特別レポート|国際金融機関債マーケット情報

国際金融機関債マーケット情報
情報提供資料
作成日:2015年6月23日
永久劣後債・優先証券市場の概況
(ポイント)
(1)足元の永久劣後債・優先証券市場の価格下落は、市場金利全体の金利上昇が原因と考えられます。
(2)また、G-SIFIsをはじめとする欧米の大手金融機関の自己資本比率は改善を続けています。
(3)需給環境の良さもあり、永久劣後債・優先証券の市況は中長期に安定的に推移するとみています。
<足元の投資環境>
ユーロ圏では消費者物価指数(CPI)の低下に歯止めがかかり、
デフレ懸念が和らいでいることや米国の利上げ開始時期の模索
から、主要国の長期金利は上昇基調となっています(図1)。また、
5月末以降では、ギリシャ債務問題をにらみ、投資家はリスクオフ
の姿勢を強めており、米国ハイ・イールド債やCoCosなど相対的に
高い利回りを提供してきた資産クラスが弱含んでいます(図2)。
バーゼルⅡの下で発行されてきた永久劣後債・優先証券の市況
もやや弱含んでいるものの、これはベース金利(国債利回り)の上
昇が主因となっており、信用リスクや流動性リスクなどを反映する
スプレッド(国債との利回り差)は安定的に推移しています(図3)。
永久劣後債・優先証券は既に新規の起債供給のない閉ざされた
市場で、繰上償還等により市場規模は縮小の一途を辿る一方(図
4)、これらの資産を投資対象とする商品設定が続いていることが
スプレッドの安定に繋がっていると考えられます。
銀行の財務面に目を向けると、G-SIFIsをはじめとする欧米の大
手金融機関の自己資本比率は改善を続けており、流動性バッ
ファーも積み上がるなど安定性が増しています。
足元の業績動向として、例えばフランス大手行の2015年第1四半
期決算においては家計向け貸出の伸張や利ざやの改善が確認さ
れました。加えて、フランス国立統計経済研究所(INSEE)が発表し
た5月の企業景況感指数(図5)は約4年弱ぶりの高水準となるな
ど、企業向け貸出需要についても先行き期待は高まっており、同
国でビジネスを展開している銀行の収益環境は改善していくと思
われます。
図1.10年国債利回りの推移
(%)
3.0
(期間:2015年3月末~2015年6月17日、日次)
米国
ドイツ
イギリス
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
'15/3
'15/4
'15/5
(出所:Bloomberg)
図2.トータルリターン比較
(%)
0.0
(期間:2015年5月末~2015年6月17日、日次)
▲0.6
図3.永久劣後債・優先証券
利回りとスプレッドの推移
4.5
-1.0
▲1.1
(%) (期間:2015年3月末~2015年6月17日、日次)
4.0
利回り
スプレッド
▲1.6
-2.0
3.5
3.0
-3.0
永久劣後債・優
先証券
2.5
'15/4
米国ハイ・イー
ルド債
(出所:Bloomberg)
※下記指数を基に国際投信投資顧問作成
使用指数:【永久劣後債・優先証券】バークレイズ・グロー
バル優先証券(Tier1)インデックス(米ドルベース)、
【CoCos】バークレイズ偶発資本証券(CoCo債)イン
デックス(米ドルベース)、【米国ハイ・イールド債】バー
クレイズ米国ハイイールド社債 2% 発行体キャップ・イン
デックス
2.0
1.5
'15/3
CoCos
'15/5
(出所:Bloomberg、バークレイズ)
※バークレイズ・グローバル優先証券(Tier1)インデックスを
基に国際投信投資顧問作成
※上記はあくまで過去の実績であり、将来の成果をお約束するものではありません。
※上記は作成時点における市場見通し等について記載したものであり、将来変更される場合があります。
巻末の「本資料で使用している指数について」および
「本資料に関してご留意頂きたい事項」を必ずご覧ください。
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KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
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作成日:2015年6月23日
<今後の見通し>
ギリシャ問題等の外部環境の不透明感は短期的なボラティリティの高まりをもたらす可能性があるものの、欧米の主
要金融機関のギリシャへの直接的なエクスポージャは限られており、世界的な金融不安には繋がらないと考えられま
す。また永久劣後債・優先証券市場は前述のように特殊な需給構造を有しているほか、バーゼルⅢに対応した損失吸
収力の高い資本性証券(CoCos等)市場の急拡大に伴い(図4)、金融セクターの資本性証券の中でも相対的にボラ
ティリティの低い資産クラスに変貌しつつあると考えられます。
2019年のバーゼルⅢの完全実施に向け、金融機関の財務体質改善への取り組みは今後も継続すると見込まれること
から、永久劣後債・優先証券の市況は中長期的に安定して推移するとみています。
図4.市場規模の推移
図5.フランス企業景況感指数の推移
(百万米ドル)
160,000
140,000
(期間:2010年6月~2015年5月、月次)
115
永久劣後債・優先証券
CoCos
110
120,000
105
100,000
100
80,000
95
60,000
90
40,000
85
20,000
0
'12/12
'13/6
'13/12
'14/6
80
'10/6
'14/12
(出所:Bloomberg、バークレイズ)
'11/6
'12/6
'13/6
'14/6
(出所:Bloomberg、INSEE)
※期間:【永久劣後債・優先証券】2012年12月末~2015
年6月17日、【CoCos】2014年4月末~2015年6月17日
いずれも日次
※下記指数を基に国際投信投資顧問作成
使用指数:【永久劣後債・優先証券】バークレイズ・グロー
バル優先証券(Tier1)インデックスの時価総額、
【CoCos】バークレイズ偶発資本証券(CoCo債)インデッ
クスの時価総額
※上記はあくまで過去の実績であり、将来の成果をお約束するものではありません。
※上記は作成時点における市場見通し等について記載したものであり、将来変更される場合があります。
本資料で使用している指数について
●「バークレイズ・グローバル優先証券(Tier1)インデックス」、「バークレイズ偶発資本証券(CoCo債)インデックス」および「バークレイズ米国ハイイー
ルド社債 2% 発行体キャップ・インデックス」:バークレイズ・インデックスは、バークレイズ・バンク・ピーエルシーおよび関連会社(バークレイズ)が開発
、算出、公表をおこなうインデックスであり、当該インデックスに関する知的財産権およびその他の一切の権利はバークレイズに帰属します。
本資料に関してご留意頂きたい事項
本資料は投資環境等に関する情報提供を目的として、国際投信投資顧問が作成したものです。本資料は投資勧誘を目的とするものではありません。
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