No.45 2015 年 11 月 20 日 悲惨指数(misery index)で見るブラジル 公益財団法人 国際通貨研究所 経済調査部 上席研究員 森川 央 2013 年 6 月、公共料金の値上げを発端にブラジル全土に広がった反政府デモへの対 応のため、ルセフ大統領は訪日の延期を余儀なくされた。今年、仕切り直しの訪日日程 が決まり、12 月上旬に訪日が予定されている。それにあわせ、日本国内でブラジル関 連のイベント、セミナーなどが増えており、国内の歓迎準備は着々と進んでいる。だが ブラジルから届くニュースは暗い。もはや循環的な景気後退という段階ではなく、大不 況というべきかもしれない。 今週は、 重要な経済指標が 3 つ発表された。第 1 はブラジル銀行が発表している IBC-Br 指数。これは月次 GDP ともいわれるもので、ブラジル経済全体を示す経済活動指数で ある。9 月は前年比-5.9%になり統計開始以来、最大の落ち込みとなった。7-9 月期は 同-5.0%、リーマンショック後の下落幅を大きく上回っている。しかも当時の下落は短 期間で終わったのに対し、今回は既にマイナスは 6 四半期に及んでいるうえ、終わりが 見えない。この指数は実質 GDP とピタリと一致するわけではないが相関は強い。GDP 統計でも相応の落ち込みが記録されることだろう。 月次GDP(IBC-Br) 155 150 145 140 135 130 125 120 115 110 (2002=100) (前年比、%) 前年比(右目盛) 指数(季調値) 2008 2010 2012 12 10 8 6 4 2 0 (2) (4) (6) 2014 (資料)トムソンロイター 2 番目は失業率である。10 月の失業率は 7.9%(未季調)となり、前年同月の 4.7%か ら 3.2 ポイント上昇した。最近の動きをみると、この 1 年間で失業率が急騰し始めたこ とが分かる。ブラジルのコンサルタント会社は、今後 3 年で約 300 万世帯の「新中間層」 1 が、再び貧困層に転落すると予想している。ブラジルの消費市場は構造的な低迷期を迎 える可能性がある。 最後はインフレ。ブラジルはかつてハイパー・インフレに悩まされただけに、物価統 計は詳細で、速報値も公表されている。それよると 11 月中旬の消費者物価上昇率は 12 年ぶりに 2 桁を上回り前年比 10.2%となった。11 月全体のインフレ率も恐らく 2 桁を上 回ることになるだろう。 失業率とインフレ率を加えたものが悲惨指数(misery index)だ。直近のデータを足 すと指数は 18.1 になる。 これは 2005 年 1-3 月期以来の高さだ。これよりも高いのは 2002 年。「経済危機」と呼ばれた年である。 失業率 悲惨指数 (%) 9 (%) 30 8 25 インフレ率 7 20 失業率 6 15 5 10 4 5 0 3 13/11 14/2 14/5 14/8 14/11 15/2 15/5 2002 15/8 2004 2006 2008 2010 2012 2014 (資料)トムソンロイター 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、何らかの行動を勧誘するものではありません。ご利 用に関しては、すべて御客様御自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。当資料は信頼できる と思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性を保証するものではありません。内容は予告なしに 変更することがありますので、予めご了承下さい。また、当資料は著作物であり、著作権法により保護されてお ります。全文または一部を転載する場合は出所を明記してください。 2
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