平成 26 年度創成シミュレーション工学専攻修士論文梗概集 計算応用科学分野 高解像度ラージエディシミュレーションによる積雲成長の解析 学籍番号 25413586 氏名 Yang Jingyuan 指導教員名 1. はじめに 雲物理の研究は主に大気乱流を対象とする 巨視的なもの,と雲を構成する雲粒子を対象と する微視的なもの二つの分野に分けられる.本 研究の目的はラージエディシミュレーション (LES)を用いて一つの雲全体を対象としてメソ 後藤 俊幸 ∂ 𝛿𝑄𝑣 𝑠𝑔𝑠 ( + 𝐮 ∙ 𝛁) 𝑄𝑣 = 𝜏𝑄 ′ + [ ] 𝑣 ∂t 𝛿𝑡 𝑐𝑛𝑑 ∂ 𝛿𝜉 ∗ 𝑠𝑔𝑠 ( + 𝐮 ∙ 𝛁) 𝜉 ∗ = 𝜏𝜉 ∗ − [ ] ∂t 𝛿𝑡 𝑎𝑐𝑡 ∂ 𝛿𝑛∗ 𝛿𝑛∗ 𝑠𝑔𝑠 ( + 𝐮 ∙ 𝛁) 𝑛∗ = 𝜏𝑛∗ + [ ] +[ ] ∂t 𝛿𝑡 𝑐𝑛𝑑 𝛿𝑡 𝑐𝑜𝑙𝑙 スケールの巨視的なシミュレーションを行い, 4 𝑄𝑤 = ∑ 𝜌𝑤 𝜋𝑟 3 𝑛∗ 3 雲乱流中の温度・湿度・上昇気流などの物理量 が積雲の成長への影響を評価すること,および ここで,𝜏 𝑠𝑔𝑠 は LES モデルとしての SGS 応力を表 雲マイクロ物理研究におけるメソスケールパラ す.𝐮は大気の速度ベクトル,θは大気のポテンシ メータを与えることである. ャル温度,πは大気の圧力エキスナー,𝑄𝑣 は大気の 2. 物理過程と方程式 水蒸気混合比,𝑄𝑤 は大気の液体水混合比を表す. 2.1. 大気乱流 𝜉 ∗ と𝑛∗ は CCN と雲粒子の数密度と大気密度の比を 大気乱流によって熱量・水蒸気・雲粒子な 表す. どを輸送する.大気運動の計算ではブシネスク 2.4. 近似を使ったナビエ-ストークス方程式で行う. エントレインメント率 エントレインメント率はあるスカラーの LES の サ ブ グ リ ッ ド ス ケ ー ル (SGS) 応 力 は 流入流束と質量の全流束の比率を表す.円柱近 Smagorinski-Lilly モデルで計算される. 似を用いて,下の式により定義される. 2.2. 雲粒子 ϵ=− 雲粒子は雲凝結核(CCN)の活性化によっ て形成する.雲粒子の周りの水蒸気が過飽和で 3. 数値的な手法 ある場合は凝結成長し,非飽和であるは蒸発衰 3.1. ∂ϕ 1 ∂z 𝜙𝑐 − 𝜙𝑒 ビン法 退する.雲粒子の相対運動によって衝突合体を 本研究では,雲粒子の粒径分布に基づいた し,複数小さい雲粒子が一つの大きい雲粒子に 1 次元ビン法を使っている.各ビンと粒子半径 なる. (μm)の関係は下の式のようになる: 2.3. r(j) = 4.0 × 2(𝑗−1)/6 方程式系 𝛁∙𝐮=𝟎 3.2. ∂ ( + 𝐮 ∙ 𝛁) 𝐮 = −𝑐𝑝 Θ π′ ∂t +𝑔( 𝜃′ 𝑠𝑔𝑠 + 0.608𝑄𝑣′ − 𝑄𝑤 ) 𝒛 + 𝝉𝒖 Θ ∂ 𝐿 𝛿𝑄𝑣 𝑠𝑔𝑠 ( + 𝐮 ∙ 𝛁) θ = 𝜏𝜃′ − [ ] ∂t 𝑐𝑝 𝜋̅ 𝛿𝑡 𝑐𝑛𝑑 SMAC 法 SMAC 法によりは速度の計算を 3 ステップに わけられる: 1) 圧力の勾配を除いた速度時間発展の式で予 測速度𝐮∗を計算する, 2) ガウスザイデル法を用いて方程式∇2 𝑝 = 𝛁 ∙ 𝐮∗の圧力𝑝を解く, 平成 26 年度創成シミュレーション工学専攻修士論文梗概集 計算応用科学分野 3) 圧力の勾配を加えて𝐮 𝑛+1 ∗ = 𝐮 − 𝛁𝑝,次の 時間ステップの速度を計算する. 3.3. 初期条件と境界条件 図2:25minのときの液体水分布(g/kg) エントレインメント率の垂直分布を図4に 示す. 初期の速度を 0 に設定して,温度,湿度と 圧力は参照値と同じに設定する.上昇気流を作 るために計算領域の底に一つの楕円体の領域に 最大温度 0.3℃高いパルスを設定される. 水平方向の境界条件は周期条件であり,垂直方 向の境界条件はリジッド条件である. まだ雲に流体とともに動くトレーサーを 置き,そのトレーサーの内部の諸物理量の時間 変化も追跡した. 図3:エントレインメント率の垂直分布 3.4. 計算条件の設定 2番目のトレーサーの諸物理量の時間変化 No. 温度減率 最大湿度 パルス水平半径 (℃/㎞) (%) (メートル) 1 5.5 98 500 2 5.5 100 500 3 5.8 98 500 4 5.5 98 250 は図4に示す. 4. 計算結果 Run 1~4 における液体水の分布図1-図2 に示す.時間とともに、空気塊が上昇し、やが て 3000m付近にある逆転層で上昇が抑えられ ることがわかる 図4:トレーサーの諸物理量の時間変化 5. まとめ 計算結果によって,積雲の成長に以下の特 徴がみられた: 1) 温度減率が上昇気流の強さへの影響が強い. 2) 雲大気の塊の運動はランダム性がある. 6. 参考文献 [Arakawa,1966] Arakawa(1966). Computational design for long-term numerical integration of the equations of fluid motion: Two-dimensional 図1:15minのときの液体水分布(g/kg) incompressible flow. J. Comput. Phys., 1:119–143. 42 [Ogura, 1972] Ogura (1972). The development of warm rain in a cumulus model. J. Atm. Sci., 30:262–277. 9, 10 [Takahashi, 1981] Takahashi, T. (1981). Warm rain development in a three-dimensional cloud model. J. Atmos. Sci., 38:1991–2013. 1, 1
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