附中研究紀要57_p.78

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技術・家庭(技術分野)
発想したものを適切に工夫,判断し,形にしていく技術教育
―材料と加工に関する技術を通して―
宮内
稔
本論の要旨
ものづくりの授業において,日々,感じることは「順序立てて覚えていくことは上手」であるが「覚
えたことを活用していくことは苦手」であるということである。せっかく身につけた知識が「暗記」に
とどまり,生活の中で活用できるものにつながっていない,ということである。
そこで,生活と密接に関わる教科として,身近な材料である木材とグループ学習の一環としてグルー
プ製作に取り組むことの2点に条件をしぼり,生徒たちにものづくりの基礎基本を段階的に学ばせる(ロ
ジカル)とともに,発想力(ラテラル)を引き出せるように,設計における構想に取り組ませた。
ラテラルな発想力を高めるための授業のスタイルを考案し,発想したものが空想に終わらず,形にす
るための実践に取り組み,実際に製作できるか判断させる。その結果,生徒が「実現可能・不可能」「作
品の善し悪し」などを自ら考え,振り返ることのできる授業を実現していく。
キーワード
生活に密接な教科,知識を活用する能力,ラテラルとロジカル
1.はじめに
2.生徒を取り巻くものづくり環境
どこの学校でも生徒が中学校に入学する際の学校
説明会や入学説明会などで,中学校生活の特徴の中
ものづくりをしていくために「材料」「道具」「製
作に必要な技術」が必要である。
で「英語という新しい教科が授業に入ってきます」
「材料」に関してはホームセンターなどを探せば
「部活動が始まります」という説明はよく聞くもの
いくらでも見つけることができる。また,インター
の
「技術・家庭科という新しい教科が入ってきます」 ネットの普及により,自宅にいながら,今までなら
と言う説明はあまり聞かない。また,中学校で学ぶ
手に入らなかったような珍しい材料でも手に入れる
教科は9教科であるが,保護者や生徒の中には未だに
ことができる便利な時代となった。
「主要五教科」
(国語,社会,数学,理科,英語とい
その反面,ものが溢れ,既製品として何でも手に
う入試科目を指している)という言葉が出てくるこ
入る時代である。そのため,家でものを作る必要性
とがしばしばある。
や製作の場面が少なくなり,完成品や使用方法が決
確かに高校入試などを控えていると入試科目は気
になるのは当然である。しかし,学習の醍醐味はテ
まったものがすぐに手に入る。結果として,家庭か
ら作るための「道具」が消えている。
スト問題に対し「問題を解いて,何点,採れるか」
ものづくりの授業を実践するに当たり,家で持っ
だけではない。身につけた知識が生活の中でどのよ
ている道具を聞いたところ,
「ドライバー」はほとん
うに使われているかを発見でき,問題にぶつかった
どの家庭であるものの,教科書に載っている木材を
ときに,既習の知識を活用し,解決する力を発揮で
加工するの道具である「さしがね」,「のこぎり」,
きるかが大切であると考える。
「鉋」,
「のみ」,
「玄翁(金槌)」などは無い家庭が多
「セ
特に,生活と密接に関わりを持つ技術・家庭科は, い。ましてや金属を加工するための「けがき針」,
学んだことを生活の中で生かし,生活の中の様々な
ンタポンチ」,「金切りばさみ」,「弓のこ」,「はんだ
課題を克服し,生活を豊かにしていくことができる
ごて」などや,プラスチックを加工するための「プ
教科である。
ラスチックカッター」,「アクリルヒーター」は家庭
そこで,学んだ知識を活用して試行錯誤をくり返
しながら取り組める題材として,生徒の発想を作品
に生かすことができる「ものづくりに関する技術」
の分野における設計に重点を置いて取り組んだ。
内のどこでも見られる材料を加工する道具が全くな
いと言っても過言ではない。
道具が家庭から消えたことにより,生徒たちから
家でものを作る場面が極端に減っているものと思わ
れる。
技術1
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設計に取り組むに当たり,表1の1~8の内容に
