平成28年度国債発行計画について…三好 敏之

特集
平成28年度
国債発行計画について
理財局国債企画課長 三好
敏之
本稿では、昨年12月24日に公表した平成28年
まりを背景に金利の低下傾向は続き、1月29日に
度国債発行計画の内容を中心として、来年度の国
日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩
債管理政策の概要を説明したい。
和」の導入を発表した後には長期金利が一時▲
0.075%まで下落している(2月26日)
。
1.現下の国債市場の状況
その一方で、需給逼迫に伴い一時的に金利変動
国債市場においては、日本銀行による金融緩和
幅が拡大(ボラティリティが上昇)する局面も見
政策が継続する中、金利は低下傾向が続いている。
られた。昨年1月には追加緩和期待を背景に長期
昨年1年間を通じ、長期金利(10年債利回り)は
金利が一時0.1%台を記録したのち2月には0.4%
0.3~0.4%台、中期金利(5年、2年)は0%近
台半ばまで上昇、また5月から6月にかけては独
傍の水準で概ね推移した。本年に入ってからも世
国債急落につられ0.5%台半ばまで上昇している。
界的な原油価格の下落、中国経済の減速懸念の高
(図1)
。
図1 長期金利(10年)及び中期金利(5年、2年)の推移
(%)
0.7
10月31日
量的・質的金融緩和の拡大
(日本銀行)
2月16日
0.442%
0.5
12月1日
0.3 ムーディーズ日本
国債格下げ
(Aa3→A1)
1月20日
0.195%
1月29日
マイナス金利付き
量的・質的金融緩和の導入
(日本銀行)
6月11日
0.545%
4月27日
フィッチ日本国債
格下げ
(A+→A)
0.1
9月16日
S&P日本国債
格下げ
(AA-→A+)
10年債
5年債
2年債
-0.1
2月26日
▲0.075%まで低下
-0.3
26年10月
26年12月
(出所)日本相互証券株式会社
36
ファイナンス 2016.3
27年2月
27年4月
27年6月
27年8月
27年10月
27年12月
28年2月
平成28年度予算特集①
平成28年度国債発行計画について
発行根拠法別(表1、左表)の内訳をみると、ま
が平成26年12月以降実施されたほか、27年12月
ず一般会計予算の歳入となる建設国債と特例国債
には米国連邦準備制度が利上げを決定したが、我
は、前年度当初比▲2.4兆円減の34.4兆円となった。
が国国債金利にはほとんど影響がみられていな
復興債は、東日本大震災からの復興のための施策
い。
に要する費用の財源に充てるため、復興特別税等
このように、金利は低下傾向にある一方、市場
の収入が確保されるまでのつなぎとして発行され
関係者を中心に一部からは、国債市場の流動性の
るものであるが、平成28年度においては前年度当
低下やそれがもたらすボラティリティの上昇を懸
初比▲0.7兆円減の2.2兆円の発行を予定している。
念する声が聞かれている。
財投債は、財政融資の新規の貸付規模、財政融
資資金全体の資金繰り等を勘案して決定されるも
2.平成28年度国債発行計画
の概要
のであり、平成28年度においては前年度当初比
2.5兆円増の16.5兆円となった。
以上のような市場環境の下で、平成28年度国債
借換債は、過去に発行した国債の満期到来に伴
発行計画においては、国債市場において一定の流
う借換えのために発行するものであり、国債発行
動性を維持し、投資家の需要動向等を踏まえ年限
総額の大半を占めている。国債残高の増加を背景
構成のきめ細かな見直しを行うことにより、国債
に借換債の発行は基本的に増加基調にあるが、平
の安定的な発行の確保を図ることとしている。
成28年度においては足元における償還額の一時的
な減少により前年度当初比▲7.2兆円減の109.1兆
(1)発行根拠法別発行額
円となった。
平成28年度の国債発行総額は、平成27年度当初
と比べ▲7.8 兆円減の162.2 兆円となった(表1、
図2)
。
(2)消化方式別発行額
国債の消化方式は、大別すると、
「市中発行」
、
「個
表1 平成28年度国債発行予定額
<発行根拠法別発行額>
区 分
27年度
当初
(単位:億円) <消化方式別発行額>
27年度補正後
28年度当初
区 分
(a)
(b) (b)-(a) (c) (c)-(a)
(c)-(b)
368,630
364,183
▲4,447
344,320
▲24,310
▲19,863
建設国債
60,030
64,790
4,760
60,500
470
