Economic Indicators 定例経済指標レポート テーマ:貿易統計(2016年2月) 発表日:2016年3月17日(木) ~実質輸出は踏みとどまる~ 担当 貿易収支(億円) 原数値 季調値 15 1月 ▲ 11605 ▲ 3464 2月 ▲ 4260 ▲ 6785 3月 2235 ▲ 922 4月 ▲ 583 ▲ 2631 5月 ▲ 2154 ▲ 2136 6月 ▲ 609 ▲ 2505 7月 ▲ 2614 ▲ 3058 8月 ▲ 5675 ▲ 2909 9月 ▲ 1213 ▲ 2616 10月 1048 ▲ 1577 11月 ▲ 3875 357 12月 1389 322 16 1月 ▲ 6488 732 2月 2428 1661 (出所)財務省「貿易統計」 第一生命経済研究所 経済調査部 副主任エコノミスト 高橋 大輝 TEL:03-5221-4524 輸出数量 輸出金額 輸入金額 前年比 前年比 16.9 ▲ 9.3 2.4 ▲ 3.6 8.5 ▲ 14.4 7.9 ▲ 4.1 2.4 ▲ 8.7 9.5 ▲ 3.1 7.6 ▲ 3.3 3.1 ▲ 3.2 0.5 ▲ 11.0 ▲ 2.2 ▲ 13.4 ▲ 3.4 ▲ 10.2 ▲ 8.0 ▲ 18.0 ▲ 12.9 ▲ 17.8 ▲ 4.0 ▲ 14.2 前年比 11.0 ▲ 2.1 3.2 1.8 ▲ 4.0 0.0 ▲ 0.7 ▲ 4.1 ▲ 3.9 ▲ 4.6 ▲ 3.1 ▲ 4.4 ▲ 9.1 0.2 輸入数量 アメリカ EU アジア 前年比 前年比 前年比 2.9 6.4 15.3 1.9 3.3 ▲ 3.4 5.8 13.6 3.3 7.1 5.2 0.1 ▲ 6.7 1.4 ▲ 2.3 ▲ 3.0 6.5 3.1 ▲ 0.2 5.5 ▲ 0.4 ▲ 7.7 ▲ 5.0 ▲ 3.3 ▲ 4.7 2.1 ▲ 4.3 ▲ 5.8 3.3 ▲ 2.4 ▲ 8.1 9.3 ▲ 3.8 ▲ 8.3 5.0 ▲ 0.8 ▲ 8.4 ▲ 1.2 ▲ 11.9 ▲ 3.2 10.2 1.1 前年比 ▲ 6.3 4.4 ▲ 10.4 0.1 ▲ 5.3 ▲ 1.4 ▲ 2.9 ▲ 0.7 ▲ 1.9 ▲ 3.8 1.7 ▲ 5.0 ▲ 5.0 ▲ 2.3 アメリカ EU アジア 前年比 前年比 前年比 ▲ 14.6 ▲ 7.8 ▲ 9.9 ▲ 10.1 ▲ 5.5 11.2 10.3 ▲ 9.4 ▲ 15.9 4.6 ▲ 3.8 ▲ 4.4 1.6 ▲ 7.3 ▲ 8.7 3.6 ▲ 5.4 ▲ 1.5 1.5 ▲ 0.6 ▲ 2.6 6.9 1.0 ▲ 1.7 ▲ 0.8 ▲ 8.7 ▲ 2.9 ▲ 6.8 ▲ 7.6 ▲ 4.0 ▲ 0.4 2.8 ▲ 3.0 ▲ 8.4 ▲ 5.3 ▲ 4.2 ▲ 3.6 0.7 ▲ 5.0 9.7 ▲ 1.3 ▲ 7.4 ○輸出入ともに減少が続く 2月の貿易統計が財務省より発表され、貿易収支は 2,428 億円の黒字(コンセンサス:3,886 億円、レン ジ:▲613~6,010 億円)となった。 輸出金額は、前年比▲4.0%(コンセンサス:▲3.0%、レンジ:▲7.9%~+5.6%)と5ヶ月連続の減少 となった。輸出価格が前年比▲4.2%と4ヶ月連続の低下となったことが主因。為替レートは同+0.6%と小 幅ながらも円高に転じており、価格の下押しに繋がったとみられる。輸出数量は同+0.2%と8ヶ月ぶりに前 年比マイナスを抜け出した。輸入金額は同▲14.2%(コンセンサス:▲15.2%、レンジ:▲19.8%~▲5.7%) と 14 ヶ月連続の減少となった。原油価格の下落を背景に輸入価格(前年比▲12.2%)の低下が続いたほか、 輸入数量(同▲2.3%)も減少が続き、輸入金額は価格・数量の両面から下押し圧力がかかった。なお、3月 は為替レートが一段と円高方向に推移することが見込まれ、輸出入金額の下押しとなるだろう。 季節調整値では、輸出金額が前月比▲2.4%、輸入金額は同▲4.0%となった。輸出入ともに減少となった が、輸入金額の減少幅が輸出金額の減少幅を上回ったことで貿易収支は 1,661 億円の黒字となった。これで 貿易収支は4ヶ月連続の黒字である。