子育ては多少のリスクを背負って・・・

子育ては多少のリスクを背負って・・・
小学生の頃、親に頼まれて買い物かごと財布を持って、近所の八百屋さんや魚屋さんによく買い物に
行きました。今の時代と根本的に違うのは、昔はお店の人と会話をしなければならないことでした。時
には頼まれた食材がなくて、代替品で良いか質問されたりもしました。小学校 3 年生のときに、豆腐屋
さんに初めて行った時に、
「木綿豆腐か絹ごし豆腐か?」と聞かれて真っ青になったことを今でも覚えて
います。
自家用車が普及している時代ではなかったので、移動はバスか「汽車」でした。小学校 6 年生の時に
生まれて初めて、単身長浜からバスと汽車を乗り継いで、京都の叔母のうちまで行きました。私にとっ
ては一世一代の大冒険です。米原駅で切符の買い方がわからず、途方に暮れたことも今では懐かしい思
い出です。こんな思い出もありました。小学校 3 年生の時に、遊びに行った同級生のM君が、一人留守
番をしながら、鍋に火を付けてインスタントラーメンを作っているのを見ました。包丁を使って柿の皮
をむいて、食べさせてくれました。その時に受けたものすごい衝撃!「俺はしたことがない・・・」
今の時代では、子ども一人で買い物に行かせたり、火やナイフを使ったり、一人で公共交通機関で移
動することなどは、ある意味、大きなリスクも背負うことには違いありません。大きな怪我をしたり、
どんな事故に巻き込まれるかわからない時代ですから、なるべく子どもたちが危険な事態に遭遇しない
ようにしたいのが親の本音です。しかし、少しずつ子どもたちにいろいろなことをやらせていくことも
大切なことではないかと思います。
随分昔ですが、イギリス人のユニークな子育て論を書物で読んだことがあります。地下鉄に親子で乗
るときは、親は子どもと少し離れたところに座って、子どもの様子を観察するという話です。地下鉄の
車両という限られた狭い社会ですが、我が子が社会で生活していくために実践訓練をさせる意味合いが
あるのです。周りの乗客に迷惑をかけない乗車マナー、さらにはお年寄りや妊婦さんが乗ってきたら、
どんな風に行動すればよいか、すべて一人で考えさせ、判断させ、行動させることが、イギリスの子育
ての特徴だと記してありました。
子育てにおいて、何が大切なのか、一言で言えるものではありませんが、少なくとも、多少のリスク
は背負うかも知れませんが、親が見守る中で、子どもに様々な体験をさせていくことではないかと思い
ます。私ごとですが、小学生の時に模型飛行機を作っているときに小刀で指を深く切ってしまったこと
がトラウマになってしまい、大人になるまでリンゴの皮むきができませんでした。
(今は上手ですよ!!)
校長 五十嵐 信博