おいては,順序立ててそれぞれの内容を押さえてい
ない)」という環境が整ってしまっている。
くようにした。形としてはロジカルシンキングにあ
道具やものをつくる環境が,そのような状況であ
たると考える。順序立てて学んでいくことは非常に
るため,技術・家庭科においても,生徒自身が工夫
大切である。また,製作経験が少ない生徒たちにと
をしたり,新しいものを生み出す力を身につけるよ
って,製作(設計)に必要な知識を身につけておく
りも,先人たちの知恵に学んだり,作る体験をする
ことは,先の見通しを持つ一助となり,問題にぶつ
ことが学習の中心になり,いわば段階的に学んでい
かったときに解決するための資料となる。当然のこ
く論理的な学びが多く見られる。
とながら,何の知識も経験も無い状態で作品の発想
しかし,さまざまな発想と独創的な工夫で技術立
が生まれてくることはほとんどないことからも明ら
国をつくりあげ,今の先進国としての地位を確立し
かなように,順序立てて考えるロジカルシンキング
てきた日本であるからこそ,これからの社会を担っ
を否定し,突発的な発想であるラテラルシンキング
ていく生徒たちにしっかりと新しいものを創る(創
のみを推奨するものではない。
造する)ということはどういうことか考えさせ,発
表1
想を膨らませることができる「新しいものをつくる
設計に設定した時数
のに必要な発想を身につける」授業が大切であると
<設計における授業展開>
考える。
1.設計の進め方(0.5)
生徒が初めてのものを製作するのに,まず,今ま
※(
)は時数
2.使用目的と製作品の決定(0.5)
でに見たものや触れたものを参考にし,学んだ知識
3.機能を考える(0.5)
をもとに発想・創造する。これにより,
「ものづくり」
4.構造を考える(0.5)
という課題に対して製作の見通しを立てることがで
5.材料を考える(0.5)
き,
「これならできる」という作品に対する目的意識
6.加工方法を考える(0.5)
が生まれてくる。また機能・構造を考察したり,生
7.接合・仕上げを考える(0.5)
徒が利用する場所や活用の目的,目的に合った大き
8.製図の方法(2.0)
さなどの情報を整理して,立体的にとらえ,モデル
9.共同作品を考える(2.5)
化したり,比較・分類したりして,利便性に気づい
たり,他の作品や製作物と結びつけることにより,
よりよいものとなるように努力する環境が整う。そ
準備として知識を身につけておくことにより,生
の中で生まれてくる発想の広がりが思いもよらない
徒は設計図を読むことができるようになる。製作に
作品づくりを引き出させるようにする(図1)。
関する技術面は別にして,既製の設計図を渡すと全
員が同じ形の作品を作る力を身につけていることに
なる。同じ形の作品を並べると技能面での評価はし
やすくなるが,発想や工夫が入り込む余地が少なく
なってしまう。
そこで,「作品を作る」のではなく「設計図を作
る」ことを重視して作品に取り組ませた。
今回,作品を作るにあたり,あらかじめ生徒たち
に下記の条件を示した。
表2
図1
製作の条件
<作品の条件>
ロジカルシンキングとラテラルシンキングのイメージ
①学校で役に立つものを作ること
②グループ(3~4名)で作品を1点,製作す
3.授業でのとりくみ
生徒たちの発想が最初に表現されるのが設計であ
る。今回は,製作への工夫を引き出し,充実させる
ること
③材料は6フィートの SPF 材とする
ため,設計に設定した時間は8時間である。この時
2×4材・・・3本
数は設計の平均的な時間(6時間)よりもかなり多
1×4材・・・1枚
くとった。設計での授業展開は表1の通りである。
技術2
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技 術・ 家 庭
「必要なものは何でもそろえることができる」が,
それらを作ったり修理したりすることはない(でき
表2の条件を満たすものであれば何を製作しても
良いとした。
をする生徒が必ず現れてくる。そうなると「絶対に
できる」という確信のもと,「なぜできると言い切
条件の①,②は,作品の持ち帰りが困難であるた
