5年「小数のわり算」 深美 陽市

平成27年度 和田小学校職員研修
本日の検証点は以下の通りである。
① 授業の各場面で,児童の「時間を守る・人の話を聞く・反応する」姿を見ることができたか。できてい
ないとすれば,どのような手立てが必要か。
② ①ができているとすれば,それが,授業にどのようにいきていたか。また,学業指導の範囲で足りない
と感じることがあったか。
第5学年 算数科学習指導案
平 成 27年 6月 22日 ( 月 ) 5 校 時
2 組 男 子 17名 女 子 16名 計 33名
指 導 者
深 美
陽 市
1
単元
小数のわり算
2 単元について
(1) 単元の位置とねらい
第4学年
【小数のかけ算とわり算】
第5学年
【小数のかけ算】
第5学年
【小数のわり算】
第5学年
【分数のかけ算とわり算】
・(分数)×(整数)
・(整数)÷(小数)
・(分数)÷(整数)
・(小数)÷(小数)
・余りの処理
・乗除の演算決定
...
これまでに子どもたちは,小数は単位量に満たないはしたの量を表す数として小数第三位までの範囲に
ついて学習してきている。また,小数が整数と同じ十進位取り記数法の仕組みで表されていることや数の
相対的な大きさについての理解も深めてきている。
小数の加法・減法において,位(小数点)をそろえたり,位ごとに計算したりすることを理解し, (小
数)×(整数),(小数)÷(整数)についても,類推的な考え方によって,小数も整数と同じ原理,手順で計算で
きることを学習してくる中で 0.1 の幾つ分で表そうとする単位の考えについても身につけてきている。
そこで,本単元では,小数の除法の意味や性質を理解し,余りの大きさが分かり,筆算をつかって正し
く計算することができることをねらいとしている。また,小数を 0.1 や 0.01 の幾つ分かで捉える単位の考
えや(小数)÷(小数)も(整数)÷(整数)と同じように考えられているという類推的な考え方をより一層深めて
いこうとするものである。それと同時に,これまで同様,図や表,言葉,式を関連させて説明していく数
学的な表現力を培っていくものでもある。さらには,被除数や除数が小数になった場合の除法に関心をも
ち,その意味を考えたり,計算したりする活動に意欲的に取り組み,算数の愉しさを味わうこともねらい
としている。
ここでの学習で培われた単位の考えや類推的な考え方は,(分数)×(整数),(分数)÷(整数)の意味や計算の
仕方を考える学習へと発展していくものである。
・(小数)×(整数)
・(小数)÷(整数)
・(整数)÷(整数)
でわり進める
・(整数)×(小数)
・(小数)×(小数)
(2) 指導の基本的な立場
かず
すう
数の概念は,具体物の数を抽象化して数とし,順序として(順序数),個数として(基数),量として見
ていく段階を経て,次第に深まり,次の段階へと繋がっていく。除数の意味は,乗法の逆算,すなわち□
×b=a(等分除)やb×□=a(包含除)の□にあたる数を求めることとして定義され,これらの計算
はいずれもa÷b(ただし,bは0ではない)と表される。
除数が小数となる除法では,
「小数のかけ算」の学習過程から類推的に考えさせたい。そのために,単元
の入れ替えを行い,
「小数のかけ算」の後に,本単元を学習する。除数が小数になっても除法の式が立つこ
とを理解させる。その際,意味理解を助けたり,見積もりをしたりするために,図や表を用いることで,
式だけに頼らない表現法のよさを味わわせたい。また,
「わり算は答えが小さくなる」という児童の固定観
念を打ち破り,数の概念を新たな段階へと引き上げたい。
具体的には,まず,単位量あたりの大きさでも扱った,ジュース1L あたりの値段を求めさせることで,
(整数)÷(整数)から類推的に考えさせ,(整数)÷(小数)が成り立つことを理解させる。計算の方法を考える過
程でも,小数の乗法の学習から類推的に考えて,除数(小数)を 0.1 の幾つ分でとらえる単位の考えを用
いたり,わり算のきまりをつかったりして,(整数)÷(小数)の解決を図っていく。
次に,(小数)÷(小数)の計算を考えさせる。ここでも(整数)÷(小数)の学習から類推的に考えさせることが
1
