夏秋なすトンネル栽培 育苗後半から定植までの管理(PDF:878KB)

夏秋なすトンネル栽培
育苗後半から定植までの管理
平成28年3月9日
芳賀農業振興事務所
【関東甲信地方の1か月予報(H28.3.3 気象庁発表)】
○期間のはじめは気温がかなり高くなり、向こう1か月の気温は高い見込みです。
○低気圧や前線の影響で、向こう1カ月の降水量は多く、日照時間は少ないでしょう。
○向こう1カ月の平均気温は、高い確率60%です。降水量は多い確率60%、日照時間は少ない確率
50%です。
○週別の気温は1週目が平年並の確率80%、2週目は平年並または高い確率ともに40%です。3~
4週目は平年並または高い確率ともに40%です。
【関東甲信地方の3か月予報(H28.2.24 気象庁発表)
】
○南から暖かい空気が流れ込みやすく、向こう3か月の気温は高いでしょう。
○低気圧や前線の影響を受けやすく、向こう3カ月の降水量は平年並か多いでしょう。
○3月 天気は数日の周期で変わりますが、平年に比べ晴れの日が少ないでしょう。気温は、高い確率
50%、降水量は平年並または多い確率ともに40%です。
○4月 天気は数日の周期で変わりますが、平年に比べ晴れの日が少ないでしょう。気温は、高い確率
50%、降水量は平年並または多い確率ともに40%です。
○5月 天気は数日の周期で変わるでしょう。気温は、平年並または高い確率ともに40%です。
【気象経過(アメダス:真岡地点 H28.2.28現在)
】
- 1 -
1.育苗後半の管理(自家育苗をしている場合):定植ほ場の環境に徐々に近づける!
(1)温度管理
○定植予定の10日
前くらいからは、
昼温20~25℃程
度、夜温13℃程
度で管理し徐々に
低温(ほ場環境)
に慣らす。
※日に日に、日射し
が強くなってきて
いるので、換気の
時間、日中の高温
に注意する。
※1か月予報では、
平年より気温が高
く、降水量も多い
予報なので、軟弱
徒長や病害発生に
注意する。
【育苗床温度管理の目安】
セル苗
育苗床(鉢)
本ぽ
℃ ◆気温管理
30
昼温25~26℃
25
20
夜温
17~16℃
22~20℃
18℃前後
16~14℃
15
12~10℃
10
℃
30
◆地温管理(夜間最低床温)
※昼温を表示した時期は、
温度を上げ過ぎないように
注意する。
25
20
昼温22~23℃
夜温
18℃前後
20℃前後
18℃前後
18~15℃
15
(2)かん水管理
15℃
13℃
セ移
ル
苗植
定
植
○ポットごとに株の生育状態や乾きぐあいを見て、1鉢づつ少量づつ行う。
○極端な多湿、乾燥は根の生育を抑制するため注意し、朝のかん水時に湿ってる鉢へのかん
水は控える。
○葉上からのかん水は行わず、鉢土にかん水する。
○定植10日前頃からはかん水量を徐々に減らす。
(3)鉢のずらし
○葉と葉が重なり合わないように、早め早めにポットのずらしを行う。
○育苗床の中央部は苗が徒長しやすいため、中央部と床端の苗を入れ替える。
入れ替え前
入れ替え後
○定植後の管理がしやすいように、生育ステージ別に苗質をそろえておく。
(4)追
肥
○定植が近づいてからの追肥は、葉面散布で対応する。(必要に応じて、液肥利用)
○鉢土が過湿や過乾燥の場合、根が傷んだ場合などでも、葉が黄化してくるので、育苗床
の下部などの状態を再確認する。
※生育遅れが心配でも、一度に多量の肥料や有機物を施用することは避ける。(ガス害注意)
- 2 -
(5)育苗後半の病害虫防除
〈主な殺菌剤(H28.3.1現在)〉
薬剤名
対象害虫
ロブラール500アクア 灰色かび病
使用 天敵カブリダニ
回数 への影響日数
希釈倍率
使用時期
1,000~1,500倍
収穫前日まで
4回
○
(約7日)
収穫前日まで
3回
△
(約14日)
1,000~2,000倍
