2015年1月22日 報道関係各社 御中 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(会長:古川和子) (http://www.chuuhishu-family.net/w/) ※本件担当:東海支部 〒466-0815 名古屋市昭和区山手通5-33-1 杉浦医院4F TEL.052-837-7420 FAX.052-837-7420 ※連絡担当者:成田博厚(患者と家族の会東海支部/全国事務局) (成田携帯:090-1419-5576) 家族の会本部:〒136-0071 江東区亀戸7-10-1 Zビル5階 TEL.03-5627-6007 FAX. 03-3637-5052 初めての静岡アスベスト被害ホットライン 相談会 の実施について アスベスト補償・救済の一層の推進のために ◇静岡市相談会・ホットラインの日程 1月31日(土)9時30分~16時30分 会場:静岡県男女共同参画センター「あざれあ」BF 多目的実習室 (〒422-8063 静岡市駿河区馬淵1丁目17番1号) 相談電話番号:070-5251-9840 (電話、相談会とも無料) 今般、標記のアスベスト被害ホットライン・相談会(無料)を静岡県内では初めて、上記の日程で行います。 アスベスト被害の補償・救済のための今回の取組みに関しまして、取材、報道のご協力をいただけますようお 願い申し上げます。なお、ホットラインと相談会に先立ち、1月22日に仕事が原因で悪性胸膜中皮腫を発症し た被災者1名及び、悪性胸膜中皮腫で配偶者を亡くした遺族1名、石綿健康管理手帳の所持者1名が現在のアス ベスト健康被害拡大の状況や、ホットライン・相談会実施の意義について記者レクさせていただきますのでご参 加の程よろしくお願い申し上げます。 事前記者会見の日時 1月22日(木)静岡県社会部記者室 15時~(静岡県庁東館10階) 1 1)ホットライン、相談会の目的 アスベスト被害の補償・救済については、労災補償制度(主管:厚生労働省等)と労災以外の救済制度(主管: 環境省・環境再生保全機構)によって実施されていますが、 「制度に対する周知や関係者の認識不足」などによっ て、補償・救済を受けられないで苦労されている患者と家族がおられます。また、中皮腫はじめアスベスト関連 疾患の治療について相談先を求めておられる場合も少なくありません。 「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」ではそうした実情に対応し、随時、電話相談や相談会を各地で 行い、補償・救済の促進、情報の提供を行ってきました。 その一環として、今回、はじめて、静岡市での標記ホットラインと相談会を実施いたします。 2)本ホットライン、相談会の趣旨 当会は、2004年(平成16年)2月に設立され、アスベスト問題の社会的な拡がりのなかで、患者と家族によっ て、患者と家族のために活動してきました。 当会は現在、北海道、関東、東北、横須賀、東海(名古屋) 、北陸、関西(大阪) 、奈良、尼崎、兵庫、広島・ 山口、岡山、四国、南九州の14支部があります。相談活動は当会の活動の中心であって、各支部が随時、地域に おいて取り組んでいます。ホットラインや相談会の開催を通じて、多数の被害者、家族と知り合い、補償・救済 につなげると共に、ケアの面でも協力を行ってきました。 今回の静岡ホットライン・相談会では、 「アスベスト被害に詳しい専門の相談スタッフ」が対応します。 相談内容に応じて、スタッフ、当会の顧問医師、弁護士など医療・法律の専門家が協力します。 <よくある相談例> 「病院や役所で相談しても、よくわからない」 「石綿を扱ったのがあまりに昔のことなので、なにをどう調べていいのか途方にくれている」 「労災申請したけれども、原因がよくわからないため、労災補償が受けられない」 「建設業で働いていて肺がんになったため申請をしようとしたが、医師に『タバコのせいで、石綿とは関係な い』と言われた」 「同じ病気で治療している人の話をきいてみたい」 「夫が中皮腫の苦しさから自殺を図ってしまった。どうしたらいいかわからない。 」 「仕事でなったのに、労災が適用できないと言われている」 「環境再生保全機構によって、石綿健康被害救済法でとりあえず認定されたが、原因をもっと明確にしたいし、 できるなら労災補償を受けたい」 本ホットラインの対象は、被害原因を問いません。 労働現場、公害、家族ばく露などすべての石綿被害が対象です。 3)現行の補償・救済認定における問題点~「労災認定されるべき事案が救済認定に流れ込んでいる」~ アスベスト疾患による「労災認定」 (労災保険法など)対象疾患は、次の5疾病です。 1)中皮腫 2)肺がん 3)石綿肺 4)びまん性胸膜肥厚 5)良性石綿胸水 これに対して、 「労災認定」の対象外である、事業主、公害被害者、家庭内曝露被害者などの「救済認定」 (石 綿健康被害救済法)の対象疾患は、上記5)を除く次の4疾病です。 1)中皮腫 2)肺がん 3)著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺 2 4)びまん性胸膜肥厚 それぞれ認定基準が異なります。 おおまかにいうと、中皮腫は「救済認定」の方が簡単。 あとの疾病では、2)が「救済認定」の方が医学判定基準が厳しかったり、3)4)は重症だけの限定認定に なっていたりで、 「救済認定」が「労災認定」よりも厳しい基準になっています。 そうした背景があるなかで、いくつかの重大な未補償・未救済が生じています。 その中で、労災認定において次のような大きな問題点が存在しています。 ■「労災認定」されるべき事案が、相当数、 「救済認定」に流れ込んでいる~特に「中皮腫」~ 「労災認定」されるためには、労働者としての作業歴において、認定基準に記載された相当程度の年数、石綿 曝露されていることが条件になっています。 