れるのだろう」,「どうやったら椅子として使えるの
めと,作品を校内で活用できるようにするためであ
だろう」という疑問が広がり,「こうしたら1本脚
る。また,③については,小物など家でも作れるサ
でもできる」「2本脚でもこういう目的なら使えるの
イズのものよりも,共同的に工夫し製作させたいと
ではないか」という意見が飛び交い,「なるほど」
の思いから,できるだけ大きな作品に取り組ませた
と得心のいった顔になる。多様な発想が共有された
いという思いと,材料の量としては,大きな椅子な
瞬間である。
どを作るには十分な量でありながら,机を作るには
4.発想の変化
やや不足する量を考えて決定した。
また,板材を利用すると製作できる作品の範囲は
グループによる意見の交換と知識の揺さぶりの中
広がるものの,本立てなど身近なものでよく使われ
で,生徒たちの発想は少しずつ変化していく。下の
ているため,発想がそこに限定されないようにあえ
図は,発想の共有により変化が表れているグループ
て使用を避けた。
の設計図である。
図2は,グループで検討する前に,こんな椅子を
作品をグループで相談しているときに,生徒たち
の発想に揺さぶりをかけた。
作りたいとグループの1人が考えてきたものである。
教師:「仮に椅子を製作しようと考えているとしま
グループ内でこれを作ろうとまとまったが,図2に
す。ではその椅子の脚は何本ですか?」
はさまざまな発想が組み込まれている。
生徒:
「4本です。」
教師:
「何故ですか?」
生徒:
「椅子の脚は4本だと安定するからです。」(生
徒たちは技術室で使用している作業椅子をイ
メージの参考にしたようである。)
教師:
「椅子の脚は4本であるという思い込みを取
り払って,発想してみましょう。脚が3本で
はだめですか?
2本脚ではどうでしょうか。
1本脚の椅子は作れませんか?
いっそうの
こと脚のない椅子は作れないでしょうか?」
といった具合である。
図2
グループで検討する前の図
<図の中にある発想>
写真1
・座板に隙間を作ることにより,涼しい椅子を作る
設計に取り組んでいる様子
ことができる。
…設計の時期が夏であったため蒸れるのを防ぎ,
多くの生徒たちは,3本脚なら何となくできそう
暑さ対策と考えたようである。
だが,2本脚なら倒れてしまう。1本脚,脚なしなど
という椅子は「無理」「不可能」という反応がかえ
・背板上部に凹部を作った。
…教室でカバンなどをかけるところがなく,カバ
ってくる。しかし,実際にそのような椅子はデザイ
ンされていて存在することを伝えると,しばらくす
ン掛けとして便利なように工夫している。
ると1人,2人と「できるかもしれない」という反応
・背板に穴を開けることにより,指をかけて椅子を
技術3
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まった。
…背板に指をかけるところがあった方が便利であ
・大きさをどうするか
ると考えたようである。ただしこの図を描いた
…ゆったりとした椅子を作りたかったようである
時に,材料が2×4材であることを忘れていた
が,2×4材を組み合わすことにより板材のよ
ようである。
うに使用することにしたので,予想していたよ
設計をしていくにあたり,「椅子」という作品で
り材料を使うことがわかった。よって,座れる
あれば図法をきちんと選択し,寸法を入れて製図は
完成する。
座面と使える材から寸法を決定していった。
・木口とこばを組み立てる手段がない
しかし,「それで十分か?」「もっと工夫するとこ
…背板の部分で,木口とこばをつなげる図になっ
ろはないか?」と投げかけると,生徒たちはさらに
ているが,それを貼り合わせる手段が木工用接
不備な点や改善するところををいろいろと考え出し
着剤しかない。それでは強度に問題が出てくる。
てきた。
解決策を教科書で探し,木組みなども検討した
<改善・工夫すべきところ>
ようであるが,最終的にだぼでつなげることが
・材の厚みや組み方を考慮していない。
簡単であると判断したようである。
…材の厚みがないため,図が平面的になっている。 ・強度は大丈夫か
…木工用ボンドで接着する部分が多くなると強度
