07P241_本多 加奈

平成 24 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究
年度新潟薬科大学薬学部卒業研究Ⅱ
卒業研究Ⅱ
論文題目
エストロゲン関連受容体
エストロゲン関連受容体アゴニスト
関連受容体アゴニスト gsk4716 による
精巣へ
精巣への内分泌撹乱作用の
内分泌撹乱作用の検討
Examination of endocrine disruption on the testis by
estrogen related receptor agonist gsk4716
公衆衛生学
公衆衛生学研究室 6 年
07P241
本多 加奈
(指導教員:
指導教員:佐藤 浩二)
浩二)
要 旨
Diethylstilbestrol(DES)は 1938 年に開発された合成女性ホルモン(エストロゲン)剤である。
DES は 1930 年代後半から 1970 年代にかけて、流産、早産など妊娠中の治療あるいは予防に有
効であるという誤った認識のもとに米国をはじめ 30 か国以上の妊婦に流産予防や妊娠合併症治療
薬として広く使用された。しかし、生まれてきた子供に様々な生殖異常を誘発することが明らかとなり、
現在は使用が中止されているが、DES に暴露された妊婦とその胎児の数は、米国で最大 1 千万人、
それ以外の各国で数百万人にものぼると推定されている。また、DES を使用した妊婦やその子供の
みならず、数世代にわたる健康影響を与えていることを示唆するデータがある。そのため、現在でも
疫学調査が続けられており、その作用メカニズムに関する研究が注目されている。マウスなどの哺乳
類の実験動物を使用したモデルでは、胎児期や新生児期に DES を投与すると、雌における膣上皮
の不可逆的な角質化や子宮癌、雄における精子形成の異常などが確認されており、成獣において
も生殖器官において遺伝子発現の変化が起こっていることが確認されている。
そこで本研究ではDESの内分泌撹乱作用におけるER以外の作用点としてERRに着目し、
ERRβ、ERRγの特異的なアゴニストであるgsk4716を用いて研究を行った。新生児期マウスにDES、
gsk4716、E2を投与し、精巣における各種ER、ERRのmRNA発現量、ERRβタンパク質の発現をリ
アルタイムRT‐PCR法及びウェスタンブロッティング法を用いて定量的に解析した。
その結果、gsk4716による内分泌撹乱作用を明らかにするには至らなかったが、精巣においても、
我々の以前の精巣上体における研究と同様、DES投与によりERRβのmRNA量が増加し、逆にタン
パク質量は減少する、という結果が得られた。また、多様なパターンで各種遺伝子の発現が変化す
るということが分かった。
キーワード
1. DES
2. E2
3.gsk4716
4.ER
5.ERR
6.mRNA
7.RT-PCR 法
8.Western blot 法
目 次
1.略語一覧
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3.材料および方法
4.結果と考察
5.おわりに
謝 辞
引用文献
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
1.略語一覧
DES:diethylstilbestrol
E2:17β-estradiol
ER:estrogen receptor
ERR:estrogen related receptor
shp:small heterodimer partner
1
2. はじめに
近年、ある種の環境化学物質への暴露(とりわけ胎内暴露)が、内分泌系の撹乱を介して野生
生物やヒトにさまざまな有害影響をもたらすことが危惧されている。そのうちの 1 つである
diethylstilbestrol(DES)は 1938 年に開発された合成女性ホルモン(エストロゲン)剤である。
DES は 1930 年代後半から 1970 年代にかけて、流産、早産など妊娠中の治療あるいは予防に
有効であるという誤った認識のもとに米国をはじめ 30 か国以上の妊婦に流産予防や妊娠合併症
治療薬として広く使用された[1]。しかし、生まれてきた子供に膣・子宮頚部明細胞腺癌や膣扁平
上皮変化など様々な生殖異常を誘発することが明らかとなり、現在は使用が中止されている[2]。
しかし、DES に暴露された妊婦とその胎児の数は米国で最大 1 千万人、それ以外の各国で数百
万人にものぼると推定されている。また、DES を使用した妊婦やその子供のみならず、数世代に
わたる健康影響を与えていることを示唆するデータがある[3]。そのため、現在でも疫学調査が続
けられており、その作用メカニズムはエストロゲン作用を持つ内分泌撹乱物質を研究する上でも