重要となる。1より小さい除数での除法においては,図や表を用いて,見積もりをさせ “答えが大きくな
る”場合を説明させることで,実感を伴った意味理解を図りたい。さらに,この単元で学んだことを定着
させ,次に生かしていくために,除数が小数となる問題作りをさせる。
このような学習を通して,図や表の有効性を実感しながら,単位の考えや類推的な考え方を身に付け,
意欲的に考え活動することで,算数を学ぶ愉しさを味わい,学習して身につけたものを生活の中でも活用
していこうという態度が培われるものと考える。
(3) 子どもの実態
本学級の子どもたちの既習事項の定着度や算数の授業に関すること,学業指導に関する学級ルールにつ
いての自己評価について調査してみると,以下の結果となった。
(調査人数 32 人,質問紙法)
【調査1】から,4年生までに学習しているわ
り算の定着度を見ると,整数÷整数,小数÷整数 【調査1】わり算や小数のかけ算に関する技能,知識理解
(1) 整数÷整数(1桁)=整数 4問
の正答率は 80~90%と高かったが,その中でも
(2) 整数÷整数(2桁)=小数 2問
除数が2桁になると正答率は 50~60%に落ち込
(3) 小数÷整数(1桁)=小数 2問
んだ。基本的な筆算の計算技能について振り替え
(4) 小数÷整数(2桁)=小数 2問
る時間を設定し,レディネスをそろえる必要があ
(5) わり算とはどんな計算ですか?(自由記述)
る。また,(5)の問いに対して,圧倒的に多か
(6) 答えが 7.5(被乗数)より小さくなる式を選びなさい。
ったのが,「わられる数より答えは小さくなる」
や「答えが小さくなる計算」に類する,被除数と
(7) かける数が1より小さいと…の続きを,(こたえ)と(か
商の大小関係に注目する答えであった。これは,
けられる数)の2つの言葉を使って説明しなさい。
(6)・(7)の正答率が 80%を超えたように,
問題
(1)
(2)
(3) (4) (5) (6) (7)
小数のかけ算の学習がある程度定着しており,そ
正答率 94% 57% 81% 65% 省略 81% 84%
こから類推的に考えた子どもたちが多かったた
めと推測される。言い換えると,子どもたちの中 【調査2】算数の授業に関すること
(1) 算数の学習は好きですか?
には,わり算とは答えが小さくなるものだという
はい 20人 どちらとも 8人 いいえ 4人
理解(固定観念)が定着しているということでも
(2) 算数の学習で,どんな時が好きですか?
ある。でもこのような場面を多く
【調査2】から,算数に対して,いいイメージ
・問題が解けたとき 15人
・発表したとき 4人
・友だちが「あぁ~(納得)」と反応したとき 4人
をもっている子が多いことが分かる。熱心にノー
・前で説明して,納得してもらえたとき 2人
トをとる姿は年度当初から多く見られたが,発表
・話合い中 友だちに「いいね!」と言われたとき 1人
となると決まった数人の手が挙がるだけで,板書
(3) 自分の考えを深めるためには?(複数回答)
を写すだけの受動的な授業態度の子どもが多か
友だちと話合う
った。また,発表に対しても機械的な「いいと思
一人で考える
21%
78%
(ペア学習)
います。」の反応があるのみの“静かな授業”に
発表する
31% 友だちの発表を聞く 50%
なりがちであった。そこから反応することの大切
さを繰り返し話し,反応した子どもを褒め,反応
【調査3】学業指導に関する学級ルールの自己評価
された時の発表者の嬉しい気持ちを取り上げ,時
4:よくできている 3:まあまあできている 2:あまりできていない 1:できていない
には,厳しく指導をしてきたことで,(2)の問
項目
4
3
2
1
いからも分かるように,反応をされることのよさ
反応の“あいうえお”
22% 60% 18% 0%
を実感している子どもも出てきている。また,発
教師の質問に対しての反応
25% 44% 28% 3%
表に対する抵抗感をできるだけ軽減するととも
「へそを向けなさい」での注目 66% 34% 0% 0%
に,子どもたち相互の人間関係づくりのため,授
1分前着席・30 秒黙想
56% 44% 0% 0%
