並進4自由度柔軟3指ハンドによる多様な物体の把持 1P2-O03

䢳䣒䢴䢯䣑䢲䢵
並進4自由度柔軟3指ハンドによる多様な物体の把持
Grasping of Various Objects by Four Degree of Freedom Three-Fingered Hand with
Soft fingertip by Translational Joints
○望月
大督(立命館大学)
平井
慎一(立命館大学)
Daisuke MOCHIZUKI, Ritsumeikan University
Shinichi HIRAI, Ritsumeikan University
It is difficult for a grasping mechanism used for industrial robots to correspond to various shaped objects. This is
because the grasping mechanism of industrial robots are designed to each object. A human finger can grasp and
operate objects well because a human finger is soft and flexible. So, this article focuses on the three-fingered hand
with soft fingertips with translational joints. The touch area of soft fingertips is wider than that of hard fingertips, so
soft fingertips are able to grasp various objects. We verified whether this hand could grasp various objects.
Key Words: Soft fingertip, Grasping, Translational joint
1. 緒言
近年,労働人口の減少や人件費の上昇により,食品製造業
における生産ラインの自動化が求められている[1].しかし多
様な形状を持つ食品に対し,一対一の対応でそれぞれ別のロ
ボットハンドを導入しようとすれば手間やコストがかかる.
そのため,対象物の形状の違い,または向きのバラつきに対
処できる,すなわちそれ 1 つで多種多様な物体の把持が可能
なロボットハンドが必要とされている[2]~[4].
人間は柔軟な指先を持ち,多様な形状の対象物を安定して
把持することができる[5].柔軟指の特徴として,対象物の形
状に応じて指先の形状を柔軟に変形できるため,対象物を面
接触で安定して把持することができること.また,指先が変
形することで外力による影響を抑えることができ,把持の失
敗や対象物の損傷などを防げることがある.
そこで,本研究室で製作された,並進関節を用いた柔軟 3
指のハンドに注目する.このハンドは 3 本の柔軟指が連動し
て開閉する.またそれぞれの指が左右に 6°ずつ回転するため,
様々な把持対象物の形状に対応して把持することができると
予想される.
本報告は,並進関節を用いた柔軟な指先を有する柔軟 3 指
ハンドを用いて,多様な物体の把持ができるかどうかを検証
する.
2.
Fig.1 Front view of hand
2.2 指機構
指機構の機構を図 2 に,動作を図 3 に示す.このハンドの
指機構には,図 2 のような機械的な隙間がある.指機構のラ
ックギヤ部分が前に 2 度,後ろに 3 度に傾く.これにより,
対象物を把持したとき,物体の形状になじむことを期待して
いる.また,指機構の指が左右 6 度ずつ回転をする.これに
より対象物を把持するときに,対象物の形状に沿って把持す
ることが期待される.
並進 4 自由度柔軟 3 指ハンド
2.1 ハンド
本実験で使用する並進関節を用いた 4 自由度柔軟 3 指ハン
ドを図1に示す.このハンドは,把持機構に 1 自由度,指機
構に 3 自由度の合計 4 自由度から構成されている.このハン
ドの重量は,490 g であるため,要求仕様の 500 g 以内に収
めることができた.また,最大可搬重量は 900 g であった.3
本の指先に柔軟指がそれぞれ 1 個ずつ取り付けられている.
株式会社エクシールコーポレーションの人肌ゲルの硬さ 0 を
用いて柔軟指を製作した.柔軟指の形状は半径 10mm の半球
である.
Fig.2 Flexible motion range
Fig.3 Motion of finger mechanism
䣐䣱䢰䢢䢳䢷䢯䢴䢢䣒䣴䣱䣥䣧䣧䣦䣫䣰䣩䣵䢢䣱䣨䢢䣶䣪䣧䢢䢴䢲䢳䢷䢢䣌䣕䣏䣇䢢䣅䣱䣰䣨䣧䣴䣧䣰䣥䣧䢢䣱䣰䢢䣔䣱䣤䣱䣶䣫䣥䣵䢢䣣䣰䣦䢢䣏䣧䣥䣪䣣䣶䣴䣱䣰䣫䣥䣵䢮䢢䣍䣻䣱䣶䣱䢮䢢䣌䣣䣲䣣䣰䢮䢢䣏䣣䣻䢢䢳䢹䢯䢳䢻䢮䢢䢴䢲䢳䢷
䢳䣒䢴䢯䣑䢲䢵䢪䢳䢫
3.