注目されている。マウスなどの哺乳類の実験動物を使用したモデルでは、胎児期や新生児期に
DES を投与すると、雌における膣上皮の不可逆的な角質化や子宮癌、雄における精子形成の
異常などが確認されており、成獣においても生殖器官において遺伝子発現の変化が起こってい
ることが確認されている[4]。
マウスの新生児に DES や E2 を投与したところ、DES の投与では精巣における精子形成に大
きな異常を起こしたのに対し、E2 ではほとんど異常が見られなかったことや cDNA マイクロアレイ
を用いた解析において、DES と E2 の投与では発現が変化する遺伝子に明らかな違いがあったこ
とが報告されている[5]。
これまで、DES の作用は内在性エストロゲンの 17β-estradiol(E2)と同様に、Estrogen
Receptor(ER)を介する作用が主であると考えられてきた。しかし、E2 は ER にしか結合しないの
に対し、DES は ER のみならず、Estrogen Related Receptor(ERR)にも結合するため、ER を
介さない ERR との作用も存在すると考えられる。ERR は ER との相同性を元にクローニングされ
た核内受容体スーパーファミリーのメンバーであり、ERRα、ERRβ、ERRγ の 3 種類のサブタイプ
が存在する。これらはいずれも ERα、ERβ とは異なり、内在性エストロゲンである E2 には結合し
ないが、リガンドが結合しない状態で転写活性化能を持っている。現在のところ、内在性のリガン
ドは見つかっておらず、オーファンレセプターに分類されている。
DES の内分泌撹乱作用における ER の意義を明らかにするため、ERα 及び ERβ のノックアウ
トマウスを用いて新生仔に DES を投与したところ、ERα のノックアウトマウスでは野生型で見られ
2
たような生殖器の異常がほぼ完全に抑制されたという報告がなされている[6]。この報告から、
DES による生殖器の異常の誘発には少なくとも ERα が存在することが本質的に重要であると認
識出来る。しかし、DES と E2 の内分泌撹乱作用を比較すると DES の方が強力であることから、
ERα を介する作用に加えて、ERR を介する作用が相加的に働いている可能性が考えられる。こ
れまでは ERR に対する選択的なリガンドがなかったため、ERR を介する作用の研究があまり進
んでいなかったが、近年、ERR に対する選択的なアゴニストやインバースアゴニストが合成される
ようになったことで、状況が変化し始めている。
我々のこれまでの予備的な研究で、新生児期DES投与によって、マウスの精巣上体において、
ERRβのmRNAの著明な発現増加が観察されており、このことはDESの内分泌撹乱作用にERR
が何らかの関与をしていることを示唆している。
そこで本研究ではDESの内分泌撹乱作用におけるERα以外の作用点としてERR(特にERRβ)
に着目し、精巣における解析を行った。精巣は精巣上体と深い関係がある臓器であり、似たような
影響が表れる可能性があるが、今までのところ解析が行われていなかった。DESはERRα、
ERRβ、ERRγの3種類に対してインバースアゴニストとして働くことが知られている。本研究では
ERRβ、ERRγの2種類に対してアゴニストとして働くgsk4716(ERα、ERβには結合しない)を単
独、またはDESと同時に投与することにより、どのような影響が出るかを検討することにした。新生
児期マウスにDES、gsk4716、E2を投与し、精巣における各種ER、ERRのmRNA発現量、
ERRβタンパク質の発現をリアルタイムRT‐PCR法及びウェスタンブロッティング法を用いて定量
的に解析した。
3
3.材料および
材料および方法
および方法
1)内分泌撹乱モデルマウスの作成
マウスは C57BL/6 マウスを用いた。投与時期は広くモデルとして使われている新生仔期(生後
1~5 日)とし、被験物質はコーンオイルに溶解して 5 日間連続皮下投与した。対照群にはコーン
オイルのみを投与した。被験物質は diethylstilbestrol(DES) 3 µg/pup/day、17β-estradiol
(E2) 3 µg/pup/day、また、ERRβ,ERRγ 選択的アゴニストである gsk4716 3 µg/pup/day
を使用し、さらに DES 3 µg/pup/day + gsk4716 3 µg/pup/day の併用を行った。
2)組織学的解析
マウスから速やかに精巣を取り出し、10%ホルマリンに入れ、浸透させた。50%EtOH→70%
EtOH→80% EtOH→90% EtOH→95% EtOH→99.5% EtOH→100% EtOH の順に精巣を
