1(3)[5]情報技術の習得と子育て支援への応用 ここでは、情報収集及び処理能力の育成、 子育て支援情報の発信者としての保育者を 養成するために、メディア・リテラシ−と 基礎的コンピューター活用能力を育成する ねらいがある。岡山大学教育学部には、学 生が常時使用できるパソコン室があり、パ ソコン8台、プリンター3台がある。しか し、教育学部だけで 1273 人もの在学生が おり、パソコンを使いたい時に使用できな い場合もある。使用可能日時は、月曜から 金曜日の8時 30 分から 18 時と限られている。 また、幼児教育講座学生控室には、1台のパソコンとプリンターがあるのみであった。 こういった現状では、「情報技術の習得と子育て支援への応用」というねらいを達成する ための教育環境としては不十分と考え、幼児教育講座専用のパソコンを3台購入し、パソ コンを好きな時間に使用することができる環境整備をおこなった。その4か月後に大学4 年生を対象にアンケートをおこなったところ、次のような結果が出た。アンケートの回答 者は 15 名である。 ①学習環境について ②その理由 「卒業論文や勉強で出た疑問をすぐに、調べ 大変良くなった 14 良くなった 変わらない 1 悪くなった 0 0 ることができるから」「4台あるので、待た ずに使える」「自宅では、インターネットが 利用できないが、卒論・実習関係のこと等が、すぐに調べられたから」「今までは、1台 だったので、人が殺到したり、使えなかったりしたが、4台あることで解消したから」 「話 し合いをしながら資料をつくる時などに、学内のパソコンでは話し合いもしにくいが、研 究室だとしっかり話し合いながら資料をつくることができるから」など。 ③研究室内にパソコンがある方が良いと思われる理由 「学生用のパソコンは、沢山の人が利用するため、利用できない時間がある」「夜間に も使うことができる」「大学内のパソコンは、台数が少ない上に、時々壊れていたり、使 用する学生も多く、なかなか使うことができない。研究室内であれば、ちょっと使いたい 場合でも、順番を替わってもらったりして、みんなで交代しながら使えるので利用しやす い」「みんなといろいろな相談をしながら、調べたりすることができる」「幼児教育に関 するデータを保存できるので、それを共有することができる」など。 ④インターネットの活用はしますか。 15 名中 14 名が活用する。1名が活用しない。 - 43 - ⑤研究室内のパソコンをどんなことに使っていますか 卒業論文 インター レポート ネット の作成 14 8 就職試験 関係情報 検索 4 印刷 3 文献検察 3 図書館の 資料の収 本の検索 集 2 インター ン 日程表 1 1 1 ⑥インターネットで、どのようなサイトにアクセスしましたか 就職試験関係(幼稚園、保育園、各 10 自治体、教育委員会等) 卒業論文関係 5 図書館(岡山大学図書館、県立図書 館、国立国会図書館、図書館) 5 保育関連(育児応援関連サイト、保 4 就職試験関係 卒業論文関係 図書館 保育関連 文部科学省 厚生労働省 その他 育雑誌、手遊び、パネルシアター) 文部科学省 3 厚生労働省 3 その他(OPEC、ニュース) 2 ⑦いつ使いますか 授業のない 空き時間 14 ⑧利用頻度はどのくらいですか。 放課後 朝 10 時々 土・日曜日 5 11 1 毎日・ほぼ ほとんど使 一度も使っ 毎日 わない ていない 4 0 0 ⑨その回答をした理由 ⑧で、時々と答えた学生の理由「必要 な時に使うため」「学校に来たときは、毎 日使っています」「家のパソコンを使う日 もあれば、学校のパソコンを使う日もあ るから」「研究室で、友達と一緒に調べる ことができるため」等。 ⑧で、毎日・ほぼ毎日と答えた学生の 理由「卒業論文で忙しいから」「最近は、 卒業論文で、忙しいので」「家よりも集中 して学習できるから」「家で卒業論文や調 べ物をするよりも研究室で作業する方が集中でき、はかどるから」といったアンケートの 結果より、パソコン環境の整備をおこなったことにより、学生は学習環境がよくなったと 実感していること、特に、インターネットを有効に利用し、学業や就職に必要な情報収集・ - 44 - 処理をしていることがわかる。また、今までより機器類の故障もなく、はるかに効率的に 学習が進めることができるようになったようである。尚かつ、学生同士で相談しながら資 料づくりをしたり、情報の共有をしたりする等しており、パソコンを媒体としてのかかわ りや育ち合いもみられる。こうしたことからも、パソコン環境の整備をすることにより、 まずは、メディア・リテラシーと基礎的コンピューター活用能力を育成するための基盤を つくることができたと言えるのではないであろうか。 (岡山大学:高橋敏之) 岡山大学教育学部幼児教育講座の教務関係のパソコン活用についてここでは述べる。 先ず、幼児教育講座学生研究室設置のパソコンのトップ画面にフォルダーを2つ用意し た。1つは「授業・卒業研究関係」であり、もう1つは「子育て支援関係」である。そし て、関係ホームページをいくつかお気に入りに追加し、そのアイコンをフォルダーに集め た。「授業・卒業研究関係」には、「岡山大学シラバス」、「岡山大学附属図書館」、「CiNii (NII 論文情報ナビゲータ)」、「Webcat」、「NDL-OPAC」を集めた。