▲4,290
特例国債
308,600
299,393
▲9,207
283,820
▲24,780
▲15,573
新規国債
復興債
28,625
19,463
▲9,162
21,564
▲7,061
2,101
財投債
140,000
140,000
-
165,000
25,000
25,000
▲19,258 1,091,144
▲71,841
▲52,583
832
▲4,386
832
▲32,867 1,622,028
▲78,212
▲45,345
借換債
うち復興債分
国債発行総額
1,162,986 1,143,728
5,218
-
1,700,241 1,667,374
▲5,218
(単位:億円)
27年度
当初
(a)
27年度補正後
28年度当初
(b) (b)-(a) (c) (c)-(a)
(c)-(b)
カレンダーベース
1,526,000 1,522,000
市中発行額
▲4,000 1,470,000
第Ⅱ非価格
競争入札
年度間調整分
市中発行分 計
個人向け国債
その他窓販
個人向け販売分 計
公的部門
(日銀乗換)
合 計
▲56,000
▲52,000
12,400
▲22,870
43,800
79,070
35,270
56,200
3,441
▲58,696
▲62,137
▲4,172
▲7,612
54,525
▲30,867 1,522,028
▲51,212
▲20,345
▲1,000
1,573,241 1,542,374
21,000
20,000
▲1,000
19,000
▲2,000
2,000
1,000
▲1,000
1,000
▲1,000
-
23,000
21,000
▲2,000
20,000
▲3,000
▲1,000
104,000
104,000
-
80,000
▲24,000
▲24,000
▲32,867 1,622,028
▲78,212
▲45,345
1,700,241 1,667,374
※1 平成28年度の市中からの買入消却については、総額1兆円程度を上限に実施(具体的な実施方法は、市場参加者との意見交換を踏まえ、市場の状況を見ながら決定)
。
※2 平成28年度における前倒債の発行限度額は48兆円。
(注1)各計数ごとに四捨五入したため、計において符合しない場合がある。
(注2)カレンダーベース市中発行額とは、あらかじめ額を定めた入札により定期的に発行する国債の4月から翌年3月までの発行予定額の総額をいう。
(注3)第Ⅱ非価格競争入札とは、価格競争入札における加重平均価格等を発行価格とする、価格競争入札の結果公表後に実施される国債市場特別参加者向けの入札をい
う(価格競争入札における各国債市場特別参加者の落札額の15%を上限)
。第Ⅱ非価格競争入札に係る発行予定額については、
当該入札を実施する国債(40年債、
30年債、20年債、10年債、5年債、2年債及び10年物価連動債)のカレンダーベース市中発行額の5%を計上している。
(注4)年度間調整分とは、前倒債の発行や出納整理期間発行を通じた、前年度及び後年度との調整分をいう。
ファイナンス 2016.3
37
特集
この間、主要格付け会社による日本国債格下げ
図2 国債発行総額の推移
特集
(兆円)
200
財投債
借換債
176.2
177.5
復興債
13.1
14.2
年金特例国債
建設・特例国債
150
141.3
16.8
135.7
151.8
151.5
9.4
8.4
110.2
0
5.3
昭和50
12.3
60
平成10
162.2
16.5
116.3
114.4
109.1
2.3
52.0
34.0
119.4
11.3
21.3
9.0
14.0
93.9
25.4
19
33.2
20
21
2.6
42.3
42.8
47.5
22
23
24
(注1)26年度までは実績。
(注2)各計数ごとに四捨五入したため、合計において一致しない場合がある。
人向け販売」
、
「公的部門」の3方式がある(表1、
右表)
。
1.9
2.9
2.6
0.4
5.7
166.7
111.0
100.8
42.4
50
14.0
10.7
109.0
90.5
99.2
170.0
14.0
8.6
100
76.4
172.0
164.3
2.2
0.1
40.9
38.5
25
26
36.9
36.4
34.4
27
27
28
(当初)(補正後)(当初)
(年度)
また、
「公的部門」
(日銀乗換)は、日本銀行が
保有する国債が満期を迎えた際に、その一部につ
「市中発行」分のうち、計画的に入札で発行す
