槍の穂先の忘れ物 記・鈴木 修 「みんな、先に行ってて!穂先に忘れ物、しちゃったよ。」 それは、 昨夏の槍の肩での話です。 私にとって5度目の槍の穂先は霧の中でした。 それでも、いつもの様に穂先で缶ビールで乾杯して、ヘリポートの所で気付きま した。何と眼鏡をしていないのです。霧がひどかったので、穂先で外して忘れて きたようです。すぐ、登りかえして 10 分たらずで穂先にたどりつきました。 急いで登ったのですが、眼鏡はもうありませんでした。 気を取り直して、槍ヶ岳山荘の自炊ルームで、仲間たち と登頂のお祝いをしました。 口の悪い山仲間から、 「また、やったね!」とか「全ての 物は、細引きで首からぶら下げておかなきゃね!」 とか、 さんざんに言われてしまいました。親しい人は知ってい ますが、私は物を置き忘れる名人です。携帯なんていつ も何処かに置き忘れます。その度に家族や友人が鳴らし てくれます。布団の中で鳴ったり、ザックの底に潜んで いたり、ひどい時はポケットの中でチャクメロが響きま す。そのためか「眼鏡も鳴るといいね!」なんて、本当 に口の悪い人達です。 さっきの梯子でフォローしなきゃ良かったと思いましたが、もう後の祭りです。 楽しい宴会も終わり、まさかと思いましたが、槍ヶ岳山荘の受付に「眼鏡の忘れ 物なんて、届いていないですよね?」と酔っていたので尋ねました。 受付の女の娘が変な顔をしたので、回れ右しようと思ったら、「どんな眼鏡です か?」との事です。 「縁無しのシルバーです。 」と答えると、私の眼鏡が出てきました。 「穂先に色々忘れ物をされる人は多いですが、眼鏡は非常に珍しいです。」と言わ れてしまいましたが。。。 。。。 。 皆さんも、山の頂上での忘れ物には気をつけましょうね。 ともかく、槍の穂先に一日で二回も行けた思い出深い夏山でした。 - 43 -
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