組織を強くする 「人が育つ職場づくり」を考える - ja

特 集
組織を強くする
「人が育つ職場づくり」を考える
J A グ ル ー プ 青 森 で は、 昨 年 十 二 月 の 第
二十七回J A青森県大会で﹁自己改革をすすめ
共生をめざす﹂ことを目的に向こう三ヵ年の取
組みを確認した。
大きな柱︵重点目標︶の一つに、J Aグルー
プ青森の組織・経営力発揮を掲げた。その中に、
人材育成方針等の着実な実践が位置づけられ、
階層別マネジメント研修会等の開催により、自
己改革をすすめる職員の育成に取組んでいくこ
ととしている。
自己改革をすすめる職員の育成として、
現在、
中央会では職員のマネジメント能力の向上を目
指し、自らの頭で考え、改善、改革につなげて
いこうとする職員を育成するためにJ A職員階
層別マネジメント研修会を開催している。
J Aを支える職員をどう育成し、人が育つ職
場づくりにどのように結びつけていくかという
のが課題となっている。今回は、その取組みの
基本的な考え方を紹介する。
1.メンバーのやる気を引出す要因は﹁仕
事それ自体﹂
最初に、部下の仕事に対する動機づけ︵モチ
ベーション︶
、やる気を引出すためには、どう
いう働きかけが必要かである。
人には共通して次の二つの根源的な人として
の願望があるとされている。①自分が世の中か
ら必要とされている存在であることを確かめ続
けたいという存在感確認願望と、②自分の何か
が常に日々成長していることを確かめ続けたい
という成長感確認願望の二つである。この二つ
の願望を前提とすれば、動機づけの要因は、①
世の中の人にとって意味のある仕事、②自分の
能力を活かせ、かつ伸ばせる仕事、この二つの
性質を兼ね備えた仕事ということになる。
つまり、人を仕事へと動機づける要因、仕事
のやる気を引出す大本は、
﹁仕事それ自体﹂だ
というのが、目下の大方のコンセンサスとなっ
ている。部下が成長する過程で職場の上司とし
ての役割は、部下がさまざまな経験を通して、
自らが成長し続けるような機会や環境を整える
ことを通して、その成長をサイドから支援する
ことである。
2.OJTの具体策
人はどのようにして育つのか。その育つ過程
の中で、職場の上司は部下とどのような係わり
方をすればいいのか。組織の中で人を育てる方
法としては、一般的に知られているOJ T︵職
場内教育︶とOff J T︵集合研修等︶の二
つがある。このうちOJ Tは、仕事の指導と同
時に行われるところにその特徴がある。このO
J TとOff J Tは、それぞれ長所、短所が
あるので、その長短を理解し相補うような運営
の仕方をすることが大事である。
部下が仕事を効率的にこなしていくために
は、①その業務に必要な専門知識、業務知識と、
②仕事の段取り、手順などの進め方について身
に付けておく必要がある。この二つを身に付け
させるのに効果的な方法は、効率的な仕事の進
め方として計画、実施、評価の三段階を踏んで
行う仕事の手順であるマネジメント・サイクル
の 各 段 階 で 部 下 に﹁ 考 え さ せ ﹂
﹁やらせる﹂こ
とである。
具体的には、計画段階︵Plan ︶では、①
目標を提案させる︵Wha t 、Why は共有す
る︶、②方法、やり方を考えさせる︵How は
で き る だ け 任 せ る ︶、 実 施 段 階︵ Do ︶ で は、
①方法は継続的に考えさせる、②進み具合を自
己点検させる↓要調整時は、案を出させる、③
改善を考えさせ、
提案させる︵問題への気づき︶
評価段階︵See ︶では、①教訓を学び取らせ、
ノウハウを引き出させる︵反省も含む︶、②次
の仕事への活かし方を考えさせる︵改善につな
げる︶。
−
See )
さらに仕事の振返りを通して評価 (
を発展させ、①仕事の振返りを随時行わせる。
そのとき②工夫したこと、困難を乗り切ったこ
となどの経験をどんどん出させる、③その中で
将来、役に立ちそうな経験を拾い上げさせる、
1
絆 2016 . 3
−
④その経験から自分なりの原理、原則を引き出
し、それを自分の財産として残すように強く奨
める。
この①∼④は、実際の仕事と直結した進め方
なので、これが日常あたりまえのように繰り返
されると間違いなく人は育つ。このマネジメン
ト・サイクルが、上司と部下の一対一の指導だ
けでなく、職場の同僚間あるいは部下同士で、
自ら進んで行われるように指導すると、さらに
一段と効果が上がり、結果的に﹁人が育つ職場
づくり﹂にもつながる。
というときがある。リーダーシップの発揮が、
リーダーシップの発揮として、有効に成立する
ために必要な概念を構成する要素は、次の3つ
である。
①達成すべき目標
リーダーシップは、自分として成し遂げたい
か目標が生まれた時に、はじめて誕生するも
何
のである。成し遂げたい目標が何もない時に抽
象的に発揮されるものではない。
②相手の自発的な協力
その目標を達成するために、制度的な権限に
頼ることなく、
相手の自発的な協力を得ながら、