いて国会の議決を経た金額の範囲内で借換債を引
るカレンダーベース市中発行額については、国債
き受ける制度である。平成28年度は、国債発行総
発行総額が前述の通り前年度当初比▲7.8兆円減
額や市場環境等を踏まえ、前年度当初比▲2.4兆円
となる中で、減額幅を同▲5.6兆円に抑え、147.0
減の8.0兆円となっている。
兆円の発行を予定している。これは、29年度以降
の償還額の見通し(29年度に減少後、30年度以降
は増加基調)を踏まえ年度間での国債発行額の平
(3)市場環境を踏まえた年限構成の
見直し
準化を図るとともに、市場の流動性の維持を考慮
前述のように、平成28年度国債発行計画におい
したものである。また、第Ⅱ非価格競争入札(通
ては、市場環境を踏まえ年限構成をきめ細かく見
常の入札の結果公表後に追加的に国債市場特別参
直すことにより国債の安定的な発行を確保するこ
加者向けに実施される入札)については、足下の
ととしている(表2、図3)
。
入札実績等を踏まえ、カレンダーベース市中発行
具体的には、中短期債(5年債、2年債、1年債)
額(1年割引短期国債及び流動性供給入札分を除
については、需給の逼迫による市場の流動性低下
く)の5%である5.6兆円を計上している。
の懸念に配慮し、前年度当初の減額幅▲6.1兆円減
「個人向け販売」分は、足元の金利動向の下で
に対し28年度は同▲4.8兆円減と減額幅を抑制し
の販売状況等を踏まえ、前年度当初比▲0.3兆円減
た。一方、超長期債(40年・30年・20年債)に
の2.0兆円とした。
ついては、①40年債を発行の隔月化に伴い増額す
38
ファイナンス 2016.3
平成28年度予算特集①
平成28年度国債発行計画について
表2 平成28年度カレンダーベース市中発行額
(単位:兆円)
区分
27年度補正後
28年度当初
-
(a) (1回あたり)
(年間発行額;c) (c)
-
(a) (c)
-
(b)
(1回あたり)
(年間発行額;a) (1回あたり)
(年間発行額;b) (b)
40年債
0.4 × 5回
2.0
0.4 × 5回
2.0
─
0.4 × 6回
2.4
0.4
0.4
30年債
0.8 × 12回
9.6
0.8 × 12回
9.6
─
0.8 × 12回
9.6
─
─
20年債
1.2 × 12回
14.4
1.2 × 12回
14.4
─
1.1 × 12回
13.2
▲1.2
▲1.2
10年債
2.4 × 12回
28.8
2.4 × 12回
28.8
─
2.4 × 12回
28.8
─
─
5年債
2.5 × 12回
30.0
2.5 × 12回
30.0
─
2.4 × 12回
28.8
▲1.2
▲1.2
2年債
2.5 × 12回
30.0
2.5 × 12回
30.0
─
2.3 × 12回
27.6
▲2.4
▲2.4
1年
割引短期国債
2.1 × 2回
2.2 × 10回
26.2
2.0 × 2回
2.1 × 2回
2.2 × 8回
25.8
▲0.4
2.0 × 2回
2.1 × 10回
25.0
▲1.2
▲0.8
10年物価連動債
0.5 × 4回
2.0
0.5 × 4回
2.0
─
0.5 × 4回(注3)
2.0
─
─
流動性供給入札
0.8 × 12ヶ月
9.6
0.8 × 12ヶ月
9.6
─
―
9.6
─
─
▲5.6
▲5.2
152.6
計
(注1)
(注2)
152.2
▲0.4
(注4)
147.0
(注1)40年債については、5月・7月・9月・11月・1月・3月の発行を予定している。
(注2)1年割引短期国債は減額する一方、新たに1年政府短期証券を発行することにより、両者を合わせた1年国庫短期証券としての総額は維持し、1回あたり2.5兆
円の発行を予定している。
(注3)10年物価連動債については、4月・8月・10月・2月の発行を予定し、市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整。
(注4)流動性供給入札の毎月の入札額等の具体的な実施方法は、市場参加者との意見交換を踏まえ、市場の状況を見ながら決定。
図3 カレンダーベース市中発行額の推移
(兆円)
160
流動性供給
入札
長期債
(10年)
6.3
106.3
2.3
100
2.1 13.6
7.2
短期債
(1年以下)
144.8
7.2
20.4
25.0
26.4
26.4
55.6
60.0
149.4
156.6
7.2
154.5
8.4
7.2
21.6
27.8
22.8
28.8
0.6