収穫前日まで
-
◎
1,000倍
収穫前日まで
4回
◎
3,000倍
収穫前日まで
3回
◎
希釈倍率
使用時期
2,000~3,000倍
収穫前日まで
6回
×
(60日以上)
収穫前日まで
4回
×
(60日以上)
黒枯病、灰色かび病 2,000~3,000倍
ベンレート水和剤
菌核病
ジーファイン水和剤
うどんこ病
ダコニール1000
黒枯病、灰色かび病
うどんこ病、すすかび病
ベルクート水和剤 灰色かび病
うどんこ病、すすかび病
2,000倍
〈主な殺虫剤(H28.3.1現在)〉
薬剤名
対象害虫
マラソン乳剤 アブラムシ類
ハダニ類
アーデント
水和剤
アブラムシ類、ハダニ類、
ミカンキイロアザイウマ、
ハスモンヨトウ
1,000倍
モスピラン
水溶剤
アブラムシ類、テントウムシダマシ類
4,000倍
アザミウマ類
2,000~4,000倍
コナジラミ類
2,000倍
使用 天敵カブリダニ
回数 への影響日数
収穫前日まで
3回
スワル:○
(約7日)
スパ:△
(約14日)
エコピタ液剤 アブラムシ類、ハダニ類、
コナジラミ類、うどんこ病
100倍
収穫前日まで
-
△
(1日)
アブラムシ類、ハダニ類、
コナジラミ類、うどんこ病
500倍
収穫前日まで
-
△
(1日)
ムシラップ
2.定植準備:地温を確保するため、定植予定日の2週間前までには完了させる!
(1)基肥の施用
【なすの肥料吸収特性】
なすの肥料吸収は、窒素、燐酸、加里ともに生育が進むにつれて増加し、収穫始めか
ら収穫最盛期へ、更に、収穫後半に向かって一気に増加する。特に、収穫を始めてから
60~70日間が最大となる。このため、収穫が始まる頃から肥料を効かせ、収穫期間中
は 肥効を切らさないことが重要である。
- 3 -
【台木別基肥施用例(10a当たり)】
台木別施肥量
作
型
肥料種類
赤なす
台太郎
トンネル栽培 牛ふん堆肥
はが野有機666
カレヘン
3,000Kg
3,000Kg
3,000Kg
200~300Kg
140~240Kg
170~270Kg
180~280Kg
-
-
40Kg
20Kg
燐硝安加里1号
水マグ
耐病VF
3,000Kg
-
CDUS555
トルバム
トナシム
20Kg
-
-
(窒素成分
18~24Kg)
(窒素成分
20Kg
60Kg
(窒素成分
20Kg
-
(窒素成分
20.4~26.4Kg) 16.2~22.2Kg) 16.8~22.8Kg)
○牛ふん堆肥3,000Kgの1作で窒素成分の肥効は、3Kgで計算。
○燐硝安加里1号:活着促進のため、うねを中心に施用。
○CDUS555:カレヘン台等の初期生育の促進。
○水マグ:緩効性の苦土肥料、トルバム、トナシム台の苦土欠乏症対策。
(2)ネコブセンチュウ防除(連作地で、必要に応じて)
〈ネコブセンチュウの防除薬剤
(H28.3.1現在)〉
使用時期
使用
回数
使用方法
天敵カブリダニ
への影響日数
ネマトリンエ ネコブセンチュウ
15~20Kg/10a
ース粒剤
ハダニ類、ミナミキイロ
20Kg/10a
アザミウマ、オンシツコナ
ジラミ
定植前
1回
全面土壌混和
△
(約14日)
ラグビーMC ネコブセンチュウ
粒剤
定植前
1回
全面処理土壌
混和
スワル:△
(約14日)
スパ:×
(30~45日)
薬剤名
対象害虫
使用量
20~30Kg/10a
(3)ベッド及びトンネルの設置
◆定植予定日の2週間前までには完了させる。
▲
▲
マルチ下15~20cmで、地温15℃以上を確保する。
①栽植距離とベッドの作り方
○栽植距離:うね幅
220~230㎝
×
株間
60~75㎝
○水田や水はけの悪いほ場は、ベッドをやや高めにする。
②トンネルの設置
○トンネルは支柱が270㎝の場合、支柱幅は1m、高さは75~80㎝が目安となる。