各 1 時間入れて脱水した。キシレンアルコール(キシレン 1:無水アルコール 3)→キシレンⅠ→キ
シレンⅡの順に各 30 分間入れて透徹した。キシレンパラフィン混合液(キシレン 1:パラフィン 1)
→パラフィンⅠ→パラフィンⅡの順に各 1 時間入れてパラフィン包埋した。パラフィンブロックをトリ
ミングし、台木に取り付けた。ミクロトームを用いて薄切し、スライドグラスに乗せた。キシレンⅠ→
キシレンⅡ→100% EtOH→95% EtOH→90% EtOH→80% EtOH→70% EtOH の順にスラ
イドグラスを各 5 分間入れた。ヘマトキシリン染色液、エオシン染色液の順に染色した。70%
EtOH→80% EtOH→90% EtOH→95% EtOH→99.5% EtOH→100% EtOH の順に約5分
間入れ脱水した(70%と 80%のときは数秒間浸した)。スライドグラスの上に標本封入剤をつけ、カ
バーガラスで封入し、乾燥させた。その標本を顕微鏡で観察した。
3)RNA の抽出
精巣を RNAiso Plus(タカラバイオ)500 µL 中でホモジナイズし、クロロホルム 100 µL を加え
て激しく振って混合し、12,000 g、4 ℃で 15 分間遠心した。水層を新しいチューブに移し、イソプ
ロパノールを 500 µL 加え、混合したら 12,000 g、4 ℃で 10 分間遠心した。上清を除き、75%エ
タノールを 500 µL 加えて洗浄し、7,500 g、4℃で 5 分間遠心した。沈殿を残して上清を捨て、乾
燥させて RNA を抽出し、吸光光度計で濃度を測定した。
4
4)逆転写反応
TURBO DNA-free kit(Ambion)を用いて、RNA に含まれるゲノム由来 DNA を除去した。
High Capacitiy cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を用いて 25℃ 10
分間→37℃ 120 分間→85℃ 5 秒のプログラムを作成し、逆転写反応を行った。
5)Real-Time PCR 反応
逆転写反応により合成された cDNA 15 µL に Sterile H₂O 135 µL を加えて 10 倍に希釈し
た。反応液は Template cDNA 2 µL、SYBR Premix Ex TaqⅡ 10 µL、PCR Forward
Primer 0.1 µL、PCR Reverse Primer 0.1 µL、Sterile H₂O 4.8 µL で作製し、Mini Opticon
(Bio-Rad)を用いて行った。プライマーは β-actin、ERRα、ERRβ、ERRγ、ERα、ERβ、shp を
用い、結果のノーマライズには β-actin を用いた。
6)Western blot 法
10% Soudium dodecyl sulfate(SDS)添加の polyacrylamide gel を作製して電気泳動を行
った後、polyvinylidene difluoride(PVDF)膜(Nippon Genetics)に転写し、それをスキムミル
ク(Wako)に浸して一晩ブロッキングを行った。一次抗体は ERRβ(ペルセウスプロテオミクス)を
用い、1 時間作用させた。また、二次抗体は goat anti-mouse IgG-HRP(Santa Cruz
Biotechnology)を用い、1 時間作用させた後、ECL Plus Western Blotting Detection
System(GE Healthcare)により発光させ、ChemiDoc XRS-J(Bio-Rad)で検出した。その後、
Quantity One ソフトウェアにて定量した。
5
4.結果と
結果と考察
まず、生後 1~9 日の各群における体重変化を比較した。gsk4716 単独を投与したとき
には対照群と変わらなかった。しかし、DES と gsk4716 併用時は、投与を続けていた 5
日目まではほとんど対照群と変わらなかったが、投与を止めた 6 日目以降になって体重の
増加が遅くなっていくという興味深い結果となった(Fig.1)。
6
体重(g)
5
4
corn
3
DES
2
gsk4716
1
DES+gsk
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
日齢
Fig.1 各群における体重の変化(生後 1~9 日)
次に、それぞれの精巣の標本(2 か月齢)を顕微鏡で観察した。対照として用いた corn oil 投
与群は、円状の精細管が並んでいるが、精細管の中には外側から精原細胞、精母細胞、精子細
胞、精子が同心円状に配列されている。しかし、他の被験物質投与時においては精細管の形、さ