しかし、石綿疾病は長期間の潜伏期間を経て発症することが非常に多いため、本人であっても石綿曝露歴を証 明したり、思い出すことが難しいことが少なくありません。 まして遺族では、その困難がさらに増します。 そのため、 「労災認定」が拒否されて、しかたなく、 「救済認定」だけで済まされてしまうケースが後を絶ちま せん。 「救済認定」への流れ込み現象が特に、顕著だとみられるのは、中皮腫についてです。 中皮腫の認定基準は次のようになっています。 「労災認定」基準・・・・原則1年以上の職業的石綿曝露歴、中皮腫であることの確定診断 「救済認定」基準・・・・中皮腫であることの確定診断 したがって、 「原則1年以上の職業的石綿曝露歴」が明らかでない、と労基署が判断すると労災は不支給となっ てしまい、被害者は「救済認定」だけ受けてすまされることになるのです。 労基署は、 「原則1年以上の職業的石綿曝露歴の有無」の判断を会社の申し立て、同僚証言、年金記録などにも とづいて行いますが、会社が消滅している、同僚がみつからない、年金記録がない(国民年金、無年金)という ケースは本人や家族の記憶が頼りになります。そうした場合、 「客観的証拠がない」として、極めて安易に労基署 が不支給にしているとみられるのです。 「救済認定」の場合は「労災認定」よりも、はるかに低水準の給付内容に なっていますので、本人、家族にとっては非常に大きな問題なのです。 さらに、2013年度の中皮腫の「労災認定」 、 「救済認定」などの補償・救済合計は、2012年度の16 64件から1195件と469件もの大幅な減少がみられ、今後の中皮腫救済の動向が懸念されます。 中皮腫の「労災認定」と「救済認定」の全体状況は次のようになります(厚労省、環境省などによる) 。 1995~2013年ま 2003 ~2013 年ま 2006 ~ 2013 年ま 2003 ~ 2013 年ま 労災認定、救済認 での中皮腫死亡 での労災認定件 での救済認定件 での労災認定+救 定どちらも受け 者数 数(時効救済を含 数※2006年救済 済認定 ていない(推定) む) 法開始のため 全国 17645(100%) 6293(35.7%) 6904(39.14%) 13197(74.8%) 4448(25.2%) 静岡 450(100%) 155(34.4%) 193(42.9%) 348(77.3%) 102(22.7%) つまり、中皮腫の認定件数の「労災認定」 : 「救済認定」は、1:1.10という比です。 中皮腫は「8割が職業曝露による」というのが国際的なコンセンサスですので、ほぼ1:1というのは、明らか に労災認定件数が少ないことを示しているのです。 その原因の主なものに、労災認定において「原則1年以上の職業的石綿曝露歴」の用件を厳しく求めすぎている ことにあるとみられるのです。 こうした状況で、労災認定されるべきが、されていない被害者が相当数あるのではないかとの推定は、上記の 表の数字からも妥当性があると考えているのです。 3 また、 「労災認定、救済認定どちらも受けていない」中皮腫事案が約4分の1あることは、補償・救済の遅れ・ 不十分さを物語っている点も見逃せません。 「安易な労災認定の拒否と救済認定への流れ込み」は、厚労省・環境庁が取り組めていない大きな問題です。 静岡県でも、傾向は同様です。労災認定+救済認定の合計の中皮腫死亡数に対する割合は全国より少し下回 り、労災認定件数と救済認定件数の比は(1:1.25)で、労災事案の救済認定への流れ込みがより懸念され ます。 ■肺がんの労災認定件数が、中皮腫に比べて非常に少ない=石綿肺がんが見過ごされている 石綿肺がんと中皮腫との比は、国際的にも概ね「中皮腫1に対して肺がん2」とされています。 ところが、我が国の労災認定状況をみると、中皮腫の認定件数の方が多くなっています。 平成20年度から24年度の6年間の石綿労災認定件数(厚生労働省)をみると <全国> 労災保険法による認定件数 時効救済による認定件数 <静岡県> 労災保険法による認定件数 時効救済による認定件数 肺がん 2594 201 中皮腫 3187 274 肺がん:中皮腫 0.81:1 0.73:1 肺がん 39 2 中皮腫 79 4 肺がん:中皮腫 0.49:1 0.50:1 このように、肺がんの認定件数が中皮腫にくらべて明らかに過小になっています(中皮腫1に対して、肺がん が1未満) 。 静岡県でも、この傾向はさらに強く表れています。石綿肺がんが見過ごされている割合が全国平均よりも大き い可能性を示していると考えられます。 こうしたことの原因は、肺がんの認定基準が、いまだに、石綿曝露歴よりも、石綿小体数などの数値を偏重し た基準になっていていることがあります。 肺がんの認定基準が問題になった石綿肺がん不支給処分取消請求事件で、2013年、2件の高裁判決があり、 不支給署分取消が確定しました(2013年2月12日大阪高裁英裁判判決、2013年6月27日東京高裁小林裁判判決) 。 また、その結果を踏まえて、裁判係争中の事案を、厚生労働省自らが支給決定を行うという事案がありました (2013年11月15日神戸東労基署不支給から支給へ変更決定) 。 特に時効救済においては、死後5年を超えている事案であるため、医療記録などが保存されていない事も大き く影響して、さらに肺がん認定件数が中皮腫認定件数に比べて小さくなっているのです。 さらに、医療現場において、石綿肺がんに関連した重要所見である胸膜プラークの読影がされていないこと、 石綿ばく露への関心がまだまだ低いこと、などによって、労災申請に至らない事案が多いのも事実です。 今回のホットライン・相談会でも、 「石綿ばく露を証明するにはどうしたらいいのか?」 「病院ではタバコが原因だと言われましたが、建築という仕事がら、自分や家族の肺がんはアスベストが関係し ているのではないか?」 などといった疑問やご意見をお持ちの方々からの相談をお待ちしています。 以上。 4
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