人を動かすのがリーダーシップの発揮である。
③目標に対する協力
協力の対象は、目標である。リーダーシップ
を発揮する人に対する協力ではない。相手が目
標を納得して受け入れ、
自ら進んで協力する時、
はじめてリーダーシップが成立する。
4.職場︵組織︶内で機能する二つのパ
ワー
一般に他者を動かすためにはパワーを必要と
する。人を動かす源泉︵モト︶は、人に対する
影響力というパワーが人を動かす。職場または
組織の中で、人を動かすための影響力というパ
ワ ー に は、 ポ ジ シ ョ ン パ ワ ー と パ ー ソ ナ ル パ
ワーの二つに大きく分類することができる。
①ポジションパワーとは、組織内に制度として
設けられた地位︵ポジション︶それ自体が持
ち合わせているパワーで、人とは関係ない。
多くは上方から下方に向かって発揮される。
②パーソナルパワーとは、組織を構成するメン
バーという人それ自体が個人として持ち合わ
せているパワーで、地位︵ポジション︶とは
関係ない。上下左右、どちらへでも発揮され
る。
リーダーシップ発揮のモトとなる影響力は、
ポジション︵地位︶が発揮するものではなく、
パースン︵人それ自体︶が発揮するものである。
・リーダーシップは、ポジションパワーとは別
のパーソナルパワーに基づくものであるが、
パーソナルパワーとイコールの関係ではな
い。
・リーダーシップは、ポジションパワーに基づ
くものではないが、ポジションパワーは、
リー
ダーシップをバックアップする機能をもつと
いう関係にある。
今の時代に求
め ら れ る の は、
上から下までの
全員が、それぞ
れの場所で、そ
れぞれの仕事の
リーダーになる
という人のあり
方である。部下
に求められるの
は、上司からの
指示を待つこと
なく、自らの仕
事を見つけ、目
標を設定し、自
ら仕事を進めて
いくというリーダーシップの発揮である。その
ように部下を仕向けること、上司に求められる
のは、そういうリーダーシップである。自ら先
頭に立つことだけが、リーダーシップの発揮で
はない。
トップダウン方式というマネジメントのあり
方から、自律創造型の部下の育成と活用へとい
う の が、 組 織 生 き 残 り 策 の 今 の 大 き な 流 れ と
なっている。そうしないと、言われたことしか
やらない、指示待ち族が組織を貧しくすること
になる。
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5. リ ー ダ ー シ ッ プ と 人 づ く り、 職 場
づくりとの関係
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部下に対するリーダーシップ発揮の指導は、
そのまま人づくり、職場づくりにつながる。
︵一︶人づくり
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3.リーダーシップについて考える
リーダーシップとは、組織メンバーに対して、
組織目標の達成に協力して取組むよう影響力を
発揮するプロセスと定義される。その目標が何
であれ、
﹁目標達成﹂のために発揮されるもの
で、抽象的に発揮されるものではない。リーダー
シップというのは、何か達成したい目標が出た
ときに生まれ、目標の達成とともに消えるもの
であって、達成すべき目標不在のときに潜在的、
永続的にだらだらと続くものではない。
ここで留意すべき点として、①組織メンバー
制限、限界がなく、誰に対しても発揮しても
に
差し支えない、②影響力を発揮する人に制限、
限界がなく、誰が発揮しても差し支えないとい
うことの二点である。
リーダーシップは、もともとリーダーという
ポジションにいる人のあり方という意味が、時
代と共に段々と変わって、影響力を発揮するプ
ロセスという意味が強くなり、こうした影響力
を 発 揮 す る 人 が、 そ の ポ ジ シ ョ ン 如 何 に か か
わ ら ず、 実 質 的 に リ ー ダ ー に な る と い う 風 に
百八十度近く変わってきた。
つ ま り リ ー ダ ー シ ッ プ と い う の は、 公 式 の
リーダーだけのものではなく、誰もが発揮する
もの、むしろそれが期待されているものという
風に変化してきているのである。
自分ではリーダーシップを発揮しているつも
りでも、原理、原則から見れば実はそうでない
ポジションパワー・パーソナルパワー・
リーダーシップ 経験した意味の交流を活発にすることである。
7. 階 層 別 マ ネ ジ メ ン ト 研 修 会 へ の 参
加と実践を
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︵中央会・教育研修部︶
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J A職員階層別マネジメント研修会は、上級