らには精原細胞、精母細胞、精子細胞、精子の配置も乱雑になっているということが観察された
(Fig.2)。
6
(a)
(b)
(c)
(d)
Fig.2 生後 2 ヶ月マウスの精巣における各被験物質投与時の組織像
(a)corn oil、(b)DES、(c)gsk4716、(d)gsk4716+DES
次に、生後 6 日の新生児期マウスの精巣を用いて ERRα、ERRβ、ERRγ、ERα、ERβ、shp の
各 mRNA 発現量を解析した。
ERRα の発現量は、対照群と比較して DES 群で 1.5 倍、gsk4716 群で 0.7 倍、gsk+DES 群
で 0.6 倍、E2 群で 1.2 倍であった(Fig.3a)。ERRβ は、DES 群で 4.5 倍、gsk4716 群で 4.0
倍、gsk+DES 群で 0.9 倍、E2 群で 2.2 倍であった(Fig.3b)。ERRγ は、DES 群で 1.7 倍、
gsk4716 群では検出されず、gsk+DES 群で 0.1 倍、E2 群で 0.3 倍であった(Fig.3c)。ERα は、
DES 群で 1.2 倍、gsk4716 群で 4.6 倍、gsk+DES 群で 0.2 倍、E2 群で 0.5 倍であった(Fig.3d)。
ERβ は、DES 群で 0.7 倍、gsk4716 群で 0.3 倍、gsk+DES 群で 0.2 倍、E2 群で 0.2 倍であ
った(Fig.3e)。shp は、DES で 0.7 倍、gsk4716 群で 0.4 倍、gsk+DES 群で 0.5 倍、E2 群で
0.1 倍であり(Fig.3f)、ERβ と shp は、DES、gsk4716、gsk4716+DES、E2 群共に対照群より
も発現量が低かった。
過去に行った精巣上体での実験結果と同様に、今回、精巣での ERRβ の発現量は DES 群に
7
おいて増加していた。しかし、今回行った mRNA の発現解析はサンプル間のばらつきが非常に
大きく、サンプル数も少なかったため(n=1~3)、有意差を出すことはできなかった。
(a)
ERRα
(b)
2
1.5
1
0.5
0
(c)
5
4
3
2
1
0
ERRγ
(d)
2
1.5
1
0.5
0
(e)
ERRβ
ERα
5
4
3
2
1
0
ERβ
(f)
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
shp
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
Fig.3 定量 PCR 法で解析した、生後 6 日マウスの精巣における各遺伝子の発現量。対照群
(コーン油投与群)における発現量を 1 とした。
8
次に ERRβ タンパク質の発現量に着目し、Western blot 解析を行った。mRNA 量が増加する
とタンパク質の量も増えることが多いことから、DES 群や gsk4716 群では対照群よりもタンパク質
の量が多いことが予想されたが、実際は DES 群では対照群の 0.4 倍、gsk4716 群では対照群
の 0.5 倍と少なかった。しかし、実は精巣上体においても DES 群で ERRβ の mRNA 量の増加
とタンパク質量の減少が見られており、同様の制御機構が働いている可能性が考えられた。また、
gsk4716+DES 群では gsk4716 と DES による相加的な効果は見られず、タンパク質減少の程
度がやや小さくなっていた(Fig.4)。
ERRβ
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
corn
DES
gsk4716
gsk+DES
E2
Fig.4 Western blot 法で解析した、生後 6 日マウスの精巣における ERRβ タンパク質の発現
量。対照群(コーン油投与群)における発現量を 1 とした。
9
5.おわりに
これまで、マウスの新生児に DES または E2 を投与したとき、DES の毒性の方が大きく、発現
が変化する遺伝子にも違いがあるということが明らかにされていたが、その原因として DES が
ERRα、ERRβ、ERRγ に対してインバースアゴニストとして働くということが考えられた。今回の研
究では、ERRβ、ERRγ のアゴニストである gsk4716 を用いて、DES と併用して投与することによ
り、DES の作用を打ち消す効果が見られるのではないかと期待した。
gsk4716 単独投与群において、毒性の指標である体重減少は観察されなかったが、gsk4716
は ER のリガンドではないため、これは予想通りであった。gsk4716+DES 併用時には 5 日頃ま
では DES による体重減少を抑制するかのように見えたが、投与を止めた頃から、体重の増加が
