マクロ経済動向分析12月 2015年は「新常態」で改革深化へ 中国マクロ経済動向分析12月 1 1. 12月のポイント 2014年11月の中国経済は、工業生産の増加率 が予想を下回り、年後半にかけて消費や投資が 勢いを欠いている。また、輸出は伸びが鈍化し、 輸入も増加予想に反する減少で景気悪化に警 戒感が出ている。 11月21日、中国は利下げとともに預金金利の上 限規制の緩和を実施した。その狙いは、低迷し ている景気を刺激すると同時に、金利の自由化 を推し進めることである。 中央経済工作会議が2014年12月11日、閉幕。 政府は、中国経済の下振れ圧力は比較的強 いとの声明を発表し、経済構造改革と成長を 両立した「新常態」を目指す方針を打ち出した。 中国マクロ経済動向分析12月 2 2.今月の目次 生産 p.4 会議 p.6 中国株p.16 対外関係 p.15 12月中国 マクロ経済 固定資産 投資 p.8 消費 p.9 貿易 p.13 預金保険 制度 p.12 金融・財政 p.11 中国マクロ経済動向分析12月 3 3.生産 生産は引き続き伸び悩み、「新常態」への移行注視 図表1:製造業購買担当者景気指数(PMI) 52 51.5 51 50.5 50 49.5 49 51.7 51.4 51.4 51.0 50.5 51.1 50.8 50.4 50.2 50.3 51.0 国内の不動産市況の悪化が 建築など幅広い業界に影響 51.1 50.8 2014年11月PMI 50.3 前月から0.5ポイント低下 50.3 (出所)国家統計局より作成 2014年11月のPMIは、前月を0.5ポイント下回り、 製造業が勢いを欠いていることが示された。 中国マクロ経済動向分析12月 4 3.生産 生産は引き続き伸び悩み、「新常態」への移行注視 図表2:工業付加価値生産伸び率(単位:%) 11 10.5 10 9.5 9 8.5 8 7.5 7 6.5 6 10.3 10.0 9.7 8.6 8.6 8.8 8.7 8.8 9.2 工業生産減速の背景には、 輸出受注の伸び鈍化に加えて、 住宅市場の冷え込みがある。 9.0 2014年11月工業付加価 値生産伸び率は 7.2% 前月0.5ポイント減少 7.7 7.2 8.0 6.9 (出所)国家統計局より作成 2014年8月の工業生産の伸びは前年同月比7.2%増と 2014年の中では、8月(6.9%増)に次ぐ低い水準となった。 中国マクロ経済動向分析12月 5 4.中央経済工作会議 中央経済工作会議が閉幕、中国経済、安定路線へ 2014年12月9日-11日 中央経済工作会議開催 ※中央経済工作会議=中国共産党と政府が 2015年の経済運営方針を決定する会議 2015年の5項目の重点 ①経済の安定成長の維持 ②新たな成長リード役の発掘・育成 ③農業発展方式の転換加速 ④経済発展空間の良化 ⑤民生の保障・改善 陸と海の2つの「シル クロード経済圏構 想」の実現を推進 アジアを中心とした 地域で、インフラ構 築を目指す 政府は中国経済の下振れ圧力は比較的強いと指摘し、2015年も 穏健な金融政策と積極的な財政政策を維持する方針を示した。 中国マクロ経済動向分析12月 6 4.中央経済工作会議 中央経済工作会議が閉幕、中国経済、安定路線へ 図表3:経済発展の「新常態」の9つの特徴 内容 特徴 1 消費 追随型・集中型の消費段階は基本的に終了し、個性化・多様化した消費が徐々に主流となる 2 投資 伝統的分野は飽和状態である一方、インフラの相互接続や新技術、新製品、新業態、新ビジ ネスモデルへの投資機会が大量に生まれる 3 輸出 海外需要の低迷が続き、中国の低コストの比較優位性に変化が生じ、海外からハイレベルな 技術などの導入と大規模な海外進出が同時に発生する 4 生産 伝統的な製造業における生産過剰が目立ち、業界再編や集中度の向上は不可欠。新興産 業、サービス業、小規模・零細企業の役割が増加 5 生産要素 高齢化が進み、農業の余剰人口が減少、労働力の大量投入による成長押し上げ力が弱まる 6 市場競争 数量や価格の競争から徐々に品質の重視・差異化を中心とした競争に転換、統一した全国 市場の構築、資源配置効率の向上が要求される 7 環境資源 環境の許容能力が限界に達し、あるいは限界に近付いている 8 リスク 9 マクロ 経済政策 経済の減速に伴い、各種リスクは顕在化しつつあり、全体的にコントロール可能であるが、ハ イレバレッジとバブルを主な特徴とする各種のリスク解消までには、時間がかかる 全面的な経済刺激策の限界効果が弱まっている (出所)三菱東京UFJ銀行経済調査室より作成 中国マクロ経済動向分析12月 7 5.