NIDS NEWS(2016年3月号)を掲載しました。

NIDS NEWS 2016年3月号
通算第207号
防衛研究所ニュース 2016年3月号
“NIDS NEWS”
防衛研究所企画部企画調整課(03-3713-5912)
・・・・・2016年2月の主な出来事・・・・・
《 日米戦史研究交流研究会 》
2月2日から4日にかけて、マーク・A・
ストーラーバーモント大学名誉教授を招へ
いし、日米戦史研究交流研究会を開催しま
した。ストーラー氏は、20 世紀前半のアメ
リカ外交史および軍事史の研究の第一人者
で、アメリカ外交史学会会長、アメリカ軍
事史学会理事も務めており、内外から高い
評価を得ています。
3 日間の研究会では、
「アメリカ軍部に
よる戦争計画の策定―1901-1940 年」(2
日)
、
「戦時中の米英同盟は『特別な関係』
であったか」
(3 日)
、
「ジョージ・C・マー
シャルとアメリカの『ヨーロッパ第一』戦略の形成―1939-1951 年」
(4 日)のテーマで、ストーラ
ー氏が報告を行い、その後アメリカの戦争指導の分析に関連する様々な観点から質疑応答が行われ
ました。これを通じて、日本の戦争指導を分析する際の手法、着眼点等についての貴重な知見を得
ることができました。
《 日米テレビ会議の実施 》
2月5日、防衛研究所と米国防大学国家戦
略研究所(INSS)との間で、日米テレビ会
議(日米対話)が開催されました。同会議
は、我が国にとって戦略的に重要な影響を
与える諸課題についてテレビ会議システム
を用いて意見交換を実施し、政策提言に資
することを目的として、2002 年度から毎年
実施しています。
米国側からはデニス・ナタリ主任研究官
が「セクト主義、地域のダイナミクスと
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NIDS NEWS 2016年3月号
ISIS」、日本側からは西野主任研究官が「シリア内戦」のテーマで発表を行いました。両発表に続
いての討議では、シリア内戦の現状とその解決策について、防衛研究所とINSSの双方が活発な議論
を行いました。
《 日欧研究交流研究会の開催 》
2月16日、17日の両日、日欧研究交流研究
会が開催されました。この交流は、欧州から
安全保障研究者を招へいし、研究会及び討議
等を通じて防衛研究所の政策研究に必要な
資を得るとともに、日欧間の対話と相互理解
の促進を図ることを目的として実施してい
ます。
今回は、欧州連合軍最高司令官国際問題顧
問 ステフェン・コビントン氏、ポーランド
国際問題研究所欧州安全保障・防衛経済プロ
ジェクト分析官 ヤチェック・ダルカレック氏を招へいし、「NATO・ロシア関係―ワルシャワNATO
首脳会合に向けて」、「NATOにおける核態勢―新たな挑戦」とのテーマで研究会を実施しました。
研究会では、コビントン氏、ダルカレック氏がそれぞれ研究発表を行った後、主としてウクライナ
危機におけるロシアの行動から垣間見られるロシアの意図及び今後の方向性、あるいはロシアの核
メッセージの含意とNATOの取るべき今後の方策等について質疑応答を行いました。
《 中谷防衛大臣の視察 》
2月17日、中谷防衛大臣が防衛研究所を視察
しました。中谷大臣は、大西副所長から防研
の業務概況について説明を受けた後、阿久津
主任研究官によるブリーフィング「金正恩体
制下の北朝鮮の戦略的動向」を受けた後、教
育部において一般課程講義を聴講しました。
その後、戦史研究センターの史料庫を視察し、
防研が所蔵する戦史史料の概要について説明
を受けました。
《 ドイツ安全保障研究所長の来訪 》
2月18日、カール・ハインツ・カンプ ドイツ連邦共和国安全保障研究所(BAKS)長が来訪され、
所長との懇談及び一般課程における特別講義を行いました。
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NIDS NEWS 2016年3月号
懇談では、鈴木所長は歓迎の意を表するととも
に、第63期一般課程への教育への貢献に対して謝
意を述べました。また防研では欧州の研究機関等
との交流が盛んになっており、欧州の安全保障に
関する研修員の関心も高くなってきていると述べ
ました。
カンプ所長からは、現在BAKSの課程では、アジ
ア・太平洋地域における問題をテーマとしたハイ
レベルセミナーを行っており、学生も中国や日本
の安全保障に関心を持っていると説明されました。さらに防研とは長期的な協力関係を築いていき
たいとの希望を述べられました。
《 63期一般課程 》
2月は、「紛争と国際社会」、「軍備管理・
軍縮・不拡散」、「経済と安全保障」、「地域
安全保障1」、「地域安全保障2」、「東アジア