「子育て支援関係」に は、「岡山県保健福祉部子育て支援課」を集めた。次に、本年の2月初旬から学生に対す る指導を開始した。学生研究室でその頃勉強していた学生たちに次の指導を行った。①「授 業・卒論関係」と「子育て支援関係」のフォルダーをトップ画面に用意し、その中に関係 ホームページのアイコンをいくつか集めたので、活用すること。②関係ホームページを見 つけた場合、そのアイコンをフォルダーに集めること。③このことを研究室に来る他の学 生たちにも伝えてほしい。 今後は、関係学生のより多くが研究室設置のパソコンを積極的に活用するように方向づ ける必要がある。そのような指導を関係学生全員に徹底するのは、やはり、年度初めのオ リエンテーションが適切であろう。そこで、来年度のオリエンテーションで次の指導を行 う予定である。a)学生研究室のパソコンのトップ画面に「授業・卒論関係」と「子育て支 援関係」のフォルダーを用意し、関係ホームページのアイコンを集めている。学生諸君で 整理し直すなどして、活用しやすい有益なものにしてほしい。b)特に上級生は下級生に収 集・整理したものを伝え、年々内容が充実していくような講座文化を創ってほしい。 (岡山大学:横松友義) 幼児教育講座では、学生控室に3台のパソコンとプリンターを設置したので、学生は自 由にこのパソコンを利用することができる。このパソコンは、インターネットにも接続可 能であることから、レポートの作成や、実習の準備、卒論にも利用し、学生たちから学習 能率が上がったとの報告を得ている。 幼児教育講座の一大行事として行われている「学外合宿研修」の委員は、そのすべての 資料をパソコンに入力することになっており、文書を作成することはもちろん、表を作成 したり、絵や図を挿入したりなど、試行錯誤の末、さまざまな技術を獲得する機会となっ ている。後輩はそれらの資料を引き継ぎ、加筆・修正を行いながら、当該年度に必要な資 料等の準備をしていくこととなる。また、「幼児心理学演習」では、幼児期の子どもをも つ保護者を対象にした、子育て情報のチラシづくりを行った。各自が、パソコンで文字や デザイン、色などを工夫し、「子どもの心の発達と子育て上のアドバイス」を内容として - 45 - 盛り込んだ。あくまでも、忙しい保護者が関心をもって、手軽に読めることを意識して、 作成に取り組んだ。できあがったチラシは受講生相互に評し合い、学びを深めた。 学生たちは、必要な情報を適度な量で、見やすくまとめることの難しさと工夫の必要性 について学習したようであった。「家族援助論」では、地域の子育て支援の情報をインタ ーネットを利用して収集した。学生たちは子育て真っ最中の保護者と同じように必要なキ ーワードを入力して検索した。さまざまな取り組みがあるものの、広報が十分でないこと を問題点として捉えたようである。 (岡山大学:片山美香) 保育者に情報処理技術が必要な理由は、 情報処理能力の向上により保育の質を向上 させることができるからである。パソコン を効果的に使用することにより事務処理や 保護者との対応などの業務の効率化を進 め、子どもと接する時間の確保や保育の内 容を高めることができる。また、氾濫する 情報の中から適切に判断し選択する力は、 子どもやその家族と保育者自身を守り、保 育の質を高めるためにも必要な要素であ る。 高等学校では、2003 年度実施の高等学校学習指導要領(以下「新課程」)により、新し い教科「情報」が設置された。2006 年は「情報」を学んだ高校生が初めて大学に入学し た年である。保育士養成校における情報処理教育を改善することを目的として、A短期大 学幼児教育学科の 2005 年度入学生と 2006 年度入学生を対象に情報処理に関する調査を行 い、新課程履修者と 1989 年告示の高等学校学習指導要領(以下「旧課程」)履修者の情報 処理に関する能力や経験を分析した。その結果、新課程履修者は、旧課程履修者よりもイ ンターネットやメールの処理能力が有意に上昇したが、コンピュータの基本操作やタッチ タイピング、ワープロ、表計算を処理する能力では有意な差は見られなかった。また、各 高校における情報インフラの整備状況の差や、情報教育を担当する人的な資源が不足して いる問題のため、高校間で実施内容やレベルのバラつきが大きくなっていた。 今後、高等学校におけるインフラ整備の完了や情報処理担当者の能力向上などにより毎 年教育内容が変化すると予想される。また、2008 年度からは高等学校だけでなく、中学 校から新学習指導要領で情報処理教育を学んだ学生が入学する。今後、1年ごとに入学生 の情報処理のスキルが、ダイナミックに変化すると予想される。これからも調査を継続し て、学生の情報処理の知識と技術を把握し、保育士養成におけるカリキュラムの編成や教 育方法の改善に役立てていくことが必要である。 *参考文献:斎藤健司・宇野文夫:「学習指導要領の改訂による保育者養成校入学者の情 報処理能力の異同」『新見公立短期大学紀要』27.pp145-150(2006) (新見公立短期大学:斎藤健司) - 46 -
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