○かん水チューブを設置する場合は、株から20~30㎝離して設置する。
- 4 -
【ベットの設置例(模式図)】
トンネル高
肩20~30cm
75~80cm
うね高
20cm
120cm
(150cm幅マルチ)
通路幅
50cm
うね幅
220cm ~230cm
(4)排水溝及び防風ネットの設置
①排水対策
【参考:排水対策設置例】
○ほ場内に雨水が停滞しないよう排
水溝等を設置する。
○ほ場の周囲に明渠を設置し、通路
を明渠につなげる。明渠はほ場外
に逃がす。
②防風ネット等の設置
【参考:防風ネットの設置方法】
○風によるスレ果、枝折れ防止のた
ほ場空間の取り方
め、ほ場周辺には必ず防風ネット
2m
又はソルゴー(播種量:2kg/10a)
2m
を設置する。
○設置する場合は、十分な間隔を開
け、作業スペースを確保する
- 5 -
3.定植時期及び定植苗の適期
(1)定植時期と保温資材
【なすの温度条件に対する適応性】
○生育適温:22~30℃
(17℃以下では生育が停滞する。)
○霜には非常に弱く、-1~-2℃で凍死する。
○高温に対する反応は、35~40℃になると茎葉には障害が現れなくても、花器に障害が発
生し、奇形果の原因となる。
○花粉の発芽に適した温度:20~30℃(最適温度:28℃)
※最高限界温度:33~40℃
※最低限界温度:15~17℃
○根の伸長の最適地温は28℃、最低8℃、最高38度。しかし、実際は15℃以下になると根
の機能が低下し、生育不良となる。
【定植時期と保温資材】
定
植
時
期
保
温
対
策
~
4月上旬
小トンネル(ビニール)二重 + べたがけ資材(パオパオ等)
4月上旬
~
4月下旬
小トンネル(ビニール)+ べたがけ資材(パオパオ等)
4月下旬
~
5月上旬
小トンネル 又は べたがけ資材(パオパオ等)
5月中旬以降
なし
※トンネル資材は1.0、0.075及び0.05のいずれかのビニールを使用する。
※気象条件や地域の気温状況に応じて、調整する。
1枚
【二重トンネルの場合】
2枚
3枚
(べたがけ資材)
※ダンポールやピアノ線などで
トンネル内に小トンネルを作る。
【4月上旬定植の保温対策事例】
(2)台木別の違いによる定植時期の目安
◆露地栽培に比べると、まだ低温期に定植することになるので、台木品種の特性に
合わせることが基本となるが、やや若苗で定植し、草勢を低下させないことも重
要となる。
- 6 -
【台木別定植の目安】
台
木
品種名
草
定
勢
植
時
期
トルバム
トナシム
草勢強い
開花前(花弁が見え始める)~苗床で開花させ、ホルモン処理(ト
マトトーン50倍液)をしてから定植する。
赤なす
台太郎
耐病VF
標 準
若苗(開花7日前程度)~開花直前の苗を定植する。
カレヘン
草勢弱い
蕾が見えた苗~若苗(開花7日前程度)で定植する。
(3)定植時の根の状態
▲
▲
○根部
ポットをはずした時に培土が崩れない程度に根
が巻いている状態が定植の適期
4.定植時の留意事項
①定植は、風のない晴天日に行い、作業は午後3時頃までに終了する。
②定植当日はポットへ十分かん水し発根を促す。
③仮支柱を設置し、苗の倒伏を防止する。
④害虫防除のため、定植前に苗へのかん注処理、又は、定植時に粒剤を施用する。
※農薬を使用する際は、必ずラベルをよく読み適正に使用する。
〈育苗期後半から定植当日の防除薬剤(H28.3.1現在)〉
薬剤名
対象害虫
希釈
倍率
ベリマーク アブラムシ類、アザミウマ類
SC
コナジラミ類、ネキリムシ類
400倍
アブラムシ類、アザミウマ類
ネキリムシ類
800倍
プレバソン ハスモンヨトウ、ハモグリバエ類 100倍
フロアブル5
ネキリムシ類
ハモグリバエ類
200倍
モベント
アザミウマ類、チャノホコリダニ 500倍
フロアブル ハダニ類