遅くなり、7 日目以降では逆に DES 群よりも体重が小さくなってしまった。この現象が確かなもの
であるかを明らかにするため、今後、繰り返して実験を行う必要があるが、興味深い現象である。
また、リアルタイム PCR 法による ERRα、ERRβ、ERRγ、ERα、ERβ、shp の各 mRNA 発現
量の解析では、ばらつきが大きく、正確なデータが取れなかった。新生児の精巣は数 mg と微量
であり、RNA 抽出、ゲノム DNA 消化、逆転写、PCR、という多段階の過程を経るうちに定量性が
損なわれている可能性があった。手技の向上も必要だが、サンプルサイズを大きくする必要が感
じられた。
Western blot の結果、ERRβ の mRNA 量が増えていた DES 群、gsk4716 群で逆にタンパ
ク質の減少が見られた。一つの可能性として、ERRβ タンパク質が分解されることによってフ
ィードバックが起こり、mRNA 発現量が増加していることが考えられた。
本研究により、gsk4716による内分泌撹乱作用を明らかにするという本来の目的は十分に達成
できなかったが、精巣上体で見られたDES投与によるERRβのmRNA、タンパク質発現量の変
化が精巣でも同様に見られるなど、有用な情報を得ることができた。リアルタイムPCRでは定量的
な解析を行うためのデータが取れなかったので、実験系を工夫し確実に行うことが今後の課題で
ある。
10
謝 辞
卒業研究Ⅱにおいて主査として直接ご指導をいただいた、公衆衛生学研究室佐藤 浩二助教
に心より感謝致します。
11
引 用 文 献.
1.
Schrager S, Potter BE, Diethylstilbestrol exposure. Am Fam Physician
69:2395-400 (2004)
2. Herbst AL, Ulfelder H, Poskanzer DC, Adenocarcinoma of the vagina. Association
of maternal stilbestrol therapy with tumor appearance in young women. N Engl J
Med 284:878-81 (1971)
3.
Titus-Ernstoff L, Troisi R, Hatch EE, Hyer M, Wise LA, Palmer JR, Kaufman
R,Adam E, Noller K, Herbst AL, Strohsnitter W, Cole BF, Hartge P, Hoover
RN,Offspring of women exposed in utero to diethylstilbestrol (DES): a preliminary
report of benign and malignant pathology in the third generation. Epidemiology
19: 251-7 (2008)
4.
Sato K, Fukata H, Kogo Y, Ohgane J, Shiota K, Mori C, Neonatal exposure to
diethylstilbestrol alters the expression of DNA methyltransferases and
methylation of genomic DNA in the epididymis of mice. Endocr J 53: 331-7, (2006)
5.
Adachi T, Koh KB, Tainaka H, Matsuno Y, Ono Y, Sakurai K, Fukata H, Iguchi T,
Komiyama M, Mori C, Toxicogenomic difference between diethylstilbestrol and
17beta-estradiol in mouse testicular gene expression by neonatal exposure. Mol
Reprod Dev 67: 19-25 (2004)
6.
Couse JF, Dixon D, Yates M, Moore AB, Ma L, Maas R, Korach KS,
Estrogenreceptor-alpha knockout mice exhibit resistance to the developmental
effects of neonatal diethylstilbestrol exposure on the female reproductive tract.
Dev Biol 238: 224-238 (2001)
12