食品サンプルの把持実験
3.2
3.1 実験方法
本実験では2節で述べたハンドを用いて,3 種類の食品サン
プルの把持を行う.実験環境を図 4 に,対象物を置く Z 軸ス
テージを図 5 に示し,実験で使用する 3 種類の食品サンプル
を図 6 に示す.今回,対象物を置く位置は Z 軸ステージ上の
9 通りで行い,対象物の向きは 0°,90°,180°の 3 通りで
行う.また,同じ位置,同じ向きでの把持実験をそれぞれ 10
回ずつ行う.よって全部で 270 回の把持実験を行う.図 7 に
Z 軸ステージ上の対象物設置位置を示す.また,図 8 に示す
ように Z 軸ステージ上に 9 つの点を 1cm 間隔で網目上でとり,
左上から右下まで順に 1~9 までの番号をつけた.
実験の手順としては,まず対象物を Z 軸ステージ上に任意
の位置と向きに合わせて置いたあと,ハンドが対象物を把持
できるよう Z 軸ステージの高さを調節する.次にハンドを起
動させ対象物の把持を行い,そのまま対象物が Z 軸ステージ
から離れるまでステージの高さを下げる.最後にハンドが対
象物を把持できているかを 10 秒間確認する.
実験結果
実験結果を図 9 ~11 に示す.各表は図 8 で番号をつけた
それぞれの位置と,その位置で対象物を 10 回中何回把持でき
たかを示しており,0~10 までの 11 段階である.また各表の
下の図は柔軟指と対象物の位置関係と向きを示しており,○
は柔軟指の位置を示す.図 9 に示すように,ハンドはたまご
の切り身の食品サンプルを常に把持できることがわかった.
また,図 10 に示すようにからあげの食品サンプルを多くの場
合で把持できることがわかった.図 11 に示すように鮭の切り
身の食品サンプルに関しては,姿勢が 0°あるいは 180°のと
きは,多くの位置で把持することができた.しかし,位置に
よっては 10 回中 0 回ないしは 6 回という低い成功率に留まっ
た.切り身の食品サンプルが姿勢 90°のとき,ハンドはサン
プルをほとんど把持することができなかった.
(a)0°
(b)90°
(c)180°
Fig.9 Experimental result of egg sample
Fig.4 Experimental setup
(a) Egg
Fig.5 Z-axis stage
(b) Fried chicken
Fig.6 Food samples
(c) salmon
(a)0°
(b)90°
(c)180°
Fig.10 Experimental result of fried chicken sample
Fig.7 Position of the object
Fig.8 Number of position
(a)0°
(b)90°
(c)180°
Fig.11 Experimental result of salmon sample
䣐䣱䢰䢢䢳䢷䢯䢴䢢䣒䣴䣱䣥䣧䣧䣦䣫䣰䣩䣵䢢䣱䣨䢢䣶䣪䣧䢢䢴䢲䢳䢷䢢䣌䣕䣏䣇䢢䣅䣱䣰䣨䣧䣴䣧䣰䣥䣧䢢䣱䣰䢢䣔䣱䣤䣱䣶䣫䣥䣵䢢䣣䣰䣦䢢䣏䣧䣥䣪䣣䣶䣴䣱䣰䣫䣥䣵䢮䢢䣍䣻䣱䣶䣱䢮䢢䣌䣣䣲䣣䣰䢮䢢䣏䣣䣻䢢䢳䢹䢯䢳䢻䢮䢢䢴䢲䢳䢷
䢳䣒䢴䢯䣑䢲䢵䢪䢴䢫
4.
側面の傾斜角度が異なる対象物の把持実験
4.1 実験目的
3 節の実験において,鮭の食品サンプルが 90°の場合,把
持成功率が低かった.これは用いた鮭の食品サンプルの側面
が傾斜しているためであり,その傾斜角度によって対象物を
把持できるかどうかが変わってくると考えた.そこで,本節
では側面の傾斜角度が異なる 6 種類の対象物を用意し,どの
角度で把持可能であるかを検証する.