図法の習得の問題である。
また,組み方を考慮していないため,宙に浮い
的に心配したが,加重が垂直方向にかかること,
ている部分がある。
教室内で使うと水分で接着力が弱まる可能性が
ほとんど無い,ボンドの接着力は強いなどの条
・背板についている穴は必要ない。
件を考え,座っても安定すると判断した。
…椅子を出し入れするために,指をかける穴だっ
たそうであるが,指をかけて持ち上がる重さで
はないと判断した。
・座板の下の空間が無駄であり,何かに利用できな
いか。
…脚の間の空間に無駄があるように感じたとのこ
とであった。そこで,ファイルや小物などが収
納できるスペースとして有効活用できるのでは
ないかと工夫した。
・脚が4本は高さを合わせにくい。
…4本脚の場合であると脚の寸法を正確にそろえ
なければ,がたつきが出る。そこで底面を板に
することにより,がたつきが出にくいようにし
ようと工夫した。
身近にある椅子なら少し工夫すれば簡単にできる
と考えたようであるが,問題が噴出し,それらをグ
ループ内で検討・修正してきたのが図3である。
等角図を使い,すっきりとした形になり,材の厚
みも考慮し図が描かれている。組み方もある程度考
図3
えているが,板材を使うという発想から抜けられな
班で試行錯誤して修正された椅子
かったようである。
さらに検討している中で出てきた問題を解決しな
頭の中で作品の形と木の組み方を考えながら問題
がら,図に変更を加えていった。
点を考え出してくる。それを一つ一つ解決して行く
<さらに出てきた問題点とその解決>
ことにより,よりよい設計図と作品を完成させよう
・板材がない
と協力していた。最終的に図4の形で製作可能であ
…今回の材料の中には大きな板材が無い。しかし, ると判断した。
「板を使う」という発想からなかなか抜けられ
こちらから形や設計図を提供するのではなく,必
なかったようである。最終的に,板材の問題は
要とするものを設計させることにより,生徒たちは
2×4材のこばを貼り合わせることで話がまと
さまざまな工夫をし,面白い発想を出してくる。写
技術4
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技 術・ 家 庭
動かしやすいようにした。
真2は生徒たちが製作した作品である。形,大きさ
など工夫されている点を見て取ることができる。
5.取り組みにおける失敗例
今回の取り組みに当たり,失敗した例も併せて紹
介する。
表2の条件を満たしていればかまわないとして取
り組んだ今回の製作であったが,できるだけ大きな
ものをつくり,ものをつくる経験をさせたいとの思
いは前面には出していなかった。その中で,「黒板
消し」を作った班が出てきた(写真4)。
図4
けがきに取りかかる直前の図
写真4
黒板消し
条件だけを見ると,全ての条件をクリアしており,
なおかつ発想としても豊かである。しかし,切断面
が1箇所のみであるということが問題点である。材
料体積の1/63しか使用していない事を考える
と,グループで取り組む作品としては不十分である。
作業における評価は,けがきや切断の各作業で実技
テストを行っており,作品によって大きな差は出な
いが,発想は良いが,加工時間,材料の利用率など
が良くない作品について評価をどうすべきであるか
教師が悩む結果となってしまった。
写真2
生徒の作品
発想を引き出すために,条件を少なくした点につ
いては今後さらに,グループで取り組む作品を生み
また写真3は,椅子の脚を6本にすることにより,
出せる条件を整備する必要がある。
用途に合わせて椅子の幅を調整できるようになって
いる。じっくりと考える中で,このような面白い発
想の作品も生まれてくるのである。
6.取り組みの成果と課題
技術・家庭科(技術分野)でどのようなことを学
んだかと年配の方に尋ねると「本立てを作った」
「文
鎮を作った」「ラジオを初めて作ったのは技術(分
野)だった」と「ものづくり」をした経験が多く出
てくる。
確かに教材としてさまざまなものを取り入れてい
る教科である。しかし,何かを「作る」という経験
を積むことにとどまっていて,何を学んだのかとい
縮めているところ
写真3
伸ばしたところ