使用
回数
使用方法
(かん注量)
天敵カブリダニ
への影響日数
育苗期後半
~
定植当日
1回
25ml/株
◎
育苗期後半
~
定植当日
1回
育苗期後半
1回
使用時期
アブラムシ類、コナジラミ類
50ml/株
25ml/株
50ml/株
50ml/株
25~50ml/株
- 7 -
◎
スワル:×
(30日以上)
スパ:×
(45日以上)
〈定植時または生育初期の薬剤
薬剤名
使用量
使用時期
使用
回数
1g/株
育苗期後半
1回
1~2g/株
定植時
1g/株
育苗期後半
対象害虫
アドマイ
ヤー1粒
剤
アブラムシ類
アクタラ
粒剤5
アブラムシ類
ガードベ
イトA
(H28.3.1現在)〉
アブラムシ類、アザミウ
マ類
ミナミキイロアザミウマ、
マメハモグリバエ、コナジ
ラミ類、アブラムシ類
2g/株
ネキリムシ類
3㎏/10a
生育初期
天敵カブリダニ
への影響日数
株元散布
スワル:○
(約7日)
スパ:△
(約14日)
植穴または
株元土壌混和
1回
定植時
ミカンキイロアザミウマ
使用方法
株元散布
スワル:○
(約7日)
植穴処理
3回
スパ:△
(約14日)
株元散布
試験例無し
(影響長い)
5.定植後の管理
(1)温度管理とトンネル除去
○トンネル内の温度(なすの生長点付近)が30℃以上にならないように換気を行う。
○多重被覆トンネルは、季節、温度や生育を見ながら、ならしながら、1枚づつ除去する。
○トンネルを除去する時期は、夜温が10℃を確保できるようになる頃が目安となるが、天候
が不順な時期でもあることから5月中旬頃までは被覆しておくことが必要。
○トンネルを除去するにあたっては、換気量を増やしたり、除去直前には夜間もトンネルを
開放するようにして、徐々に外気に慣らすようにする。
(2)かん水
○活着までは、土壌の乾きに応じて、株元に少量のかん水を2~3回程度行う。
○かん水チューブを設置した場合、活着後は定期的に行い、1回のかん水量は少なくする。
→
手かん水からチューブかん水に切り替え、暖かい日の午前中に行う。
(3)ホルモン処理
○なすは、日最高気温が20℃以上の日が続くようになると正常に開花・結実が可能となるが、
開花期に17℃以下の低温に遭うと花粉の発芽が悪くなり、着果不良になりやすい。この
ため、最低気温が15℃以上を確保できるようになるまでは、確実に着果させるようホルモ
ン処理を行う。
<トマトトーンの使用方法(H28.3.1現在)>
作物名
な
使用目的
す 着果促進、果実の肥大
促進、熟期の促進
※希釈倍率50倍
→
希釈倍数
使用時期
使用回数
使用方法
50 倍
開花当日
1 花房につき
1回
散布
水2ℓに対してトマトトーンを40mℓ
- 8 -
【参考】天敵資材
○天敵導入までに農薬の影響日数を再確認し、導入日を決定する。
※天敵への影響日数を過ぎてからでないと、定着しにくく、死滅する場合もある。
○天敵導入前に、害虫発生状況を確認し、導入日を決定する。
※害虫が増えてしまった場合は、天敵に影響の少ない農薬で防除後に天敵を導入する。
○天敵農薬(カブリダニ剤)を使用する場合は、2番花開花期以降に放飼する。
※花粉なども餌とすることができるので、花数が増えてから放飼すると定着しやすい。
〈天敵農薬(H28.3.1現在)〉
薬剤名
対象害虫
スワルスキー
アザミウマ類
(スワルスキーカブリダニ)
スパイカルEX
ハダニ類
(ミヤコカブリダニ)
使用量
使用時期
使用
回数
使用
方法
250~500mℓ
(25,000~50,000頭)
発生直前~
発生初期
-
放飼
100~300mℓ
(2,000~6,000頭)
発生初期
-
放飼
(10a当たり)
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