オプジーボによる治療 高額療養費制度について 2015 年1月時点 監 修 2015年1月作成 OPD-F003 OP/15-01/0070/16-12 新潟県立がんセンター新潟病院 皮膚科部長 竹之内 辰也 先生 オプジーボってどんな薬 ? この 冊 子 の 使い方 この冊子では、オプジーボによる悪性黒色腫治療を受けた場合、 がん細胞は免疫機能にブレーキをかける 医療費(自己負担限度額)がおよそいくらかかるのかを、モデル がんになると、T 細胞という免疫細胞が主役と ケースをもとに推算しています。 なって、がん細胞を攻撃します。 しかし、がん細胞は、免疫機能による攻撃を します。PD-L1 が T 細胞上の PD-1 受容体と 外来治療、モデルケース②入院治療、さらに負担額が軽減さ 結合すると、 「がん細胞への攻撃を止めろ!」と 参考にしてみてください。 がん細胞 T 細胞 受けないように、PD-L1という物質を作り出 年齢や所得によって異なる自己負担限度額、モデルケース① れる仕組みなどについて解説し、計算例も示してありますので、 PD-1 いう信 号 が 発 信されます。このようにが ん がん細胞への 攻撃を止めろ! PD-L1 がん細胞 細胞は PD-L1を介して免疫機能にブレーキを PD-1 かけ、T 細胞の攻撃を止めることがわかって きました。 目 次 T 細胞 オプジーボはそのブレーキがかからないようにする オプジーボは T 細胞上の PD-1 に結合し、PD-1とがん細胞が産生する PD-L1と の結合を阻止するお薬です。これにより免疫機能(T 細胞によるがん細胞への オプジーボってどんな薬? 3 年齢や所得によって、負担額(自己負担限度額)が異なります 4 モデルケース 1 オプジーボによる治療 外来治療 6 モデルケース 2 オプジーボによる治療 入院治療 8 攻撃)にブレーキがかからないようにします。 オプジーボは、がん細胞が免疫機能による攻撃から逃れるのをブロックするお薬 で、その作用メカニズムから抗 PD-1 抗体と呼ばれています。 PD-1 オプジーボ オプジーボ PD-L1 T 細胞 こんな仕組みもあります 10 T 細胞による がん細胞への攻撃 がん細胞 PD-1 T 細胞 2 3 年齢や所得によって、負担額(自己負担限 度額)が異なります 高額療養費の手続き 手続きの窓口 国民健康保険の方は、市区町村の国民健康保険課 ● 全国健康保険協会(協会けんぽ)の方は、職場または全国健康保険協会 ● 健康保険組合や共済組合の方は、各職場 ● 手続き方法 1 上記の窓口に「限度額適用認定証」の交付申請手続きをしてください。また、 非課税世帯の方は、 「限度額適用・標準負担額減額認定証」の手続きをしてくだ さい。認定証の交付を受けたら、入院される方は入院時に入退院窓口に、外来 通院中の方は月の初回診察日に外来支払窓口に認定証を提示してください。 2 月の自己負担限度額に合わせ、請求書が発行されますので、そのままお支払 ください(保険適用外の費用がかかった場合は、その費用も合算して請求書が 発行されます)。 「限度額適用認定証」の申請手続きが事前にできなかった方 1 3 割負担の請求書が発行されますので、そのままお支払ください。 2 領収書・保険証・印鑑・被保険者名義の預金口座を準備の上、市区町村の国民 健康保険課または勤務先などを通じて、払い戻しの手続きをしてください。支払 額から高額療養費の自己負担限度額と保険適用外の費用を引いた金額が、3∼ 4か月後に払い戻されます。 70 歳以上の方の場合(自動的に負担が上限額に留められます) 所得区分 現役並み所得者(月収 28 万円以上などの窓口負担3割の方) 一 般 低所得者 (住民税非課税の方) Ⅱ(Ⅰ以外の方) Ⅰ(年金収入のみの方の場合、年金受給額 外来(個人ごと) 44,400 円 12,000 円 1か月の負担の上限額 80,100 円 + (医療費‒267,000 円) ×1% 44,400 円 24,600 円 8,000 円 15,000 円 80万円以下など、総所得金額がゼロの方) 70 歳未満の方の場合(上記の手続きが必要です) 所得区分 1か月の負担の上限額 3か月以上ご負担いただいた方(※2) 年収約 1,160 万円∼の方 健保:標準報酬月額 83 万円以上の方 国保:年間所得(※1)901 万円超の方 252,600 円+ (医療費‒842,000 円 ) ×1% 140,100 円 年収約 770∼約 1,160 万円の方 健保:標準報酬月額 53 万円以上 83 万円未満の方 国保:年間所得 600 万円超 901 万円以下の方 167,400 円+ (医療費‒558,000 円 ) ×1% 93,000 円 年収約 370∼約 770 万円の方 健保:標準報酬月額 28 万円以上 53 万円未満の方 国保:年間所得 210 万円超 600 万円以下の方 80,100 円+ (医療費‒267,000 円 ) ×1% 44,400 円 ∼年収約 370 万円の方 健保:標準報酬月額 28 万円未満の方 国保:年間所得210 万円以下の方 住民税非課税の方 ※1 ここでいう「年間所得」とは、前年の総所得金額及び山林所得金額並びに株式・長期(短期)譲渡所得金額等 の合計額から基礎控除(33 万円)を控除した額(ただし、雑損失の繰越控除額は控除しない)のことを指します (いわゆる「旧ただし書所得」)。 ※2 高額療養費を申請される月以前の直近 12 か月の間に高額療養費の支給を受けた月が3か月以上ある場合は、 4か月目から「多数該当」という扱いになり、自己負担限度額が軽減されます。 4 57,600 円 44,400 円 35,400 円 24,600 円 注)同一の医療機関等における自己負担(院外処方代を含みます)では上限額を超えないときでも、同じ月の複数 の医療機関等における自己負担(70 歳未満の場合は2万1千円以上であることが必要です)を合算することが できます。この合算額が負担の上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。 5 モデルケース1 オプジーボによる治療 外来治療 投薬スケジュール 1か月あたりの一時的な薬剤費の窓口支払額 概算 オプジーボ 投 与日 オプジーボ 投 与日 20日間の休薬 2 サイクル(21日間) 20日間の休薬 投薬スケジュール 繰り返 す 1 サイクル(21日間) 2 回投与(a×2 ) 1,760,000 円 1 回投与量は、体重 1kg 当り2mg ● 体重 55kg のモデルケースの場合の 1 回投与量 55×2mg=110mg ● 1 回投与の薬剤費(モデルケース)は、880,000 円( a ) 概算 高額療養費制度 所得区分 1か月の負担の上限額 3か月以上ご負担いただいた方(※1) 252,600 円+ (医療費−842,000 円)×1% 140,100 円 年収約 770∼約 1,160 万円の方 167,400 円+ (医療費−558,000 円)×1% 93,000 円 80,100 円+ (医療費−267,000 円)×1% 44,400 円 70 歳 年収約 370∼約 770 万円の方 未満 ∼年収約 370 万円の方 ※入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。 P4∼5 に高額療養費の事前手続きが掲載されています。手続きは事前手続きをお薦めします。 100万円の医療費で、窓口の負担(3割)が 30万円かかる場合 35,400 円 24,600 円 現役並み所得者 44,400 円 44,400 円 一 般 70 歳 低所得者 (住民税非課税の方) Ⅰ 以上 12,000 円 低所得者(住民税非課税の方) Ⅱ ( Ⅰ 以外の方) 8,000 円 8,000 円 医療費 100 万円 ※1 高額療養費を申請される月以前の直近 12 か月の間に高額療養費の支給を受けた月が3か月以上ある場合は、4か月目から「多数 該当」という扱いになり、自己負担限度額が軽減されます。 1か月あたりの払い戻し額(高額療養費支給額) 概算 例 70 歳未満 / 所得区分:年収約370∼約770万円の方の場合 1か月 70 歳未満/所得区分:年収約370∼約770万円の方の場合 窓口負担 30 万円 44,400 円 (月収28万円以上などの窓口負担3割の方) 医療機関や薬局の窓口で支払った額(※)が暦月(月の初めから終わりまで)で 例 57,600 円 住民税非課税の方 (年金収入のみの方の場合、年金受給額 80 万円以下など、総所得金額がゼロの方) 一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。 176,000 円 1か月あたりの実際の負担額(年齢・所得区分別自己負担限度額) 年収約 1,160 万円∼の方 ● 528,000 円 ※ 薬剤にかかる費用のみを算出したもので、実際に窓口で支払う医療費は、治療内容や利用できる医療・福祉サービスによって異なります。 年齢 オプジーボの薬剤費(1 サイクル分) 窓口支払額 窓口支払額 (自己負担割合3割の方) (自己負担割合 1 割の方) 薬剤費総額 一時的な窓口支払額 528,000 円 医療保険が負担(7割) 払い戻し額 433,000 円 負担の上限額 80,100 円+ (1,000,000 円−267,000 円)×1% =87,430 円 212,570 円を高額療養費として支給し、実際の自己負担額は 87,430 円となります。 6 多数回該当 高額療養費として支給 30 万円−87,430 円 =212,570 円 自己負担額 95,000 円 一時的な窓口支払額 528,000 円 医療保険が負担(7割) 払い戻し額 483,600 円 自己負担額 44,400 円 ※薬剤にかかる費用のみをもとに算出したもので、実際に窓口で支払う医療費、自己負担限度額、払い戻し額は、治療 内容や利用できる医療・福祉サービスによって異なります。 