の安全保障2」の各講座及び11個のセミナーを
実施しました。
さらに政策シミュレーションの
一部として髙見澤内閣官房副長官補による
「国
家安全保障と危機管理」と題した講義、また、
カンプ ドイツ連邦共和国安全保障研究所
(BAKS)長による「安全保障政策に対するドイ
ツ及び欧州の視点」
と題した特別講義を実施し
ました。
2日から5日にかけて沖縄、24日に筑波、25日は横田においてそれぞれ現地研修を実施しました。
沖縄では航空自衛隊南西航空混成団、海上自衛隊第5航空群、陸上自衛隊第15旅団及び戦跡等を研
修して、沖縄地区の防衛・警備の現況や太平洋戦史等について理解を深めました。筑波ではJAXA(独
立行政法人宇宙航空研究開発機構)筑波宇宙センターを訪問して、日本における宇宙開発の現状及び
最新の科学技術について知見を広げました。横田では航空自衛隊航空総隊司令部、在日米軍司令部
及び国連軍後方司令部を訪問して、航空防衛、日米同盟及び国連軍の現状について認識を深めまし
た。
29日からは第3学期が始まり、「科学技術と安全保障」、「社会の安全と危機管理」、「近代日本
の軍事史」、「サイバーと安全保障」の4講座を開講しました。また、「宇宙と安全保障」、「平和
活動の諸問題」、「大国政治における非対称な同盟:朝鮮半島の同盟政治」、「再考 太平洋戦争
への道(前段)」、「国際政治学概論(後段)」、「宇宙開発利用概論」、「防衛産業・技術開発
概論」、「現代中国の外交」、「危機管理に関するシナリオ研究」、「戦略策定法(前段)」、「イ
スラーム原理主義とテロリズム(後段)」をテーマとした11セミナーを開講しました。
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NIDS NEWS 2016年3月号
・・・・・「史料紹介コーナー」・・・・・
平成 27 年度も、各都道府県出身の陸海軍将官の中から毎号一人を取り上げて、戦史研
究センター史料室が所蔵するその人物などに関連する史料を紹介しています。
すえつぐ
のぶまさ
《 末次 信正 1880~1944年 》
-山口県出身の海軍大将-
末次中佐従軍見聞録(登録番号:海軍省-日独戦書-T3-225-682)
末次信正大将は、明治 32 年 12 月、海軍兵学校(27 期)を卒業後、
大正 3 年 12 月に渡英し、翌 4 年 4 月から同年 12 月まで、第一次世界大
戦の観戦武官として英国巡洋艦「クイン・メリー」に乗艦、ドイツの潜
水艦戦などについて報告しています。その報告書が「末次中佐従軍見聞
録」で、なかでも大正 4 年 7 月 10 日の報告では、「潜水艦ノ出現ハ戦
略上ニ至大ノ影響ヲ及ホシ真ニ怖ルヘキ武器ナルコトヲ実証シタルモ
(中略)
作戦ノ大局ヲ左右スルニハ未タ能力ノ不十分ナル点アリ」
とし、
海戦は依然として戦艦中心主義であるとしています。そして潜水艦の欠
点として、水上移動能力の低いことを指摘するなど、その後の日本海軍
の潜水艦の発達、あるいは運用について示唆することが多い報告となっ
ています(他に「海軍少佐 末次信正報告」(海軍省-外駐員報-T3-1-45))。
海軍大将末次信正閣下講話要旨(登録番号:⑦兵術-7)
大正8年、末次大佐は軍令部第1課長に就任、在任中ワシントン会議の
全権委員に随行し、帰朝後の大正11年12月、軍令部第1班長(のちの第1
部長)に就任します。そして大正12年12月1日、少将に進級した末次は、
自ら進んで第1潜水戦隊司令官に転出します。ワシントン条約により主
力艦の保有量が制限されるなか、末次司令官の2年間にわたる斬新な訓
練指導は、爾後の潜水艦部隊の運用や技術の発展に大きく貢献しました。
この史料は「海軍大将末次信正閣下講話要旨」(昭和11年、於東京水交
社)で、「今迄ノ習慣トカ経緯トカニ捉ハレテ積弊除キ難ク改革行ハレ
難イ(中略)、切実ナル兵術上ノ要求ヲ基礎トシ不動ノ信念ヲ以テ充分
ニ部下ニ納得セシムル異常ノ根気ト果断決行トニ依ラナケレバ改革ハ
出来ヌ」と述べています。
《お知らせ》
史料保存のためのマイクロ撮影にともない、一時的に閲覧できない史料があります。
詳しくは、防研ウェブサイト「閲覧が一時不能となる史料」をご覧下さい。
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防衛研究所企画部企画調整課
専用線 : 8-67-6522、6588(史料紹介コーナーのみ6668)
外 線 : 03-3713-5912
FAX : 03-3713-6149
※ 防衛研究所ウェブサイト:http://www.nids.go.jp
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