業にはペア学習を多く取り入れてきた。それが自
自分で意識して1分前に着席
9% 53% 31% 7%
分の考えを深めるために役立っていると感じる
子どもが 80%に迫っているのは,本学級におい
てペア学習が有効であることを表していると言える。
おい【調査3】から,学級ルールである,反応の“あいうえお”に対しては意欲的で,自己評価でも高い数
値が出ている。しかし,詳細に見てみると,了解を表すうなずき(う)や同意を表す「同じです!」(お)
はできているが,違う意見や代案を出す「えぇー?!他にもあります」
(え)についてはまだまだできていな
い子が多いことが分かった。時間を守ることに関しては,“授業の1分前着席・30 秒黙想”が定着しつつ
ある。始めの頃は,日直の「着席。」の号令で動いていた子どもたちも,少しずつ自分で時計を見て行動で
きるようになってきている。
(4) 指導上の留意点
結果的に(整数)÷(小数)や (小数)÷(小数)の計算(筆算)技能が身に付くという形式的な理解に留まるこ
となく,その計算の意味を理解し,計算の方法を自ら及び協力して考える過程を重視する。そうすること
で,粘り強く考えることの大切さや算数の愉しさを味わわせることができると考える。そのために,解決
2
法が式だけに収束することのないよう,図や表等いくつかの解決法を子どもたちがもてるような手立てや,
前時や前単元の既習事項から類推的に考えることができるような単元全体を見通した授業づくりが必要で
ある。
また,本単元においても「時間を守る・人の話を聞く・反応する」ための学級ルールの徹底を図ってい
く。特に,反応するに関しては,“反応のあいうえお”という学級ルールをつくり定着を図っている。“反
応のあいうえお”とは,あ:
「あぁ~。
【納得】
」
,い:
「いいねぇ!【称賛】
」
,う:
「うん。うん。
(頷き)
【了
解】」
,え:
「えぇー?!他にもあります!【代案】」
,お:
「同じです!【同意】
」である。これらの言葉で教
師や友だちの発言に反応することを本単元においても指導していく。このような指導が,子どもたち同士
の『関わり合い』を促し,反応をし,されることで子どもたち一人一人が『自信』を伸ばしていく学びに
向かう集団作りができると考える。
3
目標
(1)
被除数や除数が小数になった場合の除法に関心をもち,整数の除法と同じように考えて,小数の除法の計
算の仕方を粘り強く考えようとしている。
(2) 整数の除法の考え方をつかって,小数の除法の意味や計算の仕方を考えることができる。
(3) 小数の除法の筆算をつかって計算することができる。
(4) 小数の除法の意味と計算の仕方,あまりのあるときの処理の仕方,商を概数で求めるやり方を理解するこ
とができる。
4
指導計画(全11時間)
小単元
整
数
主な学習活動
小数でわるってどういう
ことなのかな。
1
教師の具体的な働きかけ
除数が小数の場合にも除法 ○ 除法が成り立つ場面の拡張を図るため
が成り立つことを調べ,(整数)
に,日常生活の具体的な場面を取り上げて,
÷(小数)の計算を立式する。
半具対物や数直線をつかって考えさせる。
÷
小
数
③
÷
小
数
小
数
③
い
ろ
い
ろ
な
わ
り
算
②
など
るん
かな
な式
①に
練
め習
し・
②力
だ
わる数が小数のときはど
うやって計算するのか
な。
2
小数同士でわり算すると
きはどうするのかな。
4
整数に直して筆算しても
わりきれないぞ。
(整数)÷(小数)の計算の仕 ○ 形式的に小数点を移して計算するという
方を考える。
理解で終わらせないために,何を単位とし
3 (整数)÷(小数)の筆算の仕
て考えているかに着目させる。
方を考える。
(小数)÷(小数)の計算や筆 ○ (整数)÷(小数)の計算の仕方から類推的
算の仕方を考える。
に,(小数)÷(小数)の計算の仕方を考える。
5 0を補ってわり進めたり,一 ○ 意図的に誤回答例を取り上げることで,
の位に0が立ったりする場合
より深い理解を図る。
の計算の仕方について話合う。
わり算なのに,商がわら
れる数より大きくなるの
はどうしてなのかな。
6
1より小さい数でわるとき ○ 1より小さい小数でわると,商は被除数より