24.0
28.8
1.8
152.6
152.2
9.6
9.6
2.0
26.0
26.0
28.8
28.8
60.0
60.0
147.0
9.6
2.0
25.2
2.0
28.8
22.8
60
60.8
62.8
67.2
64.8
56.4
44.5
20
21.0
0
142.8
超長期債
(10年超)
19.2
17.7
120
40
中期債
(2∼5年)
137.5
140
80
物価連動債・
変動利付債
20
32.9
30.0
30.0
30.0
30.0
26.7
26.2
25.8
21
22
23
24
25
26
27
(当初)
27
(補正後)
25.0
28 (年度)
(当初)
(注1)26年度までは実績。
(注2)短期債については割引債であり、中期債、長期債及び超長期債については固定利付債である。
ファイナンス 2016.3
39
特集
27年度当初
るとともに(前年度当初比+0.4兆円)
、②投資家
特集
の需要動向等を踏まえ、20年債を減額(同▲1.2
兆円)することとしている。
るところでもある。
このような観点から、平成28年度においては、
市場参加者のニーズ等を踏まえ、流動性供給入札
この結果、国債の平均償還年限は発行残高(ス
(既発債の追加発行)について従来対象としてい
トック)ベース(平成28年度末の推計値)で8年
なかった年限(残存1年超5年以下)の国債を供
9か月(前年度当初比+4か月)
、カレンダーベ
給対象に追加することとした(図5)
。
ース市中発行(フロー)ベースで9年2か月(同
+2か月)となる見込みである(図4)
。
また、海外金融環境の急変等への備えとして最
(2)市場育成と国債保有の多様化に
向けた取組
大1兆円程度の買入消却の枠を維持し、市場環境
40年債については、発行開始から日が浅く市場
を踏まえ買入消却を適切に実施することとしてい
規模が相対的に小さい中、生命保険会社・年金基
る。
金等の長期運用や定期的購入ニーズを踏まえ、発
3.平成28年度の国債管理
政策における他の主な施策
(1)国債市場の流動性の維持・
向上策の拡充
行を隔月化(年5回→6回発行)化して投資しや
すい環境を整備することとした。
物価連動債についても、市場育成が引き続き重
要な課題であり、現行の発行規模(2.0兆円)を基
本としつつ、引き続き市場環境や投資ニーズに応
国債市場の流動性の維持・向上は、国債の確実
じて柔軟に調整するほか、29年発行分から中小・
かつ円滑な発行及び中長期的な調達コストの抑制
地域金融機関等の窓口で小口販売する新型窓口販
に資することから、国債管理政策においても十分
売方式の対象とし、
販売チャネルを多様化する(図
留意すべき課題であり、また、我が国の国債市場
6)
。
が高い流動性を有することは、市場参加者の求め
また、新型窓口販売方式に係る応募限度額の引
図4 日本国債の平均償還年限
(年度末)
20年度
21年度
22年度
23年度
発行残高ベース(ストック)
20年度
6年3ヶ月
7年0ヶ月
26年度
27年度
(補正後)
28年度
(当初)
7年3ヶ月
ファイナンス 2016.3
7年7ヶ月
23年度
7年9ヶ月
24年度
7年10ヶ月
25年度
7年7ヶ月
8年0ヶ月
8年5ヶ月 (推計)
8年9ヶ月 (推計)
(注1)26年度までは実績。
(注2)発行残高は普通国債残高のみ。
40
7年3ヶ月
22年度
6年8ヶ月
25年度
7年4ヶ月
21年度
6年5ヶ月
24年度
カレンダーベース(フロー)
7年11ヶ月
26年度
8年6ヶ月
27年度
(補正後)
28年度
(当初)
(注)26年度までは実績。
9年0ヶ月
9年2ヶ月
平成28年度予算特集①
平成28年度国債発行計画について
図5 流動性供給入札の対象拡充
【拡充前】
【拡充後】
※
残存1年超5年以下
残存1年超5年以下
(隔月実施)
残存5年超15.5年以下
(毎月実施)
残存5年超15.5年以下
(毎月実施)
残存15.5年超39年未満
(毎月実施)
残存15.5年超39年未満
(隔月実施)
※流動性供給入札による発行額(平成28年度計画9.6兆円)の対象ゾーン毎の配分など、入札の具体的実施方法は、市場参加者との意見交換(四半期
毎に開催する国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会等)を踏まえ決定する。
※残存15.5年超39年未満のゾーンについては、40年債入札のない月に隔月で実施し、超長期ゾーンの供給の平準化を図る。
図6 物価連動債の個人向け販売の拡大
