進化する関節リウマチ診療と臨床検査 ポイント

進化する関節リウマチ診療と臨床検査
関節リウマチ(RA)は関節の慢性的な炎症です
ポイント
早期診断・早期治療が大事
この炎症が持続することにより、関節に痛みが生じたり、
骨が破壊されて関節が変形してしまいます。
早期診断に役立つ臨床検査がある
破壊された関節は元にはもどりません
早期治療法の問題点
合併症にも注意が必要
初期は破壊の進行が早いのですが逆に薬が効く時期でもあります
早期に見つけることがとても重要です
リウマチの診断
リウマチ以外にも
関節に症状のある
疾患があります
関節リウマチ
(RA)疑い
有無
血液検査
画像診断
MRI
その他のウ
イルス
甲状腺
関節液
炎症の原因が
他にないか(痛
風・細菌性炎症
など)
尿酸・ピロリン
酸カルシウ
ムの確認 ・
細菌検査
膠原病
抗核抗体・
抗RNP抗体・
抗ARS抗体*
など
リウマチの診断には滑膜炎と
画像診断、血液検査での総合
的判断が必要です
滑膜炎の
他疾患の除
外
B型肝炎ウイ
ルス・パルボ
ウイルスな
ど
血液検査
2010
ACR/EULA
R分類基準
の項目
甲状腺ホル
モン(FT3、
FT4、TSH)
*抗ARS抗体 多発性筋炎
(PM)/皮膚筋炎(DM)の自
己抗体検査で2014年1月よ
り保険適用となりました。リ
ウマチと似た症状があるた
め鑑別に役立ちます。
ACR/EULAR分析基準(スコアリング) スコアが6以上であれば definite RA(リウマチ確定)と診断する
腫脹または圧縮関節炎(0~5点)
滑膜炎の期間(0~1点)
1個の中~大関節
0
6週間未満
0
2~10個の中~大関節
1
6週間以上
0
1~3個の小関節
2
急性期反応(0~1点)
4~10個の小関節
3
CRPもESRも正常値
0
11関節以上(少なくとも1つは小関節)
5
CRPかESRが異常値
1
血清学的検査(0~3点)
RFも抗CCP抗体も陰性
0
RFか抗CCP抗体のいずれか低値
2
→
RFか抗CCP抗体のいずれかが高値
3
→ RF
抗CCP抗体
(株)クリニカルパソロジーラボラトリー
RF
抗CCP抗体
16以上45以下
4.5以上13.5未満
46以上
13.5以上
リウマチの治療の注意点
炎症の原因に
自分の体の成分
を攻撃してしまう
免疫反応(自己免
疫性疾患)があり
ます
関節の中で滑膜
に炎症がおきて
破壊され痛みが
生じてしまう
炎症
しかし、正常に働い
ている免疫の力も
弱めてしまうため、
今まで抑えられて
いた感染症を起こ
すことがあります
治療薬は免疫の
働きを抑えること
により滑膜を攻撃
する力を弱める
働きがあります
免疫
バリア
免疫バリア
が弱まる
抑える
ヤッター
弱まる
免疫反応を弱めて炎症を抑えるが、 正常
な免疫バリアも弱めてしまう
特に注意が必要な感染症
結核
*TNF阻害薬 リウマチの患者さんの滑膜から炎症性サイトカインと
いう分子が放出され炎症を起こしやすくしてます。この炎症サイトカ
インの中の一つ「TNF」の働きを抑える薬です
特にTNF阻害薬*を使用した場合結核を併発しやすい
• 結核の既往歴の確認、同居人の結核感染の有無
• クォンティフェロン、胸部X線、ツベルクリン反応など検査して感染の有無の確認が必要
B型肝炎
ステロイドや免疫抑制剤治療時に再活性・重症化することがわかってきた
• HBs抗原が(-)でも、HBc抗体とHBs抗体の測定を行なう。
いずれか(+)のときはHBV-DNAを検査する
(日本肝臓学会:B型肝炎治療ガイドライン)
その他感染症
免疫力が弱くなり日和見感染を起こす易い
• ニューモシスチス肺炎:HIV感染症の日和見感染であり、リウマチ治療中にも発症が認められる
検査 胸部X線、血中β-Dグルカン、気道のPCRなど
• アスペルギルスなどの真菌症:検査 真菌培養、アスペルギルス抗原など
• その他:日和見的感染症を起こすため、細菌培養同定、ウイルス抗体検査などを行なう
特に注意が必要な合併症
肺障害
リウマチの肺合併症も多く、薬剤性間質肺炎を起こすことも多い
•炎症が慢性化すると肺線維症へと進展する
•間質性肺炎の血清マーカー KL6、SP-D(サーファクタントプロテインD)の上昇がないか確認
腎障害
薬剤の長期間投与で腎臓に障害を起こす
• 尿一般検査、尿沈渣を定期的に検査
膠原病
投与している薬剤(TNF阻害剤*)による膠原病様症状
• 抗核抗体、抗ds-DNAの上昇がみられる ※自己抗体検査も定期的に実施
参照文献:臨床検査 vol.58 no9 2014年9月「関節リウマチ診療の変化に対応する」、2010ACR/EULAR関節リウマチ分類基準