管 理 者 コ ー ス か ら 初 級 職 員 コ ー ス ま で 五 つ の
コースに分かれ、各階層別の研修コースは、相
互に連動し全体として体系化されている。組織
におけるそれぞれの階層ごとのメンバーの役割
を理解するため、まず﹁組織﹂とは何かを根本
において、そこから役割の基本を立ち上げ、こ
こから個々の役割を伸ばし、役割の体系全体を
描くという手法をとっている。さらに役割・知
識ともに、お互いに切り離された断片的なもの
ではなく、まとまりのある体系化されたものと
して習得できるように工夫されている。
本会主催のJ A職員階層別マネジメント研修
会への参加とJ A内での実践を引き続きお願い
したい。
参考 J A職員階層別マネジメント研修︵監督
者︶シート
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組織での人づくりの目指すべき大きな目標
は、自主性の涵養である。職場で何を達成す
べ き か、 自 ら 進 ん で 目 標 を 探 し、 明 確 に し、
実施に移すという動きができるようにするこ
とである。リーダーシップ発揮という場面で
欠かせないのは、この自主性であるから、部
下にリーダーシップの発揮を促すということ
は、そのまま人づくりにつながる。
︵二︶職場づくり
人が育つ職場とは、職場の誰もが、上から
言われることなく、何事かを言い出し、それ
に同じ職場の誰かが応え、その誰かと誰かが
協力しながら、何事かを成し遂げていく、そ
うした動きが常態化しているような職場のこ
とをいう。他ならぬ協力が活性化を生み出す
のである。
自主性と並んで、リーダーシップの発揮と
いう場面で欠かせないのは、この協力である
から、部下にリーダーシップの発揮を促すこ
とは、人づくりだけではなく、同時にそのま
ま協力を中心核とする﹁人が育つ職場づくり﹂
につながることになる。
この自主性の涵養と協力体制を作り出して
いくことが、リーダーシップ発揮にとっては、
重要なポイントとなる。職場メンバー全員が
それぞれの立場で、それぞれのリーダーシッ
プを日常発揮するようになることが、すなわ
ち﹁人が育つ職場づくり﹂になる。職場のメ
ンバーによるリーダーシップの発揮イコール
﹁人が育つ職場づくり﹂ということである。
理解し、その反応が送り手に返される双方向の
プロセスである。
コミュニケーションは、働きやすい職場や人
間関係を作り、仕事を前に進めていくための不
可欠な手段である。そのコミュニケーションが
職場内外で活発かつ円滑になるよう、特に部下
たちへの指導にあたっては、部下間のコミュニ
ケーションを強く奨励し、日常のヨコの情報交
流が活発に行うようになれば、これが﹁人が育
つ強い職場﹂をつくるのに最も効果を発揮する
ことにつながる。
コミュニケーションには、
﹁人が集まる場を
つくる﹂という機能があり、同時にその場が今
度は、コミュニケーションを生み育てるという
機能を発揮する。コミュニケーションが場の前
提となり、場がコミュニケーションの前提とな
る。一度場ができると、場には慣性の法則が働
き、コミュニケーション抜きの場の維持は考え
ら れ な い の で、 場 そ れ 自 体 が 今 度 は コ ミ ュ ニ
ケーションを生み出して育てることになる。
このメカニズムをうまく活用すると、組織あ
るいは職場では、経験の交流による生きた知の
習得ができるといった効用を引き出すことがで
きる。経験の交流のすべてのパターンに共通し
て大事なのは、経験している、あるいは経験し
た﹁こと﹂の交流ではなく、経験した﹁意味﹂
の交流である。その﹁こと﹂が自分にとって、
さらには、自分の組織あるいは職場にとって、
どういう意味があるのかを考え、その考えた内
容をお互いに交流させて、初めて経験の交流が
実現したことになる。
こうした経験の交流ができる場が、職場内あ
るいは職場をまたいで自然と生まれるようなコ
ミュニケーションのとり方を、いろいろな機会
を捉えて、示唆あるいは奨励し続けることが必
要である。部下の動機づけからリーダーシップ
の発揮、コミュニケーションの活用を中心に職
場︵組織︶を強くするための﹁人が育つ職場づ
くり﹂について見てきたが、そのためには、活
発 な ヨ コ の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 中 で、 リ ー
ダーシップを発揮し、人が集まる場を通して、
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6.コミュニケーションの活用と果たす
役割、機能
リーダーシップの発揮と同じように重要なの
が、組織の中での人と人との間のコミュニケー
ションである。コミュニケーションの基本は、
対面する人と人との間の双方向のやりとりであ
る。つまり、送り手︵話し手︶から、一定の意
味を持った内容が、何らかの媒体を通して受け
手︵聞き手︶に伝えられ、受け手がその内容を
マネジメントの体系