○物価連動債の個人向け販売を拡大するためには、中小・地域金融機関等の幅広い販路を確保することが
望ましい。
○しかし、市場で調達した物価連動債を個人向けに販売する現行の仕組みは、小口注文に対応するコスト
等の観点から、一部の大手業者以外にとって使いづらいのが現状。
○このため、金融機関が調達・保有することなく、国と顧客の契約を取りまとめる形式の新型窓販の対象
とすることにより、顧客に身近な金融機関による小口販売(10万円∼)を可能とし、投資家層の多様化
を促進。
【新型窓販による販売(29年2月∼)
】
新型窓販取扱機関
(取扱の有無は経営判断)
国
上げ(一申込当たり1億円から同3億円)等によ
り、リテール向け販売チャネルの強化を図ること
としている。
4.平成28年度国債発行計画
の策定プロセス
平成28年度国債発行計画の策定に当たっては、
昨年10月に開催された「国の債務管理の在り方に
関する懇談会」において、民間有識者の方々から、
平均償還年限の在り方、国債市場の流動性、物価
ファイナンス 2016.3
41
特集
○「流動性供給入札」は、需給が締まり流動性が不足している既発債を追加供給するものであり、取引の円
滑化及び市場の歪みの是正を図ることを目的に実施している。
○平成28年度計画では、市場参加者からの要望を踏まえ、新たに、残存1年超5年以下の国債を入札対象
に追加することとし、国債市場の流動性維持・向上を図る。
平成28年度予算特集①
平成28年度国債発行計画について
図7 国債発行残高の推移
特集
(兆円)
1,000
財投債残高
873.1
848.1
復興債残高
96.8
814.3
特例国債残高
800
110.9
677.0
118.2
669.9
131.1
139.8
2.6
5.2
400
545.9
355.6
7.6
7.8
8.3
9.0
10.3
594.0
541.5
4.4
10.7
636.3
500
93.8
4.6
812.1
774.1
743.9
705.0
122.2
600
104.2
109.3
716.2
681.2
99.0 4.9
780.8
754.5
建設国債残高
700
931.6
908.9
年金特例国債残高
900
390.0
410.9
442.2
471.6
500.8
529.3
551.0
普通国債
計837.8
304.5
321.0
236.9
224.9
238.3
246.3
248.3
249.9
258.0
260.1
270.3
19
20
21
22
23
24
25
26
27
295.2
300
107.8
200
134.4
59.2
100
2.1
0
15.0
187.4
274.9
12.9 75.2
昭和50
60
平成10
28 (年度末)
(注1)計数ごとに四捨五入したため、合計等において一致しない場合がある。
(注2)計数は額面ベース。26年度までは実績、27年度は補正後見込み、28年度は当初見込み。
(注3)ここでの特例国債残高には、承継債務借換国債等を含む。
連動債市場の育成といった諸論点について助言を
め今後も国債の大量発行を余儀なくされる中で、
頂いたほか、12月開催の同懇談会では、28年度国
国債の確実かつ円滑な発行と中長期的な調達コス
債管理政策の基本的考え方を説明し、計画策定に
トの抑制を基本目標とする国債管理政策はますま
当たっての意見を頂いた。
す重要となっている。
さらに昨年11月及び12月に「国債市場特別参加
さらに、世界経済の先行き不透明感の高まりや
者会合」及び「国債投資家懇談会」を開催し、市
日本銀行による「マイナス金利付き量的・質的金
中発行の年限構成等について市場関係者との対話
融緩和」の導入を背景に、国債金利が史上最低値
をきめ細かく実施し、市場のニーズの把握に努め
を幾度となく更新するなど、これまでに例を見な
た。
い市場環境となっている。国債発行当局としては、
こうした民間有識者の指摘や市場関係者の声を
引き続き国債市場の動向を注視しつつ、市場関係
踏まえつつ、平成28年度国債発行計画を策定した
者との緊密な対話を行い、国債管理政策の適切な
ところである。
運営に取り組んでいく所存である。
5.おわりに
平成28年度国債発行総額は、平成27年度と比べ
て減少したものの、依然として極めて高い水準に
あり、また、国債発行残高は平成28年度末に932
兆円に達すると見込まれている(図7)
。このた
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ファイナンス 2016.3