化非盲検第Ⅲ相試験 第二世代TKI:アファチニブ ASCO(2013) Abstract #8061 第二世代TKI:アファチニブ ASCO(2014) Abstract #8004 第二世代TKI:アファチニブ ASCO(2014) Abstract #8004 第二世代TKI:アファチニブ • LUX-Lung 3:EGFR遺伝子変異を有する転移 NSCLC患者を対象にアファチニブとシスプラチン+ペメトレ キセドを比較した無作為化第Ⅲ相試験 • LUX-Lung 6:EGFR遺伝子変異を有するアジア人進 行肺腺がん患者を対象に、ファーストラインとしてのアファチ ニブとゲムシタビン/シスプラチンを比較する無作為化非盲 検第Ⅲ相試験 • LUX-Lung 7:EGFR遺伝子変異を有する肺腺がん 患者を対象に、ファーストラインとしてのアファチニブとゲ フィチニブを比較する第Ⅱb相試験 第一世代TKI+分子標的薬 ASCO(2014) Abstract #8005 第一世代TKI+分子標的薬 ASCO(2014) Abstract #8005 第一世代TKI+分子標的薬 ASCO(2014) Abstract #8005 第一世代TKI+分子標的薬 ASCO(2014) Abstract #8005 第一世代TKI+分子標的薬 Del 19 L858R エルロチニブ+ベバシズマブ 18ヶ月 13.9ヶ月 ゲフィチニブ (NEJ002) 11.5ヶ月 10.8ヶ月 エルロチニブ (JO22903) 12.5ヶ月 11.0ヶ月 アファチニブ (Lux-Lung) 16-17ヶ月 11-12ヶ月 Yang JC, et al., ASCO 2014 Abstract 8005, Maemondo M, et al., N Engl J Med 2010;362:2320-2388 Goto K,et al.Lung Cancer.2013, Yang JC, et al., ASCO 2014 現時点でのEGFR-TKIの使い分け EGFR遺伝子変異陽性例 Del 19 L858R エルロチニブ+ベバシズマブ 18ヶ月 13.9ヶ月 ゲフィチニブ (NEJ002) 11.5ヶ月 10.8ヶ月 エルロチニブ (JO22903) 12.5ヶ月 11.0ヶ月 アファチニブ (Lux-Lung) 16-17ヶ月 11-12ヶ月 L858R • ゲフィチニブ • エルロチニブ(+ベバシズマブ) Del19 • アファチニブ • エルロチニブ(+ベバシズマブ) Yang JC, et al., ASCO 2014 Abstract 8005, Maemondo M, et al., N Engl J Med 2010;362:2320-2388 Goto K,et al.Lung Cancer.2013, Yang JC, et al., ASCO 2014 IV期非小細胞肺癌の治療 EGFR遺伝子変異陽性 1次治療 増悪 2 非扁平上皮癌 ALK遺伝子転座陽性 1次治療 増悪 次 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性もしくは不明 1次治療 増悪 IV期 非小細胞肺癌 治 療 以 扁平上皮癌 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性の検索は必須ではない 降 1次治療 増悪 IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 非扁平上皮癌、ALK遺伝子転座陽性 PS0-1 、75歳未満 PS0-1 、75歳以上 PS2 ①クリゾチニブ単剤を行うよう勧められる (A) ②1次治療で用いられる細胞障害性抗がん剤を行うよう勧められる (B) IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 非扁平上皮癌、ALK遺伝子転座陽性 PS0-1 、75歳未満 PS0-1 、75歳以上 PS2 ①クリゾチニブ単剤を行うよう勧められる (A) ②1次治療で用いられる細胞障害性抗がん剤を行うよう勧められる (B) 日本人肺腺癌における発ガン誘発遺伝子変異 PROFILE1014 一次治療におけるクリゾチニブvs化学療法 ①、②ALK遺伝子転座陽性に対するクリゾチニブ単剤はPS0-2が大部分を占める 第I/II相試験にてORR61%、PFS10ヵ月と良好な結果を示し1)2)、第III相試験においてプ ラチナ製剤併用療法に比して有意なPFSの延長を示した。 また、レトロスペクティブ解析の結果から、ALK遺伝子転座陽性例ではクリゾチニブ単剤投与の 有無によってOSが大きく異なることが示唆されている3) 以上より、ALK遺伝子転座陽性例におけるクリゾチニブ単剤の推奨グレードはA1とした。細 胞障害性抗がん剤についてクリゾチニブとの第III相試験は1つのみであるが、EGFR遺伝子 変異陽性例における第III相試験と同様の結果が示されており、推奨グレードはBとした。 1)Kwak EL ,et al.N Engl J Med.2010;363(18):1693-703. 2)Camidge DR ,et al.Lancet Oncol.2012;13(10):1011-9. 3)Shaw AT ,et al.Lancet Oncol.2011;12(11):1004-12 アレセンサ IV期非小細胞肺癌の治療 EGFR遺伝子変異陽性 1次治療 増悪 2 非扁平上皮癌 ALK遺伝子転座陽性 1次治療 増悪 次 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性もしくは不明 1次治療 増悪 IV期 非小細胞肺癌 治 療 以 扁平上皮癌 EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転 座陰性の検索は必須ではない 降 1次治療 増悪 IV期非小細胞肺癌の1次化学療法 扁平上皮癌 PS0-1 、75歳未満 <レジメン> ①プラチナ製剤と第3世代以降の抗がん剤併用を行うよう勧められる (A) ②第3世代抗がん剤併用(ノンプラチナレジメン)も選択肢として勧め られる (B) ③PEMは行わないよう勧められる (D) ④ベバシズマブは行わないよう勧められる (D) <維持療法> PS0-1に対するプラチナ製剤併用療法4コース後、病勢増悪を認めず毒性 も忍容可能なものに対してswitch maintenance、continuation Maintenance共に行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない (C2) 免疫療法 免疫監視機構 免疫逃避 MHC:主要組織適合遺伝子複合体 PD-L1:Programmed death-ligand 1 TCR:T細胞受容体 PD-L2:Programmed death-ligand 2 PD-1:Programmed cell death-1 免疫療法 PD-1抗体 MHC:主要組織適合遺伝子複合体 PD-L1:Programmed death-ligand 1 TCR:T細胞受容体 PD-L2:Programmed death-ligand 2 PD-1:Programmed cell death-1 *本邦未承認情報が含まれてます。 *本邦未承認情報が含まれてます。 *本邦未承認情報が含まれてます。 *本邦未承認情報が含まれてます。 *本邦未承認情報が含まれてます。 *本邦未承認情報が含まれてます。 *本邦未承認情報が含まれてます。 免疫療法 PD-1抗体 MHC:主要組織適合遺伝子複合体 PD-L1:Programmed death-ligand 1 TCR:T細胞受容体 PD-L2:Programmed death-ligand 2 PD-1:Programmed cell death-1 生存率の向上と治療費 PFS J Thorac Oncol. 2011 Aug;6(8):1413-7. OS 生存率の向上と治療費 イレッサ or タルセバを何らかの理由で減量した患者 33名 PFS (months) 12.0 生存率の向上と治療費 イレッサ or タルセバを何らかの理由で減量した患者 33名 PFS (months) 12.0 PFS (months) < 1.45 m2 = or > 1.45 m2 16.5 9.0 生存率の向上と治療費 イレッサ or タルセバを何らかの理由で減量した患者 33名 PFS (months) 12.0 PFS (months) < 1.45 m2 = or > 1.45 m2 16.5 9.0 肺癌治療における今後の課題
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