ちょっと寂しい懐具合 ∼団塊世代の実像∼

住友信託銀行 経済調査レポート NO.14
2001・10・05
住友信託銀行 調査部
ちょっと寂しい懐具合
∼団塊世代の実像<収入編>∼
担当:青木([email protected])
団塊世代の懐具合は、彼らより 10 歳上の世代が 50 代前半だったころよりや
や寂しいと言えそうです。上の世代より 190 万円ほど住宅ローン残高が多い上、
所得も 40 代後半で頭打ちになってしまったためですが、ディスカウントストア
や 100 円ショップを抵抗無く利用するなど、結構しなやかに対応しているよう
に見えます。
1.純資産は上の世代より小額
(1)資産も多いが負債も多い
団塊世代と団塊世代より 10 歳上の世代の、50 代前半時点における金融資産と
金融負債の残高を比べると、資産は 160 万円、負債は 225 万 5000 円、ともに団
塊世代の方が多くなっています。50 代前半時点において、団塊世代は上の世代
より多額の資産を持っているけれども、負債はそれ以上に多いわけです。
この結果、金融資産から金融負債を差し引いた純金融資産残高は、団塊世代
が 896 万 2000 円、10 歳上の世代が 961 万 7000 円と、団塊世代の方が 65 万 6000
円少なくなっています(図 1)。
(2)大きい住宅ローンの存在
団塊世代の負債は、10 歳上の世代の 50 代前半時点の負債の約 1.5 倍です。こ
れだけ大きな差が出る理由は、住宅・土地関連負債(住宅ローン)残高の違い
にあります。団塊世代は 556 万 8000 円、10 歳上の世代は 365 万 3000 円で、そ
の差は 191 万 5000 円に上ります(図2)。
1
万円
1800
1500
図1 50代前半時点の1世帯当たり金融資産・負債
(1995年価格)
1551.6
1391.7
1200
900
600
896万
2000円
金融純資産
961万7000円
655.5
429.9
300
0
団塊より10歳上
の世代
団塊世代
(1990年時点)
(2000年時点)
金融資産
金融負債
資料:総務省「貯蓄動向調査」
万円
700
600
500
400
図2 50代前半時点の1世帯当たり負債残高(1995価格)
22.7
76.1
29.5
負債合計
429万9000
円
16.8
47.9
31.9
300
200
655万
5000円
527.3
333.4
100
0
団塊より10歳上
の世代
(1990年時点)
団塊世代
(2000年時点)
住宅・土地関連負債(金融機関)
住宅・土地関連負債(金融機関外)
その他負債(金融機関)
その他負債(金融機関外)
資料:総務省「貯蓄動向調査」
2
2 . 所 得 も 40 代 で 頭 打 ち
フローの所得の面から見ても、団塊世代の懐具合は暖かいとは言えなさそうです。団塊
世代は、40 代後半から 50 代前半にかけて賃金が伸びなかった――つまり賃金が 40 代後半
で頭打ちになった――初めての世代なのです(図 3)。
50 代前半まで賃金が伸び続けた 5 歳上の世代、それを更に 50 代後半(退職時)までキー
プできた 10 歳上の世代と比べると、これから先 600 万円を超えることなく終わる(であろ
う)団塊の世代はやや気の毒な気がします。
3.価格コンシャスな暮らしで対応
重いローン負担に所得も頭打ち、更に、年金支給開始年齢引き上げも決定――というわ
けで、支出を切りつめざるを得ない場面も多い団塊世代の今日このごろ。
50 代・60 代を対象としたあるアンケート調査では、ドラッグストアや 100 円ショップ、
家電量販店、ディスカウントストアを「よく利用」するのは 3 割程度、「たまに利用」も含
めると7∼8 割程度が利用しており、特に 50 代前半ではその比率が高い――という結果も
出ています。
ファーストフードの平日割引で昼食を済ませたり、ドラッグストアや 100 円ショップな
ど比較的新しい業態も抵抗なく利用するなど、柔軟な対応力を発揮し、少なくとも日常の購
買行動においては、団塊世代は価格コンシャスな日々を送っているようです。
万円
650
図3 世代別標準労働者賃金の推移(1995年価格)
600
550
500
450
40代前半時点
40代後半時点
50代前半時点
団塊より10歳上の世代
55-59歳時点
団塊より5歳上の世代
団塊世代
資料:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
3
☆今後、高齢消費者として、あるいは高齢労働力として、そのパワーが期待さ
れることになる団塊世代( 1947∼49 年生まれ)。今回から数回にわたり、統計デ
ータから捉えた団塊世代の実像をお伝えします。次回は<労働編>を予定して
います。
※本資料は作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的
としたものではありません。
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