の商とわられる数の関係につ
も大きくなることを実感させるために,具体的
いて考える。(本時)
な場面と数直線を結び付けて考えさせる。
あまりを出すにはどうす
ればいいのかな。
7
余りの意味や小数点の付け ○ 余りの小数点の位置を理解させるため,
方について考える。
図と関連付けて説明させる活動をさせる。
わり切れなかったり,桁数が
多くなったりするときはど
うすればいいのかな。
8 商を四捨五入して,概数で求 ○
める位置や方法についてまと
める。
どんな式になるかな。どんな
問題がつくれるかな。
9
いろいろな問題に挑戦し
てみよう。
小数のかけ算やわり算の問 ○
題を解いたり,問題づくりをし
たりする。
10・11 練習問題に取り組み,既 ○ 計算の習熟を図るとともに,文章問題の
習事項の理解を深め,単元のま
演算決定や被除数,除数,商の関係につい
とめをする。
て理解を深めさせる。
3
5 本時(6/11)
(1) 目標
類推的な考え方を用いて,除数が1より小さいと,商は被除数よりも大きくなることを発見し,わり算
のおける商と被除数の大小関係を理解することができる。
(2) 本時の展開に当たって
表や図を用いて説明をしたり,説明を聞いたりすることで,わり算の答えが小さくなることを理解し,
固定概念を打ち破ることで,数学的な愉しさにもつがなる驚きを味わわせる。そのために,
「ふかめる」過
程においては,隣同士で説明する活動(ペア学習)によって,発表や反応を促し,発表に対する反応を取
り上げることで考えを深める。
(3) 実際
過程
主な学習活動
1
つかむ
時間
○ 類推的な考え方を培うために,(小数)÷(整
数)6 →(小数)÷(小数)1.2 を段階的に提示す
る。その際,時間を設定し,時間内での解決の
見通しをもたせる。
○ わり算の答えが大きくなるという驚きに繋げ
るために,「わり算ってどんな計算?」とその
性質を問い,板書する。
学習課題をつかむ。
□ mで19.2gの針金があります。1 m
あたりの重さを求めましょう。
※□には,6と0.8を入れる。
2
自己解決を図る。
・ 単位量あたりの問題に似ているな。
・ 表や図をかいて考えてみよう。
→ わる数が1より小さいぞ!
→ わり算なのに答えが大きくなるの?
→ 小数のかけ算でも同じようなことしたな。
3
めあてを
考える
学習問題を焦点化する。
わる数が1より小さいと,答えはどう
なるのかな。
4
自分なりの方法で解決する。
数直線図
表
5
ふかめる
考えを発表し合う。
・ わり算なのにやっぱり大きくなるよ。
・ びっくりだね!
・ 「あぁ~(納得)」,「えぇー?!他にもあります」
6
まとめる
いかす
本時の学習についてまとめる。
1よりも小さい数でわると,商は,わら
れる数よりも大きくなる。
7
商と被除数の関係をまとめる。
8
本時の感想を書く。
教師の具体的な働きかけ
15
○ 最後の感想と比較するために,19.2÷0.8に対
する児童の感想を取り上げ,板書する。
〇 共有の問いとして意識付けるために,「へそ
を向けなさい。」の言葉で,鉛筆を置かせ,集
中させて話をする。
○ 解決法が見つからない児童には,前時のノー
トを見返させたり,「数直線図かきなさい」とア
ドバイスをしたりして自力解決を後押しする。
○ 学習形態を自力→ペア→一斉とすることによ
って表現することの抵抗感を減らし,児童が自
信をもって発表できるようにするとともに,反
応を促す。
○ 小数のわり算の意味を理解させるために,適
20 時,かけ算の逆算であることを意識させる。
□×0.8(倍)=19.2→□=19.2÷0.8
○ 反応を意識付け,理解を深めるために,発表
に対する反応を問い直したり,他の児童に聞い
たりする。
○ 聴く力を育てるために,教師は前で説明する
児童の後ろに立ち,全体を見る。
○ 共有の問が集団によって解決できたことを意
識づけるために,「へそを向けなさい。」の言
葉で集中させて確認をする。
○ 子どもたち一人一人に達成感をもたせるため
10 に机間指導の中で個別に称賛する。
○ 自尊心を高め,次時へつなげるために,「で
きた」「わかった」等の前向きな言葉を書かせ
る。
4
5
6