脚が6本の椅子
うところを明確にできないようでは教科として生き
残っていくことができない。
現在の生徒たちはすでに大量生産・大量消費の中
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時数と同じ時間であり9教科の中で最も少なく,3年
ってくるものだという感覚の方が近い。その中で,
生にいたっては,たった17.5時間である。この時数
わざわざ手間も時間もかけて作る必要は無いのであ
であるため,短時間でどれだけたくさんの内容を盛
る。その結果として,「考え,工夫する」というも
り込むことができるのか,どうやれば効率よく授業
のづくりの醍醐味を味わう機会を奪われてしまって
展開ができるかという手法にとらわれ,短時間で知
いる。
識を詰め込む「こうだから,こうなる」という知識
教科としてものづくりの手順を順序立てて学ぶロ
の詰め込みと効率よく学ばせるための展開に重きを
ジカルシンキングはもちろん大切であり,これをな
置いた授業になる。生徒がハッと気づくまでじっく
しにして知識を深めていくことはできない。しかし,
りと考えさせる時間をとることが難しい。
新しいものを生み出すため,発想を培うという点で
発想を引き出すための時間をとったことにより,
は,その知識を基にして広げていくラテラルシンキ
設計図にさまざまな意見を取り入れることができ,
ングはとても重要である。
良い作品にするための工夫し,相談する時間をとる
その点では,今回取り組んだ設計を重視した授業
ことで,より良く改善されたものに変化していった。
は,形のあるものを「作る」を,アイデアを形にす
もし,標準の時間で取り組めば,一度作成した設計
る「創る」に変え,生徒の発想力を広げる点で大切
図に手を加えていくのは難しいであろう。
な授業であるといえる。
中学校3年間の総授業時数3045時間である。その
授業に取り組んで指導上の課題と感じていたのは
グループ学習と授業時数の問題である。
うち,技術・家庭科(技術分野)の時数は約2.9%
にすぎない。ものづくりや技術を指導する教科でこ
グループ学習においては,他者の意見を聞き,発
想を取り入れ,よりよいものに発展させていくとい
れほど少ない時間は,他の先進国を見ても,日本だ
けといっても過言ではない。
う点では非常に有効であると今回の授業でも感じ
そのため,少ない時間を有効に活用し,これから
た。しかし「他人任せ」「他者の意見に流されるま
の時代を担う生徒たち必要な力として,技術を支え
ま」という生徒もでてくる。今後,共同作業におい
るラテラルな発想を育て,それを多くの分野で広げ
て,その消極的な姿勢の生徒をどのように作品に引
ていける実習と研究をしていきたい。
き込んでいけるかが課題となる。
製作品においても,グループの共同作品であるた
め,個人の技能を評価するため,個別の実技テスト
を行った。
けがきや切断など作業内容に応じて,個人で取り
組む課題を設定し,それによって実技を評価するも
のであった。グループ内で実技テストを受けている
生徒が作業に参加できないため,4人グループでの
製作を前提としながらも,作業を進めているのが3
人という時間が何回か必要となってしまった。その
ため製作にかかる時間が後ろにずれ込んでしまうこ
とになり,遅れた時間を取り戻すために工作機械を
多用することになってしまった。
道具の理論をしっかりと理解させた上で,工作機
械を使用させることは,作業の効率にしても,経験
としても良いとは思う。しかし,家庭内に道具すら
なくなっている現代に,工作機械を使うということ
は,ますます実際の生活に利用できる技術からは離
れていってしまう形になってしまわないだろうか。
また,授業時数では,現教育課程においては,技
術・家庭科は1年生,2年生で70時間,3年生に至っ
ては35時間しかない。当然,この数字は両分野を合
わせたものであるため,技術分野だけで見ると,1,
2年生で35時間である。これは,道徳,学活などの
技術6
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技 術・ 家 庭
で生活をしている。作る機会は家になく,ものは買