【随想】志ん朝とサザン ―桂 吉弥 7/29 神戸 生前の古今亭志ん朝師匠の「小言幸兵衛」を聴いて泣いたことがある。この落語自体は 泣くような人情噺ではなく、大変面白いものであるにもかかわらず、大笑いしながら涙を ポロポロ流していた。師匠は確かに語っているのだが、歌っているように聞こえるという 不思議な感じだった。見ると、他の噺家も三味線のお姉さんも泣いていた。 「落語家も究極 こんなことができるのだ」と思って泣いていたのだと思う。その日の打ち上げで「やっぱ り稽古するしかないんだよ」とおっしゃったその言葉は私の宝物だ。 サザンオールスターズの新曲「ピースとハイライト」にドキッとさせられることがあっ た。聞き心地のいいメロディーにのせて、はっきりと国名は出てこないが、最近の東アジ ア情勢が歌詞になっている。 志ん朝師匠が笑いを求めることに泣けたり、桑田さんの軽やかな振る舞いの意味に気付 いたり。私にとって、いつまでも目標とする2人である。
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