用紙サイズ:A4(210×297mm)とします。
4.2 実験方法
図 12 に実験で使用する 6 種類の対象物を示す.対象物の形
状は,側面のうち1つに 90°~15°までの決まった角度がつ
けられたものであり,その傾斜角度は左上から右下まで順に
90°,75°,60°,45°,30°,15°となっている.実験環
境は図 5 と同様である.この実験では,図 13 のように 3 指の
うち 2 指を用いて,傾斜のある面とその反対の面とを挟み込
むようにし,把持実験を行った.またそれぞれの対象物に対
し 10 回ずつ把持実験を行った.
実験の手順は,1 種類の対象物に対して複数の位置や角度で
試すという点と,ハンドの2本の指飲みを使って行うこと以
外は 3 節の実験と同様である.
(a)90°
(b)75°
(c)60°
(d)45°
Fig.14 Grasping of objects with slopes
5.
Fig.12 Six grasped objects
文
Fig.13 Grasping of two fingers
結言
本報告では,並進 4 自由度柔軟 3 指ハンドを用いて,3 種
類の食品サンプル及び側面の傾斜角度が異なる 6 種類の対象
物の把持実験を行った.たまごの食品サンプルは全ての位置
と向きに置いて把持できることがわかった.からあげの食品
サンプルには多くの位置や向きで安定して把持できることが
わかった.鮭の切り身の食品サンプルにおいては,位置や向
きによって把持が難しい場合があるということがわかった.
また,側面の傾斜角度が 60°までの対象物は安定して把持
することができ,傾斜角度が小さくなるほど安定した把持が
できなくなることがわかった.
[1]
[2]
4.3 実験結果
[3]
実験結果を図 14 に示す.側面の傾斜角度が 90°,75°,
60°の 3 つの対象物は 10 回中 10 回把持することができた.
45°の対象物は 10 回中 3 回しか把持できず,今実験の条件下
で把持できたとみなした場合でも約 20 秒で落としてしまった. [4]
45°の対象物を把持した時の写真が図 14(d)である.また
30°と 15°の対象物に関しては傾斜が急であったため一度も
[5]
把持することはできなかった.この結果より,対象物の側面
の傾斜角度が小さくなるほど把持成功率が低くなると考えら
れる.また,10 回中 10 回の把持ができなくなる側面の傾斜
角度が 60°~45°の間に存在していることが予想される.
献
弘中泰雅: “ムダをなくして利益を生み出す食品工場の生産管
理,” 日刊工業新聞社, 2011.
野田哲男, 田中健一: “産学連携による産業用ロボットの知能
化技術の開発事例,”第 30 回日本ロボット学会学術講演会予稿
集, 札幌, Sept. 17-20, 2012.
B.-S. Kim and J.-B. Song: “Object Grasping Using a 1 DOF Variable
Stiffness Gripper Actuated by a Hybrid Variable Stiffness Actuator,”
Proc. of the IEEE International Conference on Robotics and
Automation, pp.4620-4625, 2011.
H. Choi, M. Ko: “Design and feasibility tests of a flexible gripper
based on inflatable rubber pockets,” International Journal of Machine
Tools & Manufacture, vol.46, no.12-13, pp1350-1361. 2006.
T. Inoue, S. Hirai: “Mechanics and Control of Soft-fingered
Manipulation,” Springer-Verlag, 2008.
䣐䣱䢰䢢䢳䢷䢯䢴䢢䣒䣴䣱䣥䣧䣧䣦䣫䣰䣩䣵䢢䣱䣨䢢䣶䣪䣧䢢䢴䢲䢳䢷䢢䣌䣕䣏䣇䢢䣅䣱䣰䣨䣧䣴䣧䣰䣥䣧䢢䣱䣰䢢䣔䣱䣤䣱䣶䣫䣥䣵䢢䣣䣰䣦䢢䣏䣧䣥䣪䣣䣶䣴䣱䣰䣫䣥䣵䢮䢢䣍䣻䣱䣶䣱䢮䢢䣌䣣䣲䣣䣰䢮䢢䣏䣣䣻䢢䢳䢹䢯䢳䢻䢮䢢䢴䢲䢳䢷
䢳䣒䢴䢯䣑䢲䢵䢪䢵䢫