第6回 最適を追究する! ~科学の一手法~ 7月4日の土曜日、6回目の「金沢市児童科学教室」がありました。 この日は5,6年とも、夏の「宿泊体験学習(5年生は銀河の里キゴ山、6年生は国 立能登青少年交流の家)」の事前説明会の後にいつもの活動が行われ、やや時間が少な かったものの、どの教室の子ども達も、精力的に取り組んでいました。 5年生の今回の課題は「最強のスライムを作ろう」です。スライムは、「水」、「P VA糊(せんたくのり」、「ほう砂」の3種を適切な割合で混ぜて作る“ドロドロ“と した不思議な物体で、知っている方も多いと思います。作り方自体は簡単で、科学財団 でも保育園や幼稚園の子どもを対象に活動を行っています。 そんな活動をなぜ、科学教室の5年生に行うかというと、この3種を混ぜる割合を様 々に変えて出来映えを比較し、「最適のスライムを作る」という流れで、科学研究を進 めていく典型的な流れの1つを経験できるからです。つまり、実験に大切な条件統一の 考え方を生かして、いくつかの結果を合わせて一番良い場合を見つけるという、科学の 大切な追究手法を体験できるのです。 この方法は、例えば夏休みの自由研究などでよくある「よく飛ぶ紙飛行機を作ろう」 とか、「長持ちする切り花を作るには」などの「最適化問題」に生かすことができます。 一方、6年生の自由研究を見ると、「パワーのあるろうそく作り」に挑戦しているグル ープがありました。「炎の強さ」と「長持ち」という相反する2つの最適点を求めると いう研究です。変更できるのは「ろう」と「芯」。そこで、芯の種類を様々に変えたり、 ろうの形や状態などを色々変える研究に取り組んでいました。5年生でのスライム作り などで培ってきた「最適な物」を求める追究方法が役立ちそうです。 ただ、やっている子ども達に聞くと、ちょっと気になる点がありました。それは、機 械的に様々を実験を試すのではなく、「予想や見通し」を持つことの大切さです。「こ の芯よりもあの芯の方が良いと思う。なぜなら…」という「自分なりの予想」を持つこ との大切さです。それがあれば、結果を「事実」としてだけでなく「考察」でき、次の 追究につながっていけます。もちろん、「結果」が出た後、振り返って考えてみること も可能なので、このグループがどう考えて、最強のろうそくを作るのか、楽しみです。 さらに、このろうそくの研究の場合は、2つの求めるもの(長持ちと強さ)が、相 反する性質を持つものなので、いわゆる数学の「最適化問題」のような考え方もこれか ら大事になってくるでしょう。どんな展開を見せるのか、楽しみです。 科学教室で指導する先生方は、いつもこのように、目の前の「具体的追究」を進め ながら、それによって培われる「科学的な考え方や追究の手法」を学ばせ、一般化した 力として身につくように努めています。 〔最適な混合比率を試しながら 検討している5年生〕 〔様々なろうそくを並べて燃焼時間 を計っています〕
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