7 モデルケース 2 オプジーボによる治療 入院治療 投薬スケジュール 1か月あたりの一時的な薬剤費の窓口支払額 概算 オプジーボ 投 与日 オプジーボ 投 与日 20日間の休薬 2 サイクル(21日間) 20日間の休薬 投薬スケジュール 繰り返 す 1 サイクル(21日間) 2 回投与(a×2 ) 1 回投与量は、体重 1kg 当り2mg ● 体重 55kg のモデルケースの場合の 1 回投与量 55×2mg=110mg ● 1 回投与の薬剤費(モデルケース)は、880,000 円( a ) 概算 高額療養費制度 1か月の負担の上限額 3か月以上ご負担いただいた方(※1) 252,600 円+ (医療費−842,000 円)×1% 140,100 円 年収約 770∼約 1,160 万円の方 167,400 円+ (医療費−558,000 円)×1% 93,000 円 80,100 円+ (医療費−267,000 円)×1% 44,400 円 所得区分 70 歳 年収約 370∼約 770 万円の方 未満 ∼年収約 370 万円の方 住民税非課税の方 現役並み所得者 (月収28万円以上などの窓口負担3割の方) ※入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。 P4∼5 に高額療養費の事前手続きが掲載されています。手続きは事前手続きをお薦めします。 例 100万円の医療費で、窓口の負担(3割)が 30万円かかる場合 窓口負担 30 万円 医療費 100 万円 35,400 円 24,600 円 44,400 円 15,000 円 低所得者(住民税非課税の方) Ⅱ ( Ⅰ 以外の方) 24,600 円 ※1 高額療養費を申請される月以前の直近 12 か月の間に高額療養費の支給を受けた月が3か月以上ある場合は、4か月目から「多数 該当」という扱いになり、自己負担限度額が軽減されます。 1か月あたりの払い戻し額(高額療養費支給額) 概算 例 70 歳未満 / 所得区分:年収約370∼約770万円の方の場合 1か月 70 歳未満/所得区分:年収約370∼約770万円の方の場合 44,400 円 44,400 円 一 般 70 歳 低所得者 (住民税非課税の方) Ⅰ 以上 医療機関や薬局の窓口で支払った額(※)が暦月(月の初めから終わりまで)で 57,600 円 80,100 円+ (医療費−267,000 円)×1% (年金収入のみの方の場合、年金受給額 80 万円以下など、総所得金額がゼロの方) 一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。 176,000 円 1か月あたりの実際の負担額(年齢・所得区分別自己負担限度額) 年収約 1,160 万円∼の方 ● 528,000 円 1,760,000 円 ※ 薬剤にかかる費用のみを算出したもので、実際に窓口で支払う医療費は、治療内容や利用できる医療・福祉サービスによって異なります。 年齢 オプジーボの薬剤費(1 サイクル分) 窓口支払額 窓口支払額 (自己負担割合3割の方) (自己負担割合 1 割の方) 薬剤費総額 一時的な窓口支払額 528,000 円 医療保険が負担(7割) 払い戻し額 433,000 円 負担の上限額 80,100 円+ (1,000,000 円−267,000 円)×1% =87,430 円 212,570 円を高額療養費として支給し、実際の自己負担額は 87,430 円となります。 8 多数回該当 高額療養費として支給 30 万円−87,430 円 =212,570 円 自己負担額 95,000 円 一時的な窓口支払額 528,000 円 医療保険が負担(7割) 払い戻し額 483,600 円 自己負担額 44,400 円 ※薬剤にかかる費用のみをもとに算出したもので、実際に窓口で支払う医療費、自己負担限度額、払い戻し額は、治療 内容や利用できる医療・福祉サービスによって異なります。 9 こんな仕組みもあります 世帯合算 お一人の一回分の窓口負担では、高額療養費の支給対象とはならなくても、複数 の受診や同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限ります。)の 受診について窓口でそれぞれお支払いになった自己負担額を1か月(暦月)単位 で合算することができます。 その合算額が一定額を超えたときは、超えた分を高額療養費として支給します。 ※ただし、70歳未満の方の受診については、2万1千円以上の自己負担のみ合算されます。 被保険者 A 被扶養者 A 世帯合算 甲病院 自己負担額 60,000 円(医療費:200,000 円) 世帯合算後の負担額 60,000 円 乙薬局 自己負担額 24,000 円(医療費:80,000 円) +24,000 円 +30,000 円 丙病院 自己負担額 高額療養費の 支給対象となる =114,000 円 30,000 円(医療費:100,000 円) 限度額適用認定証がある場合 一度に用意する 費用が安くて済む 入院される方 一定限度額 (約9万円)を 支払い 高額療養費の請求 病院 高額療養費(約 21万円)の支給 加入する医療保険 100万円の医療費で、窓口負担(3 割)が 30万円かかる場合 医療保険から事前に限度額適用認定証を発行してもらうと、医療機関の窓口での支払いを負担 の上限額にとどめることができます。 70 歳以上の方は、限度額適用認定証がなくても、自動的に窓口での支払が負担の上限額まで にとどめられます(低所得者の区分の適用を受けるためには認定証が必要です)。 10 11
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