2016 年1-3月期は、2011 年1-3月期以来の貿易黒字となる可能性 が高い。先行きについても、輸入金額が低水準で推移することが見込まれ、当面の貿易収支は黒字傾向で推 移するとみられる。 ○実質輸出は前月比+0.4% 為替などの物価変動の影響を除いた実質輸出(実質化、季節調整は第一生命経済研究所試算)は、前月比 +0.4%(1月:同+2.7%)と増加した。また、実質輸出の1-2月平均は 10-12 月期平均比+0.9%と小 幅増加となった。足元の海外経済は足取りの鈍さが示されているが、現時点では、実質輸出の減少がみられ ているわけではない。 2月の実質輸出を国別にみると、米国向けが前月比+0.8%、欧州向けが同+7.4%、アジア向けが同▲ 1.3%と、欧州向けの大幅増加が2月の実質輸出を牽引した。欧州向けは、一般機械、電気機器、輸送用機械 がいずれも増加と内容も良好だ。増加幅が大きく持続可能な動きかは来月以降の動向を併せて見る必要があ 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 るが、緩やかな改善基調を辿っているとみていいだろう。米国向けは昨年5月の大幅減少以降、増加傾向を 維持していることが示された。機械類が総じて持ち直し傾向を辿っており、良好な内容といえよう。一方で、 懸念されるのがアジア向けだ。内訳をみると、中国向けが前月比+0.3%、NIEs 向けが同▲0.3%、ASEAN 向 けが同▲0.8%となった。1-2月平均を 10-12 月平均と比較するとそれぞれ減少しており、依然低迷が続 いている様子が窺える。先進国向けが改善傾向を辿っている一方、アジア向けの回復が遅れていることが実 質輸出の重荷となっている。 ○実質輸出の回復はあくまでも緩やかなペース 以上のように足元の実質輸出は底堅さが示されたが、海外経済を見る限り依然楽観はできない。足元の海 外経済をみると、米国は製造業に力強さが欠けるほか、中国は製造業が低迷を抜け出せていない中、非製造 業の勢いにも陰りがみえるなど、海外経済の足取りは鈍いままだ。輸出が腰折れするとまではみていないが、 当面の輸出は下振れリスクの方が意識される。 先行きを展望すると、米国経済は雇用・所得の改善を背景とした個人消費、住宅市場の回復を下支えに緩 やかな改善が続くと予想され、欧州経済は原油安・ユーロ安、追加金融緩和の効果浸透などを背景に回復基 調を辿ることは可能だろう。中国経済についても、政府による景気支援策などを背景に失速は避けられると 見込んでいる。また、国際商品市況は底入れしつつあり、新興国や資源国の景気減速にも徐々に歯止めがか かると予想している。総じてみれば、海外経済の持ち直しを背景に実質輸出は緩やかな増加傾向を辿るもの とみている。ただし、海外経済の回復ペースはあくまでも緩やかなものになるとみており、実質輸出の改善 もそれに併せたものに留まるだろう。 (兆円) 2010=100 (兆円) 貿易収支(季調値) 実質輸出(季節調整値) 110 1.0 7 0.5 105 6 0.0 100 5 -0.5 4 -1.0 千 8 95 90 収支(右) 輸出 輸入 3 2 10 11 12 -1.5 85 -2.0 13 14 15 16 (出所)財務省 2010=100 地域別・実質輸出(季節調整値) 2010=100 150 140 アメリカ EU 12 13 14 (出所)財務省、日本銀行(注)横線は四半期平均値 ※実質化および季節調整は第一生命経済研究所 16 対アジア・実質輸出(季節調整値) ASEAN 125.0 アジア 15 NIES 中国 120.0 130 115.0 110.0 120 105.0 110 100.0 100 95.0 90 90.0 85.0 80 80.0 70 12 13 14 (出所)財務省、日本銀行 ※実質化および季節調整は第一生命経済研究所 15 16 75.0 12 13 14 15 16 (出所)財務省、日本銀行 ※実質化および季節調整は第一生命経済研究所 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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