固定資産投資 投資伸び悩み、金融緩和の観測も 図表4:固定資産投資伸び率(単位:%) 18.5 18 17.5 17 16.5 16 15.5 15 14.5 17.9 17.6 17.3 17.2 17.3 17.0 中国の投資全体の約5分の1を占める 不動産投資の影響が比較的大きく、1-11月の 不動産開発投資は年初以来の下落傾向が続く 2014年11月 固定資産投資伸び率 15.8% 前月から0.1ポイント低下 16.5 16.1 15.9 15.8 (出所)国家統計局より作成 2014年1-11月の固定資産投資伸び率は前年同期比15.8%増。 当面、不動産業界は主体的に「新常態」に適応し、 在庫消化とタイプ転換を加速する必要がある。 中国マクロ経済動向分析12月 8 6.消費 消費の伸び悩み続く、政策対応の必要性強まる 図表5:社会商品小売総額(単位:%) 15 14.5 14 13.5 13 12.5 12 11.5 11 2014年11月は前年同月比11.7%増 6ヵ月ぶりに前月の伸びを上回った 13.7 13.6 11.8 12.2 11.9 12.5 12.4 12.2 11.8 11.9 11.6 11.5 11.7 (出所)国家統計局より作成 中国ネットショッピング市場で1番のピークを迎える 「独身の日(11月11日)」のヒートアップした商戦の影響で、 11月のオンラインショッピング成長率は大幅に上昇した。 中国マクロ経済動向分析12月 9 6.消費 消費の伸び悩み続く、政策対応の必要性強まる 2014年11月平均のCPI上昇率 ⇒前年比1.4%増 …物価抑制目標の3.5%をはる かに下回る 図表6:消費者物価指数(CPI)(単位:%) 3.5 3 2.5 2 1.5 1 3.0 2.5 2.5 2.4 2.0 2.3 2.3 2.0 1.8 1.6 1.6 2014年11月の上昇率は1.4% 2009年11月以来5年ぶりの低水準 1.4 (出所)国家統計局より作成 食品価格 前年同月比2.3%増 ⇒CPIを0.77ポイント引き上げ 燃料価格 ⇒世界的な原油安の影響で自動 車の燃料価格が下落 酒類 ⇒政府が汚職防止目的で過剰な 接待や宴会を戒めており、値下 がり 2014年11月のCPI上昇率は、前月より縮小した。 中銀や政府にとって追加の景気刺激策を発動する余地が拡大した。 中国マクロ経済動向分析12月 10 7.金融・財政 新規貸出純増額は急増、 2年4ヵ月ぶりの利下げと金利自由化の動き 図表7:通貨供給量(M2)の伸び率(単位:%) 16 15 14.2 13.6 14 13.2 13.3 13 中国人民銀行は、景気のてこ入 れと債務を抱える企業の負担の 緩和を狙い、11月21日に 約2年ぶりに利下げを実施 14.7 13.5 13.2 12.1 13.4 12.8 12.9 12.6 12.3 12 11 10 2014年11月のマネーサプライM2 伸び率は前年同月比12.3%増 金利の市場化改革促進 金融自由化の進行促進 人民元の国際化プロセス後押し (出所)国家統計局より作成 2014年11月の通貨供給量(M2)伸び率は前年同月比12.3%増、前月から鈍化。 11月の社会融資規模は8527億元、前月から56%の急増だった。 11月21日には、約2年ぶりに利下げを実施し、景気のてこ入れをはかる。 中国マクロ経済動向分析12月 11 8.預金保険制度 預金保険制度の規則案発表、金利自由化に向け進展 •完全な金利自由化に向けた措置の一環として・・・ 銀行の預金保険制度導入に向けた規則案を発表 ⇒銀行が破綻した際、最大50万元までの預金を保護 (背景) 低く規制された預金金利で銀行が競争から守られて いる上、経営が悪化した場合でも政府が混乱を避け るために救済するという「暗黙の政府保証」がある 銀行が適正な金利を示すためには、先進国のように 金利を自由化して競争を促す必要がある 中国マクロ経済動向分析12月 12 9.貿易 輸出は伸び鈍化、予想外の輸入減で景気悪化に警戒感 図表8: 輸出の伸び推移(単位:%) 20 7.0 7.2 10 5 9.4 0.9 0 -5 15 15.3 14.5 15 図表9: 輸入の伸び推移(単位:%) 10.1 11.6 10 4.7 7.0 5.5 5 4.6 0.8 0 -6.6 -1.6 -5 -1.6 --2.4 -10 -15 -18.1 -10 -20 -15 -6.7 -11.3 (出所)海関総署より作成 (出所)海関総署より作成 世界経済の回復が鈍く外需が振るわず、輸出が伸び悩んだ。また、資源 価格の下落と不動産不況による内需不振が影響し、輸入も振るわなかった。 中国マクロ経済動向分析12月 13 9.貿易 輸出は伸び鈍化、予想外の輸入減で景気悪化に警戒感 •中国政府は2014年、輸出入ともに前年比7.5%増の目標 を掲げているが・・・ 1-11月の累計は、 輸出が前年同期比5.7%増、輸入は0.8%増 ⇒9月に入り6.15元を上回る人民元高水準で推移 金利差は人民元安ドル高要因となり、貿易黒字の 拡大が実需を通じて人民元相場を押し上げている 中国マクロ経済動向分析12月 14 10.対外関係 シルクロード経済圏構想実現への取り組み加速、 中台接近路線は見直しか 中国の李克強首相は2014年12月16日、中国と中東欧・バル ト海沿岸16ヵ国の首脳会議に出席。中東欧向けに総額30億 ドル(約3500億円)規模の投資基金を創設する方針を表明 李克強首相は2014年12月20日、バンコクで閉幕した大 メコン圏(GMS)首脳会議で、東南アジアのインフラ整備 に100億元の特別融資枠を設けることなどを表明 一方、台湾では2014年11月29日、2016年初めの総統 選挙の前哨戦となる統一地方選挙の投開票があり、中 国との関係拡大を進めてきた与党が敗北 陸と海の2つの「シルクロード経済圏構想」の実現と、アジアを中心 とした地域でインフラ構築を目指す中国の取り組みが見られた。 しかし、今後は対台湾政策の見直しが迫られている。 中国マクロ経済動向分析12月 15 11.株 本土市場は続伸、一方で香港市場は不安定な動きに 図表10 :上海総合指数(終値)(2014/11/28-2014/12/30) 3300 3200 3100 3000 2900 2800 2700 2600 2500 (出所)SearchinaファイナンスHPより作成 12月第一週 12月第二週 12月第三週 12月第四週 大幅に続伸で 2900ポイントを 回復し、5日の 売買代金も史 上初めて1兆 元を突破した。 小幅安を経た 後、12日は中 央経済工作会 議の結果発表 を受け、堅調 に推移。 続伸を見せ、 商いも活況。 19日に国有企 業改革の進展 などが織り込 まれて上昇。 続伸であった が、商いに縮 小の兆しも見 られた。上海 総合指数の下 げを主導。 中国マクロ経済動向分析12月 16 11.株 本土市場は続伸、一方で香港市場は不安定な動きに 図表11:ハンセン指数(終値)(2014/11/28-2014/12/30) 24500 24000 23500 23000 22500 22000 21500 (出所)SearchinaファイナンスHPより作成 12月第一週 12月第二週 12月第三週 12月第四週 金融緩和が 刺激材料とな り、ハンセン 指数は回復。 日本のGDP 下振れなど の影響で大 幅に反落。 原油安やPMI が市場予測 を下回り、小 幅に下落。 三週ぶりに反 発し、2万 3000ポイント 台を固めた。 中国マクロ経済動向分析12月 17 12月のまとめ 生産 • 2014年11月のPMIは、前月を0.5ポイント下回り、製造業が 勢いを欠いていることが示された。 固定資産投資 • 2014年1-11月の固定資産投資伸び率は前年同期比 15.8%増。当面、不動産業界は主体的に「新常態」に適応 し、在庫消化とタイプ転換を加速する必要がある。 消費 • 2014年11月のCPI上昇率、10月より縮小。中銀や政府に とって追加の景気刺激策を発動する余地が拡大した。 財政 • 2014年11月のマネーサプライM2伸び率は前年同月比 12.3%増、11月21日には、約2年ぶりに利下げを実施し、景 気のてこ入れをはかる。 貿易 • 世界経済の回復が鈍く外需が振るわず、輸出が伸び悩ん だ。また、資源価格の下落と不動産不況による内需不振 が影響し、輸入も振るわなかった。 株価 • 2014 年12月の本土市場は続伸の一方で、香港市場は不 安定な動きが見られた。 中国